弁護士ドットコム - 無料法律相談や弁護士、法律事務所の検索

残業代

2017年05月26日

未払いの「残業代」「割増賃金」の計算方法、支払ってもらうための手段

「未払いの残業代を会社に払ってほしいけど、どうやればいいのかわからない」「そもそも残業代が発生しているのかよくわからない」ーー。そんな疑問をかかえて残業代を支払ってもらうことをあきらめてはいませんか?

  • そもそも自分の残業時間をどうやって調べるのか
  • 残業代はどう計算すればいいのか
  • どんな方法で請求すればいいのか

この記事では、残業時間の計算方法から、実際に残業代を請求する方法まで詳しく解説します。残業代を会社に支払ってほしいと考えている方は、この記事を参考に対処法を検討してください。

目次

  1. 残業代請求の第一歩、自分の労働時間を把握しよう
  2. 労働時間は法律で上限が定められている。
  3. 固定残業、裁量労働etc…さまざまな「働き方」残業代を請求できる?
  4. 残業代の請求方法
  5. できるだけ証拠は集めておこう

残業代請求の第一歩、自分の労働時間を把握しよう

残業代を請求するには、まず「自分がどのくらい残業しているのか(残業時間)」を把握する必要があります。そして、残業時間を把握するためには、「自分がどのくらい働いているのか(労働時間)」を把握する必要があります。 つまり、自分の労働時間を正しく把握することが、残業代請求への第一歩になるのです。 労働時間は、労働者が会社の指揮命令のもとにおかれている時間のことをいいます。「会社の指揮命令のもとにある」かどうかは、判例の蓄積などで、さまざまなケースで「会社の指揮命令のもとにある」と判断がされています。

  • 始業前に制服に着替える時間
  • 始業前の朝礼・ミーティングなどの時間
  • 社員旅行・外部研修など、参加を指示された会社のイベント

たとえば、一見すると直接業務にあたっているとみえないようなこうした時間でも、「会社の指揮命令のもとにある」として労働時間に含まれる可能性があるのです。

労働時間は法律で上限が定められている。

労働時間を考える上でもう一つ、「法定労働時間」と「所定労働時間」の違いを理解しておく必要があります。 「法定労働時間」とは、労働基準法で決められた労働時間の限度で、原則として「1日8時間・週40時間まで」とされています。 会社がこの限度を超えて労働者に働いてもらうためには、会社と労働者の間で協定を結んで、労働基準監督署に書面を届け出る必要があります。このルールが労働基準法36条に定められていることから、「36(さぶろく)協定」などと呼ばれています。 こうした協定を結ばずに、労働者に法定労働時間の限度を超えて働かせた場合、会社側は刑事罰を受ける可能性があります。 一方、「所定労働時間」というのは、法定労働時間のルールの範囲内で、会社が就業規則などで定める労働時間の長さです。 たとえば、「所定労働時間」が7時間(9時〜17時勤務・休憩1時間)という勤務形態を考えてみましょう。 この場合、1時間残業して18時まで働いたとしても、時給分の残業代は発生しますが、法定労働時間(8時間)の範囲内なので、割増賃金(時給プラスアルファの分)は発生しないのです。 また、月から金曜日の勤務に加えて、土曜日に5時間勤務したとしても、週の労働時間は40時間以内(7×5+5=40)なので、法定労働時間を超えていることにはなりません。

法定労働時間の範囲内でも、所定労働時間を超えて働いた場合には割増賃金を支払うルールを独自に定めている会社もあります。

法定労働時間を超えて働くと、割増賃金を請求できる

労働者が法定の労働時間を超えて、または、法定休日に働いた場合、労働者は「割増賃金」を支払うことを会社側に請求することができます。割増率は次のようになっています。

割増賃金の種類 割増率 条件
(法定)時間外労働 +25%〜 法定労働時間を超えて働いた場合
深夜労働 +25%〜 22時〜5時に働いた場合
(法定)休日労動 +35%〜 *法定休日に働いた場合
月60時間を超える時間外労働 +50% 月60時間を超える時間外労働をした場合
(※一部の中小企業は対象外)

