検事時代の経験を活かし、事件解決に尽力〜罪を犯した人の更生支援にも情熱を燃やす
犯罪に事後にかかわる検事から、犯罪を未然に防ぐ活動がしやすい弁護士へ
ーー検事として法曹界でのキャリアをスタートした後、弁護士へ転向した理由を教えてください。
まず検事になった理由ですが、大学在学中に現役の検事の講義を聞く機会があり、その内容に反発したからなんです。
私は、本当にお恥ずかしい話でしかありませんが、少年時代の素行があまりよろしくなく(今更の詳細は控えます 笑)、自分が弁護士に弁護され、服役していたかもしれない人生と紙一重の少年時代を送っていました(それが題材となり、行列のできる法律相談所にも出演させていただきました)。
その検事が語る取り調べの話を聞いていて、「犯罪者を、他人事として上から見下しているこの人に取調べられたら、自分は絶対に心は開かないな」と感じました。それで逆に、日々刑事事件と向き合う検事という仕事に興味が湧き、自分の良くなかった経験を逆に活かすことで、自分のようなクズでも、もしかしたら人の役に立つという今までの自分とは真逆のことができるようになるかもしれないと思ったことが、検事になった理由です。
今の自分の姿は、昔のひどい私しか知らない旧友からは、例外なく笑われますし、自分でも、なんか変だな、といつも思います(笑)。
検事時代は、真実に実直に向き合うことに集中して事件に取り組んでいましたが、取り調べの過程で警察がたてた「筋」が優先して、それに沿った証言を引き出し、調書を作らなければいけないようなことがしばしばあり…。自分がしていることは、真実を追求することからかけ離れているのではないか、と悩み始めたんです。
仕事について悩むなかで、本当にやりたいことや、自分の力を何に注ぎたいかを考えました。そのときに浮かんだのが、「そもそも犯罪を起こさせないために何かできないのか?」「再犯を防いで新たな被害者を生まないことと、その人自身の人生をちゃんと更生させるサポートがしたい」「更生の一つのきっかけになりたい」という思いでした。
検事は犯罪に事後的にかかわる立場ですが、弁護士になれば、犯罪を未然に防ぐための活動ができる。そう考えて、検事から弁護士に転向することを決意しました。
職と食を提供する、社会復帰のための仕組みづくり
ーーそうした経歴をお持ちなら、やはり刑事事件にかかわることが多いのですか。
様々な分野の案件を手がけて知見を広げたいと思い、刑事事件と同等以上に民事事件にも注力していますが、前職の経歴から、やはり刑事事件の依頼も多く、刑事事件の件数は、誰よりもこなしてきたものと自負しています。
刑事事件では、特に、弁護士に転向する理由でもあった更生支援と再犯防止活動にも力を入れています。活動の一環としておこなっているのが、元受刑者を雇い入れる居酒屋の経営です。また、グループホームの立ち上げにも取り組んでいるところです。働くところと住むところ、そして食べるもの。再犯に走らせないために、これらの要素を整えることはとても重要だと思っています。
再犯を防ぐためにもう1つ重要なのが、「これは失いたくない」と思えるもの、特に、成功体験を持ってもらうことです。人からの信頼やつながりといった、人生を軌道修正したからこそ得られた成功体験。そうしたものがあれば、犯罪に走りそうになったときに、「せっかく自分でつかみ取ったものを失いたくない」と、踏みとどまることができます。
ーー多くの方が、先生のサポートをきっかけに社会復帰をしているのですか。
そんなにうまくいけば苦労はありません(笑)。100人いたら99人は逃げてしまいます。口では「頑張ります」と言っても、なかなか続かないんです。自分も昔は、口先だけのろくでなしでしたから、その気持ちはわかります。
最終的に1人、2人しか残らないとしても、それでいいと思っています。ゼロではないですから。
私自身、あまり気負いすぎずに取り組んでいます。去る者は追わず、でも正しいことは言い続ける、考えるきっかけの一つになれれば、というスタンスです。
検事時代の経験を活かし、事件解決に取り組む
ーーご自身の弁護士としての強みは、そうしたところまでかかわっていく情熱、でしょうか。
どちらかというと、私の強みは、事実関係の立証ではないかと思います。検事時代、様々な踏査や事故捜査に従事してきた経験が今に活きています。例えば、事故現場の再現一つとっても、迫れる深度が事故捜査の経験のあるなしで相当違うと感じています。
「現場百回」という言葉がありますが、弁護士に転向した今も、どの事件でも、極力、現場に赴き、自分の眼と耳で、現場から漏れ聞こえる真実の声を聞くことに努めています。ここだけは、今後も絶対に変わらないと思います。
専門家に意見書を書いてもらうときも、分野ごとに第一人者の先生が違うので、どの分野なら誰というのを知っているかどうかも質の高い弁護活動をするうえで重要なポイントです。
ーー捜査をつぶさに見てきた検事時代の経験を活かして仕事をされているのですね。
一口に弁護士と言っても知識や経験は様々ですし、どういう分野の研鑽を積んできたかも異なります。
ですから、弁護士への依頼を検討している方は、一人の弁護士に相談して終わり、ではなく、「何となく違うな」と思ったら別の弁護士にも話を聞いてみてください。
自分の感覚と合わない弁護士に依頼しても、齟齬をきたす可能性が高いです。そこは妥協せず、自分にとって納得のいく説明をしてくれる弁護士、相性のいい弁護士を探してください。
様々な出来事や、人に対しての不信感が募ってしまった中で、「この弁護士なら安心して依頼できる」「自分を守ってくれる」と感じることができ、心から信頼できると思える弁護士との出会いが、いい結果を得るための最初のカギだと思います。