養育費とは
子供を養い育てるためには、衣食住の費用はもちろん、教育費や医療費、娯楽費や交通費など、様々な費用がかかります。 このような、一般的に子供が自ら働いて収入を得るなど自立できる年齢になるまでに必要な費用のことを養育費といいます。 具体的には、以下のような費用が養育費にあたります。
- 子供の生活費(食費、衣服費、住居光熱費など)
- 教育費(授業料、塾代、教材費、入学金などの学費)
- 医療費
- 小遣い
- 交通費
離婚すると法的な夫婦の関係は解消されますが、親子の関係は続きます。離婚して子供と離れて生活するようになった親にも、子供の健やかな成長をサポートする義務があります。 そのため、親権を持つ親(親権者)は、親権のない親(非親権者)に対して、養育費を請求することができます。
一方の親が親権者となり、もう一方が監護者として子供を引き取って世話を行う場合は、監護者から親権者に対して養育費を請求することができます。ただし、親権者と監護者を別にするとトラブルの元になる可能性があるため、実務上は、親権者と監護者は一致するよう取り扱われています。
養育費の算定方法
夫婦間で合意できれば、養育費の金額は自由に設定することができます。もっとも、スムーズに合意できない場合には、家庭裁判所が参考にしている養育費算定表を参考に話し合いをすることになります。 合意できれば、算定表の相場とは異なる額を定めることもできます。
養育費算定表は2019年(令和元年)12月に改定されました。以前の算定表と基本的な考え方は同じですが、計算に用いる数値が最新の統計資料に基づき変更されました。
【養育費算定表の見方】①自分の「子供の人数」「子供の年齢」に合う表を見つける
②「養育費を支払う側」(縦軸)と「受け取る側」(横軸)の年収が交わるゾーンの金額を見る
→ 1か月間の養育費の合計額がわかる
養育費算定表は、子供の人数・子供の年齢に応じて、参考にすべき表が分かれています。まずは自分のケースに当てはまる表を見つけましょう。共働きの場合も、専業主婦の場合でも、表は共通です。 表では、縦軸が「養育費を支払う側の年収」、横軸が「支払いを受ける側の年収」となっていて、それぞれが交わるゾーンの金額が養育費の目安(月額)となります。この金額は子供1人あたりの金額ではなく、月々の合計額です。 給与所得者の場合、源泉徴収票の支払金額(控除されていない金額)が年収にあたります。一方、自営業者の場合は、課税される所得金額が年収にあたります。 たとえば、給与所得者で、子供が2人(0歳〜14歳)いるケースでは、改定された算定表をもとに計算すると、1か月間の養育費の目安は次のようになります。
養育費の目安・養育費を支払う側の年収が800万円で、受け取る側の年収が0円の場合…1か月の養育費の目安は14万円〜16万円
・養育費を支払う側の年収が600万円で、受け取る側の年収が400万円の場合…1か月の養育費の目安は6万円〜8万円
養育費は子供の成長に合わせて必要となる費用なので、定期的に支払われるべきと考えられています。 そのため、通常は、毎月一定の金額を銀行口座などに振り込む形で支払われます(合意すれば、一括で支払ってもらうこともできます)。
養育費算定表は、自分の収入と相手の収入で金額が決まる仕組みのため、浮気やセックスレスなとの離婚原因は考慮されていません。養育費の話し合いの中で、離婚原因や慰謝料、住宅ローンなど様々な事情を考慮して養育費の金額を増減させることは可能です。
夫婦間の話合いがまとまらず、調停や裁判で養育費の額を決める場合は、基本的にはこの算定表に基づき、個々のケースに応じた事情を考慮して、金額が提示・判断されることになります。
養育費の平均と相場はいくら?
