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最高検「録音・撮影・ネット接続禁止」記者会見に初参加、検事の不祥事より強く残った異様な風景
最高検から送られてきた記者会見の案内(弁護士ドットコムニュース撮影)

最高検「録音・撮影・ネット接続禁止」記者会見に初参加、検事の不祥事より強く残った異様な風景

東京地検特捜部にいた検事が懲戒免職処分となった7月29日、最高検察庁が記者会見を開いた。

参加するのは今回が初めてだったが、会場でまず驚いたのは、不祥事そのものではなく、「記録させない」という徹底した姿勢だった。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●会見の案内状に「撮影・録音は認めない」

7月29日午後0時半ごろ、最高検の広報担当者から電話が入った。

「本日午後5時から記者会見を開きます。詳細についてはメールを送ります」

その後届いたパスワード付き文書「記者会見の御案内」には、「要望事項」として、次のように記されていた。

<動画・写真撮影及び録音、並びにリアルタイムで会見状況を画像・音声又は電子情報等で配信することは認められません>

参加者は1社1人。メール送信も禁止され、パソコンを使う場合もインターネット接続は認められない。

ここまで厳しい条件が付された記者会見は、筆者にとって初めてだった。

●謝罪しても「その姿」は記録できない

この日説明されたのは、東京地検特捜部の元検事が、捜査対象だった女性と性的関係を持ち、物品の贈与を受けていたという前例のない不祥事だった。

検察では近年、不祥事が相次いでいる。検察への信頼や捜査の適正そのものにかかわる問題にもかかわらず、最高検の幹部による説明の場は極めて閉ざされた形で始まった。

上下黒のスーツに紺色のネクタイ姿で現れた山元裕史・次長検事は、配布資料を読み上げたあと、「国民の皆様に対して深くお詫び申し上げます」と述べ、一礼した。

しかし、その瞬間を写真に収めることはできない。謝罪の様子も表情も、映像や写真として伝える手段は最初から奪われていた。

●「影響はなかった」根拠は示されず

質疑応答では録音も認められなかったため、以下は会見中に筆者がメモした内容に基づく。

──不適切な関係が女性に対する処分に影響を与えたのではないか。

「所要の調査をした結果、女性の処分について適正さや公正さを害するような事実は認められなかった」

──その根拠は。

「事件の具体的内容に関わり、女性が特定される問題やプライバシーに関わるので、これ以上の具体的な説明はいたしかねる」

──免職処分になった検事が関わった事件を過去に遡って調査するのか。

「事件処理の適正さに影響がないと判断した。他の事件について具体的な疑いや恐れは認められず、今回の女性以外に同じような不適切な交友があったことも確認できていないので、これ以上の調査や第三者委員会を設置して検証する必要があるとは考えていない」

──大阪地検の検事正だった北川健太郎氏からの性被害を訴えている女性検事は、これまで何度も第三者による調査を求めてきた。実施していれば今回の問題ももっと早く把握できていたのではないか。なぜ第三者委員会による調査をしないのか。

「第三者委員会を設置していればどうなっていたか、という仮定のことにはお答えできない。検察組織内でハラスメントがあれば、そのような情報があれば、厳正な捜査をしているつもり。決して軽視することなく、関係者の意思を尊重して、しかるべき処分をするのが検察の考え方」

画像タイトル 最高検察庁が入る庁舎(2026年5月、東京都千代田区で、弁護士ドットコムニュース撮影)

●録音・撮影禁止の理由「関係者のプライバシー含む」

質疑の最後に、筆者は率直に尋ねた。

「記者会見で、録音や撮影を禁じる理由を教えてほしい」

山元次長検事は次のような趣旨の説明をした。

「私がコメントすることは、個別具体的な事件の捜査や公判に関わり、関係者のプライバシーや捜査協力の内容を推知させる内容を含む。

今回のような処分の内容について説明する場合も、関係者のプライバシーが含まれる。私は申し上げられないことは申し上げられないと言うが、やり取りの中で個別具体的な名称が上がることなどがあるので、その内容が記録されるような録音や録画は控えてほしい。

冒頭のカメラ撮影についても、そのようなことをできる限り具体的に説明するという観点からすると、一貫して控えてもらっているのが我々のやり方。これまですべてそのような方針でやってきた」

●一般的な会見と大きな差

関係者のプライバシーに配慮する必要があること自体は当然だ。

一方で、山元次長検事は「申し上げられないことは申し上げられない」と述べ、不適切な関係が女性への処分に影響がなかったとする判断や、第三者委員会を設置しない理由について、具体的な根拠は示さなかった。

そのため、録音や撮影を認めることで直ちにプライバシー侵害につながるのかという点については、なお疑問が残った。

これまで筆者が取材してきた記者会見では、事件の当事者や遺族、代理人が登壇する場合でも、撮影範囲や録音の取り扱いを事前に調整しながら実施されることが珍しくない。

行政機関や企業の記者会見でも、公開できる範囲を整理したうえで説明責任を果たそうとする運用も一般的だ。

画像タイトル

●次長検事「写真や録音なくても国民に伝わる」

最高検の会見では、別の記者が「このやり方では、国民に伝わらない」と見直しを求める質問をした。

だが、山元次長検事は次のように答えた。

「報道機関のみなさまを通して正確に伝わるものと考えている。国民にわかりやすく説明すべきではないかという質問かもしれないが、私としては、説明する上で録音や画像が不可欠だとは思っていない」

検察は、強制的な捜査権限を持つ国家機関であり、その判断は市民の人生を大きく左右する。

だからこそ、不祥事が起きたときは、処分の内容だけでなく、その説明のあり方もまた、社会から検証されるべきだ。

閉ざされた部屋で、閉ざされた言葉のやり取りが続いた。検察という強大な権力を持つ組織が、社会にどう説明責任を果たすのか。この日の会見は、そのあり方をあらためて考えさせるものだった。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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