特別に財産を残したい場合におすすめの相続対策
特別に財産を残したい人がいる場合には、次の相続対策がおすすめです。
- 遺言書を書く
- 生前贈与をする
- 養子縁組をする
相続対策の前に確認すべきこと
相続対策を効果的なものにするために、まずは次のことを確認しましょう。
- 法定相続人は誰か。
- 法定相続分はどのくらいか。
- 遺留分はどのくらいか。
法定相続人・法定相続分を確認する
法定相続人とは、法律で定められているあなたの財産を受け継ぐことになる人のことです。法律で決められています。 特別に財産を残したい人は法定相続人なのか、そのほかに誰が法定相続人になるのかを確認しておきましょう。 法定相続分とは、法定相続人がどれだけの財産を受け継ぐのかという割合のことです。これも法律で決まっています。 法定相続人と合わせて確認しておきましょう。
遺言を残さないとあなたの財産を誰が相続することになるのかは、この記事の下の「次に読みたい記事」で詳しく説明しています。
遺留分を確認する
遺留分は、簡単にいえば法定相続人の最低限の取り分です。
たとえば、法定相続人が妻と子どもの2人だとします。この場合、妻と子どもの遺留分はそれぞれ4分の1ずつです。
もし、あなたが遺言書で法定相続分と違う割合を指定し、「妻にすべての財産を残す」という遺言書を作ったとします。しかし、子どもは財産の4分の1については権利を主張できます。
このように、せっかく相続対策をしたとしても、遺留分があることによって新たなトラブルが生じるおそれがあります。
このような事態を避けるために、あらかじめ遺留分を確認し、遺留分に配慮した内容の相続対策を行ないましょう。
遺留分は当然に取得するものではないため、上記の例でも、子ども二人が遺留分を主張しなければ妻がすべての財産を相続することができます。ただし、遺留分を主張するかどうかは被相続人(あなた)がコントロールできることではないため、こうした対処をしておいたほうが安心といえるでしょう。
遺留分ついては、この記事の下の「次に読みたい記事」で詳しく説明しています。
ここからはおすすめの相続対策の内容を説明します。メリットとデメリットを比較して、自分に合う対策を選んでください。
遺言書を作る
遺言書とは、あなたが亡くなった後の財産の行方などを決めるための意思表示を書いた書類です。
遺言書を作ると、誰に、どの財産を残すのかを指定することができます。息子の妻など、法定相続人ではない人にも財産を残すことができます。
遺言書の種類
遺言書にはいくつかの種類があります。 よく利用されているのは、自筆証書遺言と公正証書遺言の2つです。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、原則としてすべてを手書きで書いた遺言書です。 いつでも気軽に作れるというメリットがあります。 ただし、自筆証書遺言が法的に有効となるためには様々な条件があります。この条件を満たしていないと、せっかく作った遺言書が無効になる場合があります。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人という法律の専門家に作ってもらう遺言書です。 公証人という法律の専門家に作ってもらうので、無効になることはほとんどありません。 ただし、遺言書を作ってもらうために費用がかかります。
遺言書を作る場合の注意点
先ほど説明したとおり、遺言書を作る場合には「遺留分」に注意しましょう。
生前贈与をする
生前贈与とは、亡くなる前に財産を無償で譲ることです。
息子の妻など、法定相続人ではない人にも生前贈与をすることができます。
相続税を節税できる
生前贈与は相続税の節税のために利用されることが多いです。
一定の現金がある場合、もし相続対策を何もせずにあなたが亡くなると、財産は法定相続人が受け継ぎます。その際、財産の全額が相続税の対象となります。
同じ金額を、あなたが亡くなる前に一括で譲った場合、贈与税がかかります。ただし、贈与税には1年間に110万円という税金がかからない部分(基礎控除)があります。110万円を超える部分が贈与税の対象となります。
贈与税の基礎控除は、毎年リセットされます。そこで、毎年110万円ずつに分けて贈与をすると、贈与税が全くかからずに、財産を移すことができます。
贈与した財産は、譲り受けた人の物になるため、あなたが亡くなっても相続税はかかりません。
このように亡くなる前に財産を110万円の範囲内で少しずつ贈与することで、節税ができます。
生前贈与をする場合の注意点
生前贈与をする場合には、次の点に気をつけましょう。
- 遺留分に注意する。
- 節税目的で生前贈与をする場合には、相続税の金額を確認する。
- 贈与税は財産をもらう人が支払う。
遺留分に注意する
生前贈与をする場合にも、「遺留分」に注意しましょう。
先ほど、「妻にすべての財産を残す」という遺言書を作ったとしても、法定相続人は遺留分を主張できると説明しました。
しかし、やはり妻に多くの財産を残したいので、遺言書ではなく、生前贈与として妻に多く財産を渡せばよいのではないかと思う人がいるかもしれません。
しかし、そのような生前贈与も、遺留分の対象になると法律で定められています。つまり、子どもが遺留分を主張したら、妻は生前贈与としてもらった財産を子どもに渡さなければいけません。
トラブルを避けるために、あらかじめ遺留分に配慮した金額の生前贈与にとどめるようにしましょう。
節税目的で生前贈与をする場合には相続税の金額を確認する