厚生労働省の全国ひとり親世帯等調査結果(平成28年度)によると、子供の数別でみた養育費の1世帯平均月額は以下のとおりです。
子供1人 | 子供2人 | 子供3人 | |
---|---|---|---|
母子家庭 | 38,207円 | 48,090円 | 57,739円 |
父子家庭 | 29,375円 | 32,222円 | 42,000円 |
以下では、養育費を支払う側の年収別に、養育費算定表に基づく養育費の相場をご紹介します。
年収200万円の養育費の相場
養育費を支払う側の年収が200万円の場合の養育費の相場は、次のようになります。
養育費の金額に幅があるのは、養育費をもらう側の年収によって金額が変わるからです。詳しい金額は養育費算定表でご確認ください。
子供1人(0〜14歳)の場合
- 給与所得者 1〜4万円
- 自営業者 1〜4万円
子供1人(15歳以上)の場合
- 給与所得者 1〜4万円
- 自営業者 2〜6万円
子供2人(第1子・第2子がどちらも0〜14歳)の場合
- 給与所得者 1〜4万円
- 自営業者 2〜6万円
子供2人(第1子15歳以上、第2子0〜14歳)の場合
- 給与所得者 2〜6万円
- 自営業者 2〜8万円
子供2人(第1子・第2子がどちらも15歳以上)の場合
- 給与所得者 2〜6万円
- 自営業者 2〜8万円
子供3人(第1子・第2子・第3子が全員0〜14歳)の場合
- 給与所得者 2〜6万円
- 自営業者 2〜8万円
子供3人(第1子15歳以上、第2子と第3子が0~14歳)の場合
- 給与所得者 2〜6万円
- 自営業者 2〜8万円
子供3人(第1子と第2子が15歳以上、第3子0~14歳)の場合
- 給与所得者 2〜6万円
- 自営業者 2〜8万円
子供3人(第1子・第2子・第3子が全員15歳以上)の場合
- 給与所得者 2〜6万円
- 自営業者 2〜8万円
年収300万円の養育費の相場
養育費を支払う側の年収300万円の場合の養育費の相場は、次のようになります。
養育費の金額に幅があるのは、養育費をもらう側の年収によって金額が変わるからです。詳しい金額は養育費算定表でご確認ください。
子供1人(0〜14歳)の場合
- 給与所得者 2〜6万円
- 自営業者 2〜6万円
子供1人(15歳以上)の場合
- 給与所得者 2〜6万円
- 自営業者 2〜8万円
子供2人(第1子・第2子がどちらも0〜14歳)の場合
- 給与所得者 2〜6万円
- 自営業者 4〜10万円
子供2人(第1子15歳以上、第2子0〜14歳)の場合
- 給与所得者 2〜8万円
- 自営業者 4〜10万円
子供2人(第1子・第2子がどちらも15歳以上)の場合
- 給与所得者 2〜8万円
- 自営業者 4〜10万円
子供3人(第1子・第2子・第3子が全員0〜14歳)の場合
- 給与所得者 2〜8万円
- 自営業者 4〜10万円
子供3人(第1子15歳以上、第2子と第3子が0~14歳)の場合
- 給与所得者 2〜8万円
- 自営業者 4〜12万円
子供3人(第1子と第2子が15歳以上、第3子0~14歳)の場合
- 給与所得者 2〜8万円
- 自営業者 4〜12万円
子供3人(第1子・第2子・第3子が全員15歳以上)の場合
- 給与所得者 2〜8万円
- 自営業者 4〜12万円
年収500万円の養育費の相場
養育費を支払う側の年収が500万円の場合の養育費の相場は、次のようになります。
養育費の金額に幅があるのは、養育費をもらう側の年収によって金額が変わるからです。詳しい金額は養育費算定表でご確認ください。
子供1人(0〜14歳)の場合
- 給与所得者 2〜8万円
- 自営業者 4〜10万円
子供1人(15歳以上)の場合
- 給与所得者 4〜10万円
- 自営業者 4〜12万円
子供2人(第1子・第2子がどちらも0〜14歳)の場合
- 給与所得者 4〜10万円
- 自営業者 6〜14万円
子供2人(第1子15歳以上、第2子0〜14歳)の場合
- 給与所得者 4〜12万円
- 自営業者 6〜14万円
子供2人(第1子・第2子がどちらも15歳以上)の場合
- 給与所得者 4〜12万円
- 自営業者 6〜16万円
子供3人(第1子・第2子・第3子が全員0〜14歳)の場合
- 給与所得者 4〜12万円
- 自営業者 6〜16万円
子供3人(第1子15歳以上、第2子と第3子が0~14歳)の場合
- 給与所得者 4〜12万円
- 自営業者 6〜16万円
子供3人(第1子と第2子が15歳以上、第3子0~14歳)の場合
- 給与所得者 6〜14万円
