性格の不一致とは?
生まれも育ちも違う人と一つ屋根の下で暮らしていれば、意見が合わなかったり、いらだちを感じたりすることもあるでしょう。不満が積もり積もって、「もうこの人とは一緒に暮らせない。離婚したい」と思うこともあるかもしれません。 平成30年度の司法統計「婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所」によると、離婚調停などを申し立てた動機として、男女ともに第1位にランクインしたのは、「性格が合わない」という理由でした。性格や考え方などのすれ違いから、夫婦関係に亀裂が入るケースは多いようです。
性格の不一致で離婚できるのか
夫婦間で離婚について話し合い合意できれば、どのような理由でも離婚できます。パートナーと性格が合わない、価値観が違う、などの理由でも可能です。 話合いで合意できなかった場合、離婚に向けて、主に以下のようなプロセスをたどることになります。
- 裁判所に離婚調停を申し立てて、第三者を交えながら話合いを続ける
- 裁判を起こして、離婚できるかどうか裁判所に判断してもらう
離婚調停では、裁判所で「調停委員」という第三者のアドバイスを受けながら、夫婦で話し合い、お互いに納得できる着地点を探っていきます。 調停を数回行っても合意に至らず、裁判所や夫婦自身が解決の見込みがないと判断した場合は、調停は不成立となり終了します。 調停が不成立となった場合でも、「夫婦の意見にわずかなズレがあるだけで、離婚は認めた方がよい」など一定の条件に当てはまる場合、家庭裁判所の裁量により、審判で離婚が認められることになります。当事者から2週間以内に異議申立てがなければ、離婚が確定します。 審判離婚が行われないケースで、調停が不成立になっても離婚をしたいという気持ちが変わらない場合は、裁判で離婚を求めていくことになります。
裁判で離婚が認められるケース
相手が離婚に合意しなくても、法律で定められた5つの離婚原因(法定離婚事由)のいずれかにあてはまれば、裁判で離婚を認めてもらうことができます。 5つの法定離婚事由とは、次のようなことです。
- 不貞行為(不倫)
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
性格の不一致は、法定離婚事由の1つである「婚姻を継続し難い重大な事由」に当てはまる場合があります。 裁判で、パートナーとの性格の不一致によって、夫婦関係が破たんして元どおりになる見込みがないことを主張し、証拠を示して事実だと証明できれば、離婚が認められます。 ただし、性格の不一致が「婚姻を継続し難い重大な事由」に当てはまるとして、裁判で離婚が認められるハードルは高いです。 単に「性格が合わなくて、一緒にいるとイライラする」「結婚前に比べて冷たくなった気がする」といった理由では足りません。 性格の不一致が「婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたらなくても、別に「不貞行為」や「悪意の遺棄」といった法定離婚事由があれば離婚が認められる可能性があります。 法定離婚事由については、この記事の末尾のリンクで詳しく解説しています。
別居期間が考慮される場合も
別居期間は、裁判で離婚が認められるかどうか判断する際の重要なポイントのひとつです。 別居期間がある程度長期になると、婚姻関係が破綻しているとして、裁判で離婚が認められる可能性があるようです。
相談者の疑問
結婚してまだ6か月しか経っていませんが、離婚を考えています。
・生活習慣・生活サイクルが違うこと
・金銭感覚が違うこと
・感性が合わないこと
・性の不調和で、触れたい・触れられたいと思わず、子供が欲しいとも思えないこと
相手とは離婚について話を1度したことがありますが、ああ言えばこう言うで話し合いになりません。離婚できますか?
