相続放棄

弁護士監修記事 2017年06月12日

「相続放棄」とは? 借金を相続したくない場合にするべき手続きの流れ

相続では、預貯金や不動産などプラスの財産だけではなく、被相続人(亡くなった方)の借金などマイナスの財産も引き継ぐことになります マイナスの財産を引き継ぎたくない場合は、相続する権利を放棄する「相続放棄」の手続きをする必要があります。この記事では、相続放棄をした方がよいケースや、相続放棄の手続きについて詳しく解説します。

  • 相続放棄とは
  • 相続放棄をした方がよいケース
  • いつまでに放棄しなければならないのか
  • 相続放棄の手続きの流れ

目次

  1. 相続放棄をするとプラス・マイナスすべての遺産を放棄することになる
  2. 相続放棄には期限がある
  3. 相続放棄すると何がおきるのか
    1. 配偶者・子2人・父母という家族構成で、子2人が相続放棄したケース
    2. 配偶者・子2人・父母という家族構成で、子1人だけが相続放棄したケース
    3. 配偶者・子2人・父母・兄弟という家族構成で、兄弟以外が相続放棄したケース
    4. 相続放棄をしても子や孫に相続権は移らない
  4. 相続財産がどのくらいなのか不明だった場合の対処法
  5. 相続放棄を検討している間は、遺産を処分しない
  6. 相続放棄の手続きの進め方

相続放棄をするとプラス・マイナスすべての遺産を放棄することになる

被相続人が残した遺産を引き継がずに、放棄することを「相続放棄」といいます。 プラスの財産よりも、借金などのマイナスの財産が多い場合、つまり相続することがマイナスになってしまうケースで利用されることが多いです。 また、特定の相続人(家業を継ぐ人)などにすべての遺産を相続させるために、他の相続人が相続放棄するようなケースもあります。 相続放棄をした人は、「はじめから相続人ではなかった」という扱いになり、プラス・マイナス含め、全ての遺産を引き継がないことになります。「貯金と不動産は欲しいけど、借金だけ放棄したい」というように、部分的に放棄することはできません。 相続放棄をするかどうかを判断する際には、まず、亡くなった人がどんな財産を残したのかを調査し、プラスの財産とマイナスの財産がどれだけあるのか把握した上で、慎重に判断しましょう。

相続放棄には期限がある

相続放棄は、原則として、「被相続人が亡くなったこと」と「自分が相続人であること」を知ってから3か月以内に手続きをする必要があります(熟慮期間(じゅくりょきかん)といいます)。 この期間を過ぎてしまうと、自動的に相続することを認めたと扱われることになります(単純承認)。 ただし、熟慮期間内に相続人が財産を調査しても、相続放棄するかどうか決定できない場合には、裁判所に申し立てることによって熟慮期間の延長が認められる可能性があります。 申し立てる裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。申立てに必要な費用や書類については、裁判所のホームページで詳しく知ることができます。 他にも、裁判で熟慮期間の延長が認められたケースもあります(正確には、熟慮期間のカウントをはじまる時点(起算点)が後ろの時点になる)。 最高裁は、次の3点をみたす場合には、熟慮期間の起算点は、「相続財産の全部また一部の存在を知った時(または通常認識できる時)」だという判断を示しています。

  • 3か月以内に相続放棄をしなかったのは、被相続人に相続財産が全くないと信じたからだった
  • さまざまな事情から、相続人に相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難だった
  • 相続人が相続財産が全くないと信じたことについて、相当な理由があった

こうした基準の他にも、個別に熟慮期間の延長が認められるケースはありますが、自分だけでは判断に迷うケースもあるでしょう。 もし、熟慮期間が過ぎてしまっている場合でも、判断に迷ったら弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続放棄すると何がおきるのか

相続放棄をすると、相続する権利が他の相続人に移ります。誰に権利が移るかは法定相続分のルールで定められた優先順位にしたがいます。 被相続人の配偶者(妻・夫)は常に法定相続人になります。この他の法定相続人は、優先順位で大きく3つのグループに分かれます。 最も優先されるのは被相続人の「子・孫」のグループ(第1順位)、「子・孫」がいない場合に相続人になるのが被相続人の「父母・祖父母」のグループ(第2順位)、「父母・祖父母」もいない場合に相続人になるのが、「兄弟姉妹・甥姪」のグループです(第3順位)。

