離婚原因ランキング
令和元年度の司法統計「婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所」によると、離婚調停などを申し立てた動機として、申立人が選んだ理由は、以下のような内容でした(申立人の言う動機のうち、主なものを3個まで挙げる方法で調査重複集計)。
順位 | 理由 | 件数 |
---|---|---|
1位 | 性格が合わない | 27,200 |
2位 | 精神的に虐待する | 14,420 |
3位 | 生活費を渡さない | 13,647 |
4位 | 暴力を振るう | 10,535 |
5位 | 異性関係 | 9,018 |
6位 | その他 | 7,970 |
7位 | 浪費する | 6,299 |
8位 | 家族親族と折り合いが悪い | 5,012 |
9位 | 性的不調和 | 4,856 |
10位 | 家庭を捨てて省みない | 4,104 |
11位 | 不詳 | 3,513 |
12位 | 酒を飲み過ぎる | 3,162 |
13位 | 同居に応じない | 2,216 |
14位 | 病気 | 1,465 |
男女別ランキング
離婚理由を男女別に集計すると、以下のような結果になりました。
順位 | 男性 | 女性 | 件数(男性) | 件数(女性) |
---|---|---|---|---|
1位 | 性格が合わない | 性格が合わない | 9,958 | 17,242 |
2位 | その他 | 生活費を渡さない | 3,340 | 12,943 |
3位 | 精神的に虐待する | 精神的に虐待する | 3,326 | 11,094 |
4位 | 異性関係 | 暴力を振るう | 2,218 | 9,039 |
5位 | 家族親族と折り合いが悪い | 異性関係 | 2,162 | 6,800 |
6位 | 浪費する | その他 | 2,001 | 4,630 |
7位 | 性的不調和 | 浪費する | 1,963 | 4,298 |
8位 | 暴力を振るう | 家庭を捨てて省みない | 1,496 | 3,194 |
9位 | 同居に応じない | 性的不調和 | 1,468 | 2,893 |
10位 | 家庭を捨てて省みない | 性格が合わない | 910 | 2,850 |
11位 | 生活費を渡さない | 不詳 | 704 | 2,817 |
12位 | 不詳 | 酒を飲み過ぎる | 696 | 2,774 |
13位 | 病気 | 病気 | 664 | 801 |
14位 | 酒を飲み過ぎる | 同居に応じない | 388 | 748 |
1位 性格が合わない
離婚原因ランキングの1位は、「性格が合わない」でした。男性・女性ともに1位です。 性格が合わないという理由だけで離婚は可能なのでしょうか。
相談者の質問
結婚して24年、下の子が今年で20歳になりますので、離婚しようと考えています。積年の日々のイライラが、とうとう限界にきました。例えば、部屋が散らかり足の踏み場もないので私が片づけようとすると、夫に「しなくていい、するから!」と睨まれます。でも夫は結局片づけません。私が将来の夢を話していても、携帯を触り上の空で聞いてもらえません。それどころか、けなされることもあります。
離婚したいと夫に伝えました。夫は泣いて謝り、献身的になっていますが、もう全く信用できません。心は完全に離れています。
夫と同じ空間にいるだけで吐き気がします。先月から体調を崩し、血圧を抑える薬と心療内科で睡眠薬を処方してもらっています。
このような内容で離婚できるでしょうか?
