みなし残業

弁護士監修記事 2019年06月28日

事業場外みなし労働時間制で働いている場合の残業代の計算方法

「自分の未払いの残業代がいくらか」を計算するためには、自分の労働時間、残業時間を正確に把握して計算する必要があります。

  • 事業場外みなし労働時間制とは何か
  • 事業場外みなし労働時間制の対象となる人
  • 残業代が発生する場合

この記事では、これらのポイントについて詳しく紹介します。

目次

  1. 事業場外みなし労働時間制とは
  2. 事業場外みなし労働時間制の対象となる人
    1. 対象とならないケース
    2. 事業場外みなし労働時間制の条件に当てはまらない場合
  3. 事業場外みなし労働時間制で働いていても残業代を請求できる場合
    1. みなし労働時間が8時間以内に収まっている場合
    2. みなし労働時間が8時間を超えている場合
    3. 残業代の計算方法
  4. 残業代を請求する

事業場外みなし労働時間制とは

「事業場外みなし労働時間制」とは、労働時間の全部または一部を事業場外で働いて、会社が労働時間を把握することが難しい場合に、実際に働いた時間にかかわらず、あらかじめ会社が決めた時間(みなし労働時間)を働いたことにする働き方です。 外回りや出張などで会社の外で勤務することが多い営業職など、会社が労働時間を正確に把握することが難しい職種のための仕組みです。 本来、従業員の始業時刻と終業時刻は、「9時から17時」といったように、固定されていることが通常です。 始業時間と就業時間が決まっている働き方だと、原則として、1日8時間・週40時間(法定労働時間)を超える労働をした場合には、残業代が発生します。 一方で、事業場外みなし労働時間制は、労働時間を実際の労働時間ではなく、会社があらかじめ決めた「みなし労働時間」で計算します。 たとえば、みなし労働時間が「1日8時間」の場合、実際には6時間働いた日や10時間働いた日があったとしても、8時間働いたことになります。 実際の労働時間に関係なく労働時間が決まっているため、基本的には残業代は支払われません。 ただし、みなし労働時間が、法定労働時間の「8時間」を超えている場合は、8時間を超えている部分に対して、割増賃金が発生します。 たとえば、みなし労働時間が「1日10時間」の場合、法定労働時間(8時間)を超える2時間が残業時間となります。この2時間には、月給を時給に換算した賃金(基礎時給)に、最低でも25%を上乗せした割増賃金が発生します。

事業場外みなし労働時間制の対象となる人

会社が事業外みなし労働時間制を導入するためには、対象にする従業員が以下の条件を両方ともみたす必要があります。

・労働時間のうち、全部または一部の時間を、使用者が具体的に指揮・命令・監督することができない場所(社外)で働いている
・実際の労働時間を使用者が客観的に管理・把握できないため、労働時間を算定するのが難しい

対象とならないケース

単に会社の外で業務を行っているだけでは、必ずしもこれらの条件をみたすとは限りません。 たとえば、以下のように、社外で働いていても、使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合は、労働時間の算定が可能です。 そうした従業員を対象に事業場外みなし労働時間制を導入することはできません。

・何人かのグループで社外での業務を行う場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理者がいる
・社外での業務に従事しているが、携帯電話などで、随時使用者の指示を受けながら労働している
・訪問先や帰社時刻など、当日の社外での業務について具体的な指示を会社で受けてから、その指示通りに業務を行い、業務が終わってから、会社に戻る

事業場外みなし労働時間制の条件に当てはまらない場合

これまで上げた条件をみたしていないのに、事業場外みなし労働時間制で勤務していた場合、実労働時間どおりの賃金や残業代を会社に請求できる可能性があります。 携帯電話やパソコンなどで、社外業務の進捗状況を上司に常に報告しているような場合は、会社が従業員の労働時間を把握できるため、事業場外みなし労働時間制の条件に当てはまらない可能性があります。 勤務先が事業場外みなし労働時間制を適法に導入しているか疑問を持っている方は、弁護士や最寄りの労働局などに相談しましょう。

事業場外みなし労働時間制で働いていても残業代を請求できる場合

事業場外みなし労働時間制は、何時間働いても、みなし労働時間働いたと考える仕組みなので、原則として残業時間という概念がありません。 しかし、1日のみなし労働時間が、法定労働時間の8時間を超えている場合は、超えている部分について、残業代・割増賃金が発生します。 たとえば、みなし労働時間が「1日10時間」の場合、時間外労働にあたる2時間分は残業時間となります。この2時間には、月給を時給に換算した賃金(基礎時給)に、最低でも25%を上乗せした割増賃金が発生します。 残業代を計算するために、まずは、自分のみなし労働時間が8時間を超えているかどうかを確認しましょう。

