離婚の準備やることリスト
【必ずしておくべき2つの準備】
- 財産の内容を確認する
- 離婚後の生活費を用意する
【個別に必要な準備】
- 別居する場合に必要となる準備
- お金や仕事の確保、住まい探し
- 別居中の生活費を配偶者に請求する
- 別居するときに用意するもの
- 子どもがいる場合に必要となる準備
- 熟年離婚の場合の準備
- 浮気・不倫で離婚したい場合の準備
- DVで離婚したい場合の準備
- 性格の不一致で離婚したい場合の準備
- 弁護士への相談
必ずしておくべき2つの準備
離婚の準備として最低限、以下の2つのことを行ないましょう。
- 財産を確認する
- 生活費を用意する
円満に離婚したいと考えていても、密かに、水面下で離婚の準備をしたいと考えていても、いずれの場合もこれらの点はしっかりと準備しておきましょう。
財産の内容を確認する
結婚している間に貯めたお金や不動産、車などは、夫婦の共有財産となります。そのため、離婚する際は、一定の割合で分けるよう、配偶者に要求することができます。「財産分与」といいます。 財産分与の対象となるのは、以下のような財産です。
- 預貯金
- 有価証券
- 不動産
- 生命保険・個人年金
- 自動車
- ゴルフ会員権
- 退職金
- 結婚後に購入した家財道具
夫婦どちらか一方の名義になっている財産であっても、結婚後に手に入れた財産は、夫婦共同の財産だと考えられています。 どの程度財産分与を受けられるのか把握するために、配偶者の名義の財産も含め、別居する前に財産の中身を確認しておきましょう。
離婚後の生活費を用意する
財産分与で得られる金額がその後の当分の生活費を賄うのに不十分だったり、財産分与が離婚後スムーズに実現しなかったりした場合に備えて、財産分与で得られる財産も確認しながら、離婚後の生活費の計画を立てていきましょう。 毎月の衣食住にかかるお金のほか、通信費や医療費、子どもの教育費などがどのくらいか、わかる範囲で全て書き出してみましょう。 必要と考えられる生活費に対して、収入が足りないことが予想される場合は、就職・転職をすることや、仕事を増やすことなどを考える必要があります。新たな仕事に就くために資格を取得するのもよいでしょう。 共働きや自営業など、すでに仕事をしている場合でも、家事や子育ての負担の変化によっては働き方を見直す必要があるかもしれません。 安定した収入を確保した上で新しい生活を始めることが理想的ですが、急を要する場合は、実家に戻るという選択をして、家賃や生活費の負担を抑えることを検討してもいいかもしれません。 実家に戻ることができず、アパートやマンションを借りて生活を始める場合は、引っ越し費用や敷金・礼金を支払うためのまとまったお金が必要です。毎月の家賃負担も生じるため、あらかじめしっかりと計画を立てておきましょう。
別居の準備
別居をしなくても夫婦で離婚を合意できる場合には、必ずしも離婚前に別居をする必要はありません。 しかし、夫婦での話し合いや調停で離婚を合意することが難しい場合には、裁判で離婚を認めてもらう必要があります。裁判で離婚が認められるには、以下の法定離婚事由のうちいずれかを主張立証する必要があります。
- 不貞行為
- 悪意の違棄
- 配偶者の生死が3年以上明らかでない
- 強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
このうち「その他婚姻を継続し難い重大な事由」があるかどうかは、様々な事情を総合的に考慮して判断されます。離婚前の別居は、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」があると認められる事情のうちの1つになります。 夫婦での話し合いや調停で離婚を合意することが難しいと見込まれる場合には、裁判を見据えて離婚前の別居を検討しましょう。
別居に向けたお金や仕事の確保、住まい探し