弁護士の回答吉田 英樹弁護士
離婚には、協議離婚、調停離婚、裁判離婚があります。協議離婚、調停離婚は、相手方が応じなければ離婚はできません。裁判離婚については、不貞行為、悪意の遺棄、3年以上生死不明、強度の精神病、婚姻生活を継続し難い重大な事由という裁判上の離婚事由があれば、相手方が応じなくても、離婚が認められます。
今回でいえば、婚姻生活を継続し難い重大な事由の有無が問題となりますが、この点は、直ちには容易とはいえないようにも思います。
このような事案においては、別居期間をおくということが考えられます。このような別居期間を経過すれば、それ以前の婚姻生活も相まって、婚姻生活を継続し難い重大な事由と認められることがあります。あくまでもケースバイケースですが、別居期間としては、3年〜5年程度が必要と考えられることもあります。
今回は、婚姻生活自体が短いですので、もっと短い段階で離婚が認められる可能性も否定できないでしょう。また離婚訴訟は1年くらいかかることもありますので(口頭弁論終結時に、例えば3年経過していることを目処に、早めに離婚訴訟を提起することもあります)、例えば、別期間が少し経過した段階で、離婚調停を申し立てて、離婚について協議を始めることも考えられます。
また別居した場合には、相手方に生活費として婚姻費用の分担請求をしたり、あるいは請求されたりなどすることもありますので、この点は認識しておかれるとよいでしょう。
慰謝料はもらえる?相場は?
性格の不一致を理由に離婚する場合、慰謝料の支払い義務は発生するのでしょうか。
相談者の疑問
性格の不一致、セックスレスで離婚する予定です。離婚を切り出したのは自分で、家庭内別居1年で、その後別居1年です。この場合の慰謝料の相場はどのくらいになりますか?
弁護士の回答近藤 弘弁護士
離婚の際の慰謝料は、婚姻関係を破たん(破壊)させたことに責任がある(原因を与えた)側が、他方に対して金銭でお詫びをするものです。
どちらが悪いのかはっきりした事情が認められないと慰謝料発生は困難でしょう。
「離婚を切り出したのは自分」「家を出たのは自分で一応連絡もし、別居」というようなご事情だけでは、どちらが悪いかはっきりしたことは言えないように思います。
ですから、慰謝料の相場とのお尋ねには、ゼロか極めて低額が予想されます。
離婚における慰謝料は、婚姻関係を破たんさせる原因を作った側に支払い義務が発生します。 性格の不一致での離婚は、夫婦のどちらか一方だけに落ち度があるとは言えません。慰謝料の支払い義務は発生しないと考えてよいでしょう。
解決金はもらえる?
性格の不一致で離婚する場合、慰謝料を支払わせることは難しいようです。 慰謝料は請求できないケースでも、解決金と呼ばれるお金を支払ってもらえる場合があります。解決金とはどのようなものなのでしょうか。
相談者の疑問
主人から離婚すると言われています。私としても、主人の自分勝手な発言やモラハラ発言に悩んでいたため、離婚に応じることも視野に入れています。
離婚解決金という費目があると聞いたのですが、どのようなものなのでしょうか。
弁護士の回答和田 史郎弁護士
離婚をするには、協議離婚、調停離婚、裁判離婚などがありますが、協議と調停は合意がなければ成立しません。裁判離婚は、法律で定める離婚事由がなければ認められません。
なので、合意してもらうために、解決金を払うというイメージです。
慰謝料という言葉がありますが、何か賠償をすべきことはしていないということで、慰謝料ではなく、解決金という表現をすることが多いですね。
自分は離婚を望んでいるが相手が応じないなど、離婚について折り合いがつかない場合に、問題をスムーズに解決させるために支払うお金を解決金と呼ぶようです。 解決金の相場はどのくらいなのでしょうか。
相談者の疑問
夫から離婚したいと言われました。子供はおらず婚姻1年、性格の不一致で別居予定です。
早期解決に応じる場合、解決金を、婚姻費用×1の期間とすることは妥当でしょうか。他に妥協な計算方法があれば教えて下さい。
弁護士の回答中井 陽一弁護士
はい、そのような計算方法は、離婚のかけひきにおいて妥当なラインであると考えます。弁護士としても、ご記載のような計算方法を前提に、解決金の金額を決めることが多いです。
したがって、今回のケースの場合、婚姻費用1年から2年分あたりが一つの目安となるのではないかと思います。
