ハラスメント被害について会社対応を促し、退職前に解決した事例【労働者側】
相談前の状況
相談者は、勤務先で上司から継続的に威圧的な発言や人格を否定するような言動を受けており、日々の出勤自体が強い苦痛となっていました。業務上の指導の範囲を超えて、感情的に叱責される、他の従業員の前で不必要に厳しい言い方をされる、繰り返し萎縮させるような対応を受けるといった状況が続いていたとのことでした。相談者は当初、職場ではよくあることとして我慢しようとしていましたが、次第に不眠や食欲低下など心身への影響も現れ、これ以上一人で抱えるのは難しいと感じるようになりました。
一方で、相談者は会社内部にも事情を伝えていましたが、十分な調査や是正措置はとられず、むしろ「受け止め方の問題ではないか」「双方に行き違いがあるのではないか」といった曖昧な反応にとどまっていました。そのため、相談者としては、上司本人の言動だけでなく、会社が相談後に真剣に対応してくれないことにも強い失望を感じておられました。退職も頭をよぎっていたものの、本来であれば職場環境の改善が図られるべきではないか、会社に対してどこまで対応を求められるのかを知りたいとして、当事務所にご相談いただきました。
解決への流れ
ご依頼後、まず行ったのは、相談者が受けていた言動の内容と時期を整理し、証拠関係を確認することでした。ハラスメントの問題では、「何を、いつ、どのように言われたのか」「それが継続していたのか」「会社に相談した後にどのような反応があったのか」が重要になります。そこで、本件では、相談者が残していたメモ、メッセージ履歴、録音データ、相談記録などを整理し、単なる主観的な不満ではなく、職場環境上の問題として把握できるよう構成しました。
そのうえで、会社に対し、相談者が置かれている状況、これまでの相談経過、会社として必要な調査・対応を尽くしていないことへの懸念を指摘する通知を行いました。具体的には、問題となる上司との接触関係の見直し、勤務環境の調整、事実確認の実施、再発防止のための措置などを求め、単に「本人同士で何とかしてほしい」という対応では済まされないことを明確にしました。
会社側は当初、対応に慎重な姿勢を示していましたが、証拠関係と法的な論点を整理して提示したことにより、事態を放置することのリスクを意識するようになりました。その後、協議を重ねる中で、上司との接触のあり方や相談者の勤務環境について一定の調整が行われるとともに、相談者の精神的負担やこれまでの経過も踏まえた金銭的な解決についても話し合いが進みました。最終的には、相談者がこれ以上不安定な状態で勤務を続けなくて済むよう、勤務関係の整理と一定の金銭解決を含む内容で合意が成立しました。相談者は、会社側に問題が可視化されたこと自体にも意味を感じておられ、納得感をもって次の段階に進むことができました。
舛本 行広 弁護士からのコメント
ハラスメント事案では、被害そのものだけでなく、会社が相談を受けた後にどう対応したかが非常に重要です。適切な調査や是正措置を取らず、被害を受けた側に我慢を求めるような運用が続いている場合、会社側の責任が問題となることもあります。
また、在職中のハラスメントは、退職した後よりも、証拠や状況を整理しやすい場面があります。録音、メモ、メッセージ履歴、相談記録など、日々の小さな記録が後に大きな意味を持つことは少なくありません。「まだ辞めると決めたわけではないが限界に近い」という段階でも、法的な見通しを持つことで選択肢が広がることがあります。一人で抱え込まず、早めに相談することが重要です。
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