交通事故紛争処理センターを利用するメリットとは?利用方法や費用と解決までの流れも解説

交通事故紛争処理センターは、交通事故の紛争を解決するための代表的なADR(裁判外紛争解決手続き)を行う機関です。法律相談や和解あっせんなど、解決に向けたサポートを無料で行ってくれます。 この記事では、交通事故紛争処理センターを利用するメリットや利用方法、費用、解決までの流れを詳しく解説します。

目次

  1. 交通事故紛争処理センターとは
    1. 交通事故紛争処理センターを利用するメリット
    2. 交通事故紛争処理センターを利用できる事故・できない事故
  2. 交通事故紛争処理センターの利用方法
    1. 必要書類
    2. 解決までの流れ
  3. 日弁連交通事故相談センターとの違い
    1. 利用できるセンターの数・所在地
    2. 相談できる事故内容
    3. 相談できるタイミング
  4. 交通事故紛争処理センターでの解決が難しい場合、訴訟に移行するケースもある
  5. 交通事故紛争処理センターの地域別リンク集
  6. まとめ
  7. 次はこの記事をチェックしましょう

交通事故紛争処理センターとは

交通事故紛争処理センターは、交通事故の紛争を解決するための代表的なADR(裁判外紛争解決手続き)を行う機関です。 法律相談や和解あっせんなど、解決に向けたサポートを無料で行ってくれます。

交通事故紛争処理センターを利用するメリット

交通事故紛争処理センターを利用すると、次のようなメリットがあります。

  • 訴訟に比べて早期に解決できる
  • 任意保険会社が提案する賠償額よりも高額な賠償額が提示される
  • あっせんで和解することが難しい場合、「審査」という手続きが行われ、任意保険会社は審査の結果を尊重しなければならない(事実上の拘束力がある)

交通事故紛争処理センターの和解あっせんは、人身事故の場合、通常3~5回で和解が成立しています。物損事故の場合は、通常1~2回で和解が成立しています。 和解あっせんにより、訴訟に比べて早期に解決することができます。 和解あっせんでは、相談担当弁護士は、双方から話を聞いた上で、中立公正な立場で賠償額など和解のためのあっせん案を提示します。 保険会社が提案する賠償額は、裁判で認められている賠償額(裁判基準)よりも低いことが一般的ですが、交通事故紛争処理センターでは、裁判基準に近い賠償額をあっせん案として提示してくれます。 その結果、保険会社が提案する賠償額よりも高い金額で和解できる可能性があります。 あっせんで和解することが難しい場合、「審査」という手続きが行われます。 審査の結果に被害者が同意すれば、保険会社はその結論に拘束され、裁定の内容で示談が成立することになります。 そのため、被害者に有利な内容で示談を成立させることができます。

交通事故紛争処理センターを利用できる事故・できない事故

交通事故紛争処理センターの法律相談は、事故直後や治療中などの段階では法律相談を受け付けていません。 また、「歩行者対自動車」「自動車対自動車」など、自動車(バイクなど2輪自動車を含む)が絡む事故である必要があります。 交通事故紛争処理センターは、加害者が任意保険(共済)に加入していなかった場合は利用することができません。

交通事故紛争処理センターの利用方法

法律相談や和解あっせんをしてもらうためには、事前に電話などで相談日時を予約する必要があります。 予約の受付時間は、月曜日~金曜日(祝祭日と12月29日~1月3日を除く)の9時から17時です(12時~13時は休憩時間)。 申立人(被害者)の住所地か、事故があった場所を担当するセンターに予約する必要があります。

必要書類

後日、センターから利用申込用紙と、必要書類について説明した資料が送られてきます。当日までに準備しておきましょう。 保険会社との示談交渉がすでに始まっている場合は、センターに相談を申し込んだことを保険会社の担当者に連絡しましょう。 初回の相談日に、センターの窓口で利用申込書と関係資料を提出しましょう。資料は返却されないので、コピーを用意しておきましょう。 窓口では、職員が資料をもとにして、申立人に事故の概要などの聞き取りをします。

解決までの流れ

交通事故紛争処理センターでは、まず法律相談を行ない、その後に和解あっせん手続きを行ないます。 法律相談では、相談担当の弁護士が面接して申立人の主張を聞き取り、提出された資料を確認して、問題点を整理・助言します。 相談内容によっては裁判手続きをすることを勧められたり、他のADR機関(日弁連交通事故相談センター)を紹介されたりして、相談のみで終了する場合もあります。 和解あっせんは、弁護士が間に入り、公平・中立な立場で示談の成立を目指す手続きです。 申立人と保険会社(共済組合)双方が出席する相談日に、相談担当弁護士が和解のあっせんを行ないます。1回につき1時間程度行われます。 人身事故の場合、通常は3~5回で和解が成立しています。物損事故の場合は、通常1~2回で和解が成立しています。 相談担当弁護士は、双方から話を聞いた上で、中立公正な立場で賠償額など和解のためのあっせん案を提示します。 任意保険会社が提案する賠償額は、裁判で認められている賠償額(裁判基準)よりも低いことが一般的ですが、交通事故紛争処理センターでは、裁判基準に近い賠償額をあっせん案として提示してくれます。 和解あっせんで合意に至った場合、相談担当弁護士の立ち会いのもとで、示談書または免責証書を作成します。

日弁連交通事故相談センターとの違い

交通事故紛争の解決に利用できるADR機関には、交通事故紛争処理センターのほかに、「日弁連交通事故相談センター」があります。 どちらも無料で利用できます。 また、保険会社(共済組合)と直接示談交渉する場合よりも高額の賠償金で示談(和解)が成立することを期待できる点も共通です。 交通事故紛争処理センターと日弁連交通事故相談センターとの違いは、次のような点です。

