年金分割

弁護士監修記事 2018年10月02日

離婚した後に年金分割を元配偶者に請求する方法

離婚するときに年金分割について決めなかった場合でも、離婚後に、元配偶者に対して年金分割を求めることができます。 この記事では、年金分割の概要や、元配偶者との話合いで合意できない場合の対処法などを詳しく解説します。

目次

  1. 離婚後でも元配偶者に年金分割を請求できる
    1. そもそも年金分割とは
  2. 年金分割を求める手続き
    1. そもそも合意が不要なケース
    2. 調停の申立て方と必要書類
    3. 「年金分割のための情報通知書」を手に入れる方法
    4. 元配偶者に離婚後の住所などを知られたくない場合
    5. 調停で行われること
  3. 調停・審判の後の手続き

離婚後でも元配偶者に年金分割を請求できる

alt 年金分割については、離婚をするときに決めることが一般的です。 しかし、離婚をするときに年金分割について決めなかった場合でも、離婚後に、元配偶者に年金分割を求めることができます。 ただし、年金分割を請求できるのは、離婚が成立した日の翌日から数えて2年なので注意が必要です。

そもそも年金分割とは

そもそも、年金分割とはどのような仕組みなのか、簡単に確認しておきましょう。 年金分割とは、配偶者が支払っている厚生年金保険料の納付記録を分けてもらい、将来受け取れるはずの年金額に反映させることができるという仕組みです。 配偶者の納付記録を分割して受け取ることによって、厚生年金保険料を直接は納めていなかった他方の配偶者も、納付した部分を反映した年金額を将来受け取ることができます。 年金分割では、結婚していた間の、厚生年金保険料を納めてきた実績(記録)を、元配偶者と一定の割合で分け合うことになります。 簡単に言えば、元配偶者が支払った婚姻期間中の厚生年金保険料を、最大で半分まで「あなたが支払った」と扱って、あなたが将来受け取る年金額を計算するという仕組みです。

国民年金は年金分割の対象になりません。また、配偶者が自営業で、厚生年金に加入したことがない場合には、年金分割はできません。

年金分割を求める手続き

alt 年金分割は、元配偶者との話合いで分割の割合を決めることができますが、当事者同士だけで話し合うことが難しい、あるいは抵抗があるという方もいるでしょう。 そうした場合は、弁護士などの専門家が間に入って話合いをサポートしてくれる「年金分割請求調停」という手続きを利用することを検討してもよいでしょう。

そもそも合意が不要なケース

共働きだったり、専業主婦でも2008年4月1日以前から婚姻関係が続いていた場合は、話合いや調停・審判で年金分割について決める必要があります。 一方、婚姻期間が2008年4月1日以降で、専業主婦など元配偶者の扶養に入っていた場合は、元配偶者との合意なく、単独で年金分割の手続きを進めることができます(3号分割)。 元配偶者との話合いや、調停・審判を行う必要はありません。

3号分割の手続きは、この記事の下の「次に読みたい記事」で詳しく説明しています。

調停の申立て方と必要書類

年金分割請求調停は、原則として元配偶者の住所地を管轄(担当)する家庭裁判所に申し立てます。 管轄裁判所はこちらから確認できます。

たとえば、自分は東京に住んでいるけれど、元配偶者は福岡に住んでいるという場合は、原則として、福岡の家庭裁判所に申立てを行う必要があります。ただし、双方が東京で調停をすることに合意できれば、東京の家庭裁判所に申立てを行うこともできます。

調停の申立てには、以下のような書類が必要です。

これらの書類以外にも、ケースに応じて、別の書類が必要になる場合もあります。 また、申立ての費用として、収入印紙1200円分と連絡用の郵便切手(申立てをする裁判所によって金額が異なります)が必要です。

