離婚したら子供の戸籍と苗字はどうなる?
離婚する場合、戸籍の筆頭者(戸籍の一番最初に記載されている人)は、結婚するときに夫婦で作った戸籍にとどまります。筆頭者ではない人は、戸籍から抜けることになります。 一方、親が離婚しても、子供の戸籍と苗字には影響がありません。子供は筆頭者と同じ戸籍に残り、苗字も変わりません。このことは、戸籍を抜けた人が親権者となっても同様です。 そのため、戸籍を抜けた人が親権者となった場合、そのままでは親権者と子供の戸籍と苗字が異なるという状態になります。 こうした場合に、子供を親権者と同じ戸籍、同じ苗字にするためには、別途変更の手続きが必要です。
戸籍を抜けた親権者と子供を同じ戸籍・苗字にするには
子供を親権者と同じ戸籍、同じ苗字にするためには、以下の図のような手続きをおこないます。
そもそも、離婚した際、筆頭者の戸籍から抜けた配偶者の戸籍と苗字に関する選択肢は次の3つです。
- 親の戸籍に戻って結婚前の苗字(旧姓)を使用する
- 新しい戸籍を作って、旧姓を使用する
- 新しい戸籍を作って、筆頭者の苗字を引き続き使用する
1つの戸籍には2代(親と子)しか入ることができないので、1の、親の戸籍に戻って旧姓を使用することを選んだ場合、その戸籍に自分の子供と一緒に入るということはできません。 そのため、子供と同じ苗字になるためには、2か3の選択肢、つまり自分を筆頭者とする新しい戸籍を作り、そこに子供を入れる手続き(入籍届)が必要になります。 また、苗字を子どもと同じにするためには、子どもの苗字を変更することを、家庭裁判所に許可してもらわなければなりません(子の氏の変更許可の審判)。 子の氏の変更許可の手続きは、旧姓を使う場合も、結婚していた時の姓を使う場合も必要です。 この場合、あなたの姓と子どもの姓は一見同じですが、戸籍が異なるため、異なる姓(氏)だと考えられるからです。
変更にあたっては子供の意思を尊重して
親権者と子供の戸籍・苗字が異なっていても、法的なデメリットを被ることは考えにくいようです。苗字を変えることに抵抗がある子供や、親の離婚を周囲に知られたくないという理由で、変更を望まない子供もいるかもしれません。 変更するかどうかは、子供と話し合い、その意思を尊重したうえで判断することが大切です。
相談者の疑問
離婚後の子供の苗字について質問です。長男(19才)は私と同じく旧姓を希望し、長女(15才)は今のままの苗字を希望しています。親権は私にあり、私は子供達と同じ戸籍が希望ですが、長女が今の名字のままでいるメリット・デメリットを教えてください。
弁護士の回答川添 圭弁護士
氏が異なっていても親子であり親権者ですので、法的には特にメリットやデメリットはありません。
敢えていえば、親子の戸籍謄本が必要な場面で2通取得する必要があるかどうかという違いはありますが、近時は戸籍謄本を提出する機会は少なくなっています。
結局は、日常生活上の問題(親子で氏が異なることにより親の離婚を推察される一方で、在学中に氏が変わることにより親の離婚が推察されることもあります)とお子さんの心情や希望ということになるでしょう。
(なお、お子さんはいずれも15歳以上ですので、子の氏の変更許可の申立てはお子さん自身が行うことになります)
子供の親権はどう決まる?
未成年の子供がいる場合、親権者を決める必要があります。 親権とは、未成年の子供を監護・養育する権利です。契約などの法律行為を行うことができない子に代わって、子の財産を適切に管理したり、契約を結んだりすることができます。 権利という名がついていますが、「子供の利益を守る」ために行使される権利であるので、義務の側面があると言ってよいでしょう。 親権はあくまで「子供の利益になるのかどうか」という観点から行使される権利です。 結婚している間は父母の双方が親権をもちますが、離婚する場合には、父母のどちらかを親権者として決める必要があります(単独親権)。
親権とは?
