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京都大学「異例の総長選考」が波紋、教職員投票で「3位」が新総長に…教員ら反発「なぜ説明がない」
細見和之教授は総長選考を風刺した歌を披露した

京都大学「異例の総長選考」が波紋、教職員投票で「3位」が新総長に…教員ら反発「なぜ説明がない」

京都大学で異例の総長選考をめぐる波紋が広がっている。教職員による意向調査で3位だった候補者が、次期総長に選ばれたからだ。

京都大学のシンボルである時計台前のクスノキの下で7月15日昼ごろ、教員や学生らが集まり、選考過程の透明化を求める緊急の抗議集会が開かれた。

教員らが問題視しているのは、今回の人事だけではない。教職員の意思よりも総長選考・監察会議の判断が優先される国立大学の仕組みそのものだ。

この日の集会から見えてきた京都大学総長選考の問題点を考える。(ジャーナリスト・田中圭太郎)

●教職員投票で3位だった候補者が次期総長に

画像タイトル 京都大学

京都大学では、湊長博総長の任期満了(2026年9月末)に伴い、次期総長の選考がおこなわれた。

総長選考・監察会議が6人の候補者を選び、教職員約1400人による意向調査を実施。その結果を踏まえて最終候補を決定する仕組みだ。

ところが、6月16日に発表された次期総長は、現副学長で工学研究科教授の立川康人氏だった。

立川氏は意向調査で6人中3位。1位の候補者は478票、2位は301票だったのに対し、立川氏は299票で、トップとは179票差があった。得票率も20.8%にとどまっていた。

それでも総長選考・監察会議は、立川氏について「自由の学風のもと、対話を重視したリーダーシップにより、国際卓越研究大学としての変革を安定的かつ強力に牽引することが期待できる」と説明した。

しかし、教職員の投票結果と異なる判断に至った理由について、これ以上の具体的な説明は示されていない。また、現在の湊総長も総長選考・監察会議の発表後に何もコメントを出していない。

●「どうしてそうなったのか。詳細な説明を」

画像タイトル 集会に集まった教員や学生ら

7月15日の集会では、教員や学生らが次々とマイクを握った。

人文科学研究所の藤原辰史教授は、「現れた投票数はただの数字ではない。重い数字です」と述べ、投票に参加した教職員一人ひとりの意思の重みを強調した。

画像タイトル 藤原辰史教授

藤原教授は「1人あたり1票しか投じられない平等な選挙形式は、人類の長い歴史の中でようやく勝ち得たものです」としたうえで、次のように批判した。

「学問の府である京都大学で、票数を無効化して3番目に票数が多かった人を選ぶ。その理由も候補者全員に当てはめられるような非常に空疎な文言でした。どうしてそうなったのか。詳細な説明をしていただきたいと思っています」

教育学研究科の駒込武教授も、180票近い差を無視した選考を厳しく批判した。

「選考会議の12人の委員に対して、『あなた方は何様ですか』と聞きたい」

さらに、選考会議議長と現総長との関係にも触れ「現総長のお友だちが次の総長を選ぶ仕組みそのものが決定的におかしいと言わざるを得ません」とうったえた。

画像タイトル 駒込武教授

●1位でない候補者が選ばれるケース広がる

こうした選考は、京都大だけの特殊な出来事ではない。

かつて国立大学のトップは、教職員による投票結果をもとに、教員で構成される評議会が指名していた。

しかし、2004年の国立大学法人化によって、教職員による投票は「意向投票」と位置づけられ、最終的な選考権限は総長選考会議、現在の総長選考・監察会議へ移った。

さらに、2014年の国立大学法人法改正では、トップの選考方法そのものも選考会議が決められるようになり、同年の学校教育法改正では、教授会の権限も大幅に縮小された。

その結果、教職員による投票で1位ではなかった候補者が、総長や学長に選ばれるケースが各地でみられるようになっている。

総長選考・監察会議は、教育研究評議会の学内委員と経営協議会の学外委員で構成されるが、経営協議会の学外委員は総長が選任する仕組みとなっている。

教職員の意向と異なるトップが選ばれることも制度上可能となり、その現実が京都大学でも表れたかたちだ。

●「国際卓越研究大学」への対応も争点に

今回の総長選考では「国際卓越研究大学」への対応も大きな争点となった。

国際卓越研究大学は、世界最高水準の研究大学を目指す大学に、政府の10兆円ファンドの運用益から毎年数百億円を助成する制度だ。

京都大は2025年12月に候補校となり、その前提として、教授を頂点とする小講座制を廃止し、研究者を大きなグループに再編する「デパートメント制」の導入が求められていた。

職員組合のアンケートでは、立川氏が6人の候補者の中で最も早い「2年での完全移行」を掲げていた。

そして立川氏が次期総長に決まると、約2週間後の7月3日、京都大学は国際卓越研究大学への認定を受けた。

こうした経緯から、集会では「制度を主導する内閣府の意向が総長選考に影響したのではないか」と疑問視する声も上がった。

●「不安感みたいなものが学内にある」

集会を主催した京都大学職員組合の伊原木大祐中央執行委員長は、今回の選考に対する危機感を次のように語った。

「意向投票で第2位の方が選ばれるのは他大学でも聞きますが、第3位の方が選ばれるのは非常に珍しいだけではなく、京都大の(歴史の)中でも今までなかったことです。

これを『そうですか』とほったらかしにしていると、上からよくわからないプロセスで(物事が)決められることに対して、今後どうなっていくのだろうという不安感みたいなものが学内にあります。

極端なことを言うと、3位の人を選ぶことで、京都大の一体性が分割される問題もあると思います」

画像タイトル 伊原木大祐中央執行委員長(文学研究科准教授)

集会では、人間・環境学研究科の細見和之教授が、総長選考を風刺した自作の歌をギターで披露する場面もあった。

総長 総長 3位でも総長  
増長 増長 選考会議は増長  
膨張 膨張 軍事研究費は膨張  
哄笑 哄笑 内閣府は哄笑

職員組合は総長選考・監察会議に対し、選考経緯の詳細な説明と再意向調査の実施を求める声明を公表し、インターネット上で賛同者を募っている。

しかし、総長決定から約1カ月が経過した現在も、総長選考・監察会議は当初の発表以上の説明をしていない。

このままでは選考結果への不信だけではなく、大学運営そのものへの禍根を残すことになりかねない。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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