生前贈与を節税目的で行なう場合には、今の財産に相続税がかかった場合いくらになるかを先に計算しておきましょう。 そもそも、相続税がかからなければ節税対策をしても意味がありません。
贈与税は財産をもらう人が支払う
贈与税の基礎控除を超えて110万円より多くの生前贈与を行なう場合、贈与税の支払いは、財産をもらった人が行わなければなりません。 財産をもらう人の理解を得てから生前贈与を行なうようにしましょう。
養子縁組をする
養子縁組とは、今まで親子ではなかった人を法的に親子にするための手続きのことです。
養子縁組をすることで、次のようなことができます。
- 法定相続人ではない人に財産を残せます。
- 相続税を節税できる場合があります。
法定相続人ではない人に財産を残せる
養子になった人は、実の子どもと同じように、「子ども」として法定相続人になります。 養子の法定相続分は、実の子どもと同じです。 このように、法定相続人ではない人と養子縁組をすることで、養子となる人に財産を残すことができます。
遺言書を作る場合との違い
法定相続人ではない人に財産を残す方法としては、養子縁組をする方法のほかに、遺言書を作る方法があります。
それぞれの違いは、大きく「親子になるかどうか」が異なります。
まず、財産をあげる相手は、遺言書の場合には、誰でも選べます。養子縁組の場合には、年下の人のみです。
次に、相手との合意は、遺言書の場合には不要です。養子縁組の場合には必要です。
一度財産をあげると決めたけれど、やっぱりやめたいと思った場合、遺言書の場合には1人で撤回できます。養子縁組の場合には、相手と合意をして、「離縁」という手続きをする必要があります。
財産をもらう人の負担は、遺言書の場合には、遺言書に条件が書かれていなければ特にありません。養子縁組の場合には、扶養義務が発生するとか、苗字を変えなければいけないという負担があります。
これらの違いを踏まえて、どの方法にするかを検討しましょう。
相続税を節税できる場合がある
養子縁組をすると、相続税を節税できる場合があります。
相続税は、亡くなった時の財産を元に計算します。このとき、財産の金額によって、相続税がかからない場合があります。相続税がかからない部分のことを「基礎控除」といいます。
基礎控除の金額は「3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」です。法定相続人の数が増えると、基礎控除の金額が増えます。
法定相続人には、養子も含まれます。
養子縁組して法定相続人が増えると、基礎控除の金額が増えて、相続税が節税できる場合があります。
基礎控除のほかに、生命保険金や死亡退職金の非課税枠も、法定相続人の数に応じて増えます。生命保険なども合わせて活用することで、節税効果を期待することができます。
養子縁組によって「相続税の負担を不当に減少させる結果となる」と認められる場合には、税務署によって、養子の数を相続人に含めないで計算される場合があります。このような場合には、養子縁組による節税効果はありません。
養子縁組をする場合の注意点
養子縁組をする場合には、次の点に気をつけましょう。
- 養子の存在を家族に説明しておく。
- 節税効果を期待して養子縁組をする場合には相続税の金額を確認する
- 節税効果がない場合がある。
- 節税には上限がある。
養子の存在を家族に説明しておく
養子縁組をする場合には、養子の存在を家族に説明して、家族の理解を得るようにしましょう。 家族から見れば、養子が増えると、自分たちの相続分が減ってしまう関係にあります。 亡くなった後に養子の存在が判明し、家族が受け入れられずにトラブルになるというケースは多くあります。 次のようなことを家族に伝えるようにしましょう。遺言書などを利用する方法もあります。
- 養子縁組をすること
- なぜ養子縁組をするのか
- 養子も含めた財産の分け方
節税効果を期待して養子縁組をする場合には相続税の金額を確認する
養子縁組で節税効果を期待する場合には、今の財産に相続税がかかった場合いくらになるかを先に計算しておきましょう。 そもそも相続税がかからなければ節税対策をしても意味がありません。
節税効果がない場合がある
養子縁組で節税効果があるのは、養子縁組によって法定相続人の数が増える場合に限られます。 しかし、養子縁組をすることによって法定相続人の数が減ってしまうケースもあります。 節税効果を期待して養子縁組をする場合には、法定相続人の数が増えるかどうかを確認しましょう。
節税には上限がある
相続税の計算をする上で、法定相続人の数にカウントできる養子の数には限りがあります。 あなたに実の子どもがいる場合には、法定相続人にカウントできる養子は1人までです。 実の子どもがいない場合には、養子は2人までカウントできます。
相続対策の選び方
これまでに紹介した相続対策の中で、実際にどれをやってみようか迷う人もいるでしょう。
相続対策は、1つに限定する必要はありません。複数を組み合わせて行なうと、より良い効果がある場合があります。実際にやってみたらどうなるかをイメージしてみましょう。
今すぐに全部をやるのではなく、できるものから少しずつ行なっていくという考え方もあります。
誰かに相談しなければいけないもの、専門家に頼まなければいけないものは、時間をかけてゆっくり検討してもよいでしょう。
相続対策を行なうと、相続人となる予定の家族にも影響を及ぼします。トラブルを防ぐため、家族には事前に相談しましょう。
よくわからない場合には、弁護士などの専門家にも相談しましょう。
相続対策の具体的なやり方
それぞれの相続対策の具体的なやり方については、この記事の下の「次に読みたい記事」で詳しく説明しています。