別居を始める前から、別居後と離婚成立後の収支をあらかじめシミュレーションしておくことで、ある程度心の準備ができた状態で新たな生活を始めることができます。 別居先での生活は、離婚後の生活にもつながっています。「離婚後の生活費を用意する」の項目で述べたように、別居後の生活についてしっかりと準備をしたうえで別居に臨みましょう。
別居中の生活費を配偶者に請求する
離婚に向けて配偶者と別居したいと考えていても、経済的な不安があり、なかなか行動に移せない人も少なくないでしょう。 ですが、別居する際には、その間の生活費を配偶者に請求することができます。夫婦には結婚生活を送るうえで必要な費用(婚姻費用)を分担する義務があり、別居中もその義務は続くからです。 婚姻費用には、衣食住にかかるお金のほか、子どもの養育費、医療費、交際費なども含まれます。 別居している側に収入がない場合はもちろん、配偶者より収入が少ない場合などでも、婚姻費用を請求できます。配偶者が別居に反対している場合でも請求できます。 夫婦間で合意できない、そもそも配偶者が話合いに応じないような場合は、家庭裁判所に対して「婚姻費用の分担請求調停」を申し立てて、婚姻費用について話し合うことができます。
相談者の疑問
離婚協議中です。別居中で私が子供と実家で暮らしてます。
夫に、生活費を入れてほしいとお願いしても、「離婚することが決まっているから払う必要はない」と言われました。
離婚することが決まっている場合、夫には生活費を払う義務がないのでしょうか。義務がある場合、どのようにして請求すれば良いのでしょうか。
弁護士の回答新保 英毅弁護士
離婚協議中で別居している場合でも、離婚成立までは双方の収入に基づいた婚姻費用(生活費)の分担を求めることができます。
婚姻費用分担の開始は基本的には調停申立時であり、過去に遡りませんので、早めに申し立てをされた方がよいかと思います。
婚姻費用がいつの分から請求できるかという点について、家庭裁判所では「調停を申し立てたときから」という運用がなされています。ただし、婚姻費用の支払い義務は別居時から発生するので、調停内で「過去の分も遡って支払う」という内容の合意をすることも可能です。また、調停を申し立てる前に夫婦の話し合いで合意できる場合には別居時からの婚姻費用を請求することが可能です。
婚姻費用の相場は、子どもの人数や夫・妻の収入によって変わってきます。自分の場合どのくらい請求できるのか確認するには、婚姻費用算定表をご覧ください。
別居するときに準備するもの
別居するときには、できる限り必要な物を持っていきましょう。最低限、以下のようなものを持っていくとよいでしょう。
- 現金・預金通帳(自分名義、子ども名義)
- 印鑑
- キャッシュカード
- 健康保険証(コピーでもOK)
- 年金手帳
- 本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)
- 母子手帳
- 衣類(子どものおむつなども)
- 常備薬など生活に必要なもの
- 調停・裁判で証拠となる書類や財産に関する書類(相手方の給与明細や源泉徴収票、預金通帳のコピーなど)
いったん別居すると、別居前の自宅に戻ることは難しいケースが少なくないので、事前にしっかりと準備をしましょう。配偶者が荷物の引き渡しに応じる場合には、別居後に荷物を取りに戻ることはできますが、配偶者が応じない場合には法的手段で強制することが難しく、荷物を諦めなければならないケースもあります。 思い出の品など、買い直せない物はできる限り持っていく方がよいでしょう。 別居ための荷造りがしやすいように、少しずつ物を片付けて、必要な物と不要な物を整理していきましょう。
子どもありの場合の準備
子どもがいて、離婚後も自分で養育することを望んでいる場合には、次のような準備が必要です。
- 親権を取るための証拠集め(母子手帳、育児日記、保育園・幼稚園・小学校の連絡帳など、子育ての様子がわかる資料)
- 養育費を請求する準備(養育費算定表で養育費の相場を確認する)
- 児童扶養手当などひとり親への公的支援を確認する
- 転校・転園が必要な場合には手続きなど