「年金分割のための情報通知書」を手に入れる方法

申立てに必要な、「年金分割のための情報通知書」はあなた自身が日本年金機構に対して請求する必要があります。通知書は請求した人にのみ交付されるので、請求したことを元配偶者に知られる心配はありません。 この書類を手に入れると、元配偶者の「標準報酬総額」がわかります。標準報酬総額とは、婚姻期間中の配偶者の給与と賞与の合計額です。 厚生年金保険料は、報酬額がいくらかによって変わるので、標準報酬総額を知ることで、配偶者がこれまでいくら厚生年金保険料を納めたかがわかります。 通知書を請求するときには、以下の資料を用意します。請求後、2〜3週間で取り寄せることができます。

  • 「年金分割のための情報提供請求書」(年金事務所か、年金機構のホームページから入手できます)
  • 請求する人の年金番号がわかる資料(年金手帳か基礎年金番号通知書のどちらか一方)
  • 戸籍謄本

50歳以上の人は、希望すれば、通知書とともに「年金分割をした場合の年金見込額」に関する書類も交付してもらうことができます。年金分割をした場合に将来どのくらいの年金を受け取れるかがわかります。

元配偶者に離婚後の住所などを知られたくない場合

提出書類には、申立書や連絡先等の届出書など、あなたの現在の住所や連絡先が書かれた書類があります。 申立書は元配偶者に送付される運用になっています。連絡先等の届出書は、元配偶者が申請することによって、閲覧やコピーされるおそれがあります。 そのため、元配偶者に離婚後の連絡先や住所を知られたくない場合には、「非開示の希望に関する申出書」(裁判所のホームページからダウンロード可能)に非開示を希望する理由などの必要事項を記入して、開示されたくない書類の上にホチキスで止めて提出する必要があります。 申立書と連絡先等の届出書以外の書類で、元配偶者に知られたくない住所などが書かれている場合(源泉徴収票に書かれた住所など)は、その部分を黒塗りしてコピーをとり、コピーの方に「非開示の希望に関する申出書」を付けて裁判所に提出します。 元配偶者からの申請を許可するかどうかは、個別に裁判官が判断するので、「非開示の希望に関する申出書」を提出したとしても、閲覧・コピーが認められてしまう可能性は否定できません。 しかし、「連絡先等の届出書」に関していえば、原則として、開示することはしない取扱いになっています。 一度届け出た連絡先などに変更があった場合、この「連絡先等の届出書」の変更届欄にチェックを入れたうえで、必要事項を記入し、改めて裁判所に提出する必要があります。 その際、変更した連絡先を配偶者に知られたくない場合には、「非開示の希望に関する申出書」も一緒に提出することを忘れないようにしましょう。

「非開示の希望に関する申出書」が付けられていない書類は、非開示を希望していないものとして取り扱われます。元配偶者に住所や連絡先を知られたくない場合は、必ず申出書を付けて提出しましょう。

調停で行われること

調停は平日に行われ、1回あたりの所要時間は2時間ほどです。 あなたと元配偶者は別々の待合室で待機し、交互に(例外的に同時となる場合もあります)調停室という部屋に入り、調停委員と話をします。 ただし、調停が行われる日の開始時と、終了時の最終確認は、特別な事情がない限り、あなたと元配偶者が同時に調停室に入って説明を聞くことが原則的な運用です。 元配偶者と顔を合わせたくない場合は「進行に関する照会回答書」に事情(たとえば、元配偶者からの暴力が予想されるなど)を書いておくと、考慮してもらえることがあります。 調停では、調停委員が、あなたと元配偶者それぞれから事情を聞き取ります。聞取りが一通り終わると、事情を踏まえて、調停委員から、解決策やアドバイスが提示されます。 調停での話合いがまとまらず不成立となった場合には、自動的に審判に移り、裁判官が一切の事情を考慮して判断を下します。

調停・審判の後の手続き

alt 調停や審判で解決した場合でも、自動的に年金分割の手続きが行われるわけではありません。年金事務所で手続きをする必要があります。 調停で解決すると「調停調書」、審判で解決すると「審判書」という文書が家庭裁判所で作成されます。 これらの書類は、年金事務所で年金分割の手続きをするときに必要です。大切に保管しておきましょう。

合意分割の手続き方法は、この記事の下の「次に読みたい記事」で詳しく説明しています。

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