みなし労働時間が8時間以内に収まっている場合

残業代は、法定労働時間(8時間)を超えて働いた場合に発生します。 そのため、みなし労働時間が法定労働時間の範囲内に設定されている場合は、実際には8時間以上働いていたとしても、残業代は発生しません。 しかし、みなし労働時間を超える勤務状況が継続的に発生してるような場合は、これまで残業していた分の残業代・割増賃金の支払いと、みなし労働時間の見直しを会社に求めることができます。 たとえば、みなし労働時間が8時間となっているのに、実際には、業務を終わらせるために常に10時間かかっているような場合です。 こうした場合、会社に対して、過去の分については、法定労働時間を超えて働いていた分の残業代・割増賃金の支払いを求めることができます。 また、今後については、会社側と話し合って労使協定を見直し、みなし労働時間を10時間に変更するよう求めることができます。 みなし労働時間よりも長時間働く状況が続いている場合は、社内の労働組合や、従業員側の代表者に相談しましょう。 社内の人に相談するのが難しいような場合は、弁護士や最寄りの労働局に相談することを検討してもよいでしょう。

労使協定によって、みなし労働時間の設定が法定労働時間(1日8時間)を超える場合、会社は労働基準監督署に届け出る必要があります。

みなし労働時間を見直した結果、月の残業が45時間以上になる場合

みなし労働時間を見直した結果、月45時間を超える残業時間を組み込まれることになるような場合、その労働時間の設定自体が違法と評価される可能性があります。

労使協定により、会社は臨時的に月45時間以上の残業時間を設定できる場合があるので、就業規則や雇用契約書、労働協約などを確認しましょう。不明な場合は、会社の人事担当者などに確認しましょう。

みなし労働時間が8時間を超えている場合

たとえば、みなし労働時間が10時間に設定されている場合、法定労働時間(8時間)を2時間超えていることになるので、2時間の残業を行なっていることになります。 この2時間には、月給を時給に換算した賃金(基礎時給)に、最低でも25%を上乗せした割増賃金が発生します。 しかし、法定労働時間を超えるみなし労働時間を設定している会社では、あらかじめ決まった額の残業代をセットにしていることが少なくありません。 基本給の他に、「みなし残業手当」や「固定残業代」といった名目で給与明細に記載されていることが一般的です。たとえば、「基本給20万円、固定残業代5万円」などと記載されています。 まずは、月給を時給に換算した賃金(基礎時給)に、最低でも25%を上乗せした割増賃金が、固定残業代として支払われているかどうかを確認しましょう。

反対に、割り当てられた時間残業をしなかったとしても、残業代は満額支給されます。

また、「固定」残業代という名前から、何時間残業しても残業代が一定額と考える人もいるかもしれませんが、そうではありません。 たとえば、深夜(22時〜5時)に働いた場合や、法定休日に働いた場合に別途残業代・割増賃金が発生します。 以下では、「固定残業代」の計算方法や、深夜・法定休日に働いた場合の残業代・割増賃金を、どのように計算するのかについて解説します。

残業代の計算方法

みなし労働時間が法定労働時間(8時間)を超えている場合、残業代・割増賃金が発生します。 この他にも、深夜(22時〜5時)に働いたり、「法定休日」に働いたりした場合も、残業代・割増賃金が発生します。 それぞれ、どのように計算すればよいのか、簡単な例を紹介します。

時給の計算方法や休日の考え方など、残業代を計算するために確認が必要な点がいくつかありますが、固定残業における残業代をイメージしてもらうために、ここでは詳細は省いて解説します。時給の計算方法や休日の考え方については、別に詳しく解説した記事があるので、そちらを参考にしてみてください。記事の末尾に参考リンクを掲載してあります。

みなし労働時間が8時間を超える場合

みなし労働時間が、法定労働時間(8時間)を超える場合、超えている部分は時間外労働となるので、超えた部分の時間に別途残業代が発生します。 具体的には、超えた部分の時間に対して、基本給とは別に、時間外労働した場合の割増賃金率(25%以上)を時給に上乗せした割増賃金が生じます。 たとえば、以下のようなケースで計算してみましょう。

  • みなし労働時間は10時間
  • 月給から換算した時給は1000円
  • 時間外労働の割増賃金率は25%
  • 月の出勤日数は22日

この場合、法定労働時間(8時間)に対して通常必要時間(10時間)が2時間上回っているので、2時間分の割増賃金が別途発生します。具体的な計算式は以下のようになります。 2時間 × 1000円 × 1.25 = 2500円 法定労働時間を超えた2時間に対し、2500円の割増賃金が発生します。月の出勤日数は22日になので、1か月の割増賃金は、以下のように計算します。 2500円 × 22日 = 5万5000円 このようなケースで、基本給とは別に支払われる固定残業代が5万5000円を下回っている場合、下回っている分を会社に請求することができます。

深夜(22時〜5時)に働いた場合

深夜(22時〜5時)に働いた場合は、働いた時間に対して、時給に深夜労働した場合の割増賃金率(25%以上)をかけた割増賃金が発生します。 たとえば、以下のように、1時間の深夜残業をした日を例に、残業代を計算してみましょう。

