出口を目指してともに前へ進む――法律問題の解決を通して「人生の再出発」を支えたい――
「筋の通らないことが嫌い」という感覚が原点
弁護士を志したきっかけを教えてください。
昔から「人の役に立ちたい」という気持ちがありました。
中学生の頃は陸上部と両立しながら「点字クラブ」に入り、視覚障害のある方のために点 訳をしていました。小さな作業ですが、誰かの助けになれることが嬉しかったですね。
大学時代は新聞会に所属し、社会問題に強い関心を持っていました。法学部ではなかったので、当時は弁護士を目指していたわけではなく、新聞記者になりたかったんです。ただ当時のマスコミは人気が高く、志望は叶わず、食品会社に就職しました。9年間サラリーマンをして、社会の中で働く現実も肌で感じました。
そんな折にロースクール制度が始まり、「これは人生の転機かもしれない」と思い立ちま した。すでに結婚していましたから、会社を辞める決断には勇気がいりましたが、昔から 「不合理や筋の通らないことが嫌い」「個人の自由や権利を大切にしたい」という感覚が自分の根っこにあり、弁護士という職業は「きっと自分に合っている」と思いました。
心が前向きになる場に立ち会えることこそ、この仕事の醍醐味
仕事をするときに心がけていることを教えてください。
「感情を受け止め、事実を整理する」ことです。
相談に来られる方は、法的問題の前に、まず心の中に葛藤を抱えています。そこを丁寧に聞き取り、法律的に整理していくことが私の役目です。
また、依頼者の方にはできる限り「分かりやすい言葉」で説明するようにしています。難しい法律用語を使うより、「どうすれば前に進めるか」を共有することが大切だと思っています。
弁護士として活動してきた中で印象的だったエピソードはありますか?
裁判的な成功体験ではありませんが、少年院で出張授業を行った際、何気なく話したエピ ソードに少年たちが大笑いしてくれたことがありました。その瞬間、「人の心が少し軽く なる」という体験を共有できた気がして、とても嬉しかったのを覚えています。
事件の解決に限らず、誰かの心が少しでも前向きになる場に立ち会えることこそ、この仕 事の醍醐味だと思っています。
また、ある相続事件では、依頼者と二人三脚で証拠を積み上げ、相手方の主張の矛盾を一 つずつ丁寧に突いていきました。その結果、裁判所に遺言書の偽造を認めてもらうことが できました。依頼者と共に闘い、信頼を深めながら勝ち取った結論は、何より印象に残っ ています。
さらに、警察署での接見や、裁判所での尋問の場面では、集中のあまり自分を忘れ、心の 奥が静まり返るような瞬間があります。その張り詰めた静寂の中に、弁護士という職業の 誇らしさのようなものを感じます。
個人の人生に関わる案件に注力
注力されている分野と、その理由を教えてください。
相続、貸金、刑事事件など、個人の人生に関わる案件に注力しています。誰かが本当に困っているとき、そこに寄り添えることが自分のモチベーションにつながります。
たとえば相続問題では、単なる財産分けではなく、家族の歴史・人間関係まで踏み込んで 考えるようにしています。
また、刑事事件では、単に処分や刑を軽くするということではなく、依頼者が本当に同じ 過ちを繰り返さないように、積極的にカウンセリングを勧めるようなこともあります。
ご趣味はありますか?
趣味はブラジリアン柔術で、(2025年10月のインタビュー時点で)初めて8年目です。最初は軽い興味で始めたのですが、やってみると奥が深く、すっかりハマってしまいました。練習中は、雑事をすっかり忘れて、ただ技の攻防に集中できるので、心のリセットにもなっています。
道場には年齢も職業もさまざまな人が集まり、みんなで汗を流して笑い合う時間は、何よりのリフレッシュです。
「一緒に考えてくれる人がいる」というだけで、心は確実に軽くなる
法律トラブルを抱えて悩んでいる方へ、メッセージをお願いします。
私は40歳の頃、お酒に頼りすぎて、身も心も不調に陥った時期がありました。今では10年以上、安定して断酒を続けられていますが、当時は心細く、先が見えませんでした。そんな中で、医師や看護師の方々に支えられたことが、どれほど心強かったか、今でもはっきり覚えています。
それまでの私は、「自分のことは自分で何とかできる」と思い込んでいました。しかし、専門家の力を借りることで初めて、自分ひとりでは見えなかった出口が見えてきました。
法律の問題も、それと同じだと思います。誰にも相談できずに抱え込むと、視野が狭まり、ますます苦しくなってしまう。そんなときこそ、専門家を頼ってほしいのです。問題のすべてを一度に解決できなくても、「一緒に考えてくれる人がいる」というだけで、心は確実に軽くなります。