弁護士に依頼する4つのメリット
まず、弁護士に依頼することのメリットは、大きく以下の4つがあげられます。
- 被害者の代わりに保険会社と交渉してもらえる
- 個人で交渉するよりも高額の保険金を獲得できる可能性が高まる
- 納得できる過失割合で解決できる可能性が高まる
- 適切な後遺障害等級を獲得できる可能性が高まる
それぞれのメリットについて、以下で詳しく解説していきます。
被害者の代わりに保険会社と交渉してもらえる
交通事故の被害にあった場合、自分が加入している任意保険会社が加害者(加害者が加入する保険会社)との交渉を代行してくれることが一般的です(示談代行サービス)。 しかし、保険に加入していない場合には、加害者側の保険会社と賠償に向けた交渉を自分でおこなう必要があります。 また、自動車保険に加入していても、自分に全く落ち度のない「もらい事故(信号で停止中に後ろから追突されたようなケース)」にあったような場合、法令上、保険会社は示談代行をすることができないルールになっているため、本人が交渉する必要があります。 ケガの治療やリハビリに加え、仕事などの日常生活を送りながら保険会社と交渉することを負担に感じる人もいるでしょう。 弁護士に依頼すれば、相手方の保険会社との連絡は、弁護士が「窓口」となってサポートしてくれるため、ケガの治療や社会復帰に専念することができます。
個人で交渉するよりも高額の保険金を獲得できる可能性が高まる
交通事故の賠償金を計算する方法は複数ありますが、その中で最も高額な賠償金を期待できる計算方法は、「裁判基準(弁護士基準)」と呼ばれる算定方法です。 これは、過去の裁判で示された判断(裁判例)の積み重ねをもとにした算定方法で、保険会社が示す算定方法よりも、一般的に賠償金額は高額になります。 しかし、専門家ではない被害者が「裁判基準で保険金を算定してほしい」と保険会社に求めても、応じてもらえる可能性は高くありません。 「示談交渉の段階での賠償金額と、時間と手間のかかる裁判で認められる賠償金額を同列に扱うことはできない」などといった理由で、裁判基準での算定を拒否されることが少なくないのです。 一方で、弁護士が交渉相手となれば、保険会社は、裁判を起こされることも見越して交渉に臨みます。 そのため、示談交渉の段階でも、裁判基準か、もしくはそれに近い金額での賠償金で示談が成立する可能性があるのです。 また、加害者側の保険会社に対して損害賠償請求をするにあたって、弁護士が賠償の費目(治療費、慰謝料、休業損害、逸失利益など)を適切な金額で算定してくれます。 このように、弁護士が交渉を担当することで、事故で受けた損害を適切に算定し、示談交渉の段階でも裁判基準に近い金額で賠償金を獲得できる可能性が高まります。
納得できる過失割合で解決できる可能性が高まる
過失割合とは、交通事故が起きたことについて、加害者と被害者それぞれにどの程度の責任があるかを、「9対1」「8対2」などの割合で示したものです。 事故について、「自分には全く非がない」と考えていても、保険会社が、「あなたにも事故が起きたことについて一定の責任(過失)がある」と主張してくることがあります。 過失割合は、保険会社から支払われる保険金(損害賠償金)の額に大きく影響します。「過失割合」が2割あるということは、その分保険金が減額されることを意味します。 交通事故の案件に精通した弁護士に依頼すれば、自分が望む過失割合を認めてもらうためにどのような主張を組み立て、どのような証拠が必要になるのかを冷静に判断してもらうことができます。 また、実況見分調書のような、取り寄せるために複雑な手続きがある証拠についても、被害者の代わりに手続きをしてもらうことができます。
適切な後遺障害等級を獲得できる可能性が高まる
交通事故で負ったケガが完治せず、一定の症状が残った場合、「損害保険料率算出機構」という機関に申請することで、後遺障害等級の認定を受けることができます。 後遺障害等級に認定されると、その等級に応じた後遺障害慰謝料や逸失利益(事故にあわなければ得られたはずの利益)を保険金として支払ってもらうことができます。 後遺障害等級認定の手続きは、保険会社が進めてくれることが通常です(「事前認定」といいます)が、被害者自身が行うこともできます(「被害者請求」といいます)。 後遺障害等級認定は、書類審査が原則であるため、提出する書類の精度がとても重要になります。 交通事故の事件に注力している弁護士に被害者請求の手続きを進めてもらえば、医師とも連携して、適切な後遺障害診断書を作成してもらえ、納得の行く等級を獲得できる可能性が高まります。
弁護士に依頼するデメリットはある?
