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直前キャンセルで「賃金ゼロ」、“タイミーさん”集団訴訟、初弁論で「タイミー」側は全面的に争う姿勢
タイミー集団提訴会見、原告の40代男性(第1回口頭弁論の2026年7月2日/東京・霞が関の司法記者クラブ/弁護士ドットコム撮影)

直前キャンセルで「賃金ゼロ」、“タイミーさん”集団訴訟、初弁論で「タイミー」側は全面的に争う姿勢

スポットワークのアプリ「タイミー」で成立した仕事を雇用主側に直前でキャンセルされ、賃金が支払われなかったとして、ワーカー9人がアプリ運営会社「タイミー」(東京都港区)に未払い賃金相当額と慰謝料あわせて約312万円の支払いを求めた集団訴訟の第1回口頭弁論が7月2日、東京地裁で開かれた。

タイミー側は、請求棄却を求め、全面的に争う姿勢を示した。そのうえで、原告側に対し、請求の法的根拠や主張の組み立てなどについて、具体的に明らかにするよう求めた。

この日の弁論後、原告らが東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。

原告の40代男性は「小川(嶺)社長は一貫して『ワーカーファースト』と言うが、実際に働く中でこの言葉に違和感を感じた」と語り、プラットフォーマーとしての社会的責任を司法の場で問いたいとうったえた。

●プラットフォーマーの責任問う「全国初」の集団訴訟

訴えを起こしたのは、東京や愛知など1都4県に住む20〜60代のワーカー9人。

訴状などによると、原告らは2021年10月から2026年3月にかけて、タイミーでマッチングが成立した仕事について、雇用主側の都合によるキャンセルを計135件受けたと主張している。訴訟を通じて、60件程度が追加される予定。

未払い賃金相当額は約102万円にのぼるとして、これに慰謝料約210万円を加えた総額約312万円の支払いを求めている。

原告側によると、スポットワークの「直前キャンセル」をめぐり、雇用主(求人企業)ではなく、マッチングの仕組みを提供するプラットフォーマーの法的責任を正面から問う集団訴訟は「全国で初めて」だという。

会見で、原告代理人の牧野裕貴弁護士は、この日の弁論の意義を次のように説明した。

「今までタイミーのキャンセルの訴訟については、企業側を被告としてやってきた。今回の集団訴訟については、被告自体はプラットフォーマーであるタイミーだ。タイミーも応訴した。具体的なプラットフォームに関する議論の土俵に乗った」

●タイミー側は請求棄却求める

タイミー側は請求棄却を求める一方、認否は留保したうえで、請求の内容や法的構成について説明を求めた。具体的には次の点を明らかにするよう求めている。

・「未払い賃金の請求」と「逸失利益としての損害賠償の請求」のどちらが主たる請求か

・どのような内容の労働契約がいつ成立したといえるか

・プラットフォーマーとしての複数の注意義務違反の主張が相互にどう関係し、債務不履行と不法行為のいずれに基づく請求なのか

●タイミーは「肩代わり」する立場なのか

原告側が争点として挙げるのは、大きく3つある。

1つ目は、タイミーが雇用主と並んで賃金の支払い義務を負うのかという点だ。法律上は「併存的債務引受」と呼ばれる。

タイミーは、働いた当日に報酬を受け取れる「即日払い」を特徴としており、原告側は、利用規約にはタイミーが雇用主の賃金支払い債務を併存的に引き受ける内容が明記されていると主張する。

牧野弁護士は「キャンセルによる未払い賃金について、タイミーが併存的債務引受をしているのかどうかは、(被告側が)争ってくるのではないかと想定している」と述べた。

●「労働契約」はいつ成立するのか

2つ目は、労働契約の成立時期だ。

原告側は、現場でQRコードを読み込んで就労を開始した時点ではなく、仕事のマッチングが成立した時点で労働契約が成立していると主張する。

タイミーは2025年9月、契約の成立時期を「ワーカーが求人への申し込みを完了した時点」とする規約改定をしたが、原告側はそれ以前についてもマッチング成立時点で契約は成立していたとしている。

厚労省もスポットワークでは、求人への応募時点で労働契約が成立するとの考え方を示している。

牧野弁護士は「(併存的債務引受の)壁を乗り越えたその先が、いわゆるQRコードの問題で、契約の成立時期が問題になる」と話した。

●プラットフォーマーの「注意義務」

3つ目は、プラットフォーマーとしての注意義務違反の有無だ。

原告側は、タイミーが単なるマッチングの場の提供者にとどまらず、就労管理や賃金の立て替え払い、キャンセルルールの設計まで一元的に担い、その対価として企業側から手数料を得ている点に着目する。

牧野弁護士は「単なるマッチングの仲介役ではなく、マッチングの仕組み自体をタイミー自ら設計し、労働条件通知書の発行、立て替え払い、勤怠管理もそのシステムで完結している。その対価で報酬を得ている。そこから一歩踏み込んだプラットフォームを提供している事業者としての法的な責任を問いたい」と強調した。

もっとも、この主張のハードルは高いとも認める。

「プラットフォーマーの責任については、具体的に規制している法令が存在していない。契約の解釈や一般条項から(導く)というところで、簡単に認められる話ではない。乗り越える壁は高い」

そのうえで「そういった構造を作ってきたところには非常に責任があるのではないか。訴えを提起することは意義がある」と語った。

●ワーカーの男性「大元のタイミーが責任を取らないのはおかしい」

原告の40代男性は、本業のかたわら、2020年9月から通算約800回タイミーを利用してきたという。他社のアプリと違って「応募しやすい」ことが理由だった。

タイミー側が請求棄却を求めていることについて、男性はこう話した。

「タイミーを使ってしか(雇用主と)出会っていないし、タイミーを通じてキャンセルもできる。タイミーを通じて働いてきた。私たちも働きにいくと『タイミーさん』と呼ばれることもある。

タイミーがアプリを開発して構築して、ルールを作ってきた。そのルールに従ってきた自分たちが一番被害を受けて、大元であるタイミーが一切の責任を取らないというのはないのではないか」

男性は、キャンセル時に休業手当を受け取れたこともあるが、それは制度としてではなく、あくまで個別対応だったと話している。

(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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