- 子どもの心のケア
子どもが別居や離婚をどのように受け止めるかは、子どもによって異なります。親と離れて暮らすことになり傷つくこともあれば、両親の揉める様子を見なくて済むようになってよかったと思うこともあります。 いずれにしても、子どもを必要以上に不安にさせないように、乳幼児でなければ、事前に別居や離婚について説明するようにしましょう。 転校など環境の大きな変化を伴う場合には、新しい環境に馴染めず不登校になる可能性も考えられます。子どもの心の変化をよく観察して、できるだけ対応できるように準備しておきましょう。 子どもが2人・3人と複数いる場合には、人数分の荷物を用意しましょう。養育費や公的支援も子どもの人数によって変わります。 子どもが0歳など小さい場合には、ベビーベッドやミルク・離乳食など特別に必要な物もありますが、基本的な準備は大きく変わりません。体調に気をつけて準備を進めましょう。
熟年離婚をしたい場合の準備
熟年離婚の場合でも、準備することは一般的な離婚と変わりません。 ただ、定年退職により退職金が支払われる時期が近い人も少なくないと思われますので、財産分与の準備として、退職金の確認も忘れないようにしましょう。 また、将来受け取る年金を増やすために、年金分割の手続きも忘れないようにしましょう。
浮気・不倫を理由に離婚したい場合の準備
浮気・不倫(不貞行為)を理由に離婚したい場合には、浮気・不倫の証拠を集める必要があります。 不貞行為があったことを証明するための証拠として、もっとも確実なのは、性行為そのものが写った映像や写真です。 しかし、そうした証拠が存在するケースはほとんどないでしょう。 そのため、「性行為があったこと」を推測させる証拠を集めていくことになります。 不貞行為の証拠となり得るものは、配偶者以外の異性と性的関係を持ったことを推測できる現場を押さえた写真やビデオなどの映像です。 性行為の最中ではなくても、ラブホテルに出入りする写真や映像があれば、性行為があったことを強く推測できるため、有力な証拠となります。 ビジネスホテルに出入りする写真や映像は、「仕事の打ち合わせをしていた」などと言逃れをされる可能性があるため、ラブホテルでの写真や映像に比べれば、不貞行為の証拠としての価値は下がるでしょう。 「その日は、仕事が入っていなかったはずだ」など、他の証拠とあわせて、不貞行為があったことを証明することになります。 離婚裁判のような民事事件では、基本的に、裁判で提出できる証拠に制限はありません。配偶者や不倫相手の会話をひそかに録音しても、その録音データを証拠として使うことができます。 ただし、当然ですが、「不倫相手の自宅に忍び込んで盗聴・盗撮する」といった、明らかに違法な方法で集めた証拠は、裁判で使えない可能性があります。証拠を集めるときには十分に注意しましょう。
性行為を伴わない不倫でも、裁判で離婚が認められる場合があります。
浮気・不倫の証拠となり得るものには、次のようなものがあります。
- 性行為そのものが写った映像や写真
- ラブホテルに出入りする写真や映像
- 性的関係を持ったことが推測できるメール・LINE・メモ・日記
- 性的関係を持ったことが推測できる領収書やクレジットカードの明細(ラブホテルなど)
- 配偶者や浮気相手・不倫相手が、性的関係を持ったことを認めた発言の録音
さらに、慰謝料を請求するためには、次のような証拠があるとよいでしょう。
- 相手の不貞行為により精神的な苦痛を受けたことを証明する証拠
- 相手の不貞行為が理由で「うつ病」などの症状が出た場合には診断書など
- 不貞行為が始まる前は夫婦関係が円満だったことを証明する証拠
- 家族が笑って写っている写真
- 家族旅行の写真
- 夫婦が寄り添う写真
- 夫婦間のメールやLINEのやりとり
- 不貞行為が始まった後に外泊が増えて、家庭を顧みなくなったような場合には、その記録
DVを理由に離婚したい場合の準備
