離婚裁判とは?離婚裁判までの流れ
離婚裁判とは、調停で離婚の合意ができずに不成立となった場合に、夫婦の一方が離婚を求めて裁判所に訴えを提起し、裁判官に離婚するかどうかや離婚の条件などを判断してもらう手続きです。 厚生労働省のデータによると、2020年の離婚総数193,253件のうち、裁判まで至ったケースは4287件で、全体の2.2%です。なお、協議離婚は170,603件で全体の88.3%、調停離婚は16,134件で8.3%となっています(厚生労働省人口動態調査2020年)。 いきなり裁判を起こすことは、原則としてできません。まずは家庭裁判所で調停を行い、話し合いによる解決を試みる必要があります。 裁判では必ず判決や和解の形で結論が出ます。ただし、納得がいかない判決が出たとしても、裁判官の判断に従わなければなりません。判決に納得できない場合は、控訴・上告し、更に判断を求めることになります。 裁判で強制的に離婚を認めてもらうためには、法律で定められた離婚理由(法定離婚事由)が必要です。不倫やDVは法定離婚事由にあたる可能性があります。また、別居期間が長期にわたる場合にも、法定離婚事由があると認められる場合があります。 離婚裁判では、離婚を求める側が「こうした事情が離婚事由にあたる」と主張し、主張を裏付ける証拠を示す必要があります。 その結果、裁判所が「この夫婦には法定離婚事由がある」と判断した場合に、離婚が認められます。
離婚裁判の流れ
離婚裁判は以下のような流れで進んでいきます。
①訴状提出
裁判を起こすためには、まず裁判所に「訴状」を提出します。訴状とは、簡単に言えば裁判を起こす人が自分の言い分をまとめた文書のことです。 訴状の書式は、裁判所のホームページからダウンロードすることができます。 離婚調停と離婚裁判は別の手続きなので、調停での記録は裁判に引き継がれません。そのため、離婚調停において調停委員に説明したことを、離婚裁判において、改めて主張・立証しなければなりません。また、離婚調停は話し合いの場なので、主張が必ずしも法律に沿う必要はありませんが、離婚裁判では法律に沿った主張をする必要があります。 訴状の提出先は、夫婦どちらかの住所地を管轄する家庭裁判所です。調停を行った家庭裁判所を指定できる場合もあります。 訴状を提出するときに、以下の書類とそれぞれのコピーを一緒に出します。
- 離婚調停不成立調書
- 夫婦の戸籍謄本
- 証拠書類(不倫の現場写真、DVによる負傷に関する診断書など)
- 年金分割を併せて求める場合には、年金分割のための情報通知書
②期日呼出状の送付
訴状を提出すると、数週間後に、離婚の裁判を起こした人(原告)に対し、裁判所から、「第1回口頭弁論」の日程調整の連絡があります(第1回口頭弁論期日は提訴して1~2か月後)。 その後、裁判の相手(被告)に対し、家庭裁判所から、訴状と期日の日時を知らせる通知(期日呼出状)が送付されます。この時点では、被告の都合が聞かれることは原則としてありません。第1回口頭弁論期日では、被告が欠席することもあります。
③答弁書の提出
被告は、第1回口頭弁論期日の前に、「訴状の内容を認めるかどうか」「認めない場合、それはなぜか」を書いた書面(答弁書)を家庭裁判所と原告に送ります。
④第1回口頭弁論期日
第1回口頭弁論期日では、裁判官が、訴状と答弁書に書かれたことについての原告と被告の主張を確認し、争いになっていること(不倫があったかどうか、親権をどちらにするか、養育費の金額など)を整理します。 その後、第2回口頭弁論以降で、原告と被告それぞれが、裁判官の前で、自分の主張を裏付ける証拠を提出します。 争いとなっていることについて、裁判官が、原告と被告それぞれの証拠をもとに、どちらの主張が正しいかを検証し、明らかにします。
⑤弁論準備手続き
第1回の期日以降は、公開の法廷ではなく、準備室と呼ばれる小さな会議室で「弁論準備」という手続きで審理が進むことがあります。 準備室では、裁判官と原告被告が、裁判の争点や、今後の裁判の進め方について話し合います。この手続では、訴状や答弁書の内容を補充するするために、自分たちの言い分を追加して書面で提出することができます。これを準備書面といいます。また、証拠も追加で提出できます。
⑥和解勧告
