弁護士・司法書士・行政書士の違い
弁護士・司法書士・行政書士は、いずれも国家資格者として法律に関わる業務を行いますが、扱える業務の範囲や権限には明確な違いがあります。
弁護士・司法書士・行政書士の違いは、「紛争性のある事案」つまり、相手方との争いがある場合に代理人として対応できるかどうかという点です。
弁護士は原則としてすべての法律事務を取り扱うことができる一方、司法書士や行政書士には一定の制限があります。
| 項目 | 弁護士 | 司法書士 | 行政書士 |
|---|---|---|---|
| 紛争対応 | ◯ | △注釈1※ 1 | × |
| 代理交渉 | ◯ | △注釈1※ 1 | × |
| 裁判対応 | ◯ | △注釈2※ 2 | × |
| 書類作成 | ◯ | ◯注釈3※ 3 | ◯注釈4※ 4 |
- 認定司法書士のみ・140万円以下
- 認定司法書士のみ(簡易裁判所)
- 裁判所・法務局に提出する書類など
- 役所に提出する書類、事実証明の書類など
弁護士ができること・できないこと
弁護士の最大の特徴は、あらゆる法律事務について依頼者の代理人となり、交渉や訴訟を行える点にあります。
具体的には、以下のような幅広い業務を扱うことができます。
- 法律相談(すべての分野)
- 契約書・法的書類の作成
- 紛争の交渉代理(金額・内容の制限なし)
- 訴訟代理
- 刑事事件の弁護
- 示談交渉・調停・仲裁の代理
相手と対立している場合でも、弁護士なら制限なく対応できる
特に重要なのは、相手方と意見が対立している場合や、今後対立する可能性がある紛争性の高い事案でも、制限なく対応できることです。
弁護士は、離婚問題、相続トラブル、債権回収、労働問題、交通事故など、あらゆる分野の法的紛争において、依頼者の権利を守るために活動します。
また、弁護士資格を持っていれば、法律上は司法書士や行政書士の業務を行うことができます。
なお、税理士業務については、税理士法第51条に基づき、弁護士が税務訴訟に関連して行う場合等に限られるため、一般の税理士業務を当然に行えるわけではありません。
司法書士ができること・できないこと
司法書士は、主に登記手続きの専門職として位置づけられています。
不動産の名義変更を行う「不動産登記」や会社設立時の「商業登記」は、司法書士(および弁護士)が主に担う専門業務です。
また、裁判所に提出する書類の作成や、成年後見に関する手続きも司法書士の重要な業務となっています。
- 不動産登記・法人登記の代理申請
- 裁判所提出書類の作成
- 成年後見・任意後見に関する手続き
- 法律相談(認定司法書士のみ、140万円以下の案件)
- 簡易裁判所での訴訟代理(認定司法書士のみ、140万円以下)
認定司法書士なら代理業務も条件付きで可能
簡易裁判所訴訟代理等関係業務の認定考査(法務省が実施)に合格した「認定司法書士」であれば、一定の範囲で訴訟の代理業務を行うことも可能です。
ただし、代理できるのは訴訟の目的となる金額が140万円以下の民事事件で、簡易裁判所で扱われるケースに限られます。具体的には、次のような案件です。
- 過払い金請求
- 少額の債務整理
- 敷金返還請求
一方で、最初は140万円以下の案件でも、交渉の過程で請求額が増えたり、相手方が強く争って地方裁判所での訴訟に発展したりする場合があります。
このような場合、司法書士では対応できなくなるため、途中から弁護士に依頼し直す必要が生じることがあります。その結果、手続きがやり直しになり、時間や費用が余計にかかる可能性もあります。
行政書士ができること・できないこと
行政書士は、主に官公署に提出する書類の作成と、権利義務や事実証明に関する書類の作成を専門とする国家資格者です。
具体的には、以下のような業務を行います。
- 官公署への提出書類の作成・提出代行
- 建設業許可・飲食店営業許可などの各種許認可申請
- 内容証明郵便の作成
- 契約書の作成(紛争性のないもの)
- 遺産分割協議書の作成(紛争性のないもの)
- 会社設立の書類作成
- 行政不服申立ての代理(特定行政書士のみ)
行政書士は紛争性のあるケースは一切取り扱えない
行政書士の大きな特徴は、書類作成とその提出代行に業務が特化している点です。
しかし、弁護士や司法書士と異なり、当事者同士で争いが生じている案件(紛争性のある案件)を取り扱うことはできません。
例えば、遺産分割について相続人同士で意見が対立している場合、行政書士は遺産分割協議書を作成することはできても、交渉の代理人にはなれません。
ただし、平成26年の法改正により、特定の研修と試験に合格した「特定行政書士」は、行政機関の処分に対する不服申立ての代理業務を行えるようになりました。
たとえば、営業許可の申請が不許可となった場合に、その処分の見直しを求める手続きを代理することができます。
司法書士・行政書士の独占業務とは?
