離婚協議書サンプルのフォーマット・テンプレート
以下のリンクから離婚協議書のサンプルのフォーマット/テンプレートをダウンロードできます。
このフォーマット/テンプレートは、離婚協議書に関する情報提供を目的としたものであり、内容について保証をするものではありません。離婚協議書を作成する際は、弁護士に相談することをおすすめします。
離婚協議書を自作できるのか
離婚協議書に決められた書式はありません。弁護士などの専門家に依頼する必要はなく、自分で作ることができます。用紙のサイズは自由です。書き方は、箇条書きでもかまいません。 パソコンで作成して印刷することも可能です。手書きで作成することも可能です。 離婚届のように決められた形式はなく、用紙のフォーマットは自由ですが、どこでもらえるというわけではないので、文具店などで購入して作成しましょう。 書く内容や表現にも決まりはありませんが、あいまいな表現だと、後日協議書の内容をめぐってトラブルに発展する恐れがあります。
相談者の疑問
離婚協議書を自作しようと思い、ネットで調べたところ、甲や乙などの文言が出てきて、難しいと感じました。
もっと簡単な文章ではダメなのでしょうか?
弁護士の回答池田 毅弁護士
甲や乙は、慣用的な用語にすぎません。山田太郎と山田花子との合意という場合に、何度も同じ名前が出てくることになるので、簡単に言い換えただけです。
甲や乙を使わずに、全部名前にしてもかまいません。協議書の効力に影響ありません。
簡単な文章というのがどのようなものかによりますが、必ずしも駄目なわけではありません。
ただ、離婚協議書は、金銭の支払いなどの約束を定めるなど、法的な効力を考えて、合意の内容を記載するのが通常です。
その場合、記載した言葉が曖昧で、いろいろな解釈の可能性があると、後日、その言葉の意味を巡って実際の約束がどのような内容だったのかという争いが生じてしまいます。もめないための合意書なのに、揉める原因をつくるような言葉を用いては、協議書の意味が薄れてしまいます。
そこで、法律用語として意味が固まっている用語をなるべく用いて、後日紛争にならないようにするということが多いです。
以下で紹介する書き方のサンプルは、法律用語を用いた文章になっています。自分で作成する際に参考にしてください。
離婚協議書の書き方サンプル
下記は、離婚協議書のサンプルです。簡単に書けるように、項目ごとの文例も掲載しました。ぜひ参考にしてください。
離婚協議書
●●●●(以下甲という)と▲▲▲▲(以下乙という)は、甲乙間の婚姻の解消に関する件(以下「本件」という。)について、以下のとおり合意する。
第1条(離婚の合意)
甲及び乙は、本日、協議離婚すること及び各自署名捺印した離婚届を乙が速やかに提出することに合意する。
第2条(親権)
甲及び乙は、甲乙間に生まれた未成年の子である長男××(平成□年□月□日生)、二男▲×(平成×年×月×日生)の親権者・監護者を乙と定めて、乙において監護養育することとする。
第3条(養育費)
1 甲は乙に対し、前記子らの養育費として、平成〇年〇月から満20歳に達する月まで、1人につき1か月●万円の支払い義務のあることを認め、毎月末日限り乙の指定する口座へ振込送金の方法により支払う。振込手数料は甲の負担とする。
2 前記子らが大学またはこれに準ずる高等教育機関(以下「大学等」という。)に進学した場合、前項の養育費の支払いは、前記子らが大学等を卒業する月まで行うものとする。
3 前記子らの高校・大学等進学、事故又は病気など特段の事由により特別な費用を要する場合は、互いに誠実に協議して分担額を決める。
4 上記養育費は、物価の変動その他の事情の変更に応じて、互いに誠実に協議したうえで増減できる。
第4条(面会交流)
1 乙は、甲が前記子らと月1回、宿泊を伴う面会交流することを認める。
2 面会交流の具体的な日時及び場所については、前記子らの福祉に配慮して、甲及び乙が協議して決める。
第5条 (慰謝料)
1 甲は、乙に対し、慰謝料として金●●●万円の支払義務があることを認め、これを○○回に分割して、令和○○年×月から令和◯▲年○月まで、毎月末日限り、乙の指定する口座へ振込送金の方法により支払う。
2 振込み手数料は甲の負担とする。
3 甲について、下記の事由が生じた場合は、乙の通知催告を要さず、甲は、当然に期限の利益を失い、乙に対して残金を直ちに支払う。
(1) 分割金の支払いを1回でも怠ったとき。
