加藤 寛崇 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
大学は法学部でしたが、特に弁護士その他の法曹になろうという意識はありませんでした。割と消去法に近い形で司法試験の勉強をして合格したので弁護士になったというのが実際のところです。
仕事の中で嬉しかったこと
一般には接する機会のない様々な出来事(事件)に関わることができて面白いということがあります。判決が論理的・理論的に間違っていると思ったときに、それを指摘して不服申立てをして認められた場合も喜ばしいです。
弁護士になって大変だと感じること
勘違いされている方も少なくないのですが、法律は「弱い者の味方」ではありません。あくまで、支配者が作ったルールなので、支配者に都合のよいものになっています。大衆の要求を全く無視もできないので弱者に配慮した側面を示した点もありますが、基本的には支配者のためのルールです。
労働者派遣法はその典型で、派遣労働者を保護するためとされる規定は、十分な実効性のないものになっています。最近問題になっている非正規労働者と正社員の「同一労働同一賃金」の定め(旧労働契約法20条、現行パートタイム・有期雇用労働法8条)も、根本的な格差解消につながるものになっていません。弁護士の法律業務としては、こういった法律の枠組みの限界にぶつからざるを得ません。大変辛いことです。
仕事をする上で意識していること
弁護士は、ともすれば、個々の事件を解決することだけにとらわれてしまいがちですが、個々の事件が生じる背後には構造的問題があります。例えば、労働事件ですと、最近話題になっている「同一労働同一賃金」の問題があります。法律の限界を感じるところも多々あり、今の法律では労働者の権利・利益が十分には守られないと感じます。
法改正まで必要があると、最近扱ったいくつかの事件を通じて感じています。このように個々の事件の解決だけでなく、背後の社会的問題を是正するという視点を失わないようにしたいと心がけています。なかなか難しいことですが。
関心のある分野
地方だと様々な事件を扱うことになるので、「特に関心のある分野」を持っても必ずしも重点的に取り組むことはできません。比較的多く扱っており関心があるのは、労働事件と離婚・男女事件です。
裁判員裁判に反対している理由
裁判員裁判にいいことは何もありません。司法に大衆が参加すること自体は反対ではないですが、現在の制度は、言わば国民をお客さんとして裁判に参加させているに過ぎません。裁判という権力行使の一旦を担った気にさせて支配者の側に取り込み、支配者側の意識を共有させる制度だと思います。
本来、大衆の司法参加と言われるものは今の裁判に大衆の意見が取り入れられていないので大衆が参加すべきだという観点から言われているものです。しかし、実際の裁判員裁判はそういったものではなく、むしろ逆のものです。
今後の弁護士業界の動向
弁護士激増によって弁護士の困窮化が進み、弁護士の自主性は破壊されようとしてます。国選弁護を進んで引き受ける弁護士も増えています。国選弁護費用は一貫して低廉な額でしたが、裁判員裁判だけは従来の水準に比較すれば、相当の額が支払われます。
国選弁護は、時間をかけてきちんと弁護するよりも、さっさと終わらせた方が得をする弁護報酬体系になっています。これらは、弁護士の困窮化のもとで、簡易・迅速・厳罰の刑事裁判を実現する大きな武器になっています。
今後、さらに弁護士業界が変質させられていくことは間違いありません。こうした攻撃と闘わなければなりません。