相続した土地を国に引き取ってもらう制度をめぐり、財務省が引き取った土地の価格を最大9割引きして民間に売却できる仕組みを導入すると報じられた。
この報道を受けて、大手掲示板「2ちゃんねる」の開設者で、元管理人のひろゆき氏は7月2日、自身のX上で、相続放棄を前提に今回の仕組みを「騙して土地をタダで奪う詐欺師の手口やん」と批判した。
税務署「お前の死んだ父親の土地は一億円。相続税5000万円払え」
— ひろゆき (@hirox246) July 1, 2026
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息子「現金ないので、相続放棄します」
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税務署「本当は1000万円の価値しかなかったので、1000万円で買う人いるー?」
騙して土地をタダで奪う詐欺師の手口やん、、、 https://t.co/IiFYavNeZn
ひろゆき氏の投稿にタレントの武井壮さんも「あまりにひどい」と反応するなど、SNSではさまざまな受け止めが広がっている。しかし、今井俊裕弁護士は「制度への誤解が広まっている」と指摘する。
●「相続放棄した土地」ではない
財務省が「相続土地国庫帰属制度」で相続人から「タダでもらった土地」を、不当に安く民間へ払い下げる制度をはじめるという誤解が一部で広がっているようです。
そもそも、相続放棄をした人は、この制度を利用することはできません。
相続放棄をすると、法律上は最初から相続人ではなかったことになるため、土地を国に引き取ってもらう申請をする資格がないからです。
●制度の対象は「望まず取得したやっかいな土地」
相続土地国庫帰属制度は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内に相続放棄をしなかったため、結果として望んではいなかった土地を取得してしまった相続人や、望んではいない土地のほかに承継したい財産が遺産に含まれていたため、やむなく抱き合わせのような形で相続を承認せざるを得なかった相続人、あるいは遺言書で土地を譲り受けた相続人などを対象とした制度です。
相続放棄の手続きでは、一部の望まない財産だけを放棄して、それ以外の望む財産だけを承継する、いわゆる「えり好み相続」はできません。相続放棄を選択した場合は、すべての遺産を承継できなくなります。
この制度は、自らが望んで取得した土地ではないうえ、資産価値が低かったり、将来の管理費などを考えると、むしろ大きな負担になってしまうような「やっかいな土地」を手放すために設けられました。
こうした土地は、売却しようにも思うように買い手がつかず、相続人も積極的に管理しないまま長年にわたって放置される実態がありました。
さらに、その相続人が亡くなると、「やっかいな土地」は次の世代へと引き継がれていきます。
そのようなことが繰り返されれば、相続人が増え続け、誰が所有者なのかわからなくなったり、相続人全員を特定できなくなったり、仮に特定できたとしても連絡がとれなかったりするケースも生じます。
●背景にある「所有者不明土地」問題
このような「所有者不明土地」は、日本全国で相当な面積に及んでいると推計されています。
所有者がわからない土地は、隣接地とのトラブルだけでなく、公共事業や大規模災害後の復旧工事でも支障となります。行政が所有者を特定できず、事業を円滑に進められなくなることもあるためです。
そのため、一定の条件を満たす「管理されないやっかいな土地」を国が引き取り、所有者不明土地の発生を防ぐ目的で創設されたのが、相続土地国庫帰属制度です。
●「価値がある土地なら国へ渡さない」
実際に相続土地国庫帰属制度で国が引き取った土地は、ほとんどが資産価値に乏しく、管理費まで考慮すると赤字になってしまうような土地だと考えられます。
資産価値のある土地であれば、相続人がわざわざ審査手数料まで払って、国に無償で引き取ってもらおうと申請するはずがありません。
さらに、審査の結果、承認されたとしても、実際に国へ引き取ってもらう際には、将来10年間分の土地管理費相当額を国へ納付しなければなりません。
つまり、この制度は、国からお金を受け取るどころか、土地を引き取ってもらうために一定の費用を負担する仕組みなのです。
今回報じられたのは、そうした「やっかいな土地」のうち、国が引き取ったものについて、財務省が最大9割まで価格を下げて売却できるようにする制度です。
国が価値のある土地を無料で取得し、大幅に値引きして売却する制度だと受け止めるのは、制度の趣旨と異なり、誤解といえるでしょう。