(2) 他の債務につき、強制執行、競売、執行保全処分を受け、或いは公租公課の滞納処分を受けたとき。
(3) 破産、民事再生手続開始の申立てがあったとき。
(4) 手形交換所の取引停止処分を受けたとき。
第6条 (財産分与)
1 甲は、下記不動産(以下「本件不動産」という。)に関する別紙債務目録記載の住宅ローン(以下「本件住宅ローン」という。)及び公租公課(固定資産税)について、一切の支払いを負担する。
記
① 土地の表示
所 在 東京都港区六本木●×丁目
地 番 ●番×
地 目 ×地
地 積 ▲㎡
② 建物の表示
所 在 東京都港区六本木●×丁目△番地□
家屋番号 ●番×
種 類 居宅
構 造 ●
床 面 積 ×㎡、2階▲㎡
2 甲は、本件住宅ローンを完済したときは、その完済の日以降速やかに、乙に対し、財産分与として、本件不動産を譲渡することとし、同不動産について乙のために財産分与を原因とする所有権移転登記手続を行う(本件不動産の移転費用及び登録免
許税は乙の負担とする。)。
3 甲は乙に対し、乙が本件不動産を無償で使用することを認める。
第7条(年金分割)
甲は乙に対し、甲乙の婚姻期間中における双方の年金分割の割合を0.5とすることに合意し、その年金分割に必要な手続に協力することを約束する。
第8条(精算条項)
甲と乙は、以上をもってすべて解決したものとし、今後、上記の各条項のほか、名義の如何を問わず金銭その他の請求を相互にしないことを約束する。
第9条(通知)
甲及び乙は、住所、居所、連絡先を変更したときは、遅滞なく書面により相手方にこれを通知することを約束する。
第10条(公正証書)
甲及び乙は、本件離婚協議書と同趣旨の強制執行認諾文言付公正証書を作成することに合意した。
以上のとおり合意したので、本書2通を作成し、甲乙各自が署名押印の上、各自1通ずつ保有する。
平成×年▲月×日
(甲)住所
氏名 印
(乙)住所
氏名 印
離婚協議書には、たとえば、以下のような内容を記載します。
離婚に合意した日・夫婦のどちらが離婚届を提出するか
●●●●(以下甲という)と▲▲▲▲(以下乙という)は、甲乙間の婚姻の解消に関する件(以下「本件」という。)について、以下のとおり合意する。
第1条(離婚の合意)
甲及び乙は、本日令和○○年○○月○○日、協議離婚すること及び各自署名捺印した離婚届を乙が速やかに提出することに合意する。
親権者および監護権者の指定(未成年の子がいる場合)
親権者・監護権者を合意した場合の書き方は、次のようになります。 子どもがいない場合には、親権・養育費・面会交流に関する記載は省きます。
第2条(親権)
甲及び乙は、甲乙間に生まれた未成年の子である長男××(平成□年□月□日生)、二男▲×(平成×年×月×日生)の親権者・監護者を乙と定めて、乙において監護養育することとする。
養育費の取決め
養育費を合意した場合の書き方は、次のようになります。
第3条(養育費)
1 甲は乙に対し、前記子らの養育費として、平成〇年〇月から満20歳に達する月まで、1人につき1か月●万円の支払い義務のあることを認め、毎月末日限り乙の指定する口座へ振込送金の方法により支払う。振込手数料は甲の負担とする。
2 前記子らが大学またはこれに準ずる高等教育機関(以下「大学等」という。)に進学した場合、前項の養育費の支払いは、前記子らが大学等を卒業する月まで行うものとする。
3 前記子らの高校・大学等進学、事故又は病気など特段の事由により特別な費用を要する場合は、互いに誠実に協議して分担額を決める。
4 上記養育費は、物価の変動その他の事情の変更に応じて、互いに誠実に協議したうえで増減できる。
養育費なしの場合の書き方
養育費なしの場合には、養育費に関する条項を書く必要はありません。
面会交流の取決め
面会交流を合意した場合の書き方は、次のようになります。
第4条(面会交流)
1 乙は、甲が前記子らと月1回、宿泊を伴う面会交流することを認める。
2 面会交流の具体的な日時及び場所については、前記子らの福祉に配慮して、甲及び乙が協議して決める。
慰謝料の取決め
慰謝料の合意をした場合の書き方は、次のようになります。
第5条 (慰謝料)
1 甲は、乙に対し、慰謝料として金●●●万円の支払義務があることを認め、これを○○回に分割して、令和○○年×月から令和◯▲年○月まで、毎月末日限り、乙の指定する口座へ振込送金の方法により支払う。