- 自営業者 8〜18万円
子供3人(第1子・第2子・第3子が全員15歳以上)の場合
- 給与所得者 6〜14万円
- 自営業者 8〜18万円
年収700万円の養育費の相場
養育費を支払う側の年収が700万円の場合の養育費の相場は、次のようになります。
養育費の金額に幅があるのは、養育費をもらう側の年収によって金額が変わるからです。詳しい金額は養育費算定表でご確認ください。
子供1人(0〜14歳)の場合
- 給与所得者 4〜10万円
- 自営業者 6〜14万円
子供1人(15歳以上)の場合
- 給与所得者 4〜12万円
- 自営業者 6〜16万円
子供2人(第1子・第2子がどちらも0〜14歳)の場合
- 給与所得者 6〜14万円
- 自営業者 8〜18万円
子供2人(第1子15歳以上、第2子0〜14歳)の場合
- 給与所得者 6〜16万円
- 自営業者 8〜20万円
子供2人(第1子・第2子がどちらも15歳以上)の場合
- 給与所得者 6〜16万円
- 自営業者 8〜20万円
子供3人(第1子・第2子・第3子が全員0〜14歳)の場合
- 給与所得者 6〜16万円
- 自営業者 10〜22万円
子供3人(第1子15歳以上、第2子と第3子が0~14歳)の場合
- 給与所得者 8〜18万円
- 自営業者 10〜22万円
子供3人(第1子と第2子が15歳以上、第3子0~14歳)の場合
- 給与所得者 8〜18万円
- 自営業者 10〜24万円
子供3人(第1子・第2子・第3子が全員15歳以上)の場合
- 給与所得者 8〜18万円
- 自営業者 10〜24万円
年収800万円の養育費の相場
養育費を支払う側の年収が800万円の場合の養育費の相場は、次のようになります。
養育費の金額に幅があるのは、養育費をもらう側の年収によって金額が変わるからです。詳しい金額は養育費算定表でご確認ください。
子供1人(0〜14歳)の場合
- 給与所得者 4〜12万円
- 自営業者 6〜14万円
子供1人(15歳以上)の場合
- 給与所得者 6〜14万円
- 自営業者 8〜18万円
子供2人(第1子・第2子がどちらも0〜14歳)の場合
- 給与所得者 6〜16万円
- 自営業者 8〜20万円
子供2人(第1子15歳以上、第2子0〜14歳)の場合
- 給与所得者 6〜16万円
- 自営業者 10〜22万円
子供2人(第1子・第2子がどちらも15歳以上)の場合
- 給与所得者 8〜18万円
- 自営業者 10〜24万円
子供3人(第1子・第2子・第3子が全員0〜14歳)の場合
- 給与所得者 8〜18万円
- 自営業者 12〜24万円
子供3人(第1子15歳以上、第2子と第3子が0~14歳)の場合
- 給与所得者 8〜20万円
- 自営業者 12〜24万円
子供3人(第1子と第2子が15歳以上、第3子0~14歳)の場合
- 給与所得者 8〜20万円
- 自営業者 12〜26万円
子供3人(第1子・第2子・第3子が全員15歳以上)の場合
- 給与所得者 8〜20万円
- 自営業者 12〜26万円
年収1000万円の養育費の相場
養育費を支払う側の年収が1000万円の場合の養育費の相場は、次のようになります。
養育費の金額に幅があるのは、養育費をもらう側の年収によって金額が変わるからです。詳しい金額は養育費算定表でご確認ください。
子供1人(0〜14歳)の場合
- 給与所得者 6〜14万円
- 自営業者 8〜18万円
子供1人(15歳以上)の場合
- 給与所得者 6〜16万円
- 自営業者 10〜20万円
子供2人(第1子・第2子がどちらも0〜14歳)の場合
- 給与所得者 8〜20万円
- 自営業者 12〜24万円
子供2人(第1子15歳以上、第2子0〜14歳)の場合
- 給与所得者 8〜20万円
- 自営業者 14〜26万円
子供2人(第1子・第2子がどちらも15歳以上)の場合
- 給与所得者 10〜22万円
- 自営業者 14〜28万円
子供3人(第1子・第2子・第3子が全員0〜14歳)の場合
- 給与所得者 10〜22万円
- 自営業者 14〜28万円
子供3人(第1子15歳以上、第2子と第3子が0~14歳)の場合
- 給与所得者 10〜24万円
- 自営業者 16〜30万円
子供3人(第1子と第2子が15歳以上、第3子0~14歳)の場合
- 給与所得者 10〜24万円
- 自営業者 16〜30万円
子供3人(第1子・第2子・第3子が全員15歳以上)の場合
- 給与所得者 12〜26万円
- 自営業者 16〜32万円
養育費はいつまで支払ってもらえる?
