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相続

2017年07月18日

判断能力がない人を支援する「成年後見制度」〜支援内容と利用までの流れ

判断能力が衰えた人の財産を、家庭裁判所に選ばれた人が本人に代わって管理したりする「法定後見制度」は、物事を判断する能力がどの程度あるかによって、「成年後見」「保佐」「補助」という3種類に分けられます。 ここでは、重度の認知症などで、判断能力が全くない状態が続く人が利用の対象となる「成年後見」について、以下のポイントを中心に解説します。

  • 利用するための手続き方法
  • 成年後見で受けられる支援の内容

目次

  1. 「成年後見」とは
  2. 成年後見制度で受けられる支援の内容
  3. 成年後見制度を利用するには
  4. その他の法定後見制度

「成年後見」とは

「成年後見」は、法定後見制度の3つの支援タイプの中で、物事を判断する能力の低下レベルが最も重度の人が対象となる制度です。 たとえば、重度のアルツハイマー型認知症や統合失調症などの人に、成年後見制度が適用されます。 具体的には、以下のようなケースで、成年後見制度の利用が認められました。

最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況 平成12年4月から平成13年3月~」より・本人はアルツハイマー病を発症していた。

・本人は5年程前から物忘れがひどくなり、勤務先の直属の部下を見ても誰かわからなくなるなど、次第に社会生活を送ることができなくなった。

・日常生活においても家族の判別がつかなくなりその症状は重くなる一方で、回復の見込みはなく2年前から入院していた。

成年後見制度の支援を受けることになる人を「成年被後見人」や「被後見人」、支援する人を「成年後見人」や「後見人」といいます。 成年後見制度を利用するためには、本人の親族などが、家庭裁判所に申立てを行います。 その後、裁判所によって本人の判断能力の鑑定や調査などが行われ、本人を支援する成年後見人が選ばれます。

成年後見制度で受けられる支援の内容

成年後見制度の利用が始まると、成年被後見人は、食料品の買い物など日常生活に関すること以外の法律行為(契約を結ぶことなど)が制限されます。 成年後見人は、こうした法律行為を制限された成年被後見人のために、不動産の売買やお金の貸し借りといった、成年被後見人の財産に関するすべての行為を、本人の代わりに行います。 また、成年後見人は、成年被後見人が勝手に結んでしまった契約などの法律行為を取り消すことができます。 ただし、食料品・日用品の購入など、日常生活に関する行為や結婚などの身分行為を取り消すことはできません。 成年後見人に与えられたこのような権限を、「代理権」「取消権」といいます。

  • 代理権

代理権とは、物の売買やアパートを借りるなどの行為を、本人に代わって本人のために行う権利です。

  • 取消権

取消権とは、本人が同意権者の同意なく結んだ契約などの法律行為を取り消すことができる権利です。 成年後見人はこのような権利を使って、成年被後見人の財産を管理したり、様々な契約を代理で結んだりして、成年被後見人が安心して生活を送れるよう支援していきます。

成年後見人には、保佐人や補助人に認められる(ことがある)同意権がありません。これは、成年被後見人は判断能力がない状態が続いているので、成年後見人が同意したとおりの行為をするとは限らないためです。

成年後見人の具体的な職務〜身上監護と財産管理

成年後見人が、取消権と代理権を行使して行う事務は、大きく次の2点に分けられます。

  • 成年被後見人の生活、療養看護(身上監護)
  • 財産の管理に関する事務(財産管理)

成年後見人は、代理権を有しますが、成年被後見人の財産を自由に処分できるわけではありません。 居住用の不動産を売却、賃貸借などする場合には、家庭裁判所の許可が不可欠ですし、その他の重要な財産を処分する場合にも、家庭裁判所に随時相談することになります。 成年後見人は、選任されたら、まず、本人の財産を調査し、財産目録を作成しなければなりません。 また、成年被後見人のお金を毎月どの程度使うか予算を立て、収支表を作成し、財産目録とともに、家庭裁判所に提出します。 その後も、少なくとも年に1回、財産目録などを作成し、家庭裁判所に後見事務の報告をすることになります。

成年後見人の職務・権限に含まれないもの

成年後見人には、日常生活に関することを除く行為について、取消権と代理権が与えられます。 ただし、介護そのものや、本人にしかできない法律行為などは、成年後見人の仕事には含まれません。