親権は、「身上監護権(しんじょうかんごけん)」と「財産管理権」という2つの権利から成り立っています。 身上監護権とは、子供の養育や身の回りの世話をしたり、社会人としての社会性を身につけさせるためにしつけ・教育をしたりする権利です。具体的には次のようなことです。
- 子供がどこに住むのかを決める権利
- 子供のしつけのために、子供が悪いことをしたら叱る権利
- 子供が職業についたり、営業を始めたりすることに許可を与える権利
- 他人が親権の行使を妨害したときに排除する権利(子供が連れ去られたときに、子供の引渡しを請求するなど)
- 相続の承認や放棄などを、子供の代わりにする権利
財産管理権とは、子供のお金を管理したり、子供に代わって法的な手続を行ったりする権利です。具体的には次のようなことです。
- 子供のお金を子どもの代わりに管理する権利
- 子供がお金を使ったり、売買契約をしたりすることを認める権利
話し合いで親権者が決まらない場合
協議離婚の場合には、夫婦の話し合いで親権者を決めます。離婚届には親権者を記載する欄があり、記入がないと受理されません。 話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てます。調停でもまとまらなければ審判、裁判で決めることになります。 離婚調停とともに、親権者を決める調停を申し立てることもできますし、親権者の調停だけを申し立てることもできます。 申立て先は、相手方の住所地にある家庭裁判所か、夫婦が合意で決めた場所にある家庭裁判所です。調停で親権について合意ができれば、裁判所が調停調書を作成します。 調停での話し合いでも決まらないときは、審判や裁判で、裁判所に親権者としてふさわしい人を決めてもらうことになります。裁判離婚の場合は、裁判所が離婚を認める時に同時に親権も指定します。
親権者を決めるときに重視されるポイント
一般的に、調停や裁判では、主に次のような事情を重視して、父母のどちらを親権者にすべきか判断されることになります。離婚の有責性については、あまり考慮されません。
親側の事情:監護能力、精神的・経済的家庭環境、居住・教育環境、子に対する愛情の度合、従来の監護状況、実家の資産、親族の援助の可能性など
子側の事情:年齢、性別、兄弟姉妹関係、心身の発育状況、従来の環境への適応状況、環境の変化への適応性、子の意向、父母及び親族との結び付きなど
これまでの監護状況
親権者を決めるときには、子供のこれまでの生活環境が変わらないかどうかが重視されます(継続性の原則)。 親権を決める時点で同居している親や、これまで主に育児を担当してきた親の方が、親権者となる可能性が高いといえるでしょう。 親権者には、必ずしも母親が選ばれるとは限りません。父親が子供と一緒に暮らし、子育てに母親より深く関わっているといった場合は、父親が親権者とされることもあります。
子供の年齢・意向
子供がまだ幼く、自分で身の回りのことを十分にできない場合、親権者を決めるときには、育児により多く関わってきた親はどちらか、ということも重視されます。 「食事を作って食べさせていたのはどちらか」「保育園の送り迎えを担当していたのはどちらか」などの具体的な事実が、親権者を決めるときの判断材料となります。 子供の年齢がある程度高く、物事を判断したり、自分の意思を伝えたりすることができる場合は、子供の意思を尊重して親権者を決定します。 子供が15歳以上の場合は、法律(家事事件手続法・人事訴訟法)上、親権者を決める審判や裁判では子供の意向を聞き、これを考慮しなければなりません。 ただし、必ずしも子供の希望通りに親権者が決まるとは限りません。
親権と監護権は2つで1セット
さきほど述べたように、親権の中には身上監護権という、子供の近くにいて、子供を教育する権利・義務が含まれています。この身上監護権だけを取り出して、「監護権」と呼ぶ場合もあります。 監護権は親権の一部であるため、原則として、親権者となった親が監護権も持つことになります。 しかし、親権についてどうしても話し合いがまとまらない場合には、一方の親が親権者となる代わりに、もう一方が監護者として子どもを引き取り、子供の世話を行うことで解決を図るという方法もあります。 ただし、親権者と監護者を別にすると、トラブルの元になる可能性があります。 たとえば、子供の姓(戸籍)の変更など、親権者しかできない手続きが必要な場合に、子供と一緒に暮らしている監護権者は、その都度、親権者の承諾を得なければなりません。 親権者と監護権者の関係が悪ければ、なかなか承諾を得られない、手続きに協力してくれないなどのトラブルが発生するリスクがあります。 このようなことから、原則として、親権者と監護権者は一致するよう取り扱われています。
面会交流のルールはどう決めればよい?
離婚をすると、どちらか一方の親は、子供と離れて生活することになります。離れて生活する親にも、子供と会って一緒に過ごしたり、連絡を取り合ったりする権利があります(面会交流)。 面会交流は、子供と離れて生活する親の権利であるとともに、子供の権利でもあります。 面会交流は、子供の幸せや利益のために行われ、子供の健全な成長に役立つものと、一般的には考えられています。子供と生活を共にする親は、正当な理由がなければ、面会交流を拒否することはできません。
面会交流ですること
面会交流では、たとえば次のようなことを行います。
- 直接会って一緒に過ごす
- 電話・メール・手紙のやり取りをする
- プレゼントを贈る
- 授業参観や学校行事などへの参加、見学をする
- 子どもの写真を定期的に送付する
直接会って一緒に過ごすことだけではなく、メールのやり取りや写真の送付などの間接的な交流も、面会交流に含まれます。
面会交流のルールの決め方
面会交流をどのようなルールで行うかは、基本的には夫婦が話し合って決めることになります。
お互いが合意できたルールは、離婚協議書に記載して、お互いが条件を守らなければならないことになります。
ルールを決めるときは、あいまいな点を残さないように、できるだけ具体的に決めましょう。
後になって「自分が考えていた条件と違う」など、お互いの認識違いからトラブルが起きることを防げます。
たとえば、次のようなルールを決めておきます。
ルールには柔軟性も持たせる
面会交流のルールは、具体的に決めるとともに、ある程度柔軟性を持たせるとよいでしょう。 たとえば、「面会は第3土曜日の◯時~◯時、その日の都合が悪ければ、翌週に振り替える」「春休みや夏休みなどの長期休暇は、第3土曜日としないで、◯日間を面会交流の期間とする」など、代替案を書くこともおすすめです。 また、「子供の成長にあわせて条件もその都度調整する」と決めておくと、子供の年齢や進学、生活リズムの変化などに応じてルールを変更することができます。
面会交流を行うことが、子供にとって明らかに悪い影響を与える場合などには、面会交流を認めなかったり、認めたとしても、その方法を手紙のやりとりに限定するなどの制限をしたりすることがあります。
子供名義の口座のお金や学資保険は?