養育費の支払い期間は、夫婦の話合いで自由に決められますが、原則としては、子供が成人するまで、つまり20歳になるまでです。 夫婦間で合意すれば、子供が将来大学に進学することを想定して「22歳まで」「大学卒業まで」などと決めることもできます。 「大学卒業までと取り決めたけれど、大学院に進学することになった」など、取り決め後に事情が変わった場合、養育費の支払い期間を延長することはできるのでしょうか。
相談者の疑問
子供が18歳になるまで毎月5万円の養育費を支払ってもらうことを裁判所に決めてもらいました。子供が大学・大学院への進学を希望しているため、大学院卒業までの延長をお願いしたいと思っています。可能でしょうか?
弁護士の回答泉田 健司弁護士
大学生は、現在は、未成熟子であると考えるのが一般的ですから、大学卒業までの間の養育費の請求ができる可能性が一定程度あると思います。
大学院や大学を留年した場合にまで養育費の延長が認められるかは、確率が下がると思います。
直接請求なさって、応じないということであれば、家庭裁判所の調停手続きを利用することになります。その場合には、現在の双方の収入状況に照らして、養育費を協議することになります。タイミングとしては、大学に進学するか決まってからでもよいとは思います。
大学や大学院への進学については、学費を支払ってもらえるかどうかが進学の判断に影響することもあります。相手に養育費の話し合いを持ちかけるタイミングは、個々の事情により判断しましょう。不安な場合には弁護士に相談しましょう。
養育費なしのケースとは?
養育費がなしのケースはどのような場合でしょうか。
相談者の質問
現在、精神疾患を患っており、働くのが困難な状況です。障害者年金が停止されてしまいました。貯金はあります。収入や公的補助がゼロの場合、養育費の支払いはゼロになりますか?
弁護士の回答
養育費の調停・審判では、相談者様が働くことが可能(稼働能力があれば)であれば、平均賃金や直近収入等から一定の収入があることを前提に養育費が算定されることとなる可能性が高いです。
現実の収入がゼロであることを以て、直ちに養育費が0円にはなりません。
主治医の先生がどのように仰っているかによると思います。
主治医の先生が、相談者様の症状を就労不能と診断しているのであれば、相談者様の収入が0円となり、養育費がゼロとなる可能性もあると思います。
このほか、養育費の話し合いによって養育費をなしにする合意ができた場合にも、養育費がなしになります。
離婚調停で養育費について話し合う
夫婦で離婚についての話し合いができない場合、離婚調停を申し立てて、調停委員という第三者を交えて離婚についての話し合いを行います。 養育費の金額についても、離婚調停の中で交渉して決めていくことになります。その際には、養育費算定表が参考にされます。 「離婚調停 養育費」の法律相談を見てみる
養育費の取り決めは公正証書にするべき?
養育費について夫婦で合意できた場合、「離婚協議書」という契約書を作成して養育費の取り決めを書類の形で残しましょう。離婚協議書は「公正証書」にすることをおすすめします。 公正証書とは、取決めた合意の内容を、公証人が書面化した公的な文書です。公証人は、裁判官や検察官検事の経験者など法律の専門家がなります。 公正証書を作成するときに、「強制執行認諾文言(きょうせいしっこうにんだくもんごん)」を入れておくと、裁判所の判決がなくても、給与の差押えなどの強制執行をすることができます。 強制執行認諾文言とは、「この書面に書かれた取決め内容を守らなかったら、強制執行を受けても文句は言いません」と約束する一文です。 具体的には、「甲は、本証書記載の金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨を陳述した。」というような一文を入れておきます。 離婚して時間がたつと、離婚で決めた条件を、相手が守らなくなることがあります。 特に、養育費や財産分与などを分割払いにした場合には、途中で支払ってくれなくなり、トラブルになるケースが少なくありません。 離婚協議書を作成しただけでは、相手が取決めを守らない場合に、給与を差し押さえるなど、強制的に取決めを守らせることができません。裁判を起こして判決を得る必要があります。 こうした手間をかけないために、離婚協議書の内容を「強制執行認諾文言」付きの公正証書の形にしておくことをおすすめします。
調停離婚の場合は、離婚が成立すると「調停調書」が、審判離婚の場合は「審判書」が、裁判離婚の場合は「判決書」が作成されます。これらの書類があれば、離婚後にお金の未払いなどが生じた場合に裁判をせずに差し押さえができます。そのため、別途、強制執行認諾文言付きの公正証書による離婚協議書を作成する必要はありません。
再婚しても養育費は支払われる?