介護行為など(身上監護の具体例)

介護サービス契約、施設入所契約、医療・教育に関する契約の選定・締結などは、成年後見人の仕事ですが、料理や入浴の介助、部屋の掃除など、介護行為そのものは、成年後見人の仕事ではありません。

本人にしかできない行為

結婚や離婚、養子縁組や遺言書の作成など、本人にしかできない法律行為は、成年後見人が代理で行うことはできません。

日常生活で行う法律行為

スーパーマーケットや小売店で食材や日用品を買うなどの日常行為は、成年後見人が取り消すことはできません。

その他

手術や輸血をするといった、医療行為に関して承諾することや、本人が入院・施設に入所するときの保証人や身元引受人になるといったことは、成年後見人にはできません。

成年後見制度を利用するには

成年後見制度を利用するためには、本人の住所地(住民登録をしている場所)を管轄する家庭裁判所に成年後見の審判を申し立て、これを受ける必要があります。

申立てができる人

申立てができるのは、本人、配偶者、4親等内の親族などです。親族がいない人や、親族による申立てが難しい場合には、市区町村長、検察官が申立てをすることができます。 親等

申立てに必要な書類

申立てには、裁判所が定めた様式に従った申立書や親族関係図などの書類が必要です。 申立書には、成年後見人の候補者を記載する欄があります。成年後見人とすることを希望する人(親族や弁護士、司法書士など。申立人でも可能)の名前を書き、家庭裁判所に提出します。 家庭裁判所は、本人や親族と面談し、最も適切だと思われる人を成年後見人として選びます(候補者として申立書に名前を記載された人が、成年後見人に選ばれるとは限りません)。 本人が家庭裁判所に行くことができない場合には、本人のところに裁判所の担当者(調査官)が出向いて面談を行い、その上で成年後見人を選びます。 候補者にふさわしい親族や依頼できる専門家がいない場合には、候補者のスペースを空欄にしたまま申立書を提出します。 この場合、家庭裁判所が、弁護士、司法書士、社会福祉士といった専門家の中から、成年後見人としてふさわしい人を選びます。 また、申立書のほか、本人の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、通帳の写しなど)や診断書を提出する必要があります。 申立ての具体的な手続や書類については、裁判所のウェブサイトで確認してください。

成年後見人になれない人

以下のような条件に当てはまる人は、成年後見人になることができません。

  • 未成年者
  • 成年後見人や保佐人、補助人を解任された人
  • 破産者で復権していない人
  • 支援を受ける本人に対して訴訟をしたことがある人、その配偶者または親子・孫など
  • 行方不明の人

申立てにかかる費用

申立てには、収入印紙(800円程度)や連絡用の切手代(3000〜5000円程度・申立先となる家庭裁判所によって違います)、登記手数料2600円分の収入印紙などが必要です。 支援を受ける本人の判断能力がどの程度か図る鑑定が必要な場合には、その費用5〜10万円程度がかかることもあります。

申立てから成年後見の利用が始まるまで

法定後見開始の申立てがなされると、家庭裁判所の調査官が、支援を受ける本人と面接するなどして、成年後見人の候補者となった人の適性などを調査します。 必要に応じて、本人の判断能力がどのくらいかをはかる鑑定が行われたり、調査官が本人の親族の意向を聞いたりします。 その後、「成年後見開始の審判」が行われ、家庭裁判所の調査や判断の結果が示されます。審判とは、家庭裁判所が出す判断で、裁判の一種です。 審判では、本人の判断能力と照らし合わせて、成年後見制度を利用することが適切かどうかといった点について、家庭裁判所が判断を示します。誰を成年後見人にするかも決まります。 成年後見人として複数の人が選ばれたり、成年後見人を監督する人(成年後見監督人)が選ばれたりすることもあります。 こうした手続きを行った後に、成年後見を利用できるようになります。 申立てからの審理期間はケースバイケースですが、2か月以内に終局したものが全体の80%弱、4か月以内に終局したものは約95%となっています。

その他の法定後見制度

成年後見制度には、成年後見、保佐、補助という3種類がありますが、平成28年12月末時点での利用者は、合計約20万人、そのうち、成年後見が約16万人、保佐が約3万人、補助が約1万人という内訳になっています(最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況 ―平成28年1月~12月~」)。

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