2 振込み手数料は甲の負担とする。
3 甲について、下記の事由が生じた場合は、乙の通知催告を要さず、甲は、当然に期限の利益を失い、乙に対して残金を直ちに支払う。
(1) 分割金の支払いを1回でも怠ったとき。
(2) 他の債務につき、強制執行、競売、執行保全処分を受け、或いは公租公課の滞納処分を受けたとき。
(3) 破産、民事再生手続開始の申立てがあったとき。
(4) 手形交換所の取引停止処分を受けたとき。
慰謝料なしの場合には、慰謝料に関する条項を書く必要はありません。
財産分与の取決め
不動産や住宅ローンの合意
財産分与で不動産や住宅ローンの合意をしたときの書き方は、次のようになります。 不動産を特定するために、登記に記載されている表示も記載します。
第6条(財産分与)
1 甲は、下記不動産(以下「本件不動産」という。)に関する別紙債務目録記載の住宅ローン(以下「本件住宅ローン」という。)及び公租公課(固定資産税)について、一切の支払いを負担する。
記
① 土地の表示
所 在 東京都港区六本木●×丁目
地 番 ●番×
地 目 ×地
地 積 ▲㎡
② 建物の表示
所 在 東京都港区六本木●×丁目△番地□
家屋番号 ●番×
種 類 居宅
構 造 ●
床 面 積 ×㎡、2階▲㎡
2 甲は、本件住宅ローンを完済したときは、その完済の日以降速やかに、乙に対し、財産分与として、本件不動産を譲渡することとし、同不動産について乙のために財産分与を原因とする所有権移転登記手続を行う(本件不動産の移転費用及び登録免
許税は乙の負担とする。)。
3 甲は乙に対し、乙が本件不動産を無償で使用することを認める。
車の合意
財産分与で車の合意をしたときの書き方は、次のようになります。
- 自動車を売却して、代金を折半する場合
第○条
自動車の売却代金から売却に要する費用を控除した残額を2分の1ずつの割合で取得する。
- 自動車をどちらか片方が取得し、評価額の半分を代償金として車を取得しない側に支払う場合
第○条
1 甲が自動車を取得することを確認する。
2 甲は、乙に対し、金○○万円を支払う。
財産分与で退職金の合意をしたときの書き方としては、次のような例が考えられます。
第○条
甲は乙に対し、本件離婚に伴う財産分与として、退職金が〇〇会社から支給されたときは金300万円を支払う。支払い期限は、支給を受けた日から10日以内とし、○○銀行○○支店の乙名義の預金口座(口座番号○○○○)に振込み送金により支払う。振込手数料は甲の負担とする。
財産分与なしの場合
財産分与なしの場合の書き方は、次のようになります。
第○条
甲と乙は、離婚に際し、互いに財産分与の請求をしないこととし、それぞれの名義の資産はその名義人に帰属することを確認する。
年金分割に合意した場合の取決め
年金分割の合意をした場合の書き方は、次のようになります。
第7条(年金分割)
甲は乙に対し、甲乙の婚姻期間中における双方の年金分割の割合を0.5とすることに合意し、その年金分割に必要な手続に協力することを約束する。
年金分割をしない場合には、年金分割に関する条項を書く必要はありません。
清算条項
清算条項には、今後の紛争の蒸し返しを予防する意味があります。 財産分与なしや、慰謝料なし、年金分割をしない場合には、個別に条項を書かなくても、清算条項があれば、お互いに財産分与を求めない、慰謝料を請求しないことなどの合意を一括して表現できます。 清算条項のサンプルは以下のようになります。
第8条(精算条項)
甲と乙は、以上をもってすべて解決したものとし、今後、上記の各条項のほか、名義の如何を問わず金銭その他の請求を相互にしないことを約束する。
通知義務(住所、連絡先、勤務先などが変わったときはすぐに連絡すること)
通知義務に関する書き方は、次のようになります。
第9条(通知)
甲及び乙は、住所、居所、連絡先を変更したときは、遅滞なく書面により相手方にこれを通知することを約束する。
公正証書作成への協力(執行認諾文言を入れる合意を記載する)
離婚協議書を公正証書にする場合の書き方は、次のようになります。
第10条(公正証書)
甲及び乙は、本件離婚協議書と同趣旨の強制執行認諾文言付公正証書を作成することに合意した。
これ以外にも夫婦で取り決めた内容があれば、細かいことでも記載しておきましょう。記載する内容に不安があるような場合は、弁護士に相談することを検討してもよいでしょう。 離婚協議書は同じものを2通作成し、最後に夫婦2人の自筆署名と押印をして、それぞれ1通ずつ保管しておくことが一般的です。
