相続人

弁護士監修記事 2018年09月29日

相続人がいない場合に「特別縁故者」として遺産を相続するための手続き

亡くなった人に相続人がいない場合、その人の財産はどのように扱われるのでしょうか。 「亡くなった人と一緒に暮らしていた」、「亡くなる前に介護を行なっていた」などの人がいれば、「特別縁故者」として財産を引き継ぐことができる可能性があります。 この記事では、特別縁故者になるための要件や、財産を引き継ぐための手続きなどについて、詳しく解説します。

目次

  1. 亡くなった人に相続人がいない場合の遺産相続
    1. 特別縁故者として認めた裁判例
    2. 特別縁故者として認められなかった裁判例
  2. 特別縁故者を申し立てるための流れ
  3. 相続財産管理人を申し立てる手続き
    1. 相続財産管理人になれる人
    2. 相続財産管理人の役割
    3. 相続財産管理人の申立てに必要な書類
    4. 書類を提出した後の流れ
    5. 相続財産管理人を選任した後の流れ
  4. 特別縁故者を申し立てる手続き
    1. 特別縁故者の申立てに必要な書類
    2. 特別縁故者の判断や評価方法には専門的な知識が必要

亡くなった人に相続人がいない場合の遺産相続

相続人が誰もいない場合、相続人ではない人でも、家庭裁判所に以下のような条件に該当することが認められた場合、「特別縁故者」として被相続人の財産を引き継ぐことができます。

  • 被相続人と生活し、一緒に生計を立てていた
  • 生前の被相続人に介護などを行なっていた
  • その他、被相続人と特別な関係があった

上記の条件に当てはまる人の一例として、「被相続人と法律上結婚していないが、事実上夫婦と同じように一緒に生活していた人」や、「法律上養子縁組の手続きはしていないが、事実上の養子関係にある人」などが該当するでしょう。 しかし、被相続人とどのような関係があれば、特別縁故者に当たると認められるかについては、裁判所が様々な事情を考慮して判断することになります。 また、特別縁故者として認められた場合も、全ての遺産を引き継ぐことができるわけではありません。遺産をどの程度、引き継ぐべきかについても、裁判所が判断します。 裁判所がどのような点に着目して判断しているのか、実際のケースを紹介します。

特別縁故者として認めた裁判例

特別縁故者として認めた事例(東京家裁平成24年4月20日審判)・裁判所に特別縁故者の申立てを行なった人(申立人)は、被相続人の義理のめい(被相続人のおいの妻)
・遺産の総額は約1億4000万円
・被相続人は申立人と、申立人の夫(被相続人のおい)を可愛がっており、親密な交流があった
・被相続人は「自分の死後、財産の管理・処分を申立人の夫に託す」という内容の遺言書を書いたことを、申立人の夫に伝えていた
・申立人の夫が死亡し、その後、被相続人が死亡した
・申立人の夫が死亡した後、申立人と被相続人の関係は疎遠になっていた

裁判所は、被相続人との関係を考慮して、申立人が特別縁故者に当たると認めました。 ただし、申立人の夫の死後は、被相続人との関係が疎遠となっていたことなどを理由に、相続できる財産の額を500万円としました。

特別縁故者として認められなかった裁判例

特別縁故者として認められなかった事例(東京高裁平成26年1月15日決定)・申立人は被相続人のいとこの養子
・申立人は本家、被相続人は分家として親戚づきあいがあった
・申立人は被相続人から死後のことを託されていた
・被相続人の死後、申立人は被相続人の法要などを行い、費用を負担していた

裁判所は、申立人と生前の被相続人との交流の程度では、通常の親戚づきあいが認められたとしても、特別な関係だったとはいえず、特別縁故者に当たらないと判断しました。

特別縁故者を申し立てるための流れ

相続人ではない人が特別縁故者として認めてもらい、被相続人の財産を引き継ぐためには、まず相続財産管理人を選任し、そのあとに特別縁故者の申立てを行う必要があります。 具体的には以下のような手続きが必要です。

  1. 相続財産管理人の選任を裁判所に申し立てる
  2. 相続財産管理人が選任されたことについて裁判所が公告する
  3. 相続財産管理人が相続財産の債権者・受遺者がいない確認するための公告を行う
  4. 裁判所が相続人を探すために公告する
  5. 相続人がいないことが確定した場合、特別縁故者の申立てを行う

特別縁故者としての条件を満たしている場合、上記の手続きのうち、1番目と5番目の手続きを自身で行う必要があります。

相続財産管理人を申し立てる手続き

相続財産管理人の選任は、被相続人の最後の住所地を担当する家庭裁判所に申し立てます。 家庭裁判所は、裁判所のホームページから探すことができます。この記事の一番下にある関連リンクから探すこともできます。 申立てができる人は特別縁故者の条件を満たす人や、被相続人の債権者などです。