口頭弁論や弁論準備期日で裁判を進めていく中で、裁判官から和解を提案されることがあります。 原告と被告が和解を受け入れ、離婚の各条件に合意すると、和解が成立します。その後、和解調書が作成され、10日以内に離婚届を提出すれば離婚が成立します。 和解調書には判決と同じ効力があり、養育費や慰謝料の取り決めをしたのに支払われないときには強制執行(財産を差し押さえて支払いに充てること)が可能となります。 裁判官から和解を提案されても、和解内容に納得できなければ応じる必要はありません。 しかし、このまま裁判を続けても先が見えない場合や不利な判決が予想される場合、長期化することを避けたい場合など、和解に応じた方がよいケースもあります。 和解の申入れは、裁判が続いている間であればいつでも可能です。
⑦本人尋問・証人尋問
2回目以降の期日でも、原告と被告それぞれが主張・証拠を出し合い、原告が主張する事実があったか、被告の反論が正しいかなどが審理されます。 配偶者の不倫が問題となっているような裁判では、不倫相手の証人尋問をすることなどもあります。 双方の主張と証拠が尽きると、「本人尋問」が行われます。これは、原告と被告それぞれが、自分側の弁護士と相手側の弁護士、そして裁判官からの質問に答えることです。 本人尋問は、原告と被告それぞれが提出した「陳述書」の内容が事実かどうかを答えていく形で進められます。陳述書とは、争点に関する言い分をまとめたもので、これまでの結婚生活や離婚までの経緯などを説明する文書です。 証人尋問や本人尋問が行われる場合、これまでの準備書面の内容に尋問の内容を加えた「最終準備書面」をお互いに提出することになります。
⑧判決
和解が成立しない場合、ひととおりの審理が行われた後、裁判官が、原告が主張する離婚原因が存在するかを判断し、離婚を認めるか否か(慰謝料や親権、養育費等も求めた場合には、それらの事項も)の判決を下します。
⑨控訴
判決の内容に納得がいかない場合には、控訴をして、納得できない点について、さらに裁判所の判断を求めることができます。 控訴できる期間は、判決文が送達された日(実際に受け取った日ではない点に注意)翌日から14日以内です。控訴状は、一審を担当した家庭裁判所に提出します。 控訴しないまま控訴できる期間が経過した場合には、判決が確定します(離婚を認める内容の判決だった場合は、離婚が成立します)。その後、10日以内に「判決書謄本」と「確定証明書」を離婚届と一緒に役所に提出します。
離婚裁判はどのくらいの期間がかかる?
裁判離婚が決着するまでには、どのくらいの期間がかかるのでしょうか。 裁判所の統計(2020年1月~12月)によると、離婚訴訟の平均審理期間は14.2か月でした。このうち、当事者双方が出席し、判決まで至った事件の平均審理期間は19.1か月でした。 こうしたデータからすると、離婚裁判に臨むにあたっては、少なくとも1年以上の時間がかかることを見込んでおいたほうがよさそうです。 裁判を長引かせないためにできることはあるのでしょうか。「みんなの法律相談」で弁護士が回答したQ&Aを紹介します。
相談者の質問
離婚裁判を早期に終わらせるにはどうすれば良いでしょうか?長引かせないためにどのような方法がありますか?
弁護士の回答新保 英毅弁護士
審理が長期化するかどうかは、当事者間で言い分に対立がある争点の内容によるでしょう。
長引かせないためには、どうしても譲れない部分以外の些末な争点に関しては、積極的には争わず、審理の対象を絞っていくという方法はあります。
ただし、具体的内容次第ですので、訴訟記録をもって、法律相談を受けた方がいいでしょう。
離婚裁判で負ける理由は?敗訴したらどうなる?
離婚できる/できないケースとは?
離婚裁判で離婚を認めてもらうためには、法律で定められた離婚理由(法定離婚事由)が必要です。法定離婚事由があると判断されれば、離婚が認められます。反対に、法定離婚事由がないと判断されれば、離婚ができないということになります。 法定離婚事由は、次の5つです。
- 不貞行為(浮気・不倫)
- 悪意の遺棄(生活費を渡さない、理由なく同居しないなど)
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
「その他婚姻を継続し難い重大な事由」には、性格の不一致による長期間の別居や、DV・虐待、セックスレスなどがあります。ただし、これらの事情があれば必ず離婚が認められるわけではありません。様々な事情を総合的に考慮して、「夫婦関係が破綻しており、回復の見込みがない」と判断された場合に、離婚が認められます。
これらの事情があったとしても、離婚を求めた人自身が不倫をしていたケースなど、離婚の原因をつくった人(有責配偶者)が離婚を求めた場合、裁判所は離婚を認めない可能性があります。
敗訴したらどうなる?
