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2018年08月14日 07時15分

働く人の「熱中症対策」法的に検証 災害レベルの「猛暑」を乗り切るために

働く人の「熱中症対策」法的に検証 災害レベルの「猛暑」を乗り切るために
画像はイメージです(kou / PIXTA)

厳しい暑さが続いている。気象庁は「命の危険がある暑さ。災害と認識している」と注意を促すが、高齢者や子どもに限らず、働く人たちにとっても深刻な状況だ。

働く人と言っても様々な職種があるが、今回は、一般的なサラリーマンを例に考えてみたい。いくら「テレワーク」が提唱されても、出社義務や、取引先への営業のために外出せざるを得ない環境にある人もいるだろう。エアコンのきいた室内であっても、温度が高かったり、温度設定が不適切だったりすれば、熱中症のリスクはある。

弁護士ドットコムニュースでは過去に「真夏の仕事で恐い『熱中症』・・・会社はどんな『対策』をとる義務があるか?(https://www.bengo4.com/c_5/n_1890/)」という記事を掲載しているが、会社には労働契約に伴う安全配慮義務がある。

会社側の安全配慮義務とは何か。この記事の中で、中村新弁護士は、「企業(使用者)は、労働者が生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務を負います(労働契約法5条)。これは労働契約にともなう『安全配慮義務』といい、従業員の熱中症を防ぐことも、この安全配慮義務に含まれます」と解説している。

猛暑という災害を乗り切るため、改めて会社に求められる法的な論点を整理してみる(監修:波多野進弁護士)。

【ポイント1】実際に労働者が熱中症になってしまった場合、労災認定されるのか?

「条件が揃えば、認定される」が正解だ。つまり熱中症も一般の疾病と同じく、労災(労働災害)の対象となるということ。労災なので、業務中の熱中症も、通勤中の熱中症も同様に認められる可能性がある。

労災は次のような基準をもとに認定される。

・熱中症となる原因が業務遂行中にあること(業務遂行中の気温や作業環境、作業条件など)

・その原因と熱中症との間に因果関係があること(被災労働者が熱中症に罹患した際の各種症状と症状が表れた時期などが検討される)

では、認定されないケースとは、どのような場合か。

理論的には「業務とは関係なく、労働者側の個別的な要因(寝不足など)で熱中症になった」場合には、労災認定されない可能性がある。ただ、気温が高温で、かつ作業環境もよくない中で熱中症になった場合には、労働者の個別的な原因のみで熱中症になったとは言えず、労災認定されると考えられる。

また「会社は安全配慮義務をちゃんと果たしていたが、労働者の体調管理の問題で熱中症になった」場合には「労災認定は受けられない」と思うかもしれない。しかし、安全配慮義務違反がなくても、被災労働者が業務によって熱中症になれば、労災認定がなされるのが原則だ。

【ポイント2】会社側は、どのような配慮をすればいい?

会社は社員を熱中症にさせないため、何をすればいいのか。記事の冒頭では「安全配慮義務」があると書いたが、営業マンなど外回りをする社員を抱える企業や、社員が通勤時に熱中症で倒れるなど、心配のタネは尽きないだろう。

各職場の状況は異なるので、厚労省が公開しているマニュアルをもとに、対応して欲しい。厚労省では、過去に「職場における熱中症の予防について」などの通達を出しており、これらに基づく「職場における熱中症予防対策マニュアル」をサイト上で公開している(URL:

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/manual.pdf)。

この中では具体的な方策に言及されている。たとえば熱中症対策では気温のみの測定では不十分だ。そこで温度管理のため、気温や温度、ふくしゃ熱を測定できる「専用機器(WBGT器)を使用する」「休憩場所を整備する」「定期的な水分と塩分の摂取」「管理者や労働者に向けて事前に熱中症の教育を行う」などをあげる。

環境省の熱中症予防情報サイト(http://www.wbgt.env.go.jp/)には、暑さ指数(WBGT)の実況と予測など、充実した解説があり、こちらも参考になりそうだ。

このように、会社には社員を守る明確な義務がある。具体的な運用はケースバイケースであっても、働く人は体調不良や身の危険を感じた時には積極的に声をあげ、この厳しい夏を乗り切って欲しい。

【監修】

波多野 進(はたの・すすむ)弁護士

弁護士登録以来、10年以上の間、過労死・過労自殺(自死)・労災事故事件(労災・労災民事賠償)や解雇、残業代にまつわる労働事件に数多く取り組んでいる。

事務所名:同心法律事務所

事務所URL:http://doshin-law.com

(弁護士ドットコムニュース)

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