相続財産管理人になれる人

相続財産管理人になるために必要な資格は特にありません。 相続財産管理人に指名したい人がいれば、その人を候補者として家庭裁判所に提出する申立書に記載することができます。指名したい人が特にいなければ、裁判所に候補者を選んでもらうことができます。 裁判所は被相続人と候補者との関係や、利害関係の有無などを考慮して、適格性を判断します。裁判所の判断により、弁護士などの専門家が選任される可能性もあります。

相続財産管理人の役割

相続財産管理人は被相続人の財産の管理・処分などを行うという役割があります。 被相続人の債権者や、特別縁故者として認められた人がいる場合、財産の換金や、預貯金の解約などを行うことで、必要な支払いを行います。

相続財産管理人には、財産から報酬が支払われます。財産が少ないため、報酬が支払えないと考えられる場合は、申立人が報酬に相当する額を裁判所に収めることになります。

相続財産管理人の申立てに必要な書類

相続財産管理人の申立てには、主に以下の書類が必要です。

  • 申立書
  • 800円分の収入印紙
  • 連絡用に郵便切手
  • 官報公告料3775円(裁判所の指示があったら支払う)
  • 被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の父母の出生から死亡までの全ての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 被相続人の財産を証明する資料(不動産登記事項証明書や預貯金・有価証券の残高証明書など)
  • 被相続人と申立人の関係を証明する資料
  • 候補者の住民票または戸籍附票

申立書の書式は裁判所のホームページでダウンロードできます。この記事の一番下にある関連リンクからダウンロードすることもできます。 連絡用の郵便切手は、申し立てる裁判所に必要な額を確認してください。 被相続人の配偶者や子ども(孫)、祖父母、きょうだい(おい・めい)など、相続人になれる人で、既に亡くなっている人がいれば、その人の出生から死亡までの全ての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本も必要です。 裁判所の判断により、他の書類も必要となる場合がありますので、申し立てる裁判所に確認しましょう。

書類を提出した後の流れ

申立てを受けた家庭裁判所は、申立人に対して上記以外の書類の照会や、面談などにより、相続財産管理人を選任するかどうかの判断を行います。 選任が認められた場合、選任することを連絡するため、申立人や候補者に「審判書謄本」を送付します。 申立てから選任までの期間は、およそ1か月です。

相続財産管理人を選任した後の流れ

相続財産管理人が選任された後は、次のような流れで手続きが行われます。

  1. 家庭裁判所は相続財産管理人を選任したことを知らせるための公告を行う
  2. 家庭裁判所の公告から2か月経過すると、相続財産管理人が相続財産の債権者・受遺者を確認するための公告を行う
  3. 相続財産管理人の公告から2か月が経過すると、家庭裁判所が相続財産管理人の申立てにより、相続人を探すための公告を行う

相続人を探すための公告の期間は6か月以上となっており、この期間中に相続人が現れなければ、相続人がいないことが確定します。 特別縁故者の申立ては、相続人を探すための公告が終了し、相続人がいないことが確定した後に行うことができます。

特別縁故者の申立ては、相続人を探すための公告の期間が終了してから3か月以内に行わなければならないことに注意しましょう。

特別縁故者を申し立てる手続き

特別縁故者の申立ては、被相続人の最後の住所地を担当する家庭裁判所に行います。 申立ては、特別縁故者の条件に該当する人自身が行います。

特別縁故者の申立てに必要な書類

  • 申立書
  • 800円分の収入印紙
  • 連絡用の郵便切手
  • 申立人の住民票または戸籍附票

申立書の書式は裁判所のホームページでダウンロードできます。この記事の一番にある関連リンクからダウンロードすることもできます。 連絡用の郵便切手は、申し立てる裁判所に必要な額を確認してください。 裁判所の判断により、他の書類も必要となる場合がありますので、申し立てる裁判所に確認しましょう。 書類を提出すると、裁判所が「特別縁故者に該当すると認めるか」「特別縁故者としてどの程度の財産を引き継ぐべきか」を判断するための審判を行います。 特別縁故者として認められた場合、裁判所が決めた財産の額を相続財産管理人から受け取ることになります。

特別縁故者として財産を引き継いだ場合、相続税を支払う可能性があることに注意しましょう。

特別縁故者の判断や評価方法には専門的な知識が必要

「特別縁故者に該当すると認めるか」「特別縁故者として遺産をどの程度、引き継ぐべきか」などについては、裁判所が様々な事情を考慮して判断します。 どのような事情があり、その事情が自分にとって有利となるのか不利となるのかの判断には、専門的な知識が必要です。 特別縁故者に該当するかどうか迷った場合には、弁護士などの専門家に相談することを検討してもよいでしょう。

  • 関連リンク

裁判所:各地の裁判所一覧 裁判所:相続財産管理人の選任 裁判所:特別縁故者の申立て

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