競業避止義務

弁護士監修記事 2019年04月19日

同業他社へ転職したら前社から競業避止義務違反を主張されたときの対処法

「会社で得た知識やノウハウを活かしたい」と考え、同業他社に転職しようとしたら、元の会社から「競業避止義務に違反する」という理由で損害賠償を求められたーー。 会社によっては、就業規則や誓約書で、従業員に「退職後1年間は同業他社に転職してはいけない」などの競業避止義務を定めているところがあります。 こうした就業規則や誓約書に反して同業他社に転職した場合、請求されたら損害賠償を支払う必要はあるのでしょうか。そもそも、労働者が転職するときに競業避止義務に従う必要はあるのでしょうか。この記事で詳しく解説します。

目次

  1. 競業避止義務とは
  2. 就業規則や誓約書の有効性を判断するポイント
    1. 競業禁止の目的
    2. 退職するときの従業員の仕事内容や役職
    3. 競業禁止の期間
    4. 地理的な制限
    5. 競業禁止の範囲
    6. 代償措置の有無
    7. チェックポイントまとめ

競業避止義務とは

在職している間、労働者は会社に対して誠実に業務をすることが求められています。そのため、在職中は、会社が特に就業規則などで定めていなくても、同業他社の業務(競業)をしない義務を負っています(競業避止義務)。 一方、退職した後は、原則としてはこのような義務は負いません。 しかし、会社の中には、就業規則や誓約書などで、退職した後も一定期間競業をすることを禁止している会社があります。 たとえば、次のような規定です。

  • 退職後●年間にわたり、会社と競合する事業を起業することや、同業他社への就職をしてはならない
  • 競業避止義務に違反した場合、退職金を半額に減額する

こうした内容を、労働者に誓約書の形で提出するよう求める会社もあります。 しかし、労働者には、どんな仕事をするかを自由に決められる、「職業選択の自由」が憲法上認められています。 そのため、就業規則に書かれているからといって、当然に従業員の職業選択の自由(この場面では転職の自由)が制限されてよいかは慎重に判断しなければならないと考えられています。 そのため、裁判例などでは、競業避止義務を課す正当な目的や、合理的な理由などがなければ、就業規則や誓約書が無効になることがあると考えられています。 つまり、会社から、競業避止義務に違反したことを理由に損害賠償を求められたり、退職金を減額すると言われても、当然に従う義務はないということです。

就業規則や誓約書の有効性を判断するポイント

従業員が退職した後の競業を禁止する就業規則などの有効性について、裁判例では、主に次のような点に着目して判断しています。

競業禁止の目的

一般的には、会社の秘密情報を守るために競業避止義務を課している場合は、その目的は正当だと考えられています。 たとえば、ヴォイストレーニングの教室を運営していた会社が、ヴォイストレーニングの指導方法・指導内容や集客の方法、生徒管理体制についてのノウハウといった情報を守るために競業避止義務を課していたケースで、裁判所は、こうした情報が「長期間にわたって確立されたもので独自かつ有用性が高い」として、目的は正当だと判断しました。

退職するときの従業員の仕事内容や役職

その従業員が、会社の秘密情報に接するような仕事内容や役職についていたかどうかも判断のポイントになります。秘密情報に接しないのであれば、そもそも、競業避止義務を課す必要性がないからです。 たとえば、全国展開する家電量販店で店長や地区部長をつとめ、役員などで構成される営業会議にも出席していた従業員に退職後の競業避止義務を課していたケースでは、会社の全社的な営業方針や経営戦略といった営業秘密を知ることができたことなどを理由に、有効だと判断しました。 秘密情報に接するような役職でないのに、退職後も競業避止義務を課しているような場合は、その就業規則や誓約書などは、無効と判断される可能性が高いでしょう。

競業禁止の期間

就業規則や誓約書で定められた競業禁止の期間が長すぎる場合、無効と判断される傾向があります。職業選択の自由に対する制限として重すぎると考えられるからです。 裁判例では、期間が1年以内の場合には、有効と判断される傾向があります。 ただし、転職先が限られるような狭い業界では、競業禁止の期間が1年以内でも長いとして、無効と判断された裁判例もあります。 競業禁止の期間が2年以上だと、無効と判断される可能性が高まります。

地理的な制限

競業禁止の地域が限定されていない場合、その就業規則や誓約書は無効とされる傾向があります。 ただし、地域の限定がない場合でも、全国的にチェーン展開する会社であることを理由に競業禁止を有効としたケースもあります。

競業禁止の範囲

禁止される仕事の内容や、就業が禁止される職種が限定されているかどうかも、有効か無効かを判断するときの1つのポイントです。 仕事内容や職種が限定されておらず、一般的・抽象的に同業他社への転職を禁止するような就業規則や誓約書は、無効とされる傾向があります。 たとえば、コンサルティングから別のコンサルティングの会社に転職したような場合で、「在職中にコンサルティングをした顧客への営業活動は禁じる」など制限する業務が限定されている場合であれば、有効と判断される可能性があるでしょう。

代償措置の有無

競業避止義務を課す代わりに、その従業員に待遇面のメリット(代償措置)があるかどうかも、判断のポイントです。 裁判例では、退職後の独立支援制度や、通常の退職金に加えて割増退職金を支払うことなどが、代償措置にあたると判断したケースがあります。 また、執行役員の地位で、かなり高額な給与を受け取っていた従業員について、「競業避止条項に対する代償としての性格もあった」と判断して、有効とした裁判例もあります。 代償措置にあたる措置を会社が何もしていない場合、競業避止義務は無効と判断される傾向があります。

チェックポイントまとめ

こうしたポイントをまとめると、次の項目のひとつでも当てはまる場合、その競業避止義務は無効となる可能性があるといえるでしょう。 ただし、個別のケースのさまざまな事情によって、競業避止義務が有効か無効かどうかの判断は変わる可能性があります。自分だけで判断することが不安な場合は、弁護士など専門家への相談も検討してみましょう。

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