弁護士の回答増井 俊泰弁護士
離婚につながるかという点を、裁判で離婚が認められるかという意味合いで捉えるとすると、必ずしも離婚となるものとまでは言えないように思います。
裁判で離婚が認められるというのは、相手が拒んでも離婚の判決となるということですが、それには民法の定める限られたケースに該当する必要があります。
今回の場合、そのうち「婚姻を継続し難い重大な事由」というものに当たるかどうかが問題となりますが、これは、客観的に見て夫婦関係が修復できないほどに破綻していることを意味します。
そして、これに当たるかどうかは、DVや長期の別居などであれば、比較的判断しやすいですが、性格やセックスレスなどの場合には、他の理由なども合わせて、これに該当するかどうかをみるため、一概に該当するとは言えず、該当しないとされることも少なくありません。
その場合、裁判での離婚を目指すよりも、調停を申し立てて、離婚を前提に条件面をすり合わせて、合意により調停離婚をすることを目指した方がいいかと思います。なお、裁判離婚が認められないケースでも、調停では、一方が復縁拒否の場合、離婚する方向で話をする様に相手に調停委員が試みてくれる場合もあります。
また、裁判離婚が認められるかどうかについて、さらに詳しく知りたいのであれば、お近くの弁護士にアドバイスを求めるのもひとつかと思います。
性格の不一致は、法定離婚事由の1つである「婚姻を継続し難い重大な事由」に当てはまる場合があります。 裁判で、配偶者との性格の不一致によって、夫婦関係が破たんして元どおりになる見込みがないことを主張し、証拠を示して事実だと証明できれば、離婚が認められます。 ただし、性格の不一致が「婚姻を継続し難い重大な事由」に当てはまるとして、裁判で離婚が認められるハードルは高いです。 単に「性格が合わなくて、一緒にいるとイライラする」「結婚前に比べて冷たくなった気がする」といった理由では足りません。 性格の不一致が「婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたらなくても、別に「不貞行為」や「悪意の遺棄」といった法定離婚事由があれば離婚が認められる可能性があります。 「性格の不一致 離婚」の法律相談を見てみる
2位 精神的に虐待する
離婚原因ランキング2位は「精神的に虐待する」でした。男女別では、男性・女性ともに3位です。 精神的な虐待とは、どのような行為でしょうか。
相談者の質問
妻に離婚調停を申し立てられました。申立書には離婚理由として精神的虐待にチェックがされています。
精神的な虐待とは、法律上どのような言動を指すのでしょうか?
弁護士の回答堀 晴美弁護士
身体的な暴力行為と同等とみなされるような暴言、発言を言います。
「精神的虐待 離婚」の法律相談を見てみる 精神的虐待の一種として、配偶者から日常的に暴言を浴びせられる、長期間無視される、といったモラルハラスメント(モラハラ)を受けていることを理由に、離婚することはできるのでしょうか。
相談者の質問
離婚裁判で精神的虐待にあたると認められるモラハラは、どの程度でしょうか?
弁護士の回答松島 達弥弁護士
実際の家庭環境に応じて変わってきます。
日常的にお互い怒鳴り散らしているような家庭であれば、多少厳しい言動でもモラハラにはなりません。
しかし、日常的に一方のみが屈服させれている家庭では、例えば、おかずへの口出しひとつがモラハラとされる場合もあります。
相談者の疑問
モラハラを証明するには何がどのくらい必要ですか?LINE、日記が1年分、怒鳴り声の録音が5件ほどあります。離婚調停で離婚をしたいのですが、できますか?
弁護士の回答石井 康晶弁護士
抽象的な回答になってしまいますが、「婚姻を継続しがたい重大な事由」に当たると判断できる程度には必要です。ライン、日記、録音、いずれも直接確認して判断してもらうほかありませんので面談の相談を勧めます。
なお、調停では証拠がなくても相手が応じればOKです。
モラハラは、法定離婚事由の1つである「婚姻を継続し難い重大な事由」に当てはまる場合があります。 裁判で、モラハラによって、夫婦関係が破たんして元どおりになる見込みがないことを主張し、証拠を示して事実だと証明できれば、離婚が認められる可能性があります。 「モラハラ 離婚」の法律相談を見てみる
3位 生活費を渡さない
離婚原因ランキング3位は「生活費を渡さない」でした。男女別は、女性が2位、男性が11位です。女性と男性で回答の数に大きな差があることが特徴的です。 生活費を渡さないことを理由に離婚できるのでしょうか。
相談者の質問
妻が、同居中の私の両親と喧嘩したことがきっかけで、家事を一切やらなくなりました。また、妻が生活費を一方的に減らして渡そうとしたため、拒否すると生活費を1円も渡さなくなりました。当初の取り決めでは、妻が生活費を両親に渡し、それで家計をやりくりし、私は同額を子どもの貯金にするという分担でした。
現在、妻が支払っているのは子どもの塾代のみです。生活費は両親が立て替えています。
このような場合、悪意の遺棄として離婚できるのか教えてください。
弁護士の回答岡村 茂樹弁護士
妻の分担約束違反は不相当です。
しかし、これによって、相談者やお子さんが経済的に破綻して生活もままならないというものではないので、悪意の遺棄は非該当です。
配偶者が生活費を支払わないことによって、他方の配偶者や子どもが経済的に破綻してしまうようなケースでは、法定離婚事由の1つである「悪意の遺棄」に当てはまるとして離婚できる可能性があります。 「悪意の遺棄」に該当するかどうかにかかわらず、配偶者が生活費を支払わない場合には、婚姻費用の支払いを請求することができます。 「生活費を渡さない 離婚」の法律相談を見てみる
4位 暴力を振るう
離婚原因ランキング4位は「暴力を振るう」でした。男女別では、女性が4位、男性が8位です。 配偶者など親密な関係にある(またはあった)者から振るわれる暴力のことを、DVといいます。
相談者の質問
自宅で電話をしながらお酒を飲んでいたら、寝ていた子供を少し踏んでしまいました。電話の途中でしたし、夫もいたので、そのまま場所を移動しようとしたら、それを見ていた夫に投げ飛ばされました。そのときは電話相手が通報してくれました。
今までも夫婦喧嘩の度に、引きずられたり投げ飛ばされたりして、こちらも引っ掻き返すことがあったのですが、第三者である電話相手にDVでは?と思われたことで、普通ではないことに気づきました。離婚も少し考え始めています。
今は子どもが4人おり、末っ子がまだ小さく、私に収入がありません。このような状況でも離婚できるのでしょうか?