  • 相談場所の数
  • 相談できる事故内容
  • 相談できるタイミング

利用できるセンターの数・所在地

交通事故紛争処理センターは全国に11の支部・相談室があります(札幌、仙台、東京、さいたま、静岡、名古屋、大阪、金沢、広島、高松、福岡)。 日弁連交通事故相談センターは、全国に156の相談所があります(2021年1月現在)。ただし、相談所によっては法律相談しか受け付けておらず、示談あっせんを受けられないことがあります。

相談できる事故内容

交通事故紛争処理センターと日弁連交通事故相談センターは、どちらも「歩行者対自動車」「自動車対自動車」など、自動車(バイクなど2輪自動車を含む)が絡む事故である必要があります。 ただし、日弁連交通事故相談センターでは、例外的に自転車事故についても示談あっせんの手続きを受けることができる場合があります。 加害者が無保険だった場合、交通事故紛争処理センターは、加害者が任意保険(共済)に加入していなかった場合は利用することができません。 一方、日弁連交通事故相談センターは、加害者が自賠責保険のみ加入している場合や、自賠責保険にすら加入していない場合でも、示談あっせんの手続きを受けることができます。 ただし、物損被害のみの場合は、加害者が任意保険などに加入していないと利用することができないことに注意しましょう。

相談できるタイミング

交通事故紛争処理センターは、治療が終わった段階、もしくは後遺障害等級認定の手続きが終わった段階でないと、原則として利用することはできません。 これに対して、日弁連交通事故相談センターは、治療中の段階であっても相談することができます。

交通事故紛争処理センターでの解決が難しい場合、訴訟に移行するケースもある

事故の内容によっては、交通事故紛争処理センターの和解あっせんが解決に適さず、訴訟に移行するケースもあります。 交通事故紛争処理センターで解決できるのは、事実関係に大きな争いがないケースです。

交通事故紛争処理センターについて

相談者の疑問 交通事故紛争処理センターに和解あっせんをお願いするか考えています。どのような事案が解決に向いていますか?

沢田 貴人の写真 弁護士の回答沢田 貴人弁護士 紛争処理センターにおいては、主として事実関係に大きな争いがなく、双方の主張に照らして損害評価の点で調整が可能な事案が向いています。事故態様など事実関係が主要な争点となっているような場合には、紛争処理センターでの解決に向かない事案もあります。同センターの性質を考えた上でご利用されることをお勧めします。

事実関係に争いがあり、交通事故紛争処理センターで解決が難しそうな場合には、相手方の保険会社から訴訟への移行を要請させる場合があります。

ADRについて教えて下さい。

相談者の疑問 交通事故の被害者側です。交通事故紛争処理センターは相手の同意が無いと利用できないのでしょうか?

小林 大祐の写真 弁護士の回答小林 大祐弁護士 基本的には相手方保険会社の同意がなくても利用可能です。もっとも、保険会社等から訴訟移行の要請が出された場合には、交通事故紛争処理センターの判断如何では、手続が終了し、訴訟に移行する可能性があります。

①事故状況を明らかにする資料が不足する場合、②事故とケガの相当因果関係が明らかでなく高度な医学的判断が必要な場合等で、相手方保険会社が、交通事故紛争処理センターではなく裁判所で適切に判断してもらいたいと考える場合は、訴訟移行の要請をされる可能性があります。

交通事故紛争処理センターの和解あっせんでは、相談担当弁護士が中立公正な立場で間に入ってくれるので、必ずしも弁護士を立てる必要はありませんが、訴訟ではそのようなサポートはありません。訴訟へ移行する場合には、弁護士への依頼を検討しましょう。

交通事故紛争処理センターの地域別リンク集

交通事故紛争処理センターの相談先は、申立人の住所地または事故があった場所により異なります。

交通事故紛争処理センター本部・支部・相談室 申立人の住所地/事故があった場所
札幌支部 北海道
仙台支部 宮城県、青森県、岩手県、秋田県、山形県、福島県
東京本部 東京都、神奈川県、千葉県、山梨県、茨城県
さいたま相談室 埼玉県、群馬県、栃木県、長野県、新潟県
名古屋支部 愛知県、岐阜県、三重県
静岡相談室 静岡県
金沢相談室 石川県、富山県、福井県
大阪支部 大阪府、兵庫県、京都府、滋賀県、奈良県、和歌山県
広島支部 広島県、岡山県、山口県、鳥取県、島根県
高松支部 香川県、愛媛県、徳島県、高知県
福岡支部 福岡県、鹿児島県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県

まとめ

交通事故紛争処理センターなどのADRは、訴訟に比べて費用が安く、解決までの時間が短いという特徴があります、また、保険会社と直接示談するのに比べて、高額な賠償額を得られる可能性が期待できます。 事故態様などの事実関係に争いがある場合には、交通事故紛争処理センターでの解決に適さず、訴訟をすることになる可能性があります。「保険会社から賠償金を提示されているが、その前提となる事実関係に異議がある」「交通事故紛争処理センターの利用を考えているが、保険会社から訴訟しかないと言われている」…。このような悩みを抱えている人は、弁護士への相談を検討しましょう。 弁護士に依頼することで、加害者との示談交渉をはじめ、様々な手続きを代わりにおこなってもらうことができます。交通事故案件に精通した弁護士のサポートを受けることで、自分一人で奮闘するよりも手間やストレスをかけずに、より満足できる結果を得られるでしょう。

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