交通事故について弁護士に依頼することには、デメリットもあるのでしょうか。
相談者の疑問
交通事故に遭い、通院日数90日です。弁護士に介入してもらう場合のメリット、デメリットがあれば教えてください。
弁護士の回答岡本 大地弁護士
メリットは、適切な賠償額を算定できる点です。また、保険会社との対応も行いますので、ご相談者様が治療に専念できる点です。デメリットは、弁護士費用を支払う点を除き、ないと思います。
弁護士費用がかかること以外に、デメリットは考えにくいようです。弁護士費用も、「弁護士費用特約」を利用すれば、ほとんど負担せずに弁護士のサポートを受けることができます。 弁護士費用特約については次の項目で詳しく解説します。
弁護士費用特約とは
弁護士費用特約とは、弁護士に依頼した場合にかかる法律相談料や着手金、報酬金などの費用を、保険会社が負担してくれる、という内容の特約です。自動車保険や火災保険についていることが多いです。 被害者自身が加入している保険の弁護士費用特約を使うこともできますし、家族が加入している場合でも利用できる可能性があります。 弁護士費用特約を利用すれば、実質的負担なしに弁護士に依頼することができます。 具体的にカバーされる金額は、法律相談料が10万円程度まで、示談交渉や裁判などにかかった費用(弁護士に支払う着手金や報酬金など)が300万円程度まで、という内容が一般的です。契約内容によって異なる場合があるので、詳しくは加入している保険会社に確認しましょう。
どんな事故で利用できるのか
弁護士費用特約は、さまざまな交通事故のケースにおいて利用することができます。自分に非や責任がなく、相手方の過失が100%の「もらい事故」の場合などについて利用できます。たとえば、「赤信号で停車中に後ろから追突された」というようなケースです。 また、自分に過失があったとしても弁護士費用特約を利用できます。過失割合が2~3割の場合は利用可能な自動車保険会社が多いですが、どの程度の過失まで弁護士費用特約を利用できるのかは、各保険会社の約款や契約内容によって異なるので確認しておきましょう。
利用できないのはどんなケースか
各保険会社の約款や契約内容によって違いはありますが、どの保険会社でも、被保険者に故意や重大な過失があった場合は、弁護士費用特約が利用できないことになっています。 この他にも、以下のような場合は弁護士費用特約を利用することができません。
- 過失割合が100%であった場合
- 無免許運転、酒気帯び運転、薬物使用など、正常な運転ができない状態での事故
- 地震、津波、台風などの天災による被害の事故
利用することでデメリットはある?