弁護士の回答齋藤 裕弁護士
DVは離婚理由となりえます。
収入がなくとも相手方から養育費をもらえばいいので、親権取得の妨げとはなりません
あなたが主に監護してきたのであれば親権者となれる可能性は高いとおもいます。
「暴力 離婚」の法律相談を見てみる 女性から男性へのDVでも、離婚することはできるのでしょうか。
相談者の質問
妻からの暴力があり、離婚したいと考えています。妻にはマグカップで頭を殴られたり、ゴミ箱で頭を殴られたり、髪の毛を引っ張りながら頭を揺らされたり、ゲームのコントローラーで膝を殴られたりしています。いずれもたんこぶや打撲など、大けがには至りませんが、この程度の暴力でも離婚理由になりますか。
その他には枕に水をかけられたり、プロ野球の観戦チケットを破り捨てられたりなどの嫌がらせも行われています。
弁護士の回答岡村 茂樹弁護士
一つ一つは小さな暴力でも、これが積み重なり、繰り返されると、夫の妻に対する信頼が喪失し、恐怖感しか残らなくなるでしょう。
これでは、信頼関係に裏打ちされるべき夫婦関係の継続は困難です。夫婦関係の破綻に導いたとして、離婚事由になり得ると思います。民法770条1項5号ですね。
5位 異性関係
離婚原因ランキング5位は「異性関係」でした。男女別では、女性が5位、男性が4位です。 婚姻中の異性関係は一般的に「浮気」や「不倫」と言われますが、法律的に離婚原因となるものは「不貞行為」といいます。 では、どこからが不貞行為とされるのでしょうか。
相談者の質問
どこからが不貞行為となりますか?例えば、2人きりで食事やテーマパークに行く、手を繋ぐ、肉体関係はないような場合、不貞行為となりますか?キスはどうですか?
弁護士の回答川面 武弁護士
配偶者のある者が自由意思で、配偶者以外の異性と性交渉を持つことが不貞な行為(民法770条1項1号)です。キスなどの性交類似行為はこれに含まれません(「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)の考慮要素となります。)。
ただし、実務上、性交類似行為は男女が密室等で行う行為ですから、密会の事実に加えて、性交類似行為まで行われた事実が証明された場合、性交渉は存在しなかったという弁解は通用しないのが現実です。
> 例えば、2人きりで食事やテーマパークに行く、手を繋ぐ、肉体関係はないような場合、不貞行為となりますか?
不貞行為ではありませんが、過度に及べば、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)となりえます。
「不貞行為 離婚」の法律相談を見てみる 不貞行為により離婚する場合、慰謝料はいくらくらいでしょうか。
相談者の質問
妻の不貞行為により離婚しようと考えています。不貞行為の証拠写真はあります。妻が専業主婦のため収入が期待できないのですが、慰謝料を請求できますか。相場はいくらくらいでしょうか。
弁護士の回答岡村 茂樹弁護士
相手の収入の有無は、慰謝料回収可能性の問題です。不貞があれば離婚慰謝料として請求できます。
不貞が原因で離婚の場合、200万円から300万円が認容でしょう。
7位 浪費する
離婚原因ランキング7位は「浪費する」でした。男女別では、男性が6位、女性が7位です。 どの程度の浪費であれば離婚が認められるのでしょうか。
相談者の質問
妻の浪費を理由に離婚したいと考えています。年収は私が700万円、妻が400万円です。15年の結婚生活で、妻は宝飾品や鞄、服などに総額2400万円の浪費をしていました。
クレジットカードの明細から判明しました。妻の浪費のせいで、今も住宅ローンが1500万円弱残っており、貯蓄は1000万円もあるかないかです。この浪費は裁判でも浪費と認められますか?
