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「セクハラ告発」で降格・転勤させるのは不当 都労委が命令
会見する執行委員長の鷹尾嘉秀氏(右)

「セクハラ告発」で降格・転勤させるのは不当 都労委が命令

女性用下着の販売会社「シャルレ」(神戸市)が、幹部社員の「セクハラ行為」を問題視した労働組合の幹部を転勤させるなどしたのは不当労働行為にあたるとして、組合が救済を申し立てていた問題。東京都労働委員会は3月26日、申し立ての一部を認め、組合幹部を元の職場に復帰させることなどを命じた。

●会社に団体交渉に応じてもらえず

組合は「連合ユニオン東京シャルレユニオン」(執行委員長=鷹尾嘉秀氏)。2016年3月に米国ハワイで行ったセミナーで、シャルレ幹部からセクハラ被害にあったという代理店の女性から相談を受け、この行為を議題として団体交渉を申し入れた。

ところが会社は「義務的団交事項ではない」として協議に応じず、組合は2016年6月にホームページに「セクハラ発覚」「会社隠ぺい」などと掲載した。

このことで名誉を傷つけられたとして、シャルレは組合などに約1000万円の損害賠償を求める訴えを提起(会社の請求は東京高裁で退けられ、組合側の勝訴が確定)。一方、組合は、会社による6つの行為を不当労働行為だとして、都労委に救済を申し立てていた。

●執行委員長を転勤させるのは「不当労働行為」

具体的には、会社が(1)不誠実な団体交渉を行い(2)前述のように組合などを提訴し(3)執行委員長を降格処分とし(4)執行委員長を東京から神戸に転勤させ(5)書記長を減給処分とし(6)裁判に協力した執行委員を東京から名古屋に転勤させた、というもの。

命令では(1)(3)(4)について、組合側の申し立てを認めた。つまり、シャルレが協議に応じず、執行委員長を降格処分とし転勤させたことは不当労働行為にあたると認定。執行委員長を、元の職場に復帰させることなどを命じた。

シャルレ幹部については、セクハラの防止を含めた適切な接遇を営業担当の従業員に指導すべき立場でありながら、自らが「相手からセクハラと受け取られる行為を行ったものである」との判断も示した。

●告発者を不利益に扱うのは問題

一方、(2)(5)(6)については、組合側の請求を棄却した。訴訟制度を悪用して組合活動の弱体化を図ったとはいえないと判断。書記長は、業務時間中に貸与パソコンの私的利用をしており、減給処分は組合員であることを理由にした不利益取扱いではないとした。

また、執行委員の名古屋への転勤については、「報復的意図をもってなされたことを疑う余地がないわけではない」としつつ、他の従業員と比べて差別的に取り扱ったわけではなく、業務上の必要性に基づいて行われたものと認めた。

組合と、組合を支援する弁護団は3月26日、東京・霞が関の厚生労働省で会見し、認められなかった3点について中央労働委員会に不服申し立てをする方針だと表明した。

新村響子弁護士は、「セクハラ行為を告発した人に不利益な取扱いをする行為は問題だ」と指摘。執行委員長の鷹尾氏は「会社は露骨な不当労働行為を行い、セクハラの事実にフタをしようとした。会社の姿勢はセクハラの撲滅とはほど遠い」と述べた。

●シャルレ「今後、命令の内容を精査」

シャルレの担当者は取材に対し「今後、命令の内容を精査し、中労委に不服申し立てをするかどうか検討する」とコメントした。

(弁護士ドットコムニュース)

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