「婚姻費用1〜2年分」が、解決金の額の1つの目安となるようです。 婚姻費用とは、結婚生活を営む上で必要な費用のことです。一般的に、婚姻費用は、収入が多いパートナー(義務者)が収入の少ないもう一方のパートナー(権利者)に対して支払うという形で分担します。 婚姻費用の金額は、家庭裁判所が参考にしている算定表が目安になります(2019年12月23日に改訂版が公表されました)。 子どもの年齢、人数、お互いの年収、会社員か自営業かなどで額が変わります。 改訂版をもとに計算例をあげると、次のようになります。
婚姻費用が月額12~14万円(「算定表」の「表13 婚姻費用・子2人表(第1子及び第2子0~14歳)」参照)・夫:会社員で年収600万
・妻:パートで年収150万円
・第1子:12歳
・第2子:10歳
※妻が子どもを引き取って育てていて、妻から夫に婚姻費用を請求するケースを想定
体験談
性格の不一致と一口に言っても、内情は夫婦によって様々です。性格の不一致で離婚を考えている人は、具体的に、どのようなトラブルや不満を抱えているのでしょうか。弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」に寄せられた相談と弁護士からのアドバイスを紹介します。
相談者の疑問
夫に、性格の不一致を理由に離婚をしたいと伝えました。
ご飯の食べ方やドアを閉めないこと、子供が走り回る床に物を置くなど些細な不満の積み重ねで、もう限界です。
毎日のように改善を促しても変わらず、「3年は我慢するけど、それでだめなら離婚」と言い続けてきました。
私は仕事をきっかけに適応障害になったのですが、帰宅後や休みの日に寝込んでいると、夫からは「うつの薬を飲んでいる奴が働くな」「体も心も弱い」「俺に頼るな」などと言われ、精神的にも辛いです。
夫は離婚を拒否しています。来週からは夫同意のもと別居予定で、調停を申し立てる予定です。離婚は認められるでしょうか。
弁護士の回答堀 晴美弁護士
「うつの薬を飲んでるやつは働くな」「体も心も弱い」「俺に頼るな」等はモラハラです。
性格の不一致だけでなく、モラハラも離婚原因に挙げることができると思います。
ただ、証拠が必要ですので、常にボイスレコーダーを用意しておいて、モラハラ発言があったら証拠として保存しておいてください。モラハラがあれば離婚原因として離婚が認められる可能性が出てくると思います。
相談者の疑問
妻と離婚したいと思っています。原因は性格の不一致で、話を切り出してから9か月くらい経ちますが認めてもらえません。離婚したい理由は以下のとおりです。
・セックスレス10年
・何を話してもすべてキレ気味に返される
・家事は料理くらいしかしない
・お金を渡してくれない
今は私が転勤になり、半年ほど別々に暮らしているのですが、これは別居として認められますか?子供に会いたいのと、離婚の話し合いをするために、休日はほぼ家に帰っています。
どうしても離婚したいです。調停も考えています。
弁護士の回答後藤 裕太弁護士
休みの日に帰って、結局夫婦同じ寝室で寝ている等であれば、なかなか別居という認定は難しいでしょうし、逆に、日中は子供に会ったり離婚の話し合いをしたとしても、夜は近場のビジネスホテル等に泊まっているというような事情があれば別居をしているという認定は得られやすいでしょう。
ただ、仮に別居だと認められたとしても、その期間は長くありませんから、それだけで離婚を認めてもらうのは難しいです。
質問者様は別居がないと離婚は難しいとお考えなのかもしれませんが、別居が認められなくても、離婚の話し合いや調停はできます。
そのためには、
・セックスレス10年
・妻の発言がすべてキレ気味
・家事は料理くらいしかしない
・お金を渡してくれない
離婚に向けて、このような事情をきちんと証拠化する(話し合いで相手がこれらの事情を認めている録音データや、こういった事情を裏付ける相手とのメールのやり取りなど)ことが重要です。
まとめ
「パートナーに離婚を切り出したけれど、合意が得られない」「話合いが難航している」など、当事者同士では解決が難しい場合、弁護士への相談を検討することをおすすめします。 弁護士のサポートを受けることで、トラブルを早く解決できる可能性があります。 法律の専門家である弁護士のアドバイスによって、自分もパートナーも納得できる着地点を見つけられるでしょう。話合いで解決せず、調停や裁判に発展した場合も、弁護士に依頼することで、申立てや書類作成、調停や裁判での対応などについてサポートを受けられます。
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記事中で触れた、法定離婚事由については、以下の記事で詳しく解説しています。