DVの被害者が身の安全を確保して離婚するまでの手続きの流れ
配偶者からのDVを理由に離婚したいと考えている場合、まずは身の安全を確保し、離婚に向けた準備を進めていきましょう。
- 身の安全を確保する手段から
- 離婚の手続きをどのように進めていけばよいのか
- 刑事処分を求めたい場合
この記事では、DV被害者の離婚に向けた手続きの流れを網羅的に解説します。
目次
DVとは
DV(ドメスティックバイオレンス)とは、厳密な定義はありませんが、一般的には、配偶者や恋人など親密な関係にある人、または親密な関係にあった人から振るわれる暴力のことです。
ここでいう「暴力」には、殴る・蹴るなどの身体的な暴力だけではなく、「暴言を浴びせる」などの精神的暴力や、「嫌がっているのに性行為を強要する」などの性的暴力も含まれます。
DVの相談件数は増えている
DVに対する問題意識は、DV防止法の施行などにより、社会全体に広がってきています。
警視庁の調査結果によると、DVの相談件数は年々増えており、2017年の相談件数は8421件。4年前の2013年と比べると約3倍に増加しています。
配偶者からDVの被害を受けている場合、身の安全を確保することを最優先に行動しましょう。警察や弁護士への相談、DVシェルターを利用するなど複数の手段があります。詳しい利用方法やサポート内容について、以下で解説していきます。
DV被害の相談先と受けられるサポートの内容
「DVから逃れたい」「離婚したい」と思っても、配偶者と一つ屋根の下で暮らしながら離婚を切り出したり、配偶者への法的な措置を取ろうとしたりすると、相手が逆上してDVがエスカレートする恐れがあります。
そこで、まずは配偶者と別居するなどして、自分や子どもが危険にさらされない状況を確保しましょう。離婚に向けた手続きなどは、その上で進める方が安全です。
収入が少なく、別居後の生活が不安な人もいるでしょう。別居中の生活費は、配偶者に請求することができます。
金額の目安や、配偶者が支払いを拒否した場合の対処法は、この記事の下の「次に読みたい記事」で詳しく説明しています。
安全な別居先が見つからない場合や、今すぐに配偶者から離れたいといった場合は、配偶者暴力支援センターや警察に相談すると、一時保護などの措置を受けられる場合があります。 DVの主な相談先としては、次の4つがあります。それぞれサポート内容が異なるので、複数の相談先の利用を検討するとよいでしょう。
- 配偶者暴力相談支援センター
- 警察
- 弁護士
- DVシェルター
また、DVを繰り返す配偶者を被害者に近づけないようにするために、裁判所の「保護命令」という制度を利用することもできます。 保護命令とは、配偶者からの身体的暴力を防ぐために、配偶者に対して、被害者に近寄らないことなどを命令する制度です。 DVによって生命・身体に重大な危害を受ける可能性が高い場合に、被害者が地方裁判所などに申し立てることで、命令が出されます。
DVの相談先や保護命令の制度については、この記事の下の「あわせて読みたい関連記事」で詳しく説明しています。
離婚する場合の手続きの進め方
DVを行う配偶者と離婚するためにはどうすればよいのでしょうか。必要な手続きを、順を追って詳しく説明します。
話合いで合意できなくても裁判で離婚が認められる
配偶者に離婚をしたいと切り出しても、相手が拒否して話合いが決裂してしまった人もいるでしょう。
話合いで離婚に合意できなくても、裁判で、DVを理由に離婚が認めてもらうことができます。
法律では、5つの離婚理由(法定離婚事由)を定めています。配偶者からのDVは、5つの離婚理由のうちの「婚姻を継続し難い重大な事由」に当てはまる可能性があります。
法定離婚事由があることを理由に、配偶者の合意なく離婚するためには、裁判で判決を得なければなりません。
裁判では、配偶者からDVを受けたことを主張し、証拠を示して、DVが実際にあったことを証明していきます。
裁判の前に「離婚調停」で第三者をまじえて話し合う
ただし、原則として、いきなり裁判を起こすことはできません。裁判の前に、まずは家庭裁判所に離婚調停を申し立てる必要があります。
離婚調停では、裁判所で「調停委員」という第三者のアドバイスを受けながら夫婦で話し合い、お互いに納得できる着地点を探っていきます。
離婚調停については、この記事の下の「あわせて読みたい関連記事」で詳しく説明しています。
通常の調停では、配偶者との同席を求められることが一般的ですが、DVの被害を受けている場合、同席せずに調停を行えます。 調停では配偶者とは別の待合室で待機することになりますが、「配偶者と一切顔を合わせたくない」とあらかじめ調停の担当書記官に伝えておくことで、以下のような配慮をしてもらえる場合があります。
・配偶者と鉢合わせることがないよう、待合室とは全く違う別の部屋で待機できる
・配偶者が使う調停室ではない調停室で待機していると調停委員が来てくれる(自分が移動しなくて済む)
