交通事故

弁護士監修記事 2018年08月17日

交通事故の賠償金はどう決まる?3つの基準とケーススタディ

「収入が途絶えた分は補償されるの?」「慰謝料はどのくらいもらえるの?」ーー。交通事故の被害を完全に回復して日常生活に戻るためには、お金の話は切っても切れません。

  • 交通事故による損害はどこまで補償される?
  • 慰謝料はどう計算するの?
  • 適切な賠償を受けるには?

ここではこうした疑問を解消できるように、交通事故の損害賠償を考える際に欠かせない「算定基準」とケーススタディをご紹介します。

目次

  1. 交通事故の損害賠償はどうなるの?
  2. 数倍の差も?3つの算定基準とは?
  3. ケーススタディ:金額の差はどのくらい?
  4. 裁判基準で保険金を受け取るには?
    1. 裁判を起こす
    2. 弁護士に依頼する
    3. ADRを利用する

交通事故の損害賠償はどうなるの?

交通事故にあってケガをした場合には、様々な損害が発生します。以下はその一例です。

  • 治療費や通院のための交通費
  • ケガを負った精神的苦痛に対する慰謝料
  • 仕事を休まざるを得なかったことに対する補償
  • 後遺症により職業が制限されたことに対する補償

交通事故によって発生した損害は、原則として加害者に請求できます。多くのケースでは、加害者が加入している民間の保険会社(「任意保険」と呼びます)から、保険金という形で賠償金を受け取ります。 しかし、保険金が受け取れるからといって、自然と適切な金額が支払われるとはかぎりません。 また、治療費など、実際に支払った金額がはっきりとしている支出は計算できますが、慰謝料などは計算するのが困難なため、適切な金額がどのくらいなのかを判断しづらい、という問題もあります。 そこで、ここからは慰謝料などを計算する3つの基準とケーススタディをご紹介します。

数倍の差も?3つの算定基準とは?

3つの算定基準 慰謝料などを計算する基準は「算定基準」と呼ばれ、次の3種類があります。

  • 自賠責基準
  • 任意保険基準
  • 裁判基準

自賠責基準とは、ドライバー全員が加入する義務のある自賠責保険が定めている基準です。自賠責保険は最低限の補償を目的としているため、金額としては3つの基準の中では最も低額となります。また、上限額が決まっています。 任意保険基準とは、ドライバーが任意で加入している民間の保険会社が各社で定めている基準です。保険会社から最初に提示される示談書の金額は、任意保険基準と考えてよいでしょう。 賠償金が自賠責保険の上限額を超えた場合に使われるため、自賠責基準よりは高額になります。 また、賠償金が自賠責の上限額を超えなくても、慰謝料については、任意保険会社の基準が自賠責基準より高額の場合に使われることがあります。 裁判基準とは、過去の裁判例から統計化された基準です。裁判では被害の実態をしっかりと認定し、それに見合う金額を計算するため、3つの基準の中で最も高額な基準になります。 ケースバイケースではありますが、任意保険基準の数倍になるケースもあり、被害者としては裁判基準を使うように働きかける必要があります。

ケーススタディ:金額の差はどのくらい?

では、実際に基準の違いはどのくらい金額差になるのでしょうか。以下のようなケースを想定してみましょう。

項目 内容
年齢 44歳
性別 男性
職業 会社員
直近3か月の平均収入 42万円
治療期間 入院 なし
通院 6か月
治療日数 70日
休業日数 10日
後遺症 なし

まず、このケースでは以下の費目を請求できます。

費目 概要
治療費 治療にかかった費用
診断書代 診断書作成にかかった費用
交通費 通院するためにかかった交通費
文書料 各種証明書の取得費用
休業損害 仕事を休んで減った収入分の補償
慰謝料 ケガを負った精神的苦痛に対する補償

このうち、治療費、診断書代、交通費、文書料については、3つの基準に関係なく、実際に支払った金額が損害額となります。ここでは「治療費等」として計25万円で想定しています。基準によって変動する休業損害と慰謝料について、自賠責基準と裁判基準を比べてみましょう。

費目 自賠責基準 裁判基準
休業損害 5.7万円 21万円
慰謝料 58.8万円 116万円
治療費等 25万円 25万円
合計 89.5万円 162万円

任意保険基準は各社ごとに異なる、かつ非公開なため、ここでは比較することを避けています。 後遺症がない場合、自賠責保険から支払われる上限額は120万円となり、上記例の89.5万円はこれを超えないため、保険会社から提示される金額も同程度と考えてよいでしょう。 ただし、慰謝料については、任意保険会社の基準が自賠責基準より高額の基準を定めている場合は、自賠責保険の範囲内でも任意保険会社からさらに支払われることになります。 上記のように、自賠責基準と裁判基準では2倍弱の差が出ることがわかります。後遺症があるケースでは、さらに差が開く可能性が高いでしょう。

裁判基準で保険金を受け取るには?