*法定休日とは:労働者は最低でも1週間に1回、または4週間に4回以上の休みを得られるように定められています。この最低限の休日のことを「法定休日」といいます。

自分が法定労働時間を超えて働いているか、その分の割増賃金が適切に支払われているかといった点は、給与明細の「時間外労働手当」「普通残業、調整手当」などの欄を確認しましょう。 時間外労働、深夜労働、休日労働の割増賃金が合算で支払われている場合は、それぞれ分けて計算して確認してみましょう。

固定残業、裁量労働etc…さまざまな「働き方」残業代を請求できる?

固定残業制の場合、いくら残業しても残業代は同じなの?

あらかじめ一定時間残業することを見越して、定額の残業代を支払う仕組みを導入している会社もあります。「みなし残業代」「固定残業代」などと呼ばれている仕組みです。 まず確認しておきたいのは、固定残業制は「いくら働いても、残業代が一定額しか支払われないという制度ではない」という点です。 固定残業制で定められた一定の時間を超えて残業した場合、その分の残業代・割増賃金の支払いを会社に求めることができます。 また、「みなし部分の残業時間・それに対する賃金」を会社が自由に設定できるわけではありません。労働法規にしたがったルールである必要があります。 たとえば、「月のみなし残業時間100時間・その分の残業代は1万円(時給あたり100円)」などといった固定残業制を会社が導入しても、その制度は違法・無効です。労働者は、労働法規にしたがった割増賃金を請求することができます。 このほかにも、固定残業制が違法と判断されるポイントはいくつかあります。

  • 時給に直すと最低賃金よりも低い
  • 基本給と固定残業代の区別が明らかでない
  • 何時間分の時間外労働に対する金額なのか不明確

あなたの会社の固定残業制にこうした問題点はありませんか?

管理職だから残業代はつかない?

「あなたは管理職だから残業代は支給されない」ーー。そんな理由で会社側が残業代の支払いを拒んでくるケースがあります。 たしかに、法律上の「管理監督者」という役職にあたる労働者には、一定の例外を除いて残業代・割増賃金を支払わなくてもよいことになっています。 しかし、「管理監督者」にあたるかどうかは、単に役職の名前で判断されるわけではありません。さまざまな事情を考慮して実質的に判断されます。 「●●責任者」「●●マネージャー」のように、一見管理職のような名称がつけられても、実質的には管理職とは呼べない「名ばかり管理職」にあたる場合は、残業代・割増賃金を会社に請求することができます。 このほかにも、「裁量労働制」「変形労働時間制」「フレックスタイム制」など、さまざまな働き方の形がありますが、こうした制度でも、適切に残業代・割増賃金が支払われていないケースがあります。

会社が倒産してしまったらどうする?

未払いだった残業代が支払われないまま会社が倒産してしまった場合でも、あきらめる必要はありません。 国が倒産した会社に代わり、未払の残業代などを含めた給与を最大8割まで支払ってくれる、「未払賃金立替払制度」を利用できる可能性があります。 支給を受けるためにはいくつかの条件をクリアする必要がありますが、この制度で多くの労働者が立て替え払いの支給を受けています。2015年度でみると、約2万4000人に対して、総額95億3000万円あまりが支給されました(厚労省調べ)。 会社が倒産してしまって、給与が未払いのままになってしまっている方は、利用を検討する価値のある制度です。