保証人・連帯保証人の取決め
保証人や連帯保証人をつける場合には、保証する債務が記載されている条項の次に、以下のような文言を記載します。保証人・連帯保証人には、最後の署名欄に署名押印をしてもらいます。
前条の甲の負うべき〇〇について、〇〇が連帯保証する。
たとえば、養育費について連隊保証人をつける場合には、次のようになります。
第3条(養育費)
1 甲は乙に対し、前記子らの養育費として、平成〇年〇月から満20歳に達する月まで、1人につき1か月●万円の支払い義務のあることを認め、毎月末日限り乙の指定する口座へ振込送金の方法により支払う。振込手数料は甲の負担とする。
2 前記子らが大学またはこれに準ずる高等教育機関(以下「大学等」という。)に進学した場合、前項の養育費の支払いは、前記子らが大学等を卒業する月まで行うものとする。
3 前記子らの高校・大学等進学、事故又は病気など特段の事由により特別な費用を要する場合は、互いに誠実に協議して分担額を決める。
4 上記養育費は、物価の変動その他の事情の変更に応じて、互いに誠実に協議したうえで増減できる。
第4条
前条の甲の負うべき〇〇について、〇〇が連帯保証する。
日付・住所・署名・押印
離婚協議書の最後に以下のように、日付・住所・署名・押印を記載します。
以上のとおり合意したので、本書2通を作成し、甲乙各自が署名押印の上、各自1通ずつ保有する。
令和○○年○○月○○日
(甲)住所
氏名 印
(乙)住所
氏名 印
住所は必須ではないので、住所を知られたくないという事情がある場合には、書かないことも可能です。 離婚協議書は、同じものを2通作成し、それぞれ1通ずつ保管しておくことが一般的です。その2通が同時に作成されたことを証明するために、割印を押します。割印の押し方は、2ページをホッチキスでとめてページの間に押す方法や、製本テープを貼って製本テープの上に押印する方法などがあります。 印鑑は認印でも構いません。実印を押して、印鑑証明を添付するケースもあります。 署名は本人が記入します。保証人や連帯保証人がいる場合には、その人にも署名押印をしてもらいます。
離婚協議書を公正証書にする手続き
離婚協議書は「公正証書」で作ることをおすすめします。 公正証書とは、取決めた合意の内容を、公証人が書面化した公的な文書です。公証人は、裁判官や検察官検事の経験者など法律の専門家がなります。 公正証書を作成するときに、「強制執行認諾文言(きょうせいしっこうにんだくもんごん)」を入れておくと、裁判所の判決がなくても、給与の差押えなどの強制執行をすることができます。
手続きの流れ
離婚協議書を公正証書にする流れは次のとおりです。
- 夫婦で離婚協議書を作成する
- 公証役場に公正証書の作成を依頼する
- 公証人が公正証書の原案を作成する
- 公証役場から公正証書の原案が送られてくる
- 公正証書の原案の内容を確認する
- 公正証書作成の日時を決める
- 公証役場で公正証書を作成する
- 離婚公正証書作成の手数料を支払う
夫婦で離婚協議書を作成する 公正証書は、公証人が、夫婦が合意した離婚条件に法的な問題がないかどうか確認して作成します。 公証人が離婚の条件を決めてくれるわけではないので、事前に離婚協議書を作っておいて、それを持っていきましょう。 離婚協議書の内容に不安がある場合には、弁護士などの専門家にチェックしてもらいましょう。 公証役場に公正証書の作成を依頼する いきなり公証役場に訪ねても、公正証書を当日作成することはできません。 まず、離婚協議書や本人確認書類などの必要書類を準備して、最寄りの公証役場に行き、公証人に「強制執行認諾文言付き離婚公正証書」の作成を依頼します。 公証役場に行けない場合は、メールやFAXで必要書類を送って依頼することも可能です。 公正証書の作成を依頼すると、公証人が離婚協議書の内容に法的な問題がないかチェックします。 公証人が公正証書の原案を作成する 離婚協議書の内容に問題がなければ、書かれている離婚条件の内容に基づいて、公証人が公正証書の原案を作成します。 公証役場から公正証書の原案が送られてくる 公証人が公正証書の原案を作成したら、公証役場からその原案がメールまたはFAXで送られてきます。 公正証書の原案の内容を確認する 原案の内容に問題がないか確認しましょう。