  • みなし労働時間は10時間
  • 固定残業代は月5万5000円
  • 1か月間に深夜残業を9時間行なった
  • 月給から換算した時給は1000円
  • 深夜労働の割増賃金率は25%

深夜に労働した場合、固定残業代に上乗せする形で、深夜労働の割増分について別途賃金が発生します。具体的な計算式は以下のようになります。 9時間 × 1000円 × 0.25 = 2250円 固定残業代(5万5000円)とは別に、深夜労働に対する割増賃金が2250円支払われることになります。

「法定休日」に働いた場合

労働基準法では、従業員が最低でも1週間に1回、または、4週間に4回以上の休みを得られるよう定めています(法定休日)。 多くの会社で週休2日制を採用していますが、法律で定めれられた休日(法定休日)は週1日であり、残り1日は会社が定めた「所定休日」です。 法定休日の曜日は、就業規則や雇用契約書を確認してみましょう。記載がない場合、土日が休みの会社であれば、日曜日を法定休日としていることが多いです。 法定休日に労働した場合、法定休日に労働した場合の割増賃金率(35%以上)を基礎時給に上乗せした割増賃金が、通常必要時間に対して生じます。 法定休日に出勤した場合の割増賃金について、以下のようなケースで計算してみましょう。

  • 通常必要時間は10時間
  • 固定残業代は月5万5000円
  • 日曜日が法定休日になっている
  • 日曜日に4時間働いた
  • 月給から換算した時給は1000円
  • 法定休日に働いた場合の割増賃金率は35%

計算式は以下のようになります。 4時間 × 1000円 × 1.35 = 5400円 固定残業時間には、法定休日の労働時間を含むことができません。労使協定により、固定残業代があらかじめ給与に含まれている場合でも、法定休日に働いた場合は、別途残業代・割増賃金がフルに発生します。

一方、会社が定める法定休日以外の休日(所定休日)に働いた場合、残業代・割増賃金は別途発生しません。

残業代を請求する

具体的に未払いの残業代を請求する方法については、この記事の下の関連記事で解説しています。

関連記事

弁護士に見積り依頼をする

複数の弁護士にまとめて見積り依頼
費用対処方針比べて選ぶことができます。

  • 弁護士費用がいくらかかるか知りたい
  • 弁護士の選び方がわからない
  • 弁護士が何をしてくれるか知りたい
一括見積りをはじめる無料

依頼前に知っておきたい弁護士知識

給料・残業代請求を扱う弁護士を探す

みなし残業に関する法律相談

  • 30時間の残業について

    知らぬ間に従業員代表者選出選挙を行う事なく代表者が決められ、改定社員規則と、36協定が締結されました。 その後、上司より「30時間の残業を行え」とだけ口頭での命令があったのですが...

    1弁護士回答
  • 営業手当てというみなし残業について

    営業手当という形で月40時間の残業代が含まれています。手当ては2万円です。人によって残業時間が違います。 普通であれば40時間残業した場合は4万円以上の残業代が発生しますが、みなし残業...

    1弁護士回答
  • 未払い賃金について 雇用契約書の改ざん

    個人経営の飲食店で働いてる者です。 2年間分の残業代未払い分を請求したのですが、みなし残業の記載が雇用契約書にあるという理由で拒否されました。(弁護士の方にコピーを見せられました。...

    1弁護士回答
  • 固定残業代制について

    今の会社に20年ほど勤めているのですが、3ヶ月ほど前に残業代の問題があり、会社に質問した所、初めて固定残業代という言葉が出てきて困惑しています。自分で色々調べた所、値段と時間の明記...

    1弁護士回答
  • 未払残業代の請求の件

    会社に未払残業代を請求したいのですが 勤怠は固定残業代の範囲内で調整しています。 PCログを取ろうと思ったのですが、上手く取れませんでした。その場合どのような資料で請求すれば良いで...

    1弁護士回答

相談を絞り込む

みなし残業の法律ガイド

関連カテゴリから解決方法を探す

弁護士に相談しようと思ったら…

弁護士に見積り依頼をする

複数の弁護士にまとめて見積り依頼

  • 最短3分で依頼完了
  • 依頼内容は非公開
  • 分野に詳しい弁護士から見積り依頼が届く
一括見積りをはじめる無料

依頼前に知っておきたい弁護士知識

労働のニュース

  1. 農業アイドル自殺「遺族側が会見やネットで事...
  2. 教員に「変形労働時間制」、反対署名が3万超...
  3. アシックス「パタハラ」裁判、会社側は争う姿...
  4. 「女性活躍」でメディア注目の塗装会社、ハラ...
  5. 本当は働いたのに「残業なし」で出勤簿提出 ...
  6. パンプス強制にNO「#KuToo」署名提出…女性の...
  7. 就活セクハラ「被害者が声を上げられる場所を...