相続財産

弁護士監修記事 2018年12月27日

財産整理 l 家族の相続手続きの手間を減らすために生前にできること

あなたが複数の銀行口座や不動産を残したまま亡くなった場合、その財産を相続する家族は、解約や名義変更などの手続きを何度もしなければなりません。 口座を解約して一つにまとめるなど、生前に財産を整理しておくと、相続の際、家族の手続きの負担を減らすことができます。 この記事では、財産整理するときのポイントについて解説します。

目次

  1. なぜ財産の整理が必要なのか?
  2. 銀行口座
    1. 適切な口座の数を考える
    2. 引き落としの口座を整理する
  3. 証券口座
    1. 証券口座を整理する手続き
  4. 不動産
    1. 売却する場合は相続税や譲渡所得税に注意
    2. 不動産を売却する手続き
  5. 生命保険
    1. 生命保険を解約する手続き
  6. その他、自動車や貴金属など

なぜ財産の整理が必要なのか?

財産の整理とは、今ある財産を必要なものと不要なものに分け、不要な財産は換金するなど、他の財産に種類を変えたり、解約や処分をしたりすることです。 たとえば、使っていない銀行口座や証券口座を解約したり、不要な土地を売却したりすることが考えられます。 もし、複数の銀行口座や不動産などを持っていて、整理をしないまま亡くなった場合、その財産を相続する家族は、解約や名義変更などの手続きを何度もしなければなりません。 財産を整理しておくことで、家族が行う手続きの負担を減らしてあげることができます。 まずは、今ある財産を必要なものと不要なものに分けてみましょう。 不要な財産がある場合、銀行口座であれば解約したり、不動産であれば売却したりするなど、財産を整理するための手続きを行います。 ここからは、以下の財産について、整理するための手続きやポイントについて解説していきます。

  • 銀行口座
  • 証券口座
  • 不動産
  • 生命保険
  • 自動車や貴金属など

銀行口座

貯金を複数の銀行口座に分けている人は少なくないでしょう。 一方で、あなたが亡くなった後、貯金を相続する家族は、あなたが持っている口座の数に合わせて、何度も名義変更や解約の手続きをしなければなりません。 そのため、不要な口座を解約し、口座の数を減らしておくことで、家族が貯金を相続する時に必要な手続きの手間を、減らしてあげることができます。

適切な口座の数を考える

銀行口座の解約を始める前に、自分が適切に管理しやすい口座の数を考えてみましょう。 「いくつの口座を残しておくべきか」という点について、決まった考え方はありません。 考え方の一つとして、「口座の数を相続人の数に合わせる」という方法があります。 相続人ごとに引き継がせたい金額を残しておき、遺言書に「誰にどの口座を相続させるか」を指定しておくことで、貯金を相続する家族は、スムーズに相続の手続きができるでしょう。 また、遺言を書作成した後に、各相続人に相続させる財産の割合を変更したいと考えた場合は、それぞれの口座の残高を調整すればよいので、遺言書を書き直す手間がかかりません。

遺言書の記載例・A銀行の口座は妻〇〇に相続させる。
・B銀行の口座は長男〇〇に相続させる。
・C銀行の口座は次男〇〇に相続させる。

万が一、口座のある銀行が破綻した場合は、1000万円までしか払い戻されない可能性があります(ペイオフ制度)。多額の貯金がある場合は、それぞれの口座の残高が1000万円以下になるように分けることを検討してもよいかもしれません。

引き落としの口座を整理する

口座の解約を始める前に、電気代やガス代、水道代などの料金を引き落としにしている場合、どの口座から支払っているか確認しましょう。 もし、複数の口座から引き落としをしている場合は、口座を解約する前に、引き落としに使う口座をできるだけ一つにまとめておくことをおすすめします。 引き落としに使っている口座を解約した場合、電気代などが自動で支払われません。自宅などに請求書が届き、コンビニなどで直接支払うことになります。 支払いの手間を省くためにも、口座を解約する前に、引き落としの口座をまとめておく方がよいでしょう。

クレジットカードも整理しておく

電気代やガス代などを、クレジットカードで支払っている方もいるかもしれません。 複数のカードで支払っている場合は、できるだけ1枚のカードで支払うようにまとめ、使わないカードは解約しておきましょう。 あなたが亡くなったとき、家族はあなたに代わってクレジットカードの解約手続きをすることになります。 クレジットカードを減らしておくことで、解約手続きの手間を減らしてあげることができるのです。

銀行口座の解約に必要なもの

口座の解約は、銀行の窓口で行います。主に以下のようなものが必要です。

  • 通帳・キャッシュカード
  • 届出印・銀行印
  • 本人確認書類(運転免許証)

上記以外にも必要なものがある可能性があるので、銀行に確認しましょう。 また、インターネット上で口座を開設する銀行(ネット銀行)には、窓口がありません。ネット銀行の口座を解約する場合は、解約の方法について、各銀行に問い合わせましょう。

証券口座

alt 株式や投資信託などの有価証券を家族が相続するとき、基本的に、「自分と同じ証券会社で家族が新たに口座を開設し、その口座に相続する有価証券を移す」という手続きが必要になります。 つまり、複数の証券会社で口座を開設している場合、相続する家族は、口座の数に合わせて、何度も口座を開設する手続きが必要になるのです。 銀行口座を整理するときと同様に、複数の証券会社で口座を開設している場合は、家族の手間を省くために、不要な口座を解約するなどの整理をしておく方がよいでしょう。