残業代の請求方法

未払い残業代請求の流れ

請求できる残業代・割増賃金は原則として「さかのぼって2年分」

残業代・割増賃金を請求しようと考えた場合、過去何年にもわたってサービス残業をしていたとしても、請求できるのは原則として「直近の過去2年分」です。残業代・割増賃金を請求する権利は、発生してから2年間で「時効」で消えてしまうからです。 たとえば、2013年の4月から働きはじめた会社で、2017年5月現在にいたるまで、毎月法定労働時間を超えて労働し、その分の残業代・割増賃金が支払われていなかったとしましょう。 この場合でも、2013年4月から2015年4月までの残業代・割増賃金を請求する権利は時効で消えてしまい、請求できるのは2015年5月から2017年4月までの2年分ということになります。 そのため、退職した後にのんびりしていると、未払いの残業代・割増賃金を請求できる額が、どんどん減ってしまうという事態になる可能性があります。 こうした事態を防ぐために、時効が進むことを止める手段があります。時効の「中断」と呼ばれる手続きで、会社に対して裁判を起こすことや、会社と話し合って残業代・割増賃金を支払ってもらう権利があることを認めてもらうことで時効の進行はとまります。 こうした対応がすぐに難しいという方は、内容証明郵便などで、会社に対して「残業代を支払ってほしい」という意思を表明すれば、一時的に時効が進むことを止めることができます。「催告」という手段です。 ただし、「催告」は6か月間に限って時効が進むことを止める一時的な対処法です。また、「催告」はくりかえすことはできません。6か月後になって、もう一度内容証明郵便を送ったとしても、そこからまた6か月間時効を止めることはできないのです。 そのため、「催告」で時効が進むことを止めている間に、裁判や労働審判など、具体的に残業代・割増賃金を請求するための準備をしましょう。

在職中に支払ってもらうためには

在職中に「未払いの残業代を支払ってください」と会社に対して毅然と求めることが難しいという人も少なくないでしょう。 その場合、匿名のメール・電話などで、労働基準監督署に通報するという手段が考えられます。 残業代・割増賃金を支払わないことは、労働基準法に違反します。所轄の労基署にこうした法令違反の事実を申告すると、労基署からの会社に対して賃金を支払うよう勧告してもらえる可能性があります。 会社としても、労基署の勧告を無視して指導を受けることは避けたいので、支払ってもらえる可能性はあります。

退職した後・退職を前提で請求する場合

退職した後や、退職することを前提に支払いを求めるのであれば、最初から裁判などの強硬な手段に出ることも考えられますが、話し合いで解決できる可能性があるならば、よりソフトな手段を検討する余地もあります。 たとえば、裁判所が選任する調停委員が間にはいって労働者と使用者(会社側)との話合いを促す「民事調停」を利用すれば、通常の裁判などの手続きにくらべ、比較的手間や費用が少なくすみ、柔軟な解決を期待することができます。

民事調停は裁判のように強制的に紛争を解決しようという制度ではありません。会社側が話合いに応じる姿勢がなければ調停は不成立となり、終了することになります。

他には、以下の方法が考えられます。

  • 労働審判
  • 少額訴訟
  • 通常の裁判

早めに解決したい〜労働審判

労働審判は、労働問題について詳しい裁判官、労働審判委員、会社側の代表者、労働者などの関係者がひとつのテーブルに集まり、話し合いでお互いに納得できる妥協点を探る解決手段です。 労働審判は原則として3回以内の日程で、話し合いで解決を試みる手続きですので、裁判よりも比較的短い期間で結論をだすことができます(平均70日程度)。

請求する金額が60万円以下〜少額訴訟

請求する残業代・割増賃金の額が60万円以下の場合は「少額訴訟」の手続きを利用することができます。 原則1回の審理で、双方の言い分を聞き、証拠を調べるなどして直ちに判決が言い渡されます。 スピーディに紛争を解決することが期待できる一方、準備不足で臨むと、自分の言い分をしっかり伝えられないまま手続きが終わってしまう可能性があります。 1回の手続きで自分の言い分を裁判所に伝えられるよう、証拠をそろえるなど、しっかりと準備して臨みましょう。

