物損事故

弁護士監修記事 2017年12月22日

物損事故と人身事故の違いと人身事故へ切替えを検討すべきケース

交通事故には、大きく分けて「物損事故」と「人身事故」があります。交通事故にあったとき、物損事故と人身事故のどちらで処理されるかによって、利用できる保険の種類や事故の損害として支払ってもらえるお金の範囲まで、さまざまな違いが出てきます。

  • 支払ってもらえるお金の範囲が異なる
  • 利用できる保険の種類が異なる

本来は人身事故として処理されるケースが、物損事故として処理されてしまっているケースもあります。いったんは物損事故として処理されたという方も、この記事を読んで両者の違いを確認してみてください。

目次

  1. 物損事故と人身事故の違い
    1. ケガや後遺症の可能性があるなら病院へ
  2. 人身事故は支払ってもらえるお金の範囲が広い
  3. 人身事故は利用できる保険の種類が多い
    1. 人身事故の場合、車の持ち主にも賠償請求できる
  4. 人身事故で処理されると事故状況を証明するために有効な証拠が手に入る
  5. 後から症状が出てきた場合は人身事故への切替え手続きをしよう

物損事故と人身事故の違い

物損事故とは、人が死亡したりケガを負ったりすることなく、車などの物のみに被害が生じた交通事故のことです。 一方、人身事故とは、人がケガや死亡にいたる結果が生じた交通事故のことをいいます。ケガが軽い場合であっても、基本的には人身事故として取り扱われます。

  • 物が壊れただけ → 物損事故
  • 人が死傷する結果が生じた → 人身事故

このように、物損事故と人身事故の違いは、「ケガ(死亡)をしているか・していないか」というシンプルな違いです。

ケガや後遺症の可能性があるなら病院へ

違いはシンプルですが、一見外傷がなくても、後になってむち打ちなどの症状が現れるケースのように、人身事故と物損事故のいずれか判断が難しいケースもあります。 もちろん、後になって症状が出てくる可能性がないと判断できる場合は、物損事故として届け出て問題ありません。 しかし、少しでもケガや後遺症の可能性があるなら、事故にあった後は速やかに医師の診察を受けて人身事故か物損事故かの判断をしましょう。 なぜなら、交通事故の被害にあった場合、人身事故と物損事故のどちらで処理されるかによって、その後の手続きに大きな影響があるからです。 人身事故として処理されると、まず、損害として支払ってもらえる金額の範囲が広がります。また、利用できる保険の種類も、人身事故の場合の方が多く用意されています。 以下では、物損事故と人身事故の取り扱いの違いを詳しく紹介していきます。

いったん物損事故として届け出てしまっても、後から人身事故に切り替えることができます。

人身事故は支払ってもらえるお金の範囲が広い

物損事故の損害として支払ってもらえるお金の範囲は、「物」について発生した被害の弁償に限られます。 たとえば、事故で破損した車を修理するための費用や、廃車になった場合は、事故当時の車の時価(中古価格)です。この他にも、車を修理する間に必要となった代車を利用する費用なども含まれます。 これに対して、人身事故の場合、「物」にかかった費用に加え、治療費や逸失利益(交通事故に遭わなければ得られていたはずの利益)など「人」に発生した費用、損害についても支払ってもらうことができます。 このほか、「交通事故で精神的苦痛を受けた」ことを理由に、慰謝料を求めることもできます。 一方で、物損事故の場合、原則として慰謝料の支払いを求めることはできません。

物損事故でも例外的に慰謝料が認められるケースもあります。たとえば、家族同様の存在であったペットを失ったりした場合などです。

人身事故は利用できる保険の種類が多い

交通事故の損害は、保険を利用することで被害者に支払われることが一般的ですが、利用できる保険の種類も、人身事故と物損事故とで異なります。 交通事故の保険の種類は大きく2種類に分けられます。 一つは、「自賠責」と呼ばれる保険です。損害保険会社で契約する「自動車損害賠償責任保険」と、共済組合で加入する「自動車損害賠償責任共済」があります。 自動車を利用する人が必ず加入しなければならない保険なので、「強制保険」とも呼ばれています。 もう一つが、自動車の利用者が各々任意で加入する自動車保険(任意保険)です。 人身事故の場合、自賠責でカバーしきれない額の被害が発生した場合でも、残りの部分を任意保険でカバーすることができます。つまり「2段階」の補償が受けられます。 一方、人が死傷する結果が生じていない物損事故は、自賠責を利用することができません。任意保険のみで対応することになるのです。 違い

人身事故の場合、車の持ち主にも賠償請求できる

「加害者が任意保険に加入していない。財産も少ないため損害額を自腹で支払ってもらえる可能性も低い」。 人身事故として取り扱われると、こうしたケースでも他の人から損害分のお金を支払ってもらえる可能性があります。 人身事故の場合、自動車を他人に貸した持ち主、レンタカーの貸主など、車を運転していた直接の加害者以外の人(「運行供用者」といいます)にも損害賠償を請求できるのです。 一方、物損事故では、運行供用者に損害賠償を請求することはできません。加害者が「無保険・支払い能力なし」というケースでは、損害を回収することが難しくなる可能性が出てきます。

人身事故で処理されると事故状況を証明するために有効な証拠が手に入る

「交差点に進入した時、正面の信号は青だった」「いや、赤だった」ーー。事故当時の状況について加害者との間に食い違いが生じ、過失割合(事故の責任の割合を数値化したもの)をめぐって争いが生じているケースなどでは、事故当時の状況を詳細に記録した証拠の存在が重要になります。 人身事故の場合、こうした事故の状況を詳細に記録した「実況見分調書」という書面が作成されます。 人身事故は刑事事件として処分を検討する必要があるので、捜査機関は事故状況を詳細に記録する「実況見分」という手続きをおこないます。 実況見分とは、当事者や目撃者が立ち会いのもとで、捜査機関が事故当時の状況について詳細な調査を事故現場で行うことです。実況見分の内容を記録した書面が実況見分調書です。 一方、物損事故の場合、原則として実況見分は行われないのが通常です。 物損事故でも、事故の概要を簡単にまとめた「物件事故報告書」が作成されますが、事故状況を証明する手段としては不十分な場合もあります。 このように、事故の状況を証明するに当たっては、人身事故において作成される実況見分調書が有益なのです。 ただし、この実況見分調書は、警察から当然に被害者に交付されるというものではなく、自ら(または弁護士を通じて)申請して取り寄せる必要があります。 実況見分調書は、加害者の刑事処分(自動車運転過失致死傷罪など)を決めるための証拠となりますが、捜査段階(起訴・不起訴処分の前)では取り寄せることができないので、注意してください。

後から症状が出てきた場合は人身事故への切替え手続きをしよう

このように、物損事故と人身事故では、事故後の取り扱いをめぐってさまざまな違いが出てきます。 事故当時に全くケガがなく、その後も特に症状が出ない場合に人身事故にする必要はありませんし、人身事故にはなりません。 しかし、先ほども述べたように、事故直後は特に自覚症状がなく、物損事故として届け出たとしても、後になって症状が出てくることがあります。 事故によってケガをした以上、その事故は人身事故であり、医師による診断書を事故の処理をした警察署に提出することで、人身事故に切り替えることが可能です。

物損事故から人身事故への切替えの方法や手続きの流れについては、「次に読みたい記事」で詳しく説明しています。

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