「妹と元彼氏が結婚します。家族と縁を切り転居などしたほうがいいでしょうか」。こんな書き出しで始まるQ&Aサイト「ヤフー知恵袋」の投稿が、12月初めの公開から1カ月もたたずに100万以上の閲覧数を記録して話題になった。
投稿者の女性は31歳。5年付き合った彼氏と、入籍と結婚式の準備を進めていたが、突然、両親から、その彼氏と、女性の妹が結婚することを認めてほしいと言われたという。彼は、家族の顔合わせの場で、23歳の女性の妹と連絡先を交換しており、妹の仕事の相談にのっていたところ、男女の関係に発展。妹が彼の子を身ごもった。両親から「生まれてくる命を殺すことはできない。なんとか許してほしい」と言われたのだという。
投稿者が悩み抜いた末、了承したところ、今度は母親から、妹と彼氏の結婚式に来てほしいとの連絡があったそうだ。投稿者は「彼も、両親も妹も、とても大切に思ってきましたが、今はもうどこか別の世界の人に思えます」「妹の笑顔が時々ふと頭に浮かび、怒りとも悔しさとも言えない気持ちで今でも涙がとまらなくなります」と悲しみをつづっている。
自殺も頭をよぎるという投稿者に対して、コメント欄には「私なら、妹夫婦とはしばらく絶縁!」「お辛いかもしれませんが、全てに距離を置いて、ご自身の幸せの為に生きてください」といった内容があいついで投稿されている。たしかに、こんな事態になったら絶縁以外は考えられないかもしれないが、親や兄弟姉妹と、法的に「縁を切る」ことは可能なのだろうか。関範子弁護士に聞いた。
●日本には法的な「絶縁」の制度はないが・・・
「日本で『絶縁』というと、転居したり、今後家族の行事には参加しないといったことしかできないでしょう。残念ながら、親兄弟との絶縁を認める法的な制度はないのです。
それどころか民法877条1項は、『直系血族および兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある』と定めています。
つまり、もし、この投稿者の両親や妹が、将来、生活に困って投稿者を頼ってきたら、投稿者には、彼らの生活を助ける法的義務があるということです。ちなみに、ここで言う『扶養』の程度は『生活扶助義務』。つまり、自分に余力がある限りは、援助しなければならないのです」
万が一、そんな事態になったら、投稿者はさらに追い詰められてしまうだろう。
「そうですね。もっとも、両親や妹が現実に頼ってこなければそれまでです。また、彼らが正式に扶養義務の履行請求をしてきた場合でも、まだ逃げ道はあります。
彼らからの扶養請求調停や審判の申し立てがあったとしても、その中で、これまでの経緯について説明することで、問答無用で義務を負わされるということを避けられる可能性があります。逆に、投稿者のほうから親族関係調整調停を申し立て、その中で説明するということもできます。
しかし、その際にも、投稿者にとっては悪夢のような出来事と再び向き合わなければなりません。自分だけで対処するのではなく、弁護士に依頼することで、少しでも精神的負担を軽減することをお勧めします」
関弁護士はこのように話していた。