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夫が社内不倫、相手女性の「セクハラ」証言でピンチ 妻「いきなり解雇は許せない」
画像はイメージです(Ushico / PIXTA)

夫が社内不倫、相手女性の「セクハラ」証言でピンチ 妻「いきなり解雇は許せない」

セクハラが原因で、夫が退職か降格のどちらかを迫られているーー。社内処分に納得のいかない妻が、「何かできることはないか」と弁護士ドットコムに相談しています。

夫は部下の女性と飲み会のノリでキスをしてしまい、そのままホテルに行ってしまいました。実は、その女性は社内で別の男性と不倫関係にありました。そして、その男性が「女性から(夫による)セクハラを相談された」と会社に報告したそうです。

セクハラが認められてしまい、夫の収入は10万円以上減り、転勤する可能性も浮上。妻は夫だけが処分されることに納得がいかず、「3人全員が罰を受ければよい」と考えているそうです。

また、降格され収入が減れば生活が成り立たず、「一番被害を受けるのは私と子どもではないかと気持ちが収まりません」と嘆いています。

今のままの収入、生活を続けたいーー。妻はそう願っていますが、夫は会社に対してどう対応するのがベストなのでしょうか。黒柳武史弁護士に聞きました。

●事実認定は慎重におこなわれるべき

ーー男性は減給された上、転勤する可能性も出てきているそうです

今回のケースでは、会社から夫に対し、セクハラや社内不倫を理由に、降格の懲戒処分が行われたものと考えられます。これに対し、まず夫としては、セクハラについては事実ではないと主張し、懲戒処分は違法・無効であると訴えていくことが考えられます。

今回のケースで、夫が部下の女性の意に反して性的な行為に及んだのであれば、セクハラとして懲戒処分の対象となります。

ただ、会社が懲戒処分を行うためには、部下の女性側の言い分のみならず、夫側の弁明や、第三者からの事情聴取、メールなどの資料も踏まえた上で、慎重に事実認定を行う必要があります。

仮に今回のケースで、夫のセクハラを報告した男性や女性側の言い分のみをもって、一方的にセクハラの事実が認定され、懲戒処分が行われたのであれば、夫としては、事実誤認や適切に弁明する機会を与えられなかったことを主張し、処分の有効性を争うことが考えられます。  

他方、夫としても社内不倫の事実自体は否定できないでしょう。

●社内不倫、必ず懲戒処分の対象になるわけではない

ーーそもそも、社内不倫は懲戒処分の対象になるのでしょうか

不倫は民法上不法行為となり得る行為ですが、そのことと、会社が懲戒処分を行えるかは別問題となります。

懲戒処分はあくまで、会社の秩序に違反する行為を対象とするものです。そのため、社内不倫が認められても、それが私的な行為に留まり、セクハラに当たるなど会社の秩序に具体的な影響を与えるものでなければ、懲戒処分の対象とすることは困難です。

ただ、今回のケースでは、女性の別の不倫相手が、会社に夫のセクハラを報告するなどした結果、当事者間の関係がこじれるだけでなく、会社として調査の必要が生じるなど、不倫を契機に社内でトラブルになっています。

そのため、単に私的な行為という程度を超え、会社の秩序に具体的な影響が及んでいるとも言えるでしょう。  

しかしその程度の事情では、懲戒解雇や、降格などの重い懲戒処分を行うことは、行き過ぎであると考えられます。

また、夫を特に非難すべき事情があれば別ですが、そうでないにも関わらず、夫のみを処分し、他の関係者は処分しないということも、処分の公平性を欠き問題となります。

夫側としては、以上のように処分が重すぎる点や、公平性を欠く点を、会社に訴えていくことが考えられます。

プロフィール

黒柳 武史
黒柳 武史(くろやなぎ たけし)弁護士 賢誠総合法律事務所
京都府出身。2007年大阪弁護士会で弁護士登録。2020年京都弁護士会に登録換え。取り扱い分野は、労働事件を中心に、建築・不動産に関する事件や、一般民事・家事事件など。

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