労働

弁護士監修記事 2019年04月01日

【弁護士Q&A】内定辞退でエージェントから違約金の請求…支払う必要ある?

採用内定が決定したあとに、労働者側から内定辞退を申し出ると、会社側とトラブルになることがあります。 ここでは、「内定先や転職エージェントから損害賠償を請求されたら」「内定先から競業避止義務違反だと言われたら」という2つのケースについて、「みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談事例と弁護士の回答を元に解説します。

目次

  1. 転職エージェントに仲介料や違約金を請求されたら
  2. 内定辞退し同業他社に就職する場合、競業避止義務違反になるか

転職エージェントに仲介料や違約金を請求されたら

転職エージェントを通して転職活動をした場合に、内定を辞退することで、エージェント側から仲介料などにあたる金額を請求をされることはあるのでしょうか。

新卒の就職活動における内定辞退に対する法務問題。


相談者の疑問
先日、某就職エージェントの紹介から内定を頂き、内定承諾書にサインをしました。

経緯として「他社の選考を受けている最中なので結果が揃うまで待ってほしい」と伝えていたのですがどうしても待てないということで、先に内定承諾書を提出してほしいという連絡を受けました。

こちらのサイトでも幾つか拝見させていただきましたが、内定承諾書に法的な効力はない、という意見が多かったので「最悪、断っても…」と思いサインをしてしまいました。

エージェント側から損害賠償を請求されるような可能性はありますか?


大室 直也弁護士
結論から申し上げますと、問題ないと存じます。

内定を承諾すると、労働契約が成立します。しかし、労働契約を労働者側から解消する場合、解消の意思表示をしてから2週間経過することにより、労働契約は終了します。

この場合、基本的には、会社の側から損害賠償請求はできません。

また、上記のように辞めることができるのは、労働者の職業選択の自由(憲法22条1項)を保障するためですので、これを制限するような契約は、無効になると考えられます。

つまり、エージェントとの契約において、内定後一定期間内に辞めた場合には、違約金が発生するような契約になっていたとしても、その違約金の合意は、無効になるものと考えられます。

したがって、支払請求されても、応じる必要はないと存じます。

内定辞退に伴うエージェントの仲介料や違約金などを、求職者の側が負担する必要はないそうです。事前にそれらを支払う合意をしていたとしても、そのような合意は無効となる可能性が高いでしょう。

内定辞退し同業他社に就職する場合、競業避止義務違反になるか

内定先で、「退職後一定期間、競合他社への就職を禁止する」といった競業避止義務に関する契約を交わすケースがあるようです。このような契約を交わした後に内定を辞退し、同業他社に就職する場合、競業避止義務違反となるのでしょうか。

内定承諾後の辞退(競業避止義務)


相談者の疑問
A社で6月頃に内定通知を頂き、書面で意思表示をし、契約をしました。

しかし、その後も就職活動を続けており、B社で内定を頂きました。

福利厚生や給料面を考えた結果、B社で働きたいと思い、A社の内定を辞退しました。

・A社での内定辞退の際、口頭で辞退て、特に書面の交付はありませんでした。

・また、A社では基本的な業界の約5日間の研修を受けました。

・A社との契約において、競業避止義務の契約をしましたが、B社はA社と同業になります。

一般的な退職でしたら、問題になり損害賠償請求をされる可能性があるかと思いますが、内定辞退についても同様に損害賠償請求されますか?


土屋 義隆弁護士
内定の法的性質は、入社予定日を就労の始期とする「解約権留保付労働契約」とされています(最判昭和54年7月20日)。

本件では就労が始まっていない時期の労働契約の合意解約であると解され、実質勤務は開始しておらず、退職後の競業避止義務の問題は生じないように思います。

実質的にも、労働者には職業選択の自由が保障されていることから、競業避止義務は、例外的に必要かつ合理的な範囲内での契約の明示的根拠がある場合に認められると解されています。

本件では内定後、業界の基本的知識に関する研修を受けただけであり、使用者側が内定者に競業避止義務を負わせて守らなくてはならない営業秘密やノウハウを開示したものとは思えませんので、このような意味でも競業避止義務違反の問題は生ぜず、損害賠償の請求はないと思います。

実際に働き始める前の段階で競業避止義務の契約を交わしたような場合、内定辞退をした後に同業他社に就職しても、競業避止義務違反となる可能性は低いでしょう。損害賠償を請求されても応じる必要はないといえそうです。

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