通常の裁判

調停や労働審判で決着をつけることが難しい場合、通常の裁判で争うことになります。 裁判は手続きや審理が複雑で、決着まで1年以上の時間がかかることも少なくありません。弁護士費用もその分高額になるケースもあります。 ただし、通常の裁判では、残業代や割増賃金に加えて「付加金」と呼ばれる金銭を請求することができます。残業代や割増賃金を支払っていない会社に対するペナルティの意味合いがあります。 付加金は、請求する残業代や割増賃金を同一額を請求することができます。つまり、最大で2倍の金額を受け取れる可能性があるということです。 悪質と裁判所が判断したケースに限られるので、必ず請求が認められるわけではありませんが、遅延損害金が認められる可能性があるなど、調停や労働審判などに比べて、多くの金銭が支払われる可能性があるといえるでしょう。

付加金は裁判所の判決で支払いが命じられると法律で定められているので、労働審判委員会が担当する労働審判では、付加金の請求は認められないと考えられています。

できるだけ証拠は集めておこう

会社には、「労働者がどのくらい働いているのか」ということを把握する義務がありますが、会社がきちんと労働時間を管理していなかったとしても、あなたの言い分がそのまま裁判などで認められるわけではありません。 具体的にいつ・どの程度残業したかという点について、労働者側が立証する必要があります。 タイムカードの出退勤記録の写しなど、残業時間の実態がわかる証拠をできるだけ集めておきましょう。

このページのタイトルとURLをコピーする

弁護士に見積り依頼をする

複数の弁護士にまとめて見積り依頼
費用対処方針比べて選ぶことができます。

  • 弁護士費用がいくらかかるか知りたい
  • 弁護士の選び方がわからない
  • 弁護士が何をしてくれるか知りたい
一括見積りをはじめる無料

依頼前に知っておきたい弁護士知識

残業代に関する法律相談

  • 残業未払い請求を始めたのですが

    労働残業残業代

    残業代未払い請求を開始したのですが ケースバイケースだと思いますけど だいたい回収が完了するまで 何ヶ月かかりますか?

    1弁護士回答
  • 残業代支払の合意書の内容について

    労働残業残業代

    合意書の内容ですが 第2条(禁止行為) 甲および乙は、直接的または間接的を問わず、他の当事者を誹謗中傷し、または他の当事者に不利益・不適切となるような言動・行動を行わないものとす...

    1弁護士回答
  • 会社都合の拘束時間に対しての賃金について。

    労働残業残業代

    御世話になります。 今回も、御教示御願い致します。 現在、勤務している病院での疑問です。 雇用契約時に提示された勤務時間は 8時30分 ‐ 17時30分 でした。 しかし、実際は ...

    2弁護士回答
  • 社内資格取得のための勉強時間について

    労働残業残業代

    社内資格の取得と、勉強時間の扱いについて。 私の勤める会社には社内資格があり、ほぼ強制で受けさせられます。 落ちれば受かるまで毎年です。 形式上は個人で会社に受験申し込みする形です...

    1弁護士回答
  • 残業代請求。利益相反の可能性について

    労働残業残業代

    未払い残業代の訴訟の為、全国展開されている弁護士事務所に電話しました。 私の氏名、年齢、住所地 会社名、代表取締役名、代表取締役の住所地、おおよその年齢を伝えました。(伝えたのは...

    2弁護士回答

法律相談を検索する

給料・残業代請求を扱う弁護士を探す

残業代の法律ガイド

関連カテゴリから解決方法を探す

弁護士に相談しようと思ったら…

弁護士に見積り依頼をする

複数の弁護士にまとめて見積り依頼

  • 最短3分で依頼完了
  • 依頼内容は非公開
  • 分野に詳しい弁護士から見積り依頼が届く
一括見積りをはじめる無料

依頼前に知っておきたい弁護士知識

労働のニュース

  1. 就活「Webテスト」で替え玉、偽アカウント受...
  2. 熊本・産山村「村内に住んで」職員通勤手当を...
  3. iPad、モバイルルーター、会社支給なく「自費...
  4. 勝手に「一人フレックス」勤務、早朝出勤して...
  5. バイト出勤1時間前に「やっぱり休みで」と店...
  6. 佐川「週休3日制」導入、副業OK…労働弁護士「...
  7. LGBT就活の乗り越え方「受け入れ企業を選ぶだ...