年金分割

弁護士監修記事 2018年10月01日

将来受け取る年金を増やす方法(年金分割)

夫婦の一方は、離婚するとき、配偶者が支払った厚生年金保険料の納付記録を分けてもらい、将来受け取れるはずの年金額に反映させることができます。

  • 年金分割とは
  • 年金をどのように分けるのか
  • どのくらい増額が見込めるのか

この記事では、会社員の妻で専業主婦をしていた人など、配偶者の扶養に入っていた人や、共働きだけど配偶者より収入が少なかった人に向けて、年金分割がどのような仕組みなのかといった点や、離婚前に話し合っておきたいことを解説します。

目次

  1. 年金分割とは
    1. 年金の仕組みを確認する
    2. どのように分けるのか
  2. 合意分割と3合分割
    1. 2008年4月1日より前に納めた厚生年金保険料
    2. 2008年4月1日以降に納めた厚生年金保険料
    3. 保険料の納付期間が双方にまたがっている場合
    4. 3号分割だけの人は事前にしておくことはない
  3. 分割の割合を話し合う
    1. 「年金分割のための情報通知書」を手に入れる
    2. 通知書をもとに夫婦で話し合う

年金分割とは

alt 年金分割とは、離婚するときに、配偶者が支払った厚生年金保険料の納付記録の一部を分割し、受け取れるという仕組みです。 配偶者の納付記録を分割して受け取ることによって、厚生年金保険料を直接は納めていなかった他方の配偶者も、納付した部分を反映した年金額を将来受け取ることができます。 厚生労働省のデータによると、年金分割を受けた方の年金の受給額は、月額平均で2万6828円増額しています(2015年)。

年金の仕組みを確認する

年金分割について知る前に、まず、年金に関する知識をおさらいしておきましょう。 日本の年金制度では、日本に在住する20歳以上60歳未満の人は、必ず国民年金に加入することが義務付けられています。 国民年金に加入していて、保険料を支払っている人のことを「被保険者」といいます。被保険者は、次の第1号〜第3号のいずれかに分けられます。

  • 第1号被保険者…自営業者や学生
  • 第2号被保険者…会社員や公務員
  • 第3号被保険者…第2号被保険者に扶養されている人(専業主婦など)

国民年金は、給与に関わらず、加入している人全員が一律の金額を支払います。一方、厚生年金保険料は、給料の額によって納める額が決まります。給与が高く、納める保険料が多いほど、将来受け取る年金の額が多くなります。 国民年金の加入者は「老齢基礎年金」を、厚生年金の加入者は「老齢厚生年金」を、将来受け取る権利があります。第2号被保険者は国民年金と厚生年金の両方に加入しているので、2種類の年金をどちらももらうことができます。 たとえば、夫が会社員で妻が専業主婦という場合、厚生年金に加入して保険料を納めているのは夫だけです。 妻は国民年金にしか加入していないため、将来は老齢基礎年金しかもらえませんが、夫は老齢基礎年金と老齢厚生年金の2種類をもらうことができます。つまり、将来受け取る年金の額に夫婦で差が出てきます。 こうした、将来受け取る年金の額の差を埋める制度が、年金分割です。

どのように分けるのか

具体的には、厚生年金保険料を納めてきた実績(記録)を、離婚する際に、一定の割合で夫婦で分け合うことになります。 簡単に言えば、夫が支払った婚姻期間中の厚生年金保険料を、最大で半分まで妻が支払ったと扱って、妻が将来受け取る年金額を計算するという仕組みです。 alt

国民年金は年金分割の対象になりません。また、配偶者が自営業で、厚生年金に加入したことがない場合には、年金分割はできません。

合意分割と3合分割

alt 分割の方法は、2008年4月より前に納めた保険料と、それ以降に納めた保険料とで扱いが異なります。

2008年4月1日より前に納めた厚生年金保険料

2008年4月1日より前に納めた保険料は、夫婦間で話し合って、どの程度の割合を分け合うのか合意する必要があります(合意分割)。 合意できない場合には、家庭裁判所に申し立てて、分割の割合を判断してもらうことになります。