相談者の疑問
調停中、別居中です。子供名義の口座のお金と学資保険を、夫が財産分与として要求してくる可能性が高いです。守る方法はありますか?
夫は貯金も学資保険も反対していましたが、どうにか子どもの学資保険を積んできました。今後も私が働いて支払っていきます。
弁護士の回答岡村 茂樹弁護士
学資保険については、解約返戻金相当額が分与対象となるのが実務の扱いです。
法的に有効な対抗手段はありません。
子ども名義の預貯金ですが、お年玉やお小遣いを貯めてあるような場合、子ども本人のものとして分与対象としないことが多いです。
一方、名義は子どもだが、名義を借りて夫婦の財産を貯めてあると認められる場合、夫婦の共同の財産として、分与対象となるでしょう。
離婚が子供の心身に与える影響
離婚の影響は、子供の心身にも及ぶ場合があります。 特に小学生・中学生の時期は、心も身体も大きく変化する多感な年頃です。「親は自分のせいで離婚したのかもしれない」と罪悪感を抱いたり、一方の親と暮らせなくなることによって、「自分は捨てられたのだろうか」と不安を感じたりすることがあるかもしれません。 離婚に伴う引越しや転校といった生活環境の変化も、子供の負担になる場合があります。 離婚によって世帯収入が減り、それまでの生活レベルを維持することが難しいケースでは、生活の困窮が子供に影響する可能性もあるでしょう。生活費が足りず、子どもが十分な食事をとれなくなってしまうかもしれません。一緒に暮らす親が、生活費を稼ぐために仕事を掛け持ちするような場合、親と過ごす時間が減り、子供が寂しい思いをすることもあるでしょう。 ただし、必ずしも、離婚が子供にマイナスの影響を与えない場合もあります。配偶者があなたや子供に暴力をふるっているような場合は、離婚して配偶者と離れることで、子供の身の安全を確保できます。 親の不仲や冷え切った様子を見ることも子供のストレスになりうるため、子供の前で口論を繰り返しているような場合は、離婚することが、子供のストレスを軽減することにつながると考えられます。 このように、親の離婚は子供にも様々な影響を及ぼすことを念頭に置いて、離婚するかどうかを決断しましょう。
離婚することを子供に伝える際のポイント
それまで一緒に生活していた親と離ればなれになることは、子供にとっては大きな変化です。離婚について、子供に詳細を話したくないと考える人もいるかもしれませんが、子供にとっては、両親が離れて暮らすことになった理由や、今後の生活の変化について説明を受けることが、不安の解消につながります。 子供に離婚の話をするときは、離れて生活することになっても、両親の子供に対する愛情は変わらないこと、離婚は子供のせいではないことを伝えましょう。 離婚後に生活環境が変わる場合は、引越しの時期や、新しく住む場所、転校するかどうかといったことについても話しておくとよいでしょう。 離婚について、子供の気持ちを聞く機会をつくることも大切です。離婚する理由や生活の変化などについて、子供から質問された場合は、正面から受け止めて、子供の不安や疑問を解消できるよう、真摯に答えましょう。
子供の前で配偶者の悪口を言わない
注意したいのは、離婚について子供に伝えるときに、配偶者のことを悪く言わないようにすることです。 配偶者に問題があったり、恨みが募っていたりしても、子供にとってはどちらの親も、他に替えられない大切な存在であることに変わりはありません。 配偶者を非難して子供の心を傷つけてしまわないよう、子供の前では、配偶者の悪口を言ったり、けんかをしたりしないと心に留めておきましょう。
まとめ
親権者や面会交流といった、子供に関係するルールを決める際、配偶者との話し合いが難航することもあるかもしれません。子供を大切に思うあまり双方が感情的になってしまい、冷静に話し合うことが難しい場合もあるでしょう。親の険悪な雰囲気が、子供にストレスを与えるリスクもあります。 当事者同士での解決が難しい場合は、弁護士への相談を検討してみましょう。 弁護士という第三者の客観的かつ専門的なアドバイスを受けることで、自分も配偶者も納得できる着地点を見つけられる可能性があります。 話し合いで解決せず、調停や裁判に発展した場合も、弁護士に依頼することで、裁判所への申立てや書類作成のサポートをはじめ、調停や裁判での対応の仕方などについてアドバイスを受けられるでしょう。あなたの希望に沿う条件で離婚できるよう、適切な主張を構成してくれることも期待できます。
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