離婚後の年金分割をしないとどうなる?拒否されたら?共働きでも対象?元配偶者が死亡・再婚した場合に支給されるかも解説

離婚するとき、夫婦のどちらかは、配偶者が支払った厚生年金保険料の納付記録を分けてもらい、将来受け取れるはずの年金額に反映させることができます。年金分割といいます。この記事では、年金分割の仕組みや、配偶者に拒否された場合の対処法などを詳しく解説します。年金分割をしないとどうなるのか、共働きの夫婦も対象なのか、離婚後に元配偶者が死亡・再婚した場合も支給されるのか、といった疑問にもお答えします。

目次

  1. 年金分割とは?
    1. 合意分割と3号分割
    2. 3号分割だけの人は事前にしておくことはない
    3. まず「年金分割のための情報通知書」を入手する
    4. 通知書をもとに夫婦で話し合う
  2. 年金分割をしないとどうなる?
  3. 相手が拒否したらどうすればいい?
  4. 共働きでも対象になる?
  5. 一方が死亡・再婚しても支給される?
  6. まとめ
  7. 次はこの記事をチェックしましょう

年金分割とは?

年金分割とは、配偶者が支払っている厚生年金保険料の納付記録を分けてもらい、将来受け取れるはずの年金額に反映させることができる仕組みです。 配偶者の納付記録を分割して受け取ることによって、厚生年金保険料を直接は納めていなかった他方の配偶者も、納付した部分を反映した年金額を将来受け取ることができます。 年金分割では、結婚していた間の、厚生年金保険料を納めてきた実績(記録)を、元配偶者と一定の割合で分け合うことになります。 簡単に言えば、配偶者が支払った婚姻期間中の厚生年金保険料を、最大で半分まで「あなたが支払った」と扱って、あなたが将来受け取る年金額を計算するという仕組みです。 厚生労働省のデータによると、年金分割を受けた方の年金の受給額は、月額平均で3万1000円増額しています(2018年)。 年金分割のイメージ図

国民年金は年金分割の対象になりません。また、配偶者が自営業で、厚生年金に加入したことがない場合には、年金分割はできません。

合意分割と3号分割

分割の方法は、2008年4月より前に納めた保険料と、それ以降に納めた保険料とで扱いが異なります。

2008年4月1日より前に納めた厚生年金保険料

2008年4月1日より前に納めた保険料は、夫婦間で話し合って、どの程度の割合を分け合うのか合意する必要があります(合意分割)。 合意できない場合には、家庭裁判所に申し立てて、分割の割合を判断してもらうことになります。

2008年4月1日以降に納めた厚生年金保険料

専業主婦などの第3号被保険者の場合、2008年4月1日以降に配偶者が納めた厚生年金保険料は、夫婦間の合意がなくても分割することができます(3号分割)。 離婚後、日本年金機構が運営する年金事務所へ申請すると、2分の1の割合で分割してもらうことができます。

保険料の納付期間が双方にまたがっている場合

たとえば、夫が会社員・妻が専業主婦で、2003年4月に結婚し、2017年8月に離婚したというケースだと、合意分割の期間と3号分割の期間がまたがっていることになります。 この場合、2008年4月1日から2017年8月までの保険料は、3号分割を申し立てれば、自動的に分割されますが、2003年4月から2008年3月までの保険料については、話し合いで決めるか、裁判所に判断してもらう必要が出てくるのです。 実務的には、合意分割の手続きを開始すれば、自動的に3号分割の手続きも始まる運用になっています。

3号分割だけの人は事前にしておくことはない

このように、共働きだったり、専業主婦でも2008年4月1日以前から婚姻関係が続いていた場合は、話し合いで決めるか、裁判所にどのように分けるかを判断してもらう必要があります(合意分割)。 分割の割合が決まったら、離婚後に、年金事務所で合意分割の手続きを行います。 離婚したあとでも、年金分割を行うことはできますが、離婚が成立した日の翌日から数えて2年で請求する権利が消えてしまいます。 離婚後、スムーズに年金分割の手続きを進めるために、離婚までにどのように分けるかを決めておくことをおすすめします。 一方、3号分割は、配偶者と合意する必要はなく、自分だけで手続きを進めることができるので、3号分割だけで年金分割できる人は、離婚前に準備することは特にありません。 以下では、合意分割が必要な方が、離婚までにどのようなことをしておく必要があるのかを解説していきます。

