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検察の取り調べ映像「マスコミ報道は外部流出」 法務省、国賠訴訟で非公開を求める方針【開示文書全文】
法務省が開示した「検察国賠訴訟における基本的な方針」(弁護士ドットコムニュース撮影)

検察の取り調べ映像「マスコミ報道は外部流出」 法務省、国賠訴訟で非公開を求める方針【開示文書全文】

違法な取り調べや冤罪の実態を明らかにしてきたメディアの報道を「外部への流出」と位置づけ、裁判所に非公開の手続きを求める──。

そんな方針を法務省が内部でまとめていたことがわかった。

弁護士ドットコムニュースが情報公開請求で得た文書からは、問題の検証を妨げかねない国の姿勢が浮かび上がる。

内容の重要性や影響の大きさを踏まえ、開示された文書の全文を掲載する。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

(原文の脚注番号は*で示し、マスキングされた部分は【黒塗り】と表記。読みやすくするため、適宜、改行を加えた)

●開示された文書の全文、一部黒塗りも

検察国賠訴訟における基本的な方針

1 本文書の位置づけ

本文書は、検察国賠訴訟における近時の厳しい情勢を踏まえ、訟務検事に向けて、同訴訟につき緊張感をもって適切に対応していただくべく基本的な対応方針を示したものである。

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2 刑事事件の内容及びその捜査等の過程の双方を十分把握して訴訟対応することの重要性

訟務検事等は、検察国賠訴訟において、取調べ、公訴提起など、検察官等の職員の特定の行為が問題になっているからといって、その行為のみを正確に把握しようとするのではなく、そもそも、その刑事事件自体がどのような内容の事案であり、いかなる端緒からどのような経過をたどった事案であるかについても含めて、その全体を正確に把握し、主張立証に生かす必要がある。

そのため、訟務検事等は、【黒塗り:約3行分】積極的に、当該刑事事件の内容と経過等に関する情報を把握するようにする。

【黒塗り:1ページ目のページ下部】

【黒塗り:2ページ目の全面】

【黒塗り:3ページ目の上部】

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3 証拠提出に当たっての検討事項

(1)証拠提出の必要性について

前記2のとおり、訟務検事等は、刑事事件の内容や捜査等の経過を把握した上で、主張立証に必要な証拠を適切に選別し、その提出の必要性について、行政庁に対し十分に説明して理解を得るようにする。

そして、検察国賠訴訟において、違法と主張される行為に関する直接的な証拠は、これが刑訴法47条本文により原則として公開が禁止される不起訴・不提出記録であったとしても、提出する必要がある場合があると考えられる(近時の裁判所の検察国賠訴訟に対する厳しい姿勢等に鑑みると、特に、検察官の行為の適法性がシビアに争われる事案においては、録音録画記録媒体を含む刑事事件記録そのものの証拠提出又は任意開示について消極的対応をとることにより、裁判所の心証を損なうことも懸念される。また、事案によっては、国側から刑事事件記録を積極的に証拠提出することが、訴訟戦略の観点から有用である場合もあり得る。)。

刑事事件と同様に民事訴訟においても、ベストエビデンスでの立証を行うことが原則であり、どの証拠を提出するかの検討に当たっては、争点との関係で立証に必要な証拠の範囲を過不足なく適切に判断することが重要である(不起訴・不提出記録については、刑訴法47条の趣旨を踏まえ、確定記録であるときと比較して慎重な検討が必要であるものの、特段の支障もないのに不起訴・不提出記録であるというだけでベストエビデンスを提出しないことが不適当であるのはもとより、争点との関係で必要性がないにもかかわらず、証拠提出の要否を吟味しないまま不用意に不起訴・不提出記録を証拠提出することも不適当である。)。

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一方、刑事記録(不起訴・不提出記録を含む。)は、その証拠提出により、関係者のプライバシー、名誉、生活の平穏等の侵害や、捜査・公判への支障等が生じる場合もあり得るので、特に不起訴・不提出記録の証拠提出に当たっては、刑訴法47条本文の趣旨にも鑑み、こうした弊害が生じることに対する行政庁の懸念にも配慮する必要がある(録音録画記録媒体を含め、国賠訴訟に提出された証拠については、刑事事件で謄写を受けた事件記録と異なり、刑訴法上の目的外利用の禁止が及ばないので、原告側によりインターネット上の動画サイト等に投稿され、一部を切り取って拡散されるおそれ等もある。)。