配偶者・子2人・父母という家族構成で、子2人が相続放棄したケース

たとえば、父母が健在で、配偶者・子どもが2人という家族構成で被相続人が亡くなった場合で、子ども2人(第1順位の相続人)が相続放棄すると、相続する権利は父母(第2順位)に移り、配偶者と父母が相続する権利があるということになります。 相続

  配偶者 父母
相続放棄前の相続分 2分の1 2分の1
相続放棄後の相続分 3分の2 放棄 3分の1

配偶者・子2人・父母という家族構成で、子1人だけが相続放棄したケース

相続放棄 この場合、配偶者ともう1人の子ども(第1順位の相続人)が相続権があるということになります。父母(第2順位)に相続権はありません。

  配偶者 子1 子2 父母
相続放棄前の相続分 2分の1 4分の1 4分の1
相続放棄後の相続分 2分の1 放棄 2分の1

配偶者・子2人・父母・兄弟という家族構成で、兄弟以外が相続放棄したケース

相続放棄 この場合、相続する権利は被相続人の兄弟(第3順位の相続人)に移り、兄弟が全ての財産を引き継ぐことになります。

  配偶者 父母 兄弟
相続放棄前の相続分 2分の1 2分の1
相続放棄後の相続分 放棄 放棄 放棄 1

相続放棄をしても子や孫に相続権は移らない

被相続人が死亡した時点で、本来相続人になるはずの人が死亡していた場合に、その死亡した人の子や孫が相続することになります。「代襲相続」といいます。 相続放棄の場合、はじめから相続人ではなかったとあつかわれるため、こうした「代襲相続」はおこりません。 相続放棄

相続財産がどのくらいなのか不明だった場合の対処法

プラスの財産とマイナスの財産がそれぞれどの程度あるのか分からない…。そんなケースでは、「限定承認」という形で相続を認めることができます。これは、プラスの財産でマイナスの財産を相殺できる限度で相続を認めることです。 たとえば、後から被相続人の財産が預貯金100万円、借金150万円ということがわかったとしましょう。単純に相続すると、マイナス50万円ということになります。 こうしたケースで限定承認しておけば、相続を認めるのは預貯金100万円でカバーできる限度となるため、残り50万円の借金は相続しないということになるのです。

このように、限定承認は、マイナス財産が多かった場合でも「プラスマイナスゼロ」の結果にできる合理的な仕組みですが、共同相続人全員で行う必要があるなど、手続きが複雑なため、制度としてあまり利用されていないのが実情です。

相続放棄を検討している間は、遺産を処分しない

熟慮期間の間でも、一定の行為をしてしまうと、「相続することを認めた」と扱われるケースがあります(法定単純承認)。相続する財産の一部を使ってしまったり、売ってしまったりするケースです。 たとえば、被相続人の口座から葬式の費用を引き出すことは、「相続することを認めた」ことになります。 「葬式の費用は被相続人のための支出だし、相続財産から支出してもよいだろう」と考えがちですが、こうした行為をすると、法的には「相続することを認めた」と扱われ、相続放棄や限定承認はできなくなります。 相続放棄や限定承認を検討している場合は、むやみに遺産に手をつけないよう気をつけましょう。

相続放棄の手続きの進め方

相続放棄をすると決めたら、家庭裁判所に相続放棄の申述の申立てをする必要があります。 申立ては、被相続人が最後に住んでいた住所を管轄する家庭裁判所に対して行ないます。必要な書類は、相続放棄をする人が誰なのかによって異なりますが、共通して必要な書類は以下の3種類です。

書類 備考
相続放棄申述書 家庭裁判所で入手するか、 裁判所|相続の放棄の申述書(20歳以上)からダウンロードする。記載例あり。
被相続人の住民票除票か戸籍附票 被相続人の最後の住所がある市区町村役場で取得する。
申述人の戸籍謄本 申述人の住所がある市区町村役場で取得する。

必要な書類をそろえれば、郵送で手続きすることもできます。ただし、裁判官から面接を求められることもあるので、そのときは裁判所に行く必要があります。 書類を提出すると、様々な質問が書かれた「照会書」が裁判所から送られてきます。照会書には、「なぜ相続放棄をするのか」といった質問が記載されています。相続放棄をする人はその回答を記入して、郵便で返送します。 家庭裁判所で審理され、相続放棄が認められると、「相続放棄申述受理通知書」が裁判所から届きます。 以上で、相続放棄の手続きが完了することになります。

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