離婚が認められた場合でも、認められなかった場合でも、控訴期間内に控訴がなされずに判決が確定した場合には、同じ理由で離婚裁判をもう一度起こすことはできなくなります。 もし、離婚したい側が敗訴して離婚できない場合、まず検討することは控訴期間内に控訴することです。控訴をせずに判決が確定したあとに、離婚裁判をもう一度やりたい場合には、違う理由で離婚を請求するか、最初の離婚裁判のときにはなかった新たな事情(別居期間が長くなったことなど)を主張するのでなければ、裁判自体が認められません。 敗訴した場合には、原則として成功報酬金は発生しません。
成功報酬金については、何を「成功」と捉えるかによって、一部敗訴したような場合でも支払いが発生する場合もあります。弁護士の契約内容をよく確認し、不明点は弁護士に確認しましょう。
離婚裁判は秘密にできる?傍聴されるの?
離婚裁判をしていることを知られたくない、第三者に見られたくないと考える人もいるでしょう。一般的に裁判は傍聴できますが、離婚裁判も傍聴できるのでしょうか。 「みんなの法律相談」で弁護士が回答したQ&Aを紹介します。
相談者の疑問
離婚裁判について、一般の第三者は傍聴できるのでしょうか?
弁護士の回答川添 圭弁護士
離婚訴訟も民事訴訟の一つであり、口頭弁論期日(尋問期日を含む)は傍聴が可能です。
ただ、民事訴訟は、初回期日と尋問期日は口頭弁論期日で開催しますが、それ以外は争点整理手続(弁論準備手続や書面による準備手続)へ移行することが多く、それらの期日については、第三者の傍聴はできません。
証人尋問・本人尋問や判決は公開の法廷で行われるので、第三者が傍聴する可能性があります。
服装は? 離婚裁判の心構えまとめ
離婚裁判では、本人尋問などの手続きで発言を求められる場面もあります。どのような心構えで臨めばよいのでしょうか。 「みんなの法律相談」で弁護士が回答したQ&Aを紹介します。
相談者の疑問
こんにちは。明日、初めての離婚裁判で、初めての本人尋問があるので、今からドキドキしていて不安です。裁判をしたことがないので、どんな流れになるのか全く分かりません。服装や裁判の流れや、注意点、裁判官の心証を良くする方法など、教えてください。よろしくお願い致します。
弁護士の回答松原 脩雄弁護士
1. 尋問は主尋問、反対尋問、再主尋問、・・・と繰り返されます。
2. 主尋問は、あなたの弁護士さんが最初にします。離婚では証人が少なく本人尋問がほとんどですから本人尋問は重要で、当然弁護士さんと綿密な打ち合わせができているはずですからそれに従います。
3. 尋問では、既に提出している陳述書に沿って発言し、矛盾しないことが大切です。
4. そのあと相手方またはその弁護士が反対尋問をします。反対尋問は貴方に対して意地悪な質問が来るものです。貴方は、落ち着いて、主尋問や陳述書と矛盾しない発言をするべきです。
5. 反対尋問が終われば反対尋問で貴方のまずい発言があれば貴方の弁護士が修正するために再主尋問が行われます。
6. その後は再反対尋問が相手方によりなされ大概これで当事者尋問は終わります。
7. 最後に裁判官が尋問することが多いものです。
8. 服装は清潔であればカジュアルなもので結構です。
9. 裁判官には貴方が誠実に事実を語っていると思ってもらえば合格です。
まとめ
ここまで解説してきたように、離婚裁判の手続きは煩雑で多岐に渡り、法律の専門知識も必要です。決着がつくまでに2年近くかかるケースもあります。 「自分だけで裁判に臨むのは不安だ」「できるだけ希望に沿った条件で離婚したい」といった思いがある場合は、弁護士への相談を検討することをおすすめします。 自分の求める条件で離婚を認めてもらうためには、適切な主張と証拠が必要です。一般の人が独力で法的な主張を組み立て、その主張を認めてもらうための証拠を集めることは容易ではありません。 専門家である弁護士に依頼すれば、適切な主張を構成してくれることが期待でき、有効な証拠を収集するためのアドバイスも受けられるでしょう。裁判のために必要な書類の作成も弁護士に任せることができます。
次はこの記事をチェックしましょう
記事中で触れた、法律で定められた離婚理由(法定離婚事由)については、以下で詳しく解説しています。