配偶者から暴力(DV)を受けて離婚を考えている場合、最優先ですべきことは、警察や公的機関に相談し、配偶者から離れて身の安全を確保することです。 配偶者と一つ屋根の下で暮らしながら離婚を切り出したり、配偶者への法的な措置を取ろうとしたりすると、相手が逆上してDVがエスカレートする恐れがあるからです。 そこで、まずは配偶者と別居するなどして、自分や子どもが危険にさらされない状況を確保しましょう。離婚に向けた手続きなどは、その上で進める方が安全です。 身の安全を守るためには、警察や弁護士への相談、DVシェルターを利用するなど複数の手段があります。 以上を前提に、可能な範囲でDVの証拠を集めましょう。 証拠として認められるのは、たとえば以下のようなものです。
- ケガの診断書
- 傷やあざの写真(日付がわかる場合は併せて記録する)
- 配偶者に荒らされた部屋の様子や壊された家具などの写真
- 脅迫や暴力の様子の録音・録画
- 配偶者との通話や留守番電話の録音
- 配偶者とのメールのやりとり(暴言など)
- DVがいつ、どこで、どんなふうに行われたかを書いた日記やメモ
- 配偶者が書いた念書
配偶者が住民票を閲覧できないようにする
配偶者からDVを受けている場合で、別居後の住所を配偶者に知られたくない場合には、手続きをする必要があります。 住民票を移す先の自治体で、転入届を提出する際に、同時にDV被害を受けていることを申し出ることで、配偶者に住民票や戸籍の閲覧、交付などをさせないようにすることができます。 また、配偶者以外の第三者が住民票の閲覧を請求してきた場合でも、本人確認や請求理由について通常より厳しい審査をしてもらうことができます。
性格の不一致を理由に離婚したい場合の準備
性格の不一致で離婚する場合には、基本的には夫婦の話し合いで離婚に合意する必要があります。 ただし、次のような事情がある場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして調停離婚や裁判離婚が認められるケースもあります。
- 配偶者の親族との不和
- 過度な宗教活動
- 性行為の拒否・強要
- 重大な病気・障害
- 働く意欲がない・浪費
- 長期間別居している
このような事情がある場合には、事情を裏付ける証拠を集めておくとよいでしょう。
弁護士への相談
離婚に向けた準備は個人でも進めることは可能ですが、次のようなケースでは、離婚の準備段階で弁護士に相談することをおすすめします。
- 配偶者との話し合いで離婚の合意ができる見込みがない
- 財産分与や親権など離婚条件にこだわりがある
- 慰謝料を請求したい
- 調査会社に依頼してでも証拠集めをしたい
- DVの被害を受けている
弁護士に相談すると、離婚の準備で何をすればよいか、その人の状況に合ったアドバイスを得られます。また、別居や、離婚の話し合い、調停、裁判など、離婚に向けて実際に動いていく段階でうまくいかないことがあれば、その都度、弁護士に相談することで適切なアドバイスを得ることができます。 一度弁護士に相談したら必ず依頼しなければならないということはありません。 まずは弁護士に相談をして離婚の準備を進め、その後、離婚について実際に動く段階で、必要に応じて依頼を検討すればよいでしょう。 法律相談の費用を支払う経済的余裕がない場合には、法テラスの無料法律相談や、無料相談を行なっている弁護士事務所の利用を検討するとよいでしょう。
まとめ
離婚したいと思ったら、離婚に向けて準備を始めましょう。離婚の準備には、財産の確認や、別居後の生活費の用意、離婚理由の証拠集めなどがあります。 離婚するにあたって、「離婚条件が正当な内容かわからない」「離婚後に養育費などの支払いが滞ったらどうしよう」といった不安を感じている方は、弁護士への相談を検討することをおすすめします。 法律の専門家である弁護士は、あなたが有利な条件で離婚できるよう、また、慰謝料や養育費といったお金を確保できるよう、サポートしてくれます。離婚届を提出する前に、弁護士からのアドバイスを受けておくことで、不安なく離婚に踏み切ることができますし、離婚後のトラブルも防げるでしょう。