そして、不起訴・不提出記録を証拠提出する場合には、プライバシー等の侵害や将来の捜査・公判への支障等が懸念されるため、マスキング処理をした上で提出することを検討し、行政庁と対応を協議する必要がある(もっとも、提出による具体的な弊害が認められない部分にまで広範囲にマスキング処理等をすることは、裁判所から国が都合の悪い部分を隠しているとの疑念を持たれかねないため、適切とはいえない。)。

なお、刑事記録に含まれる文書の代替証拠として、報告書や関係者の陳述書等を作成して証拠提出する対応も考えられるところ、刑事記録は、当該刑事事件の捜査の経過等を示す「物証」ないし「客観証拠」ともいえるものであるから、それを報告書や陳述書等で代替することによって証拠価値が下がるものと評価され得ることにも留意する必要がある。

その上で、仮に報告書や陳述書等により立証する場合には、報告書や陳述書等の作成者が証人尋問され得ることを念頭に置いた上で、行政庁と対応を協議する必要がある。そして、報告書や陳述書等の作成者が尋問に対応する場合があるという観点から、どの立場の者の作成に係る報告書や陳述書等を提出することがふさわしく、適切であるかを判断する必要がある。

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また、近時は、供述経過や具体的供述内容について、上述のような「物証」ないし「客観証拠」としての供述調書による立証を検討する必要がある事案が増えている。

そのような場合には、当該訴訟の争点や証拠関係を踏まえ、国の立証における当該供述調書の重要性、必要性について行政庁とも十分協議した上で、供述調書を提出する必要性を検討すべきである。

(2)マスキング処理等の対応

事件関係者(特に国賠訴訟の原告(通常は刑事事件の被疑者・被告人)以外の事件関係者)の名誉・プライバシーに関する情報が含まれる証拠や、捜査・公判手続に具体的な支障を及ぼす証拠を提出する場合には、適切にマスキング処理を施すなどの対応に遺漏のないよう留意する。

国の主張立証のために国から積極的に証拠提出する場合のみならず、原告側から刑事記録を任意に開示することや証拠提出することを求められた場合についても同様とする。

(3)閲覧等制限等の対応

事案によるものの、証拠提出ないし任意開示した刑事記録がマスコミ等の第三者に提供され、国賠訴訟外で利用される可能性も考えられ得るところ、刑事記録をマスコミ等の第三者に提供することは、国賠訴訟との関係では必要性が全くない行為である上、刑訴法47条の趣旨を完全に没却するものであることから、刑事記録の証拠提出ないし任意開示に当たっては、国が提出ないし開示する刑事記録に係る証拠をマスコミ等の第三者に提供しない旨の誓約書を徴するとか、訴訟記録の閲覧等制限の申立てを行うといった対応をまず検討すべきである。

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4 刑事記録(特に不起訴・不提出記録)の証拠提出ないし任意開示に係る必要性及び弊害への対応の検討

(1)事案の内容・性質や争点との関係から、供述調書等や不起訴記録・不提出記録から証拠提出をする必要がある場合には、訟務検事等は、当該証拠を提出する具体的必要性及び証拠提出に伴う弊害への対応について、行政庁に説明する。

その際、事案や争点との関係において、当該証拠がベストエビデンスであること、代替証拠がないことなどが分かりやすく伝わるようにする。

(2)国から積極的に証拠提出する場合のみならず、原告側から任意開示の要請や文書送付嘱託・文書提出命令の申立てがされた場合においても、これに応じるべきであるかは、刑訴法47条の趣旨も踏まえつつ、事案や争点との関係において証拠調べの必要性と開示による弊害との関係を総合考慮し、検討することとなる。

その際、国が自己に都合の悪い部分を隠しているとのそしりを受けないよう、その対応について合理的な説明ができるよう準備すべきであり、また、刑事記録の証拠提出や任意開示による弊害を可及的に避けるべく、前記3の(2)や(3)に記載したような対応をとるべきことにも留意する必要がある。

具体例1) 原告(被疑者・被告人)と共犯者との間に共謀はなかったとして、検察官の公訴提起(ないし勾留請求)の違法性が争われている事案において、客観証拠から明確に共謀が立証できるような証拠関係の事件であれば格別、通常は共謀立証の柱は共犯者の供述調書等の供述証拠と考えられ、代替証拠も考え難い結果、不起訴・不提出記録であっても供述調書等の証拠提出の必要性は高い場合もある。

他方、共犯者の供述について、刑事事件で取調べの任意性・信用性が問題となっておらず、国賠訴訟においても取調べの状況が問題になっていないのであれば、取調べの録音録画記録媒体については証拠提出の必要性は低いと思われる。