養育費の支払い期間として取り決めた期間の間に、自分や元配偶者が再婚をした場合でも、引き続き養育費を支払ってもらえるのでしょうか。金額が減ったり、支払われなくなったりする場合もあるのでしょうか。
自分が再婚しても支払ってもらえる?
養育費の支払い期間として取り決めた期間の間に、自分が再婚をした場合、引き続き養育費を支払ってもらえるのでしょうか。
相談者の疑問
5年前に調停離婚をし、現在元夫から養育費をもらっていたのですが、再婚することになりました。公正証書の文言に「再婚をしたら知らせる」などの内容はなく、子供が20歳まで支払う約束になっています。
私が再婚をした場合、元夫は養育費を支払う義務がなくなるのでしょうか?勝手に支払いをやめたり、減額するのは問題ないのでしょうか?その際は調停で決めるのが普通ですか?
突然支払いが止まる可能性も含めて、そうなった場合に取るべき対処を教えてください。
弁護士の回答堀 晴美弁護士
再婚したからといって、元夫がお子様の第一次扶養義務者であることには変わりはなく、養育費を支払う義務があります。
仮に再婚して再婚相手とお子様が養子縁組をすれば、第一次的扶養義務者は再婚相手になりますので、その場合は相手方から養育費減免の調停の申し立てをされる可能性はあります。
養育費の減免の調停が成立しないのに、突然養育費を支払わなくなったら、調停調書に基づいて強制執行すればよいと思います。
自分が再婚しても引き続き養育費を支払ってもらうことができます。ただし、再婚相手と子供が養子縁組をした場合、調停で養育費の減額が認められる可能性があるようです。 「再婚 養育費」の法律相談を見てみる
相手が再婚しても支払ってもらえる?
養育費の支払い期間として取り決めた期間の間に、元配偶者が再婚をした場合、引き続き養育費を支払ってもらえるのでしょうか。
相談者の疑問
裁判離婚をしました。その際、養育費の額も算定表に基づいて決定されました。
その後、元夫が再婚して、養育費減額調停を申し立ててきました。この場合、裁判所の実務で用いられる何らかの計算式があって、機械的に減額が決まるのでしょうか?