・行きは先に配偶者を呼び、配偶者が調停室にいる時間帯に出頭できるようにしてくれたり、帰りも、配偶者が調停室にいるうちに先に帰れるようにしてくれるなど、時間を調整してもらえる
配偶者と一切接触せずに調停を進めたい場合は、裁判所に相談してみましょう。 配偶者に避難先の住所を知られたくない場合には、住所を隠して調停・裁判の手続きを進めることもできます。 調停で決着がつかなければ、最終的には裁判を起こして、離婚できるかどうか裁判所に判断を委ねることになります。
DVを受けたことを証明する「証拠」を集める
配偶者からのDVを理由に裁判で離婚を認めてほしい場合、実際にDVを受けたことを証明する証拠を集めて、裁判で提示する必要があります。
DVを理由に慰謝料を請求したい場合も、裁判で請求を認めてもらうためには証拠が必要です。
DVの証拠となるのは、たとえば以下のようなものです。
- DVの現場の録画・録音
- メールや手紙
- 日記
- ケガやあざの写真
- ケガの診断書・精神科などの診断書
それぞれの証拠を集めるときのポイントを紹介します。
DVの現場の録画・録音
怒鳴る、侮辱する、長時間説教する、といった状況の録画・録音は、DVの証拠となり得ます。 基本的に、民事事件では、提出できる証拠に制限はありません。そのため、配偶者に無断で録音・録画したとしても、データを証拠として利用することができます。 しかし、DVを受けることを事前に予測してレコーダーなどを準備するのはなかなか難しいです。「相手にバレたらどうしよう…」という恐怖で、とても録画や録音などできないという人もいるでしょう。 そのような場合は無理をせずに、メールや日記など他の証拠を集めるようにしましょう。
メールや手紙
メールや手紙などで暴言を浴びせられた場合も、保存しておくと証拠として有効な場合があります。
日記
日記をつけるときは、DVを受けた日時や場所、どのような被害を受けたかといった様子を、詳しく記録しておきましょう。 「〇月△日、死ねと何度も言われた」「〇月△日、何時間にもわたり無視された」など、細かく書くほど、証拠としての信用性が高まります。 DVを受けた日の記録だけではなく、同じ日記帳に、DVがなかった日の記録も書かれていると、より信用性が高まるでしょう。 日記をつける余裕がない場合や、「相手に日記が見つかったらどうしよう」という恐怖がある場合には、日記の代わりにメールを親や兄弟、友人に送り、保存しておいてもらうという方法もあります。
ケガの写真
あざの写真などは、写りが悪く判別しにくいことも多いので、いろいろな角度から何枚も撮影するとよいでしょう。また、部位がわかるように引いて撮影した写真もあるとよいでしょう。
ケガの診断書・精神科などの診断書
DVでケガをして病院に行った場合、医師の診断書や受診記録(受診の履歴)も大事な証拠となります。 不眠、食欲不振、過呼吸やうつ病などを発症した場合には、精神科や心療内科を受診し、診断書をもらっておくといいでしょう。 診断書に、症状とDVとの因果関係があることを書いてもらえれば裁判で有効な証拠となります。
弁護士に依頼した方がよい?
調停や裁判などに自分1人で臨むことに不安を感じ、弁護士に依頼することを考えている人もいるでしょう。 弁護士に依頼すると、調停や裁判の手続きをサポートしてもらうことができます。配偶者側との交渉を弁護士が行うことによって、慰謝料請求など離婚の条件について有利に話を進めてもらえるでしょう。DVの証拠の集め方についてもアドバイスを受けられます。 弁護士費用を支払えるか不安な人は、法テラスの「民事法律扶助」という仕組みを利用することを検討してみましょう。収入や資産などの条件をクリアすれば、弁護士費用を立て替えてもらえます。 具体的には、弁護士費用として毎月5000円から1万円程度を法テラスに返済(償還)していきます。 生活保護を受給している人(または準ずる人)は、返済の猶予もしくは免除を受けることができるため、実質無償で弁護士に依頼することができます。 詳しくは法テラスのホームページを確認してみてください。
弁護士から受けられるサポートや費用については、この記事の下の「次に読みたい記事」で詳しく説明しています。
配偶者への刑事処分を求めたい場合
DVを行う配偶者に対して刑事処分を求めたい場合は、警察に対し、DV被害について被害届を提出するか、告訴をすることができます。
被害届は、犯罪の被害にあったことを警察に届け出ることです。配偶者を処罰してほしいかどうかにかかわらず、届け出ることができます。被害届を出したからといって、必ず警察の捜査が行われるとは限りません。
告訴は、犯罪の被害にあい、配偶者を処罰してほしいと警察に届け出ることです。告訴が受理されると、警察は捜査を開始し、起訴(刑事裁判を開くよう裁判所に求めること)するかどうかの判断を被害者に伝える義務があります。
警察に被害届を提出するとき、または告訴するときは、医師の診断書や被害の様子を録画・録音した記録も一緒に提出しましょう。
この記事は、公開日時点(2026年02月18日)の情報や法律に基づいています。