司法書士には不動産登記や商業登記、行政書士には官公署への許認可申請など、それぞれ専門とする業務があります。
これらは一般に、その資格を持つ人だけが、報酬を得て行うことができる「独占業務」と呼ばれています。
弁護士ができないことはある?
実は、法律上は弁護士も、司法書士や行政書士の独占業務を行うことができます。
弁護士法では、他の法律で制限されていない限り、弁護士はさまざまな法律事務を扱えると定められているためです。
もっとも、実務では次のように各専門職が得意分野を担当するケースが一般的です。
- 登記申請(不動産登記・商業登記):司法書士
- 許認可申請(建設業許可・飲食店営業許可など):行政書士
このように、法律上は弁護士も対応できますが、実務ではそれぞれの専門職に依頼することが多いのが実情です。
ただし、当事者同士で争いがある場合や、今後争いになる可能性がある場合は弁護士が対応する領域になります。
相談先の見極め方は「揉めているかどうか」
法律関連の困りごとで「自分の問題の相談先」に迷う方は多いでしょう。
相談先を見極める最も重要なポイントは、あなたが抱えている問題に「紛争性があるか(他人と揉めているか)」どうかです。
紛争性とは、相手方との間に意見の対立や争いがある状態、または今後そうなる可能性がある状態を指します。
次のような場合は、弁護士に相談するのが適切です。
- 相手方と既に意見が対立している
- 交渉や話し合いが必要
- 今後トラブルに発展する可能性がある
- 金額が140万円を超える可能性がある
- 法的な権利主張が必要
- 裁判になる可能性がある
- 相手方が弁護士を立てている
一方で、争いがなく手続き中心の案件であれば、司法書士や行政書士に依頼することで費用を抑えられる場合があります。
例えば以下のような場合です。
- 相手方との争いがまったくない
- 単純な書類作成や手続きのみ
- 登記申請が中心(司法書士)
- 許認可申請が中心(行政書士)
- 金額が確実に140万円以下(司法書士の場合)
後からトラブルに発展するケースも
しかし、注意したいのは、今は争いがなくても、途中から紛争に発展するケースが多いという点です。
話し合いで解決できると思っていても、交渉の途中で相手の態度が変わったり、新たな主張が出てきたりすることは珍しくありません。
その場合、司法書士や行政書士では対応できず、弁護士に依頼し直すことになり、結果として費用や時間がかさんでしまう可能性があります。
迷ったときは、「少しでも争いになる可能性があるか」という視点で判断することが大切です。
よくある相談事例での「紛争性あり・なし」の比較
紛争性があるかないかを判断するのは、実際には難しい場合があります。
そこで、よくある相談事例をもとに 「紛争性があるケース」と「紛争性がないケース」 を比較してみましょう。
①相続の場合
相続では、相続人同士の意見が一致しているかどうかが大きなポイントになります。
たとえば、遺言書がなくても、相続人全員が「法定相続分どおりに分ける」と円満に合意しているケースでは、基本的に紛争性はありません。
この場合は、次のように専門家を分けて依頼できます。
- 遺産分割協議書の作成:行政書士
- 不動産の相続登記:司法書士
一方、家族の間で分け方や財産の価値について意見が分かれているなら「トラブル(紛争性)」があると考えられます。その場合は、法律の専門家である弁護士に相談するのが安心です。
弁護士に相談すべきケース(紛争性がある場合)
- 相続人の一人が「法律で決まった分よりも多く欲しい」と主張している
- 遺言書の内容に納得できない人がいる
- 「生前に介護を頑張った(寄与分)」や「生前に多額のお金をもらっていた人がいる(特別受益)」などの不満が出ている
- 不動産などの遺産がいくらになるのか、評価額について意見が食い違っている
- 生前贈与をどう扱うかで揉めている
行政書士や司法書士でも対応できるケース(紛争性がない場合)
- 相続人全員が、法律で決められた割合(法定相続分)で分けることに納得している
- 遺産の中身がはっきりしていて、預金や自宅のみなどシンプルである
- 親族同士の仲が良く、スムーズに話し合いができる
- 遺言書がなく、分け方について誰も文句を言っていない
- 「自分は特別に貢献した」「あいつだけ得をしている」といった主張がない
②離婚の場合
離婚では、すべての条件にお互いが合意できているかどうかがポイントです。
たとえば、下記にすべて合意している場合は紛争性がないケースといえます。
- 離婚すること自体
- 財産分与
- 養育費
- 親権
- 慰謝料
この場合は、離婚協議書などの書類作成を行政書士に依頼することも可能です。
しかし、条件の一部でも対立している場合は、紛争性があります。
弁護士に相談すべきケース(紛争性がある場合)