原案は転送するなどして、離婚の相手にも確認してもらいましょう。 離婚の相手が弁護士に依頼している場合は、その弁護士に送付します。 公正証書作成の日時を決める 公正証書の原案を確認したら、公正証書を作成するための日時を調整します。 公正証書の作成には、原則として夫婦ふたりが立ち会うことが求められているので、夫婦ふたりが公証役場に行くことができる日時を調整しましょう。 相手に会いたくない場合には、弁護士などの代理人に依頼することもできます。 公証役場が空いているのは平日の9時から17時までです。公証役場に電話やメールで連絡して予約を入れましょう。 候補日がひとつだけどその時間で予約がとれないことがあるので、複数候補日を用意しておくことをおすすめします。 このタイミングで、公正証書の作成にかかる費用がいくらになるか、公証役場が計算して教えてくれます。 公証役場で公正証書を作成する 予約した日に公証役場に行くと、公正証書の本文ができています。2人で内容の読み合わせをして、内容に問題がないか最終確認をします。 最後に夫婦双方が署名押印(代理人の場合は代理人の署名押印)すると、公正証書が完成します。 公正証書は、原本と正本、謄本の合計3通が作成されます。原本は公証役場が保管します。正本は養育費などお金を受け取る側が、謄本は支払う側が保管します。 離婚公正証書作成の手数料を支払う 公正証書を作成するには手数料がかかります。手数料には、税金はかかりません。 公正証書の手数料は、原則として、公正証書の正本・謄本と引き換えに現金で支払います。
手数料を支払うだけの経済力がないことが市区町村長などの証明書により明らかな場合は、手数料の全部または一部の支払いを猶予してもらうことができます。
公正証書を作成するときに必要な書類
公正証書を作成するためには、本人確認書類などの書類が必要になります。 必要書類は、公正証書作成日に「誰が公証役場に行くのか」によって異なります。
本人が公証役場に行く場合の必要書類
本人が公証役場に行く場合は、印鑑以外の書類を事前に公証役場に持参するか、メールやFAXで送付しておきます。 具体的には、以下のような書類が必要です。
- 離婚協議書
- 本人確認書類
- 婚姻関係・親子関係を確認するための戸籍謄本または住民票
本人確認書類は、次のうちのどちらかです。
- 印鑑登録証明書(発行後3か月以内のもの)と実印
- 顔写真のある公的機関発行の身分証明書(パスポート、運転免許証、マイナンバーカード)と認印
そのほか、取決め内容によって、以下のような書類が必要になります。
- 不動産の登記簿謄本、固定資産評価証明書もしくは納税通知書(財産分与する財産に不動産が含まれている場合)
- 年金分割情報通知書・基礎年金番号のわかる年金手帳(年金分割の合意をした場合)
- 住宅ローンの契約書、返済計画書(住宅ローンに関する取決めをした場合)
- 自動車車検証、査定資料(自動車を財産分与する場合)
- 保険契約書、保険証券(学資保険や生命保険に関する取決めをする場合)
代理人に公証役場に行ってもらう場合の必要書類
代理人が公証役場に行く場合には、印鑑と委任状以外の書類を事前に公証役場に持参するか、メールまたはFAXで送付しておきます。 本人が行く場合の書類に加えて、以下のような書類が必要になります。
- 委任状(本人の実印を押したもの)
- 本人の印鑑登録証明書(発行後3か月以内のもの)
- 代理人の本人確認資料
委任状に決まった書式はありませんが、委任する内容が明確になるように記載しましょう。公正証書にする内容(公正証書原案や離婚協議書の写しなど)を委任状に記載します。 または、公正証書にする内容を記載した書面(公証役場から送付された公正証書原案あるいは離婚協議書の写し)の1番上に委任状を合わせてとじるという方法もあります。 この場合は、本人が各ページの間に実印で契印(割印)を押します。文書の内容の改ざんや差替えを防ぐためです。
公証役場によっては、ホームページに委任状の見本を掲載している場合があるので、参考にしてもよいでしょう。
代理人の本人確認書類は、次のうちのどちらかです。
- 印鑑登録証明書(発行後3か月以内のもの)と実印
- 顔写真のある公的機関発行の身分証明書(パスポート、運転免許証、マイナンバーカード)と認印
代理人が公証役場に行く場合は、公正証書に代理人が自分の名で、自筆署名と押印をします。
弁護士や公正証書作成にかかる費用は?