弁護士費用特約を利用する場合、デメリットはあるのでしょうか。
相談者の疑問
赤信号待ちで停止中、後方から追突されて頚椎捻挫になりました。
週5回のペースで治療・リハビリを続けていますが、相手側保険会社より車の損傷具合からこれまでのケースを鑑みて治療費を打ちきると言われました。しかし痛みが続いているので打ち切り後も自身の健康保険を使って治療を継続しています。
知人より弁護士特約を使ってこれからのことを相談した方がよいとアドバイスを受けました。このようなケースで弁護士特約を使った場合のメリット・デメリットはどのようなものがありますか。
弁護士の回答野澤 孝有弁護士
保険会社は、頚椎捻挫の受傷の場合、一般に6か月で症状固定とみることが多いのです。受傷が6か月経つと、後遺障害等級の認定申請も可能です。
保険会社がする後遺障害の認定申請は、事前認定申請と言いますが、交通事故専門の弁護士は、諸資料を準備して、保険会社任せにしないで、自ら被害者請求で後遺障害等級の認定申請もしてくれます。
弁護士特約を使っても、保険料の等級変更もありませんので、デメリットはありません。
弁護士費用特約を使うと、保険料が値上がりしてしまうのではないかと心配する方もいるかもしれませんが、利用しても保険の等級に影響はないようです。安心して利用できるでしょう。
弁護士費用特約を利用するには
保険会社に対して、弁護士費用特約を利用したい旨を伝えましょう。 依頼する弁護士は、自分で選ぶことができます。特に指定しない場合でも、保険会社が紹介してくれることがあります。 弁護士特約の内容によりますが、依頼したあとで弁護士を変更したくなった場合は、途中から弁護士を変更して、別の弁護士に依頼することも可能です。その際は保険会社に連絡することを忘れないようにしましょう。
特約がない場合でも弁護士に依頼するべきか
自身や家族が加入する保険に弁護士費用特約がついていない場合、弁護士に依頼するべきか悩む人もいるでしょう。 ですが、弁護士が介入することによって、被害者自身(あるいは被害者が加入していた保険会社)が交渉を続けていた場合よりも、最終的に支払われる保険金が増額することを期待できます。 弁護士費用は、その増加した保険金の範囲でまかなえることが少なくありません。 つまり、結果的には、弁護士に依頼しなかった場合よりも受け取る金額が大きくなる可能性が高いといえます。 費用面が心配な場合は、初回の相談時に、弁護士費用のおよその金額や、弁護士に依頼することでどの程度保険金の増額が見込めるのかを、確認してみてください。
交通事故の弁護士費用の内訳と相場
弁護士に相談や依頼をする場合にかかる費用には、主に以下の項目があります。必ず全ての費用が必要となるわけではありませんが、どのような費用があるのか確認しておきましょう。
相談料
法律相談料とは、弁護士に対して交通事故問題の相談をする際にかかる費用のことです。 30分5,000円程度が一般的ですが、最近は初回に限り相談料無料で行っている弁護士事務所も少なくありません。法テラスを利用した場合や、初回相談の場合は無料の場合もあります。
着手金
弁護士に事件処理を依頼する際に発生する費用です。結果的に依頼人が望む結果が得られなかったとしても支払う必要があり、返金はされません。
示談交渉を依頼する場合
示談交渉の場合は、10万円~20万円が着手金の相場となっています。
裁判手続きを依頼する場合
裁判手続きを依頼する場合、以前は弁護士が自由に報酬基準を定めることはできなかったので、日本弁護士連合会(日弁連)が報酬基準の規定を定めていました((旧)日本弁護士連合会報酬等基準)。 この規定が廃止され、弁護士報酬の基準を弁護士が自由に設定できるようになった現在でも、多くの弁護士事務所がこの基準をもとに金額を算出しています。 一般的には、「経済的利益の●%」という形で定められています。 経済的利益とは、「弁護士に依頼したことによって増加した利益」を指します。次のようなケースで考えてみましょう。
- 被害者が交渉した際は、保険会社は300万円の支払いしか認めなかった
- 弁護士に依頼した結果、1800万円の賠償金を得られた
- 着手金は経済的利益の20%
この場合、「弁護士に依頼したことによって増加した金額」は「1800万円 - 300万円 = 1500万円」となります。報酬金はその20%なので、300万円になります。
弁護士によっては、経済的利益を「実際に依頼者が得た金額」とする場合もあります。弁護士に依頼する際には、経済的利益の考え方についても確認するようにしましょう。
(成功)報酬金
成功報酬は、事件解決に成功した場合に事件終了時に支払う費用のことです。
示談交渉を依頼する場合