まず「年金分割のための情報通知書」を入手する

どのくらいの割合で年金を分け合うのか決めるために、「年金分割のための情報通知書」という書類を手に入れましょう。 この書類を手に入れると、配偶者の「標準報酬総額」がわかります。標準報酬総額とは、婚姻期間中の配偶者の給与と賞与の合計額です。 厚生年金保険料は、報酬額がいくらかによって変わるので、標準報酬総額を知ることで、配偶者がこれまでいくら厚生年金保険料を納めたかがわかります。 通知書を請求するときには、以下の資料を用意します。請求後、2〜3週間で取り寄せることができます。

  • 「年金分割のための情報提供請求書」(年金事務所か、年金機構のホームページから入手できます)
  • 請求する人の年金番号がわかる資料(年金手帳か基礎年金番号通知書のどちらか一方)
  • 戸籍謄本

年金分割のための情報通知書は、自分1人でも請求できます。 自分1人で請求した場合、通知書は自分にだけ交付されるので、離婚を考えていることを配偶者に知られる心配がありません(夫婦で一緒に請求した場合は自分と配偶者それぞれに交付されます)。

通知書をもとに夫婦で話し合う

通知書を手に入れた後、夫婦で、年金分割をするかどうか、どのくらいの割合で分割するかを話し合います。 合意できたら、年金分割をすることに合意したという文言や、分割の割合、自分と配偶者の氏名、基礎年金番号、生年月日などを記載した合意書を作ります。合意書は、離婚後、年金分割の手続きをするときに必要です。 合意書は、離婚協議書の一部としてまとめ、公正証書の形で残すとよいでしょう。 書式は、公証役場のホームページなどで公開されています。たとえば、京橋の公証役場では、このような書式を公開しています。

年金分割をしないとどうなる?

年金分割は、必ずするべきなのでしょうか。手続きをしなかった場合、損をするなどのデメリットはあるのでしょうか。

離婚時の年金分割請求について

相談者の疑問 共働きで収入に差がない場合、夫に対して年金分割請求をするのは無意味でしょうか。夫は共済年金、私は厚生年金です。収入自体は夫の方が少し上です。婚姻期間は1年未満、現在離婚調停中です。

須山 幸一郎の写真 弁護士の回答須山 幸一郎弁護士 収入に差が無くて、婚姻期間が1年未満ということであれば、年金分割請求を行うことは無意味とまでは言えませんが、実際に受け取れる額がどれほど変わるのかというと、ほとんど変わらないかもしれません。

ですが、夫の方が収入が上なのであれば、手続きをしておくだけしておかれても良いと思います。

自分と配偶者の収入にあまり差がなかったり、結婚していた期間が短かったりする場合は、年金分割をしても、将来受け取れる年金額があまり変わらない場合もあるようです。このような場合、年金分割をしなかったとしても、大きな損やデメリットを被ることは考えにくいでしょう。 年金分割をすると、自分が将来どのくらいの年金を受け取れるかを知りたい場合は、年金事務所に相談してみるとよいでしょう。 50歳以上の人は、希望すれば、「年金分割のための情報通知書」を請求する際に、「年金分割をした場合の年金見込額」に関する書類も交付してもらえます。

相手が拒否したらどうすればいい?

年金分割は、配偶者との話し合いで分割の割合を決めることができますが、当事者同士の話し合いでは解決しなかったり、配偶者に話し合いを拒否されたりする場合があるかもしれません。 話し合いで合意できない場合には、裁判所に分割の割合を判断してもらうことになります。

両親の熟年離婚の年金分割について

相談者の疑問 両親の熟年離婚についてです。父50代(公務員)母50代(パート)です。

母と父は婚姻期間27年です。母が離婚後にもらえる年金はどうなるのか心配です。

1.今年離婚した場合は年金分割は3号分割になるのでしょうか?
2.母は3号分割なので父の同意は要らないのでしょうか?