証券口座を整理する手続き

口座を整理する方法として、大きく以下の2種類が考えられます。

  • 有価証券を他の口座に移す
  • 有価証券を売却して現金化する

どちらの方法を行う場合でも、不要となった証券口座は解約しましょう。 解約するときの具体的な手続きは、証券会社に問い合わせましょう。

有価証券を他の口座に移す

たとえば、2つの証券会社で口座を開設している場合、1つの口座を解約し、もう片方の口座に有価証券を移すことができます。 他の口座の有価証券を移すための手続きの方法は、証券会社に問い合わせましょう。

有価証券を他の証券会社に移すとき、手数料がかかる場合があるので、証券会社に確認しましょう。

有価証券を売却して現金化する

有価証券を相続した家族は、その有価証券を引き続き運用するか、売却するかなどを選ぶことになります。 家族が有価証券の取引きをしたことがない場合、相続した有価証券を引き続き運用するか、売却するかといった判断が難しいかもしれません。 そのような場合は、有価証券として相続させるのではなく、現金として相続させることを検討してもよいでしょう。 有価証券を売却した後の証券口座に、有価証券が残っていないことを確認したら、解約しましょう。

不動産

土地や建物といった不動産は、現金や貯金とは異なり、「財産としてどのように評価するか」という点で、家族の意見が分かれやすい財産です。 そのため、「誰がその不動産を相続するか」について、家族の意見が対立する可能性があります。 遺言書を残すことで不動産を相続させる人を指定することも可能ですが、使用していない不動産がある場合は、家族が相続しやすいように、不動産を売却し、現金化することを検討してもよいでしょう。 ただし、使用していない不動産が、あなたにとって不要でも、将来的に使いたいと考えている家族がいるかもしれません。 不動産の売却を検討する前に、家族の考えを確かめておくことをおすすめします。

1つの不動産を家族が「共有」することも可能です。しかし、共有にすると、あとから「不動産を売りたい」「土地に建物を建てたい」などと考えた場合に、共有者全員の同意が必要となり、意見が揃わないと不動産を自由に使えない可能性があります。後々のトラブルを避けるため、なるべく共有にしないで不動産を受け継がせる方法を考えましょう。

売却する場合は相続税や譲渡所得税に注意

不動産を売却する場合は、「相続税」「譲渡所得税」といった税金が発生するかどうかに注意しましょう。 不動産を売却するときの税金について、以下に説明しますが、税金が発生するかどうか不安な場合や、相続税額の目安を知りたいような場合は、弁護士や税理士などの専門家に相談してもよいでしょう。

相続税が発生するケース

「相続税」は、財産の総額が「基礎控除額」(3000万円+600万円×法定相続人の数)を上回る場合、財産を相続する人が支払うことになります。 財産の総額は、財産の「相続税評価額」を合計することで計算できます。 現金・貯金は、所有している額と相続税評価額が同じですが、不動産の相続税評価額は実際の売買価格よりも低くなることが多いのです。 そのため、不動産のまま相続すれば相続税がかからならない場合でも、あなたが生前にその不動産を売却し、家族が現金として相続すると、相続税が発生する可能性があります。 不動産を売却するかどうかは、「不動産の分け方で揉める可能性があるか」だけでなく、「相続税が発生するか」という点からも、検討するようにしましょう。

不動産を売却して
現金化する場合
財産として均等に分けやすい
(分け方で揉める可能性が低い)
相続税が発生する(高くなる)
可能性がある
不動産を売却
しない場合
財産として均等に分けにくい
(分け方で揉める可能性がある)
相続税が発生しない(低くなる)
可能性がある

譲渡所得税が発生するケース

「譲渡所得税」は、不動産を売却したときの価格が、購入した時の価格と、売却にかかった費用の合計額を上回った場合に支払うことになります。 不動産の売却額 > 不動産の購入額 + 不動産の売却費用

不動産を売却する手続き

不動産を売却する場合、まずは、「どの不動産会社に依頼するか」を決めましょう。 どの不動産会社に依頼するかによって売却額が異なってくる場合があります。 依頼する会社はすぐ選ぶのではなく、複数の会社に不動産の売却について相談し、どこに依頼するか慎重に検討した方がよいでしょう。

生命保険

複数の生命保険に加入している場合、それぞれの保障内容を確認し、保障内容が重複しているなど不要な保険があれば、解約することを検討しましょう。 家族が保険金を請求するときは、保険ごとに手続きをしなければならないので、保証内容が重複しているなど、不要な保険を解約しておくことで、家族にかかる手続きの手間を減らしてあげることができます。

生命保険を解約する手続き

生命保険を解約する場合、保険会社に連絡しましょう。 保障内容によっては、解約返戻金を受け取れる場合があります。 ただし、解約するタイミングによっては、受け取れる金額が、これまでの払込保険料よりも少なくなってしまう場合があるので、保険会社に相談しましょう。

その他、自動車や貴金属など

これまで説明した財産以外にも、自動車や貴金属など、高価な財産についても、売却するといった整理を行うかどうかを検討しましょう。 自動車や貴金属などを家族が相続するとき、以下のようなトラブルにつながる可能性があります。

  • 財産としての価値をどのように評価するかについて、家族同士の意見が対立してしまう
  • 均等に分けるのが難しいため、「誰が相続するか」について、家族の意見が対立してしまう
  • 相続人の中にその財産を欲しいと思っている人がおらず、相続した後で売却する手間がかかってしまう

自動車や貴金属など高価な財産があれば、あなた自身や家族にとって必要なものかどうかを確認し、不要であれば売却を検討してもよいでしょう。 あらかじめ財産を現金に換えておくことで、トラブルを事前に回避することができます。 売却する場合は、自動車や貴金属の買取業者に相談しましょう。

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