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会社のウォーターサーバー「正社員以外禁止」…派遣社員と差をつけることは違法?
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会社のウォーターサーバー「正社員以外禁止」…派遣社員と差をつけることは違法?

会社にある設備は正社員以外使用禁止で、派遣社員はダメーー。正社員と派遣社員でこんな「線引き」をしている会社があるという投稿がツイッターで話題になっています。

きっかけは、「某大手企業に派遣で行ってる友人と飲んだ時に『会社内のウォーターサーバーに、正社員以外使用禁止と書かれていた』『食堂も正社員しか入れないのでビルの外のコンビニで買ってる』という話を聞かされた」といった内容のツイートで、これまで1万回以上RTされています。

このツイートに対して、「派遣社員やってた頃『休憩室、及び喫煙所は派遣社員の立入禁止」「派遣は食堂とカップ麺等の自販機の使用禁止』『ロッカールームは派遣は利用できない』っていう会社は実際あった」といった実体験も次々と投稿されています。

弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、契約社員の女性から「正社員はお昼補助が月に1万出るのに契約社員はなし。産休なども正社員も三分の一しか取れない」といった投稿が寄せられています。

このように正社員と契約社員、派遣社員の間で福利厚生に差をつけることは、違法ではないのでしょうか。戸田哲弁護士に聞きました。

●派遣社員に対しては配慮規定がある

「昨年12月に政府から『同一労働同一賃金』のガイドライン案が発表されたこともあり、非正規社員と正社員との待遇格差の相談は増えています」

戸田弁護士はそう話します。ガイドライン案はどういった内容なのでしょうか。

「ガイドライン案は、派遣労働者を含めた非正規社員全般についてスポットを当てて、正社員との間の不合理な待遇格差を禁止する内容となっているのですが、これはあくまでも『案』で、立法化はされていません。実務での拘束力はありません。」

では、現在の法律はどうなっているのでしょうか。

「現在の法律では、待遇格差が違法とされるのは、有期雇用と正社員の格差(労働契約法20条)、パートタイム労働者とフルタイム労働者の格差(パートタイム労働法8条、9条)に限られています。

残念ながら、今回のケースのように、派遣社員の方だけに食堂利用等が認められないとしても、現時点では待遇格差そのものが違法となるわけではありません」

では、派遣社員の待遇格差に関する法律はないということですか。

「いえ、労働者派遣法40条の3は、派遣先の会社は、正社員等が利用する給食施設や休憩室等の福利厚生施設について、派遣社員にも利用の機会を与えるように配慮することを求めています。今回のケースは、この配慮規定に違反する可能性があるので、会社に対して配慮を求めていくことが考えられます」

契約社員(有期雇用)の方の待遇格差に関する法律はどういった内容なのでしょうか。

「この場合は、労働契約法20条に従い、(1)職務の内容、(2)配置変更の範囲、(3)その他の事情等を総合的に見て、不合理な格差である場合は、その格差の扱いが違法・無効となります。

もし、契約社員に食堂を利用させない格差を設けた場合は、不合理な格差として違法になる可能性が大です。食堂の利用という福利厚生は、特に職務内容等とは無関係で、契約社員との区別の理由が認めにくいからです」

●契約社員と区別する理由に乏しければ違法になる可能性

契約社員に「お昼補助」が出ない場合はどうでしょうか。

「最近の裁判例で似た判断がされています、有期雇用のドライバーについてですが、給食手当が支給されないことが違法とされました(ハマキョウレックス事件–大阪高判平成28年7月26日)。

この裁判例は、給食代の補助として支払われる手当が職務の内容等とは無関係であることを理由にしているので、『お昼補助』も同様に考えることができる場合もあるでしょう」

産休期間についても正社員と契約社員とで差があるという投稿がありました。

「少し違う事例ですが、労働者の健康保持のための『病気休暇』の期間に格差を設けた点が違法と判断された最近の裁判例が参考になります(日本郵便事件–東京地裁平成29年9月14日)。産休は母体保護のための休暇であって、有期雇用かどうかで区別する理由に乏しいことを考えると、この裁判例と同じように違法と判断される可能性が高いでしょう。

とはいえ、こうした待遇格差の事案は、職務の内容等を含め、個別の事情をかなり詳細に検討する必要がありますので、一概には結論が出ません。お悩みの場合は、必ず専門家にご相談下さい」

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(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

戸田 哲
戸田 哲(とだ さとし)弁護士 弁護士法人戸田労務経営
千葉県弁護士会 労働問題対策委員会副委員長。労働者側・使用者側の双方の事件を数多く取り扱い、「労働」分野の総合対応を強みとする。労働事件専門講師経験も多数(弁護士会主催研修、社会保険労務士会主催研修、裁判所労働集中部主催労働審判員対象研修等)。Ⓡ労務調査士

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