弁護士の回答中間 隼人弁護士
ご質問にある事情は、裁判において、浪費という評価はされるでしょう。しかし、これだけをもって離婚事由、すなわち「婚姻を継続し難い重大な事由」と認定されるかどうかは、何とも申し上げられません。
同居生活中の夫婦関係、コミュニケーションの取り方、裁判時における別居期間、協議の状況など総合的な判断になるでしょう。
8位 家族親族と折り合いが悪い
離婚原因ランキング8位は「家族親族と折り合いが悪い」でした。男女別では、男性が5位、女性が10位です。 家族親族との折り合いが悪いことを理由に離婚することはできるのでしょうか。
相談者の質問
夫から「家族との折り合いが悪い」「性格の不一致」「同居に応じない」という理由で離婚調停を申し立てられ、第1回目が終了しました。
私は義両親との同居で義母との折り合いが悪く、2か月の同居でストレスを感じ、別居しました。別居してから1年4か月になります。同居中は妊娠中でもありました。別居当初は夫婦関係は良好でした。夫と義両親が住んでいる家の隣に祖父母の家があり、結婚したら義両親が隣に行くと言われていました。しかし、義両親は結局行かず、同居が結婚の条件だと話したはずだと言われました。
夫は義両親と住んでいる家の住宅ローンがあり、長男なので家を出られない、義両親が私の事を受け入れないと言っているので、離婚しかないと言っています。
私は夫と賃貸で一緒に暮らしたいです。1歳の子供もいるので離婚はしたくないです。夫のこのような動機で離婚は認められてしまうのでしょうか?
弁護士の回答齋藤 裕弁護士
別居が長期化すればともかく、現時点で離婚理由はないと考えます。
9位 性的不調和
離婚原因ランキング9位は「性的不調和」でした。男女別では、男性が7位、女性が9位です。 性的不調和の中でも、配偶者からセックスを拒否されていること(セックスレス)を理由に、離婚することはできるのでしょうか。
相談者の疑問
結婚して18年目です。子どもが生まれてから長年セックスレスとなり、このままセックスレスが続くならば離婚を考えると言って妻を説得しました。妻は2か月に1回を主張し、不本意ながら承諾しましたが、やはり納得できません。この件に関して夫婦で話そうとすると、妻は拒否する理由も言わず、話合いすら拒否します。
セックスレスを理由に離婚できますか?また、慰謝料は請求できるのでしょうか?
弁護士の回答中間 隼人弁護士
セックスレスが離婚原因になり得るには、セックスレスが婚姻を継続し難い重大な事由といえるほど、つまり、夫婦関係を破たんさせる程度に至っていると、裁判所に判断してもらう必要があります。慰謝料が認められる程度も同等です。
具体的には2か月に1回は行為があるという程度では離婚原因とまでは言えず慰謝料も認められにくいのが現実です。
一般的にはセックスを拒否される特段の理由もないのに、1年以上セックスレスが続いているような場合には、離婚請求が認められ、慰謝料も認められることがあります。
特別な理由もないのに、長期間にわたってセックスを拒否されていることは、法定離婚事由の1つである「婚姻を継続し難い重大な事由」に当てはまる場合があります。 裁判で、セックスレスによって、夫婦関係が破たんして元どおりになる見込みがないことを主張し、証拠を示して事実だと証明できれば、離婚が認められる可能性があります。 「セックスレス 離婚」の法律相談を見てみる
10位 家庭を捨てて省みない
離婚原因ランキング10位は「家庭を捨てて省みない」でした。男女別では、男性が10位、女性が8位です。 家庭を捨てて省みないことを理由に離婚することはできるのでしょうか。
相談者の質問
もともと気取らないところがよかった夫でしたが、私が妊娠した頃に、父親を継いで地元の中規模製造業の社長になりました。その頃から私に対してマウンティングが顕著になりました。
初めての育児で翻弄されている私をよそめに夫は付き合いで毎日のように午前様。数年間、息子だけを見て頑張ってきましたが、最近夫は地元の商工会に入り、付き合いと言って飲みに出かけ、また深夜帰りが多くなりました。
苦言を呈すると、頭ごなしにどなりつけ、ついには「お前のことなんてどうでもいいわ!」と言われました。夫婦喧嘩とはいえ、さずがに言ってはいけない言葉だと思い、私は傷ついてむなしくなりました。
ちょうど子どもの習い事のためにGPSを購入したので、試しに夫の鞄にいれてみたら、次のことがわかりました。
・仕事の付き合いだと言って毎回午前様だけど、結局一次会の後友達の飲み屋に入り浸っている。
・ラブホテルへの出入りが数回あり。
・会社帰りに何度となくパチンコへ。
・子どものために週末一緒に過ごそうと声をかけると「今日会社稼働日だから」と言って出かけ、パチンコに1日中入り浸っている。
このような状況で夫と離婚できますか?