2008年4月1日以降に納めた厚生年金保険料

専業主婦などの第3号被保険者の場合、2008年4月1日以降に配偶者が納めた厚生年金保険料は、夫婦間の合意がなくても分割することができます(3号分割)。 離婚後、日本年金機構が運営する年金事務所へ申請すると、2分の1の割合で分割してもらうことができます。

保険料の納付期間が双方にまたがっている場合

たとえば、夫が会社員・妻が専業主婦で、2003年4月に結婚し、2017年8月に離婚したというケースだと、合意分割の期間と3号分割の期間がまたがっていることになります。 この場合、2008年4月1日から2017年8月までの保険料は、3号分割を申し立てれば、自動的に分割されますが、2003年4月から2008年3月までの保険料については、話合いで決めるか、裁判所に判断してもらう必要が出てくるのです。

実務的には、合意分割の手続きを開始すれば、自動的に3号分割の手続きも始まる運用になっています。

3号分割だけの人は事前にしておくことはない

このように、共働きだったり、専業主婦でも2008年4月1日以前から婚姻関係が続いていた場合は、話合いで決めるか、裁判所にどのように分けるかを判断してもらう必要があります(合意分割)。 分割の割合が決まったら、離婚後に、年金事務所で合意分割の手続きを行います。 離婚したあとでも、年金分割を行うことはできますが、離婚が成立した日の翌日から数えて2年で請求する権利が消えてしまいます。 離婚後、スムーズに年金分割の手続きを進めるために、離婚までにどのように分けるかを決めておくことをおすすめします。 一方、3号分割は、配偶者と合意する必要はなく、自分だけで手続きを進めることができるので、3号分割だけで年金分割できる人は、離婚前に準備することは特にありません。 以下からは、合意分割が必要な方が、離婚までにどのようなことをしておく必要があるのかを解説していきます。

3号分割だけで手続きが完了する人の中にも、事前にどの程度の分割を受けられるのか知りたいという人もいるでしょう。そうした人は、このあと説明する「年金分割のための情報通知書」という書類を取り寄せて、確認してもよいでしょう。

分割の割合を話し合う

alt

「年金分割のための情報通知書」を手に入れる

どのくらいの割合で年金を分け合うのか決めるために、「年金分割のための情報通知書」という書類を手に入れましょう。 この書類を手に入れると、配偶者の「標準報酬総額」がわかります。標準報酬総額とは、婚姻期間中の配偶者の給与と賞与の合計額です。 厚生年金保険料は、報酬額がいくらかによって変わるので、標準報酬総額を知ることで、配偶者がこれまでいくら厚生年金保険料を納めたかがわかります。 通知書を請求するときには、以下の資料を用意します。請求後、2〜3週間で取り寄せることができます。

  • 「年金分割のための情報提供請求書」(年金事務所か、年金機構のホームページから入手できます)
  • 請求する人の年金番号がわかる資料(年金手帳か基礎年金番号通知書のどちらか一方)
  • 戸籍謄本

年金分割のための情報通知書は、自分1人でも請求できます。 自分1人で請求した場合、通知書は自分にだけ交付されるので、離婚を考えていることを配偶者に知られる心配がありません(夫婦で一緒に請求した場合は自分と配偶者それぞれに交付されます)。

50歳以上の人は、希望すれば、通知書とともに「年金分割をした場合の年金見込額」に関する書類も交付してもらうことができます。年金分割をした場合に将来どのくらいの年金を受け取れるかがわかるので、請求するとよいでしょう。

通知書をもとに夫婦で話し合う

通知書を手に入れた後、夫婦で、年金分割をするかどうか、どのくらいの割合で分割するかを話し合います。 合意できたら、年金分割をすることに合意したという文言や、分割の割合、自分と配偶者の氏名、基礎年金番号、生年月日などを記載した合意書を作ります。合意書は、離婚後、年金分割の手続きをするときに必要です。 合意書は、離婚協議書の一部としてまとめ、公正証書の形で残すとよいでしょう。 書式は、公証役場のホームページなどで公開されています。たとえば、京橋の公証役場では、このような書式を公開しています。

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