弁護士の回答原田 和幸弁護士
機械的ということではないと思いますし、再婚したから直ちに減額ということでもないと思います。
例えば、新たに相手に子でもできれば、減額の可能性はあると思います。
相手が再婚しても引き続き養育費を支払ってもらうことはできますが、再婚によって扶養すべき子供が増えた、といった事情がある場合は、調停で養育費の減額が認められる可能性があるようです。
相手が払わないときの対処法
離婚をするとき取り決めたにもかかわらず、元配偶者からその通りに養育費が支払われない場合は、次のような措置によって、支払いを促すことができます。
- 履行勧告
- 履行命令
- 強制執行
協議離婚の場合、履行勧告と履行命令の手段をとることはできません。
兵庫県明石市では、2020年7月から、不払い養育費の立替えという取り組みを始めました。市が元配偶者に支払いを催促し、それでも支払われない場合に、市が前月分の支払われていない養育費を1か月分に限って立て替える(子供1人につき5万円まで)という制度です。市によると、2020年12月現在、利用件数は17件ということです。
履行勧告
家庭裁判所に申し出ることにより、「履行勧告」という措置を求めることができます。履行勧告の申出には費用がかかりません。 履行勧告を申し出ると、家庭裁判所の調査官が養育費の支払い状況などについて調査をします。そして、元配偶者が義務を果たすよう、電話や手紙、訪問などの方法で勧告をします。 履行勧告は、あくまで自発的に支払いを促すものです。プレッシャーをかける効果はありますが、法的な強制力はありません。 「養育費 履行勧告」の法律相談を見てみる
履行命令
履行勧告をおこなっても支払いに応じない場合は「履行命令」を申し立てます。履行命令とは、家庭裁判所が相当と認める場合に、期限を決めて、「この時までに支払いなさい」と命じる措置です。 履行命令でも強制的に未払いの養育費を支払わせることまではできません。しかし、元配偶者が履行命令に従わない場合には、10万円以下のペナルティが課せられます。 その意味で、間接的に養育費の支払いを強制する効果があるといってよいでしょう。 「養育費 履行命令」の法律相談を見てみる
強制執行
強制執行を行うことで、元配偶者の給料や預貯金、不動産などを差し押さえて、そこから強制的に養育費を支払わせることができます。 強制執行では、原則として、給与から税金と社会保険料と通勤手当を引いた金額の2分の1までを差し押さえることができます。 給料から税金と社会保険料と通勤手当を引いた金額の2分の1が33万円を超える場合は、差し押さえることができない金額は33万円が限度になります。つまり、2分の1を超える範囲についても差し押さえることができます。
協議離婚の場合でも、離婚協議書を強制執行認諾文言がついた公正証書の形にしておけば、強制執行をかけることができます。また、強制執行認諾文言つきの公正証書や、調停調書、審判書、判決書がない場合でも、裁判で必要な手続きを経れば、強制執行をかけることが可能です。
将来発生する養育費についても差押えを申し立てることができる
養育費は、支払期限が到来した未払いの養育費だけでなく、期限がきていない将来の養育費も、一緒に申し立てることができます。 ただし、将来にわたる養育費を全額で一括して差し押さえられるわけではありません。 将来分の養育費については、「その養育費の支払い期限後に支払われる給料からしか、取り立てることができない」と法律で定められているからです。 これは、毎月支払い期限が来るたびに差押えを申し立てる手間をはぶくための仕組みです。 つまり、支払期限が来ている未払いの養育費について差押えをするときに、あわせて期限が来ていない将来分の養育費についても差押えの申立てをしておけば、毎月の支払い期限が来るたびに、差押えを申し立てる必要がなくなるのです。
未払いの養育費を請求するときは「時効」に注意する
養育費を請求できる権利は、権利行使できるときから一定期間が経過すると時効により消滅してしまいます。養育費は、月ごとの支払いを定めている場合が多いと考えられますが、その場合、一定期間が経過した時点で、その月分の養育費を請求する権利が消えてしまうということです。 養育費の時効の期間は、養育費の支払いを取り決めた時期や、話し合いで決まったのか裁判所が決めたのかなど、さまざまな条件によって変わってきます。 離婚から時間が経っていて請求できるのか不安な場合は、弁護士に相談することをおすすめします。 「養育費 時効」の法律相談を見てみる
まとめ
養育費の金額や支払い期間などは、夫婦で話し合って決めることができます。ただ、なかなか折り合いがつかず、支払い条件が決められないこともあるでしょう。また、条件は決まったけれど、妥当な内容なのか不安に感じることもあるかもしれません。 養育費の条件について、法的なアドバイスがほしい場合は、弁護士への相談を検討することも1つの方法です。 法律の専門家である弁護士に相談することで、あなたと子供にとって最適な条件のもとで養育費を支払ってもらうにはどうすればよいか、具体的なアドバイスを受けられるでしょう。 また、養育費が支払われなくなった場合にも、弁護士に依頼することでサポートを受けられます。履行勧告などの措置を行うための手続きは、自分で進めることもできますが、プロセスが複雑で、法律の専門知識も必要です。書類作成や裁判所への申立てを1人でおこなうのは負担が大きいですが、弁護士に依頼すればサポートを受けられます。 支払われていないお金を少しでも早く回収したい人は、弁護士などの専門家にサポートを依頼することをおすすめします。
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子供がいる夫婦が離婚する場合、養育費以外にも、親権者や面会交流のルールなどを決める必要があります。詳しくは以下の記事で解説しています。