弁護士の回答原田 和幸弁護士
数回ラブホテルの出入りとありますので、不貞を理由に離婚慰謝料の請求は考えられると思います。
12位 酒を飲み過ぎる
離婚原因ランキング12位は「酒を飲みすぎる」でした。男女別は、男性が14位(最下位)、女性が12位です。 配偶者が酒を飲みすぎることを理由に離婚できるのでしょうか。
相談者の質問
夫はアルコール中毒だと自分では認めませんが、酒を飲みすぎて、家族に暴言を吐いたり物を壊したりするなどの問題行動が多くなり、私も子どももストレスを感じて体調が悪化しています。昨年は、近所の人の車を蹴った後に暴言を吐き、「離婚する」「出て行け」などと叫ぶ事件がありました。相手方とは示談で済ませました。
その事件のすぐ後に、夫の単身赴任が決まり、残された私と子どもは穏やかに過ごしていました。しかし、数か月ぶりに帰宅した夫は、早期退職を考えており、自宅に戻って新たに職を探すことになるかもしれないと話し、昨年の事件や、酔っていたときの暴言や問題行動をすっかり忘れてしまっているようでした。
私たちはこれから元の生活になると思うと不安で仕方ありません。もし夫が早期退職してこちらに戻ってくるなら、離婚したいです。このような夫と離婚できますか?
弁護士の回答村上 誠弁護士
ご主人が早期退職して戻ってきた場合には、あなた達に危害が加えられたり、暴言を浴びせられる恐れがあり、ご主人と同居できないということであれば、別居は可能でしょうし、別居後もご主人の生活態度が変わらないというのであれば、別居後に離婚や慰謝料を求めたり、それに応じてもらえなければ、離婚や慰謝料請求のための調停を申立てたり、訴訟を提起することもできるでしょう。
13位 同居に応じない
離婚原因ランキング13位は「同居に応じない」でした。男女別では、男性が9位、女性が14位(最下位)です。このアンケートの回答は全体的に女性の数が多いのですが、「同居に応じない」は唯一、男性の回答が女性を上回る結果となりました。 配偶者が同居に応じないこと理由に離婚することはできるのでしょうか。
相談者の質問
半年前に入籍しましたが、相手の事情でなかなか同居してもらえず、入籍後3か月目にようやく同居を始めました。しかし、金銭管理について話しが合わず、肉体関係にも応じてもらえず、1週間少しで相手が実家に戻ってしまいました。以来別居状態です。
将来が考えられないため、早期の離婚を希望しています。相手は離婚に応じてくれません。
このケースで離婚は可能でしょうか?
弁護士の回答岡村 茂樹弁護士
確かに婚姻届は出していますが、夫婦としての実態に不足ですね。しかし、法律上の夫婦である以上、相手が同意しないと直ちに離婚は困難です。
調停を提起して不調となり、訴訟を提起しても同様でしょう。婚姻期間からして長期間にはならないでしょうが、別居の積み上げが必要と思います。
親との同居に応じてもらえない場合はどうでしょうか。
相談者の質問
夫に、義実家と敷地内同居をしないと離婚すると言われています。結婚前に断わったのですが、妊娠中にやはり実家に帰りたいと言われました。かなり田舎のため、躊躇しています。小学校まで4km、最寄駅まで車で40分弱です。現在はその最寄駅近くのアパートに住んでいます。
離婚を拒否すれば、離婚を回避できますか?