離婚協議書を公正証書にしたり、弁護士に作成を頼んだりする場合に、どのくらい費用がかかるのでしょうか。 まず、公正証書の作成には、次のような費用がかかります。
- 基本手数料
- 正本・謄本の作成にかかる費用
- 原本の作成にかかる費用
基本手数料
基本手数料は、離婚の相手から受け取る財産の価値の合計額に応じて法令で定められています。 離婚の相手から受け取る財産の価値(「目的の価額」といいます)は次のように計算します。
受け取る財産の種類 | 財産の価値(目的の価額) |
---|---|
慰謝料 | 支払い総額 |
財産分与 | 支払い総額 |
養育費 | 支払い総額(ただし、支払い期間が10年を 超える場合には、10年分が上限) |
年金分割 | 一律500万円 |
財産の価値(目的の価額)の合計額に応じた手数料の金額は次のとおりです。
目的の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円まで | 5000円 |
200万円まで | 7000円 |
500万円まで | 1万1000円 |
1000万円まで | 1万7000円 |
3000万円まで | 2万3000円 |
5000万円まで | 2万9000円 |
1億円まで | 4万3000円 |
1億円を超えるときは、5,000万円ごとに手数料が加算されます。3億円までは13,000円ずつ、10億円までは11,000円ずつ、10億円を超えると8,000円ずつ加算されます。
正本・謄本の作成にかかる費用
正本・謄本の作成にかかる費用は、1通の1ページあたり250円です。 たとえば、6ページで1通の正本と謄本を作成する費用は、250円×6ページ×2通=3000円となります。
原本の作成にかかる費用
公正証書の原本は公証役場に保存されます。原本1通の作成にかかる費用は、A4横書きの場合、4ページまで無料です。 たとえば、6ページで1通の原本作成するときに必要な費用は、250円×(6 ー 4ページ)=500円です。
弁護士に作成を依頼した場合の費用相場
離婚協議書は自分で作ることができますが、自作の協議書を弁護士にチェックしてもらいたいと思う人や、作成から弁護士に依頼したいと思う人もいるでしょう。 離婚協議書の内容確認や作成を弁護士に依頼する場合、費用はどのくらいかかるのでしょうか。
相談者の疑問
離婚協議書(その後公正証書にするもの)は、素人が作成したもので大丈夫なのでしょうか。また、自分なりに作成したものを弁護士に見てもらうことは可能なのでしょうか。
ネットで、素人が作る離婚協議書では、それで公正証書を作っても、大事な項目や文言が抜けていたりして効力を持たせられない可能性がある、と書かれていて不安になりました。
弁護士に作成を依頼する場合、時間、日数、費用はどれくらいかかるのか、目安を知りたいです。
弁護士の回答中間 隼人弁護士
自分で作った協議書をチェックしてもらう程度であれば通常の相談料(5000円~1万円程度)で対応しているところのほうが多いと思います。
もし公正証書作成を弁護士に依頼するのであれば、手数料で8万~10万、実費が2万~3万、期間は、1か月~2か月あれば足りるでしょう。
まとめ
離婚届を提出する前に、離婚協議書を公正証書の形で作成しておきましょう。後から約束が守られなくなった場合に、協議書で取り決めたとおりに履行するよう、法的な手続きによって相手に求めることができます。 離婚協議書は書式や書く内容に決まりがあるわけではないので、専門家に依頼せずに、自分で作ることができます。ただ、「協議書に漏れがあったらどうしよう」「そもそも、この条件で離婚していいのかわからない」といった不安を抱えている方は、弁護士への相談を検討することをおすすめします。 法律の専門家である弁護士は、離婚協議書の記載に不備がないか、離婚条件は適切か、といったあらゆる観点からアドバイスをし、あなたが不安なく離婚に踏み切れるようサポートしてくれるでしょう。
次はこの記事をチェックしましょう
離婚協議書の全体像について知りたい場合は、以下の記事を確認してください。「そもそも離婚協議書とはどのような書類なのか」「公正証書にすることでどんなメリットがあるのか」「離婚後に作成してもいいのか」といったポイントを詳しく解説しています。