一般的に、被害者が保険会社との示談交渉の中で「裁判基準で保険金を算定してほしい」と求めても、応じてもらえる可能性は高くありません。 「示談交渉の段階での賠償金額と、時間と手間のかかる裁判で認められる賠償金額を同列に扱うことはできない」などといった理由で、裁判基準での算定を拒否されることが少なくないのです。 では、どうすれば裁判基準で保険金を計算してもらえるのでしょうか。裁判基準を使うためには、以下の3つの方法があります。

  • 裁判を起こす
  • 弁護士に依頼する
  • ADRを利用する

裁判を起こす

1つ目は当然ですが、裁判を起こすことです。裁判基準は統計値ですが、実際の裁判はその事故のケースに照らし合わせて事細かに計算するため、被害を証明さえできれば、最も納得のいく結果が得られる可能性があるでしょう。 一方で、手続きや法廷での立証は素人には難しく、専門家である弁護士に依頼して争うことになるケースが多いでしょう。

弁護士に依頼する

示談交渉から弁護士に依頼して交渉してもらうことが可能です。保険会社としても、裁判に発展すると時間も費用もかかることから、弁護士が交渉相手になると、示談で早めに決着をつけたいと考えることも多いです。 結果として、弁護士に依頼するだけで、裁判基準に近い金額で示談できる可能性があります。裁判基準は弁護士基準とも呼ばれることがありますが、それにはこうした背景があるのです。 弁護士に依頼するデメリットとして、当然ながら費用がかかります。弁護士費用は高い、というイメージを持たれることが多いですが、人身事故では裁判基準を適用できた増額分で、弁護士費用を十分にまかなえる可能性が高いでしょう。 さきほどの例に照らし合わせて、弁護士費用を計算してみましょう。依頼する弁護士の料金体系を以下のように想定します。

費目 説明 料金体系
着手金 依頼時点で支払う費用 無料
報酬金 依頼完了時点で支払う費用 15万円+賠償額の8%

この料金体系の場合では、弁護士費用と手元に残る金額は次のようになります。

項目 金額
賠償金 162万円
弁護士費用 27.96万円
手元に残る金額 134.04万円

元々の自賠責基準では89.5万円の保険金であったことと比較すると、弁護士費用を支払ったとしても45万円ほど増額していることがわかるでしょう。 弁護士の料金体系にはいくつかのパターンあります。詳しくは以下の記事もご覧ください。 また、あなたや家族の加入している保険に「弁護士費用特約」が付帯されていれば、多くのケースで弁護士費用を負担せずに弁護士に依頼することができます。

ADRを利用する

ADRとは、保険会社との話合いを第三者機関に仲裁してもらい、和解を目指す手続きです。仲介役として弁護士などの専門家が間に立ち、裁判基準で金額を計算するよう促してくれます。 交通事故紛争の解決のために利用されるADR機関は複数ありますが、主に利用されていて、紛争解決の可能性が高い機関は「交通事故紛争処理センター」と「日弁連交通事故相談センター」です。 ADRは無料で利用できるのが大きなメリットです。一方で、事実関係に争いがある場合、例えば事故状況についてそれぞれの言い分が異なるような場合では、必ずしも、どちらの言い分が正しいかを判断してもらえるとは限りません 警察の記録などに従って機械的に金額を計算するため、言い争いがなく、金額だけが問題なケースでは納得のいく結果が期待できるでしょう。 また、あくまで保険会社との話合いを仲裁してくれる機関であり、被害者請求や後遺障害の等級認定などの手続きをサポートしてはくれません。そうした手続きのサポートが必要な場合は、弁護士に依頼することを検討しましょう。

ADRについては、この記事の下の「あわせて読みたい関連記事」で詳しく説明しています。

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