弁護士の回答緒方 直人弁護士
協議離婚は当事者だけでの合意が成立した場合ですし、調停離婚も家庭裁判所の離婚調停で当事者が合意した場合の離婚です。何れも合意が基礎となりますから、ご相談者が離婚を拒否すれば、離婚は成立しません。
調停婦成立後に、夫が離婚訴訟を提起しても、現時点では婚姻破綻が認定される可能性は低いように思いますので、離婚訴訟で夫の離婚請求が認容される可能性は低いと思います。
14位 病気
離婚原因ランキング14位は「病気」でした。男女別では、男性・女性ともに13位です。 病気を理由に離婚することはできるのでしょうか。
相談者の質問
妻が病気の場合、離婚は難しいですか?妻の病気は精神疾患ではなく、三大疾病です。
弁護士の回答寺田 弘晃弁護士
まず、離婚には、大きく分けて協議離婚、調停離婚、裁判離婚があります。まず、当事者の合意が形成できるのであれば、離婚届を提出する協議離婚によって離婚することができます。
当事者間で意見が合わないときは、調停委員という第三者を交えた調停という話し合いの場で、お互いの主張を調整しつつ、合意形成を目指すという手続によることになります。それでも調わない場合には、訴訟により離婚の成立を目指すことになります。
裁判離婚で離婚が認められるには、離婚事由が認められることが必要です。離婚事由とは、①不貞な行為 、②悪意の遺棄、③3年以上の生死不明、④強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと、⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があることをいいます。
本件では、奥様が疾病に罹患しているとのことですので、これが「婚姻を継続しがたい重大な事由」に当たるかが問題となります。
この点に関する判例では、植物状態、重度の身体障害や薬物などの中毒の重篤なものが想定されているように思います。
したがって、三大疾病に罹患していることが直ちに「婚姻を継続しがたい重大な事由」に当たるということはできないと思います。
奥様の病状が重篤である場合や、その他にも「婚姻を継続しがたい重大な事由」に当たるような事情があれば、離婚が認められる可能性があると思います。
そのため、まずは相手方との話し合いをして、協議離婚の成立を目指すことになります。
法的な5つの離婚理由/離婚原因とは
夫婦間で離婚について話し合い合意できれば、どのような理由でも離婚できます。配偶者と性格が合わない、価値観が違う、などの理由でも可能です。 話合いで合意できなかった場合、離婚に向けて、主に以下のようなプロセスをたどることになります。
- 裁判所に離婚調停を申し立てて、第三者を交えながら話合いを続ける
- 裁判を起こして、離婚できるかどうか裁判所に判断してもらう
離婚調停では、裁判所で「調停委員」という第三者のアドバイスを受けながら、夫婦で話し合い、お互いに納得できる着地点を探っていきます。 調停を数回行っても合意に至らず、裁判所や夫婦自身が解決の見込みがないと判断した場合は、調停は不成立となり終了します。 調停が不成立となった場合でも、「夫婦の意見にわずかなズレがあるだけで、離婚は認めた方がよい」など一定の条件に当てはまる場合、家庭裁判所の裁量により、審判で離婚が認められることになります。当事者から2週間以内に異議申立てがなければ、離婚が確定します。 審判離婚が行われないケースで、調停が不成立になっても離婚をしたいという気持ちが変わらない場合は、裁判で離婚を求めていくことになります。 相手が離婚に合意しなくても、法律で定められた5つの離婚原因(法定離婚事由)のいずれかにあてはまれば、裁判で離婚を認めてもらうことができます。 5つの法定離婚事由とは、次のようなことです。
- 不貞行為(不倫)
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
不貞行為
「不貞行為」は、結婚している人が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の人と性的関係を持つことです。 性行為を伴わなければ、一般的には不貞行為には当てはまりません 配偶者が性行為を伴う不倫をしている場合、法定離婚事由の「不貞行為」に当てはまるとして、裁判で離婚が認められる可能性があります。
性風俗を利用したことも不貞行為に当てはまる可能性があります。
悪意の遺棄
「悪意の遺棄」とは、配偶者が、結婚に伴い夫婦が負う3つの義務(同居・協力・扶助の義務)に違反する行為のことです。 たとえば、正当な理由がないのに同居しなかったり、最低限の生活費を渡さなかったりするような行為です。
- 同居義務…夫婦が一緒に住む義務
- 協力義務…夫婦が力を合わせて、生活を維持する義務
- 扶助義務…夫婦が生活費を出し合って、お互いが同じ水準の生活ができるようにする義務
