就業規則

弁護士監修記事 2019年04月19日

労働者にとって不利益に変更された就業規則が無効になるケースを詳しく解説

労働者にとって不利益な就業規則の変更は、原則として、労働者が合意しなければすることができません。 ただし、就業規則を変更する必要性など一定の合理的な理由があれば、労働者の合意がなくても、就業規則を変更できる場合があります。 この記事では、就業規則の変更が無効だと考えた場合の対応方法などについて解説します。

目次

  1. 従業員にとって不利益になる就業規則の変更は認められるか?
  2. 就業規則の不利益変更の有効性が争われた裁判
    1. 就業規則の不利益な変更が認められた判例
    2. 就業規則の不利益な変更が認められなかった判例
  3. 就業規則が不利益に変更された場合の対処法

従業員にとって不利益になる就業規則の変更は認められるか?

「給料が減額になった」「退職金が撤廃された」「年間休日が少なくなった」ーー。 勤務先の就業規則が変更されたことで労働条件が悪くなった場合、従業員は従わなければならないのでしょうか。 労働者にとって不利益な就業規則の変更は、原則として、労働者が合意しなければすることができません。労働者の合意なく変更した就業規則は無効です。 ただし、不利益な変更であっても、就業規則を変更する必要性など一定の合理的な理由があれば、労働者の合意がなくても、就業規則を変更できる場合があります。 合理的かどうかは、主に次のような点を踏まえて判断します。

  • 労働者が受ける不利益の程度…たとえば、同業他社に比べて著しく賃金水準が低くなるような場合は、就業規則の変更が無効になる可能性があります。

  • 変更することの必要性…たとえば、会社の財務状況が悪化していないのに、給与を下げるような就業規則の変更は、無効になる可能性があります。

  • 変更後の就業規則の内容…たとえば、不利益な変更をした代わりに、他方では労働時間を短縮するなど代償措置があるときは、有効となる可能性があります。

  • 労働組合などの協議の状況…たとえば、労働者代表との協議などをまったくせずに、一方的に変更した場合は、無効になる可能性があります。

就業規則の不利益変更の有効性が争われた裁判

就業規則の不利益な変更の有効性をめぐって、労働者が勤務先と裁判で争ったケースがあります。 裁判では、業績の状況従業員が受ける不利益の度合い職場と従業員との交渉の状況などを踏まえて判断されます。 最高裁まで争われたケースを簡単に紹介します。

就業規則の不利益な変更が認められた判例

この裁判は、55歳以降の給与・賞与を引き下げた銀行の就業規則の変更は無効だとして、従業員が、変更前のしたがって計算した給与・賞与と実際の額との差額を求めたケースでした。 事件の簡単な内容は以下のようなものでした。

● 銀行では、就業規則を変更する前の定年年齢が55歳(58歳まで再雇用が可能)だった
● 就業規則の変更し、定年年齢を60歳まで引き上げる一方、55歳以降の給与・賞与を引き下げた
● 銀行は就業規則を変更する前に、従業員の約90%で組織されている労働組合と交渉を行い、就業規則の変更について労働組合と合意した上で、労働協約を締結していた

最高裁は、労働者への不利益は大きいと認めつつも、主に以下のような理由などから、就業規則の変更は合理的であるとしてAさんの請求を退けました。

  • 60歳まで安定した雇用が確保される利益は、決して小さくない
  • 変更後の就業規則による55歳以降の賃金水準は、他の銀行などと比べてかなり高い
  • 福利厚生制度の適用延長や拡充・特別融資制度の新設など、不利益を緩和する措置がとられた
  • 従業員の約90%で組織されている労働組合と交渉し、合意を得ている

最高裁はこうした点を重視して、就業規則の変更は合理的であるとして、Aさんの請求を認めませんでした。

就業規則の不利益な変更が認められなかった判例

このケースも先程の銀行のケースと同様に、55歳以上の賃金を下げるという就業規則の変更が争われた裁判でした。ある従業員が、変更前の規則にしたがった賃金がもらえる地位にあることの確認などを求めて裁判を起こしました。 事件の簡単な内容は以下のようなものでした。

● 銀行では、55歳以上の従業員に専任職という役職を与え、賃金を大幅に減額するなどの就業規則の変更を行った
● 55歳以上の従業員の賃金を減額する代わりに、中堅層の従業員の賃金を引き上げており、全体の人件費は上昇している
● 就業規則の変更について、従業員の約73%で組織されている労働組合と交渉し、合意を得ている

最高裁は、銀行の経営効率がよくないことから、就業規則の変更自体は経営上の必要性があるとしましたが、主に以下のような理由などから、就業規則の変更は合理的ではないとして、就業規則が有効だとした高裁の判断は誤っていると判断しました。

  • 賃金が減額されたにもかかわらず、職務軽減などの措置が図られていない
  • 変更後の賃金水準は、高年層の事務職員の賃金水準として高いとはいえない
  • 55歳以上の賃金を引き下げる一方で、中堅層の賃金を引き上げており、就業規則の変更に差し迫った必要性がない

就業規則が不利益に変更された場合の対処法

就業規則が変更されたことに納得出来ない場合、同僚や、労働組合がある職場であれば、労働組合に相談し、協力してもらいながら、職場に改善を求めてもよいでしょう。 仲間をみつけられなかったり、労働組合が会社にないような場合は、以下のような手段を検討してみてもよいでしょう。

  • 労働局であっせんを申し立てる
  • 裁判所で労働審判を申し立てる

あっせんや労働審判を申し立てる手続きについては、この記事の下にあるリンクから確認できます。

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