妊娠中の働く女性は職場にどのような配慮を求めることができるのか

妊娠中に働いていると、妊婦健診のために時間調整が必要だったり、つわりなどの体調不良でつらい思いをしたりすることがあります。 そうしたとき、妊婦は会社に対して、休みや、負担の少ない業務への変更など、適切な配慮をするよう求めることができます。 この記事では、妊婦健診や体調不良に配慮してもらうための制度について、詳しく解説します。

この記事で紹介する制度は、パートタイムや派遣社員の人も利用することができます。

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目次

  1. 妊婦健診を受けるとき
    1. 有給休暇を使うように言われたら?
  2. つわりが重いとき
  3. 通勤時間をずらす
    1. 時差通勤
    2. フレックスタイム制度の適用
    3. 勤務時間の短縮
    4. 交通手段・通勤経路の変更
  4. 休憩時間や回数を増やす
    1. 休憩の申請は何回まで?
  5. 負担の大きい業務を軽いものに換える
    1. 妊娠中の女性にさせることが禁止されている業務
  6. 労働時間を制限する
    1. 残業、休日出勤、深夜労働をしなくてよい
  7. 社内規定に記載がない場合は?
  8. 給料やボーナスに影響がある?

妊婦健診を受けるとき

妊娠中は、定期的に健診を受ける必要があります。勤務時間中に病院へ行く場合には、会社に申請することで、時間を確保することができます。 健診のために遅刻や早退をしたり、休んだりした場合のお給料は、有給の場合もあれば、無給の場合もあります。会社が決めることになっているので、社内規定がどのような定めになっているか確認しましょう。 妊婦検診の回数は病院により異なりますが、標準的な例は次のようになっています。

標準的な妊婦健診の例
妊娠23週まで 4週間に1回
妊娠24〜35週まで 2週間に1回
妊娠36週〜出産まで 1週間に1回

有給休暇を使うように言われたら?

通院のために有給休暇を使うことを会社から言われたとしても、従う必要はありません。 このような指示を会社が一方的にすることは、認められていません。 ただし、女性が自ら希望して有給休暇を取得することは可能です。有給休暇を使うかどうかは、自分で決めましょう。

つわりが重いとき

つわりなどの体調不良がつらく、職場に配慮してほしい場合には、医師や会社に相談しましょう。 医師から勤務時間の短縮、作業の制限、休業など指導された場合、会社は必要な措置をとる義務があります。

医師に「母性健康管理指導事項連絡カード」を書いてもらうことで、医師の指導内容を会社に効果的に伝えることができます。

「母性健康管理指導事項連絡カード」は、厚生労働省のサイトからダウンロードできます。 具体的には、次のような対応が考えられます。

  • 通勤時間をずらす
  • 休憩の時間や回数を増やす
  • 負担の大きい業務を軽いものに換える
  • 勤務時間を制限する

通勤時間をずらす

通勤時の混雑を避けるために、次のような対応をしてもらうことができます。

  • 時差通勤
  • フレックスタイム制度の適用
  • 勤務時間の短縮
  • 交通手段・通勤経路の変更

時差通勤

出社時間と退社時間に、それぞれ30〜60分程度の時差を設けることができます。

フレックスタイム制度の適用

フレックスタイム制度とは、出社時間と退社時間を、労働者が自分で決めることができる制度です。 会社にフレックスタイム制度がある場合には、制度の適用を受けることができます。 会社にフレックスタイム制度がない場合には、フレックス以外の方法で対応してもらうことが考えられます。 たとえば、出社時間と退社時間に30〜60分程度の時差を設けるなどの方法があります。 具体的にどうするかについては、会社と話し合いましょう。

勤務時間の短縮

勤務時間を短縮することができます。 短縮できる時間は、1日30〜60分程度です。

交通手段・通勤経路の変更

混雑が少ない通勤経路を利用するために、交通手段や通勤経路を変更することができます。 自動車通勤の場合にも、このような措置を受けることができます。

休憩時間や回数を増やす

状況に応じて、体を休めたり、補食(間食)をとったり、休憩時間を延長したり、休憩回数を増やしたりすることができます。

休憩の申請は何回まで?

休憩の回数は特に決まりはありません。 妊娠中の体調には個人差があります。また、業務内容も人により異なります。自分の体調や業務内容に応じて、適切な措置をとってもらいましょう。

負担の大きい業務を軽いものに換える

今の業務が妊娠中の体に負担となる場合には、会社に申請して、座ってする作業や、デスクワークなど、負荷の軽減された作業に換えてもらうことができます。 負担の大きい作業には、次のようなものがあります。

  • 重い物を取り扱う作業
  • 外回りなど、連続的に歩くことを強制される作業
  • 常時、全身の運動を伴う作業
  • 階段の昇り降りが頻繁にある作業
  • 腹部を圧迫するなど不自然な姿勢を強制される作業
  • 全身の振動を伴う作業 など

重い物については、次の表以上の物を妊婦に扱わせることは、法律で禁止されています。

年齢 断続作業 継続作業
16歳未満 12kg 8kg
16歳以上〜18歳未満 25kg 15kg
18歳以上 30kg 20kg

妊娠中の女性にさせることが禁止されている業務

次のような業務は、妊娠中の女性にさせることが法律で禁止されています。

  • 重量物を取り扱う業務
  • 有毒ガスを発散する場所における業務
  • 妊産婦の妊娠、出産、哺育、出産後の母体の回復に有害な業務

詳しくはこちらをご覧ください。

労働時間を制限する

シフト勤務制やフレックスタイム制度などの変形労働時間により、労働時間が1日8時間以上、1週間40時間以上となっている場合でも、会社に申請することで、1日8時間以内、1週間40時間以内に労働時間を制限することができます。

残業、休日出勤、深夜労働をしなくてよい

残業や、休日出勤、深夜労働(午後10時〜午前5時までの労働)も、会社に申請すれば、する必要はありません。

社内規定に記載がない場合は?

社内規定にこれらの制度が書かれていない場合でも、制度を利用することができます。 会社がこのような措置をとることは、法律上の義務だからです。 社内規定がない場合でも、会社に相談して、対応してもらいましょう。

給料やボーナスに影響がある?

これらの制度を利用したことによって、給料やボーナスを減らしたり、退職するように言ったりすることは、いわゆるマタニティハラスメント(マタハラ)として、法律により禁止されています。 もしこのような扱いを受けた場合には、最寄りの労働局に相談しましょう。

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