配偶者が収入の大半をギャンブルなどに使い、最低限の生活費すら渡さないなどの事情がある場合、法定離婚事由の「悪意の遺棄」に当てはまるとして、裁判で離婚が認められる可能性があります。 ただし、悪意の遺棄にあたるのは、これらの義務を怠れば相手が困るとわかっているのに、「夫婦関係を破たんさせてやろう」と考えてわざと怠っているか、そこまで意識していなくても「義務を怠ることで結婚生活が破たんしてもかまわない」と考えている場合など、社会的・倫理的に非難される場合です。 悪意の遺棄を証明する証拠としては、「相手だけが引っ越したことを示す住民票」や、「別居先の住まいの賃貸借契約書」などが考えられます。
3年以上の生死不明
配偶者の失踪や家出などにより、3年以上生死が分からない状態が続いているという場合、法定離婚事由の「3年以上の生死不明」に当てはまるとして、裁判で離婚が認められる可能性があります。 行方不明であっても、居場所がわからないだけで、生きていることが推定される場合は当てはまりません。
強度の精神病
強度の精神病とは、配偶者が強度の精神病になり、回復の見込みがなく、夫婦が互いに協力扶助し合う義務を充分に果たせない場合のことです。 配偶者が統合失調症などの精神病で、夫婦として生活していけないほど症状が重く、回復が難しい場合、法定離婚事由の「強度の精神病」に当てはまるとして、裁判で離婚が認められる可能性があります。 強度の精神病として認められる可能性があるのは、総合失調症や躁うつ病などです。 アルコールや薬物などの依存症や、ノイローゼなどの神経症は当てはまらないとされています。 認知症については、強度の精神病には当てはまらないとしつつ、「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるとして離婚を認めた裁判例があります。 強度の精神病にあたるかどうかは、専門医による鑑定などに基づいて判断されます。 そのため、強度の精神病を理由とした離婚が認められることのハードルは高い傾向にあります。 離婚を簡単に認めてしまうと、病気を患っている人の離婚後の生活が危ぶまれるなどの事情があるためです。 裁判例などでは、精神病を患う配偶者の療養や生活のためにできる限りのことをして、今後の具体的な見通しがつく状態になっていなければ離婚を認めない傾向にあります。
その他婚姻を継続し難い重大な事由
「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、他の法定離婚事由には当てはまらないが、夫婦としての共同生活が破たんし、夫婦関係の修復が著しく難しい事由のことです。 たとえば次のようなケースで「婚姻を継続し難い重大な事由」に当てはまるとして、離婚が認められる可能性があります。
- 配偶者の親族との不和
- 過度な宗教活動
- 性行為の拒否・強要
- 重大な病気・障害
- 働く意欲がない・浪費
- DVを受けている
- 長期間別居している
- 逮捕・起訴され有罪判決を受けた
- ギャンブルなどの浪費のために借金を繰り返す
「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるかどうかは、ケースごとの事情を総合的に考慮して判断されます。上記のような事情があるからといって、ただちに「婚姻を継続しがたい重大な事由」に当てはまると判断されるとは限らないので、注意しましょう。
まとめ
夫婦で離婚に合意できれば、どのような理由であっても離婚することができます。 ただ、離婚するにあたって、「離婚条件が正当な内容かわからない」「離婚後に養育費などの支払いが滞ったらどうしよう」といった不安を感じることがあるかもしれません。そのような場合は、弁護士への相談を検討することをおすすめします。 法律の専門家である弁護士は、あなたが有利な条件で離婚できるよう、また、慰謝料や養育費といったお金を確保できるよう、サポートしてくれます。離婚届を書く前に、弁護士からのアドバイスを受けておくことで、不安なく離婚に踏み切ることができますし、離婚後のトラブルも防げるでしょう。 話合いで離婚できず、調停や裁判などの申立をする状態にまで至った場合も、弁護士に依頼することで、サポートを受けることができます。 法律の専門家である弁護士は、調停・裁判での対応の仕方や有効な証拠の集め方などについてアドバイスをしてくれます。あなたが希望する条件で離婚できるよう、適切な主張を構成してくれることも期待できるでしょう。
次はこの記事をチェックしましょう
話合いで離婚に合意できなければ、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、第三者をまじえて話し合うことで、解決を目指せる可能性があります。 離婚調停については、以下の記事で詳しく解説しています。