- 相手が離婚に同意してくれない
- 財産の分け方や金額で意見が分かれている
- 養育費の金額について折り合いがつかない
- 慰謝料を「請求したい」または「不当に請求されている」
- 子供の親権をどちらが持つか譲れない
- 子供との会い方について、条件がまとまらない
- DV(暴力)やモラハラ(精神的な攻撃)の問題がある
行政書士でも対応できるケース(紛争性がない場合)
- お互いに離婚すること自体に納得している
- 財産分与(お金や持ち物の分け方)の内容が決まっている
- 養育費の金額について合意できている
- 慰謝料を払うかどうか、いくら払うかが決まっている
- 子供の親権について争いがない
- 面会交流(子供との会い方)のルールが決まっている
③借金の場合
借金問題では、金額と相手との交渉状況が判断ポイントになります。
たとえば、過払い金請求や債務整理の場合、
- 返還請求する金額が140万円以下
- 貸金業者が交渉に応じている
といった場合は、認定司法書士でも対応可能です。
一方で、次のようなケースでは弁護士への相談・依頼が適しています。
弁護士に依頼するのがおすすめのケース(紛争性がある場合)
- 過払い金が140万円を超える可能性がある
- 複数の会社から借金をしていて、合計額がはっきりわからない
- 相手の貸金業者が厳しく反論してくる、または争いになる可能性がある
- 最終的に「自己破産」や「個人再生」など、裁判所を通した手続きが必要になるかもしれない
- 裁判(訴訟)に発展する可能性がある
認定司法書士へ依頼できるケース(紛争性がない場合)
- 取り戻したい「過払い金」が、確実に140万円以下である
- 借金の元金(借りている合計額)が140万円以下である
- 相手の貸金業者が、こちらの話し合いに応じてくれる見込みがある
- 「任意整理」という、利息をカットして分割で返済する方法で解決できそうである
紛争性ありなら弁護士に相談を
このように、相談先を見極めるポイントは、「相手方と意見の対立があるか」「今後対立する可能性があるか」という点です。
少しでも不安がある場合や判断がつかない場合は、まず弁護士に相談してみることをおすすめします。
「こんなことで弁護士に相談していいのだろうか」と迷う方も多いですが、弁護士は裁判だけを扱う専門家ではありません。日常生活の中で生じる法的な疑問や小さな不安について相談する人も多くいます。
初回相談無料の弁護士事務所も多く存在します(無料で相談できることは後述)。なお、相談したからといって必ず依頼しなければならないわけではありません。
早い段階で専門家のアドバイスを受けることで、問題が大きくなる前に対応できる場合もあります。
早めの法律相談が「将来のトラブル予防」になることも
弁護士への相談というと、「既に起きてしまったトラブルを解決するため」というイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし実務には、トラブルを未然に防ぐことも弁護士の重要な役割です。
たとえば次のようなタイミングで相談することで、後のトラブルを防げることがあります。
- 重要な契約を結ぶ前
- 離婚を考え始めた段階
- 相続が発生する前(生前対策)
- 会社を設立する前
- 大きな買い物や投資をする前
- 労働問題の兆候を感じた時
- 隣人トラブルの初期段階
早めに相談することで将来起こりうるリスクを予測し、回避するための対策を取ることができます。
たとえば、契約書を事前にチェックしてもらうことで、後から「そんな条項があるとは知らなかった」というトラブルを防げます。また、生前に相続対策をしておけば、相続人同士の争いを避けられる可能性も高まります。
問題が大きくなってから対処するより、早い段階で専門家のアドバイスを受けるほうが、精神的・経済的負担を抑えられることも多いのです。
弁護士への切り替えが必要になるケース
他の専門家に依頼していても、途中で弁護士への切り替えが必要になるケースもあります。たとえば、次のような場合です。
- 円満だった相続が紛争化した
- 請求金額が140万円を超える訴訟になった
- 書類作成だけのはずが交渉が必要になった
- 簡易裁判所から地方裁判所へ移行した
- 相手方が弁護士を立ててきた
①相続の場合
当初は相続人同士で合意していたため、司法書士に遺産分割協議書の作成と登記を依頼しました。しかし、手続きを進める中で、相続人の一人が「納得できない」と態度を変え、争いが生じてしまったとします。
この場合、司法書士は紛争性のある事案を扱えないため、改めて弁護士への依頼が必要になります。その結果、依頼のやり直しや追加費用が発生してしまう可能性があるのです。
②過払い金の請求の場合
過払い金の請求でも同様のケースがあります。