具体例2) 原告側から刑事記録について文書提出命令の申立てがされている場合、原告代理人が刑事事件の弁護人と同じであって、刑事事件で謄写を受けた事件記録を既に入手しているが、目的外使用になるため国賠訴訟では刑事記録の写しを利用できないため文書提出命令の申立てをしているというのであれば、原告側は記録の内容を既に把握していることから、マスキング措置等により第三者のプライバシー侵害等に配慮することが可能なのであれば、必要性を十分に吟味した上で国から証拠提出するなどして柔軟に対応することにより、文書提出命令申立て事件の係争を避けることができると思われる。

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5 録音録画記録媒体の取扱い*2

(1)証拠提出の判断

事案及び証拠関係に応じ、以下のとおり、証拠提出に係る必要性及び弊害への対応を考慮して証拠提出を判断することとする。【黒塗り:約3行分】

ア 検察官の取調べの違法(黙秘権侵害、弁護権侵害、人格権侵害等)が争われる場合

取調べの内容自体が国賠訴訟の争点とされる事案において、録音録画記録媒体の証拠調べの必要性が高い場合(換言すると、国の主張立証のためのベストエビデンスであると考えられる場合*3)には、証拠提出することによる第三者の名誉・プライバシー侵害の可能性及びその程度をも勘案し、国から録音録画記録媒体を証拠提出するか否かを判断する。

検察官の取調べの違法が争点とされる場合、裁判所において、録音録画記録媒体の証拠調べの必要性を否定することは通常想定できず、近時の裁判所の傾向によると、原告側から録音録画記録媒体につき(準)文書提出命令の申立てがされれば、その提出による第三者の名誉・プライバシー侵害といった弊害の有無及び程度によるとはいえ、文書提出命令の決定が出されることも十分あり得ると考えられる。【黒塗り:約2行分】

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イ 検察官の公訴提起等の違法が争われる場合(前記ア以外の場合)

検察官の公訴提起等の違法が争点とされる事案においては、通常は、取調べの結果作成された供述調書等が検察官の公訴提起等の判断の前提となるものと思われ、取調べにおける検察官の個々の言動が公訴提起等の判断に直結することは想定し難いことから、当該事案において、検察官の公訴提起等の判断が合理的根拠を欠くものではないと主張立証するために、録音録画記録媒体によって取調べの状況自体を明らかにする必要がどの程度あるのかを慎重に検討すべきである。*5

他方で、例えば、自白が有罪立証のための重要な証拠と位置づけられる事案において自白の任意性・信用性に問題があると主張される場合や、共犯事件の共謀を立証する主要な証拠が共犯者供述である事案において共犯者供述の任意性・信用性に問題があると主張される場合などは、録音録画記録媒体によって取調べ状況自体を立証する必要が認められる場合もあろう。

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(2)証拠提出に当たっての留意事項

前記(1)の検討を踏まえ、録音録画記録媒体を証拠として提出すると判断する場合であっても、証拠提出に当たっては、その性質を踏まえ、取り分け慎重な対応を要する。

すなわち、録音録画記録媒体は、検察官による取調べの過程を客観的に記録したものであるという性質上、ひとたびこれが外部に流出することとなれば、取調べ対象者や取調べで言及された第三者等関係者の名誉やプライバシーが害されることとなりかねないほか、今後の取調べへの協力を躊躇させたり、録音・録画下での取調べで供述することを躊躇させたりするなど、今後の捜査・公判にも支障を生じさせかねない。

そして、これまでの検察国賠訴訟においては、証拠提出した録音録画記録媒体の映像がマスコミ等によって広く報じられるなど、外部への流出が確認され、これらのおそれが顕在化している。

このような状況を踏まえ、録音録画記録媒体の証拠提出に当たっては、前記3(3)の誓約書を徴するとか、閲覧等制限の申立てを行うなどの対応に加え、弁論期日外(非公開の弁論準備手続期日)で証拠調べを実施するよう求めるなどの対応を検討すべきである。

以上

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●脚注

*1 【黒塗り部分に含まれるとみられる】

*2 取調べの録音録画記録媒体は、取調べの違法性が争点となる国賠訴訟等では、国から録音録画記録媒体を証拠提出する必要がある場合が想定されるほか、原告側から録音録画記録媒体の任意提出等を求められることも想定される。

*3 録音録画記録媒体が存在する以上、国賠訴訟の当事者間において取調べの内容自体に争いがあることは通常想定されないところ、検察官の発言内容のみならず、声の大きさや動作、態度等の非言語的要素が問題となる場合(威圧的、脅迫的であると主張される場合等)において、録音録画記録媒体が最良証拠であることは通常否定し難いと思われる。

*4 【黒塗り部分に含まれるとみられる】

*5 ただし、最高裁令和6年10月16日第二小法廷決定(判タ1533号22ページ)参照。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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