川添 圭の写真 弁護士の回答川添 圭弁護士 3号分割の対象になるのは、平成20年(2008)年4月1日以降の婚姻期間中に3号被保険者であった部分となります。

本件で、婚姻期間中の全ての年金加入記録を年金分割の対象にしたいのであれば、合意分割を選択する必要があります。

上記のとおり、婚姻期間全ての年金加入記録を対象としたいのであれば合意分割が必要ですが、合意できない場合でも、家庭裁判所へ、年金分割に係る按分割合を定める調停又は審判を申し立てれば、按分割合0.5とする合意分割ができます(家事事件手続法233条)。

なお、敢えて合意分割を選択せず(平成20年4月1日以降の3号被保険者であった期間に絞って)3号分割を請求することも可能です。この場合は、父(夫)の関与は必要ありません。

裁判所の審判では、2分の1の割合で分割するよう判断される運用になっているようです。

3号分割の場合は、配偶者との合意なく、単独で年金分割の手続きを進めることができます。離婚後、日本年金機構が運営する年金事務所へ申請すると、2分の1の割合で分割してもらうことができます。

共働きでも対象になる?

共働きで、自分も配偶者も会社員の場合は、それぞれの結婚期間中の厚生年金を分けます。配偶者の方が高収入であれば、配偶者の年金の一部を分割してもらうことになります。

一方が死亡・再婚しても支給される?

年金分割は、自分か配偶者のどちらかが死亡・再婚した場合でも支給されるのでしょうか。金額が変わることなどはあるのでしょうか。

3号分割についてお願い致します

相談者の疑問 離婚前に妻が第3号被保険者の期間があり、夫から離婚時に三号分割をしてもらった場合、3号分割後や離婚後に万が一夫が亡くなってしまった場合も、妻の受給する年金額に変わりはないでしょうか。

川崎 政宏の写真 弁護士の回答川崎 政宏弁護士 年金分割は、離婚時にそれまでの厚生年金の納付記録の一部を妻側にデータとして移すものですから、その時点で手続きは完了します。

その後に万が一のことがあっても、年金受給時の受給額に影響はありません。

年金の三号分割について

相談者の疑問 年金の三号分割を妻が夫からしてもらった場合の質問なのですが、分割をした後に、以下のような状況になった場合、それぞれ分割割合が変わってしまうのでしょうか。

①夫か妻のどちらかが再婚した場合
②夫も妻も両方再婚した場合

それとも①と②どちらの場合も分割の内容に変わりはないでしょうか。

川添 圭の写真 弁護士の回答川添 圭弁護士 年金分割は、当事者の婚姻期間中の年金加入記録(標準報酬月額など)を分割するものですので、前婚の年金分割後に当事者が再婚したとしても、既に行われた前婚の年金分割による年金の計算に影響はありません(①②いずれの場合も同様です)。

年金分割は、結婚している間の年金の納付実績を分割するものです。年金分割の手続き後に一方が再婚・死亡したり、双方が再婚したりした場合でも、支給額に影響はないようです。

まとめ

この記事では、年金分割の概要や、合意分割と3号分割の違い、合意分割をする場合に離婚前にしておきたい準備などについて解説してきました。 離婚にあたっては、年金分割をはじめ、財産分与や養育費など、配偶者との間で決めておくべき条件が多くあります。 夫婦間の話し合いで条件を決められない場合は、弁護士への相談を検討してもよいでしょう。 弁護士に相談することで、あなたが希望する条件で離婚できるよう、サポートしてもらえることが期待できます。話し合いで決着がつかず、調停などに移行した場合も、調停での対応方法などを詳しくレクチャーしてもらえるでしょう。

次はこの記事をチェックしましょう

離婚に伴う手続きについては、以下の記事で詳しく解説しています。

子供がいる場合におこなう手続きについては、以下の記事で詳しく解説しています。

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