戻ってくる過払い金が140万円以下だと思い認定司法書士に依頼したものの、引き直し計算の結果、150万円の返還請求になることが判明した場合です。
請求額が140万円を超えるため認定司法書士は代理権を失ってしまい、弁護士に依頼し直す必要が生じます。
専門家を選ぶ際、費用は重要な判断材料のひとつです。
一般的に、同じ業務内容であれば、
弁護士>司法書士>行政書士
の順に費用が高くなる傾向があります。
しかし、費用の安さだけで判断してしまうと、あとから問題が生じる可能性もあります。
依頼後に紛争が発生すると、司法書士や行政書士では対応できなくなり、改めて弁護士に依頼し直す必要が生じます。
そのため、専門家を選ぶ際には費用だけでなく、将来的な安心や対応範囲も含めて検討することが大切です。
弁護士との無料相談でできること
弁護士への相談に対する金銭的な不安を感じている方に、ぜひ知ってほしいのが「無料相談」の存在です。
多くの弁護士事務所では、初回相談を無料としています。無料相談では、まずはあなたの状況について弁護士がヒアリングを行います。その上で、以下のようなポイントについてアドバイスを受けられます。
- 法的な問題点や争点
- 今後の見通し
- どのような解決策があるか
- 依頼した場合の費用感
相談時間は30分から1時間程度が一般的で、その中で問題を整理し、今後の方向性を知ることができます。
初回相談で弁護士との相性を確認
初回相談を受けたからといって、必ず依頼しなければならないわけではありません。
複数の弁護士に相談し、説明のわかりやすさ、対応の丁寧さ、相性などを比較することも可能です。
具体的に、弁護士を選ぶ際は、次のようなポイントを確認してみましょう。
- 説明が分かりやすい:専門用語をかみ砕いて説明してくれるか
- 親身に話を聞いてくれる:こちらの意図や心情を理解しようとしてくれるか
- 質問しやすい雰囲気がある:威圧感がなく、小さな疑問も受け止めてくれるか
- 費用の説明が明確:見積書や契約書の内訳をクリアに示してくれるか
- 解決の見通しを示してくれる:メリットだけでなくリスクも教えてくれるか
- 専門分野の実績がある:自分が直面しているトラブルの解決経験が豊富か
- レスポンスが早い:連絡に対する折り返しや進捗報告がスムーズか
弁護士との相性は、実際に話してみないとわからない部分もあります。無料相談は積極的に活用し、安心して任せられる専門家かどうかを判断しましょう。
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無料相談申し込み後の流れ
相談当日に依頼するかどうかを決める必要はありません。弁護士のアドバイスや提示された費用などを踏まえてゆっくり検討できます。安心してご相談ください。
よくある質問
司法書士や行政書士に依頼した後に、弁護士に切り替えることはできますか?
可能です。紛争が生じた場合や業務範囲を超える対応が必要になった場合は弁護士に依頼し直すことができます。
ただし、既に支払った費用が戻らない場合や、手続きが中断する可能性もあるため、紛争に発展する可能性がある場合は、最初から弁護士に相談することをおすすめします。
無料の法律相談と有料の法律相談に違いはありますか?
無料相談でも、基本的な法的アドバイスを聞くことができます。ただし、相談時間が短い場合が多く、より具体的な検討や詳細な助言に関しては、有料相談になることがあります。
司法書士にも法律相談はできますか?
登記や書類作成、請求額が140万円以下の民事事件などについては司法書士にも相談できます。ただし、140万円を超える案件や紛争性が高い案件などは弁護士の対応範囲となります。
弁護士と司法書士、両方に相談することはできますか?
可能です。両方に相談することで、どちらに依頼するのが適切か比較検討できるでしょう。
ただし、有料相談の場合は費用負担が増える点や、同じ内容を説明する手間がかかるなどのデメリットもあります。
弁護士費用について、詳しく知りたいです。
弁護士費用は、相談料、着手金、報酬金、実費、日当などで構成されます。費用は案件の内容や難易度、分野によって異なるため、相談時に見積もりを出してもらうことをおすすめします。
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西口竜司弁護士
神戸マリン綜合法律事務所
大阪府出身。同志社大学法学部を卒業後、甲南大学法科大学院を修了。2007年に弁護士登録し、2013年に同事務所を開所。中小企業診断士、税理士の資格も持つ。辰巳法律研究所や各大学で講師を務め、後進の育成にも力を注ぐ。著書に『新司法試験論文答案作成の作法』『ステップアップ企業法入門』等がある。「分かりやすく丁寧に」を信条とし、親身な対応を徹底。趣味はアメフトと筋トレで、SASUKE本戦への出場経験も持つ。
登録番号36877(兵庫県弁護士会)