示談交渉の場合は、経済的利益の10%~20%程度で設定している事務所が一般的です。依頼する際は、問い合わせて確認したほうがよいでしょう。
裁判手続きを依頼する場合
着手金と同様、旧弁護士報酬基準に則った事務所が多いようです。(旧)日本弁護士連合会報酬等基準によれば、交通事故の損害賠償請求事件の報酬金は次のように定められています。
経済的利益 | 着手金 |
---|---|
〜300万円 | 経済的利益の16% |
300万1円~3000万円 | 経済的利益の10%+18 万円 |
3000万1円~3億円 | 経済的利益の6%+138 万円 |
3億を超える場合 | 経済的利益の4%+738 万円 |
裁判手続きの着手金・報酬金は、事務所によって異なる基準を定めている場合があります。具体的に依頼を検討する際は、弁護士事務所に問い合わせて確認するようにしましょう。
手数料
資料作成などの1回程度で終了するような事務的な手続き依頼をした場合に発生する費用です。
実費
文字通り、実際にかかった費用のことで、裁判で書面のやりとりをする際の郵送代や印紙代などの代金が含まれます。弁護士が裁判所などに移動する際の交通費もこれに含まれます。
日当
弁護活動の中で、出張しなければならない際にかかる費用のことです。弁護士が遠くの裁判所に出向く際などに発生します。 半日あたり3万円~5万円程度が一般的ですが、出張する場所や、それぞれの弁護士事務所によって異なるので、依頼する際に確認するようにしましょう。
弁護士に依頼するタイミング
交通事故の被害にあった直後、ケガの治療中、保険会社との本格的な示談交渉が始まった段階…。弁護士に依頼しようと思うタイミングはさまざまでしょう。 弁護士としては、早めにその案件にかかわれたほうが、事故状況の証明するための資料や、被害を証明するための診断書など、交渉を有利に進めるための証拠を早期に入手することができます。 被害者としても、早い段階で弁護士に依頼すれば、保険会社とのやりとりや資料収集などの負担から早期に開放され、治療やリハビリなどに生活の立て直しに集中することができます。 こうしたことから、基本的には、弁護士に依頼するタイミングは、早ければ早いほどよいといえるでしょう。 とはいえ、保険会社との交渉が続いている段階で、弁護士に依頼することが遅すぎるということはありません。 保険会社から保険金額を提示された後のタイミングであっても、弁護士に依頼することで保険金の増額が見込める可能性は十分にあります。 事故後のどのタイミングであっても、保険会社との交渉を負担に感じ、保険会社の対応に納得できない思いを抱いたときは、弁護士に依頼することを検討するとよいでしょう。
後悔しない弁護士選びのポイント
インターネットで「交通事故 弁護士」などと検索すると、様々な弁護士や法律事務所の情報が出てきます。依頼する弁護士を選ぶ際、どのような点に注目するとよいのでしょうか。
相談者の疑問
交通事故被害者です。ネット検索すると、「交通事故専門」「交通事故に強い」などとうたう弁護士事務所がたくさん出てきます。どのような基準で弁護士を選べばいいのでしょうか。
弁護士の回答中間 隼人弁護士
インターネットで選ぶのでしたら、費用を明確に説明しているか、解決事例や依頼者の声などを掲載しているか、当該弁護士の人となりが伺えるか、といったところが、相談する弁護士を選ぶ時点では目安になります。
あとは実際に相談してみて、方針や見通し、特にご相談者様にとって不利になりうる点も詳しく説明してくれるか、話してみて信頼できると感じるかどうか、で依頼するかどうかを判断することになりますね。
交通事故について弁護士に依頼するときには、費用をはじめ、その弁護士の経験や人柄、依頼者からの評価といった点に注目して、自分に合った弁護士を厳選しましょう。
自分に合う弁護士と出会う方法
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まとめ
「交通事故に遭ったが、加害者とどうやって交渉すればいいのかわからない」「保険会社から提示された賠償金が妥当な額なのか判断できない」…。このような悩みを抱えている人は、弁護士への相談を検討しましょう。 交通事故の賠償金の計算は複雑で、専門知識が必要です。また、示談交渉や後遺障害等級申請についても、ノウハウや経験の有無によって最終的な結果が変わる場合があります。 弁護士に依頼することで、加害者との示談交渉をはじめ、様々な手続きを代わりにおこなってもらうことができます。交通事故案件に注力する弁護士のサポートを受けることで、自分一人で奮闘するよりも手間やストレスをかけずに、より満足できる結果を得られるでしょう。