サラリーマンにとって、人事評価は自分の運命を決めることもある重大なイベントです。ただし、上司の好き嫌いで決まってしまうケースもあり、その理不尽さに悩んでいる人もいるようです。
インターネットのQ&Aサイトでも、どれだけ功績をあげようと全く評価されず、勤務評価は最低となってしまった人のエピソードが紹介されていました。上司に徹底的に嫌われたため、ミスは全て自身の責任にされ、功績は全て上司のものになっていました。社長に直訴して改善に向かったとのことです。
あまりにも不当な人事評価で、減給・降格という事態になった場合、会社に対して、評価をやり直させることはできるのでしょうか。人事評価は上司の自由にできるのでしょうか。光永享央弁護士に聞きました。
●合理的な制度に基づく適切な評価でなければならない
人事評価は上司の自由にできるのでしょうか。
「言うまでもなく、人事評価は、賞与の額、昇給、昇格、希望する勤務地や部署に配属されるかどうかなど、会社生活のあらゆる場面に影響します。私も会社員時代、上司との人事評価面談では結構緊張しました。
それほど重大な人事評価ですが、大学入試や資格試験のように点数で客観的に優劣が決まるわけではなく、たいていの職場では労働者自身の自己評価→直属の上司による1次評価→管理者による2次評価で確定というケースが多いのではないしょうか。
そうすると、まったく同じパフォーマンスでも、上司との折り合いが悪ければ低い査定となってしまうこともありえますし、実際そのような悩みを抱えて相談される方もいます」
上司との関係性で評価が決まることは、法的に問題ないのでしょうか。
「法律的には、使用者には人事権の行使として人事評価につき広い裁量が認められるものの、
(1)合理的な人事制度であることを前提とし、
(2)当該人事制度に定められた適切な評価方法に基づき評価が行われている限り、
裁量内のものとして適法となります。
たとえば、就業規則等で客観的な評価基準や評価方法が定められておらず、上司の好き嫌いで勝手にAとかCとか付けられる場合には合理的な人事制度といえません。
また、制度自体が確立していたとしても、上司が当該評価基準から離れて独断で低い評価をつけた場合には、裁量を逸脱したことになります。実際、これらのケースで人事評価が違法とされ、本来得られたはずの給与・賞与等との差額賃金の請求が認められた裁判例もあります」
●減給・降格の場合には使用者の裁量は狭まる
減給・降格という事態になった場合は、どうでしょうか。
「減給や、減給を伴う降格については、労働者にとって最も重要な権利ないし労働条件の不利益変更となりますので、使用者の裁量の幅もより狭まります。
上記(1)(2)に加えて、当該不利益を労働者に負わせることを正当化できるほどの高度の必要性および合理性が必要となります。この要件を満たさないとして減給・降格の効力を否定し、差額賃金の支払を命じた裁判例は多数ありますよ」
光永弁護士はそう話していた。