コンビニ大手「ファミリーマート」が、店舗スタッフの名札に本名とは異なる名字を使える「ワーキングネーム」の取り組みを公式Xで紹介し、反響を呼んでいる。
同社は9月24日、「ガッツリ本名じゃなくてもOK!」「働くときの『ワーキングネーム』を導入」と投稿。SNSでは「接客業全部これになって欲しい」といった声が寄せられた。
ただ、今回新たに導入された制度ではない。
ファミリーマートは、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「運用ルール自体に変更はありません」と回答。
本名と異なる名字を名札に表記できる仕組みは2024年から始まっており、今回は10月1日の改正労働施策総合推進法の施行を前に、現場に改めて周知したという。
改正法では、カスタマーハラスメント(カスハラ)から従業員を守るための対策が、すべての事業主に義務づけられた。
接客業では、名札から本名を知られることに不安を感じる従業員もいる。ファミリーマートは、どのような狙いで「ワーキングネーム」を取り入れたのか。
●「プライバシー保護や防犯、カスハラ防止の観点」
ファミリーマートが、本名とは異なる名字を名札に表記できるようにしたのは2024年のことだ。
本部が全国の店舗向けにガイドラインを示し、それに基づいて各加盟店が判断する仕組みとなっている。
導入の理由について、同社は「プライバシー保護や防犯、カスハラ防止の観点からスタッフが安心して働ける環境を整えるため」と説明する。
ただし、好きな名前を自由に決められるわけではない。
同社は「お客様に安心感と信頼感を持ってご利用いただけるよう、同一店舗内での重複する苗字の使用不可など、一定の運用基準を定めております」としている。
●身だしなみ基準も「個性を尊重」へ
ファミリーマートは、店舗スタッフの身だしなみ基準についても見直しを進めている。
従来の「NGルール」から、衛生・安全面や接客マナーを守りながら、スタッフの「個性を尊重する基準」へと変更した。
見直しにあたっては、店舗スタッフから「動きやすさ」や「自分らしい着こなし」を求める声もあったという。
背景にあるのは、人手不足と働き手の多様化だ。
同社は「多様なスタッフが『自分らしく』働ける環境づくりが、採用力や定着率の向上につながり、より選ばれる職場づくりに繋がると判断した」と説明する。
今後のコンビニに求められる働き方についても、「国籍や年齢、文化などの多様な背景を持つ人々が、個性を尊重されながら自分らしく安心して生き生きと活躍できる働き方が求められていると考えております」と回答した。
●本名の名札にはリスクも…弁護士「積極的に検討すべき」
名札は客に安心感を与える一方、従業員のプライバシーを脅かすリスクもある。ワーキングネームは、カスハラ対策としてどこまで効果が期待できるのか。
カスハラの問題にくわしい能勢章弁護士は、次のように話す。
「接客業で名札の着用は、顧客からの信頼感やリピーター獲得にもつながります。その一方で、本名の特定によるSNSでの晒しやストーカー行為など、深刻なカスハラ被害を招くリスクもあります。
10月の改正法施行により、企業にはカスハラから従業員を守る対策が明確に求められます。名札の廃止やイニシャル化も一つの手段ですが、顧客から直接名前を問われた際のリスクを完全に防げません。
そこで有効なのが、本名とは異なる「ビジネスネーム(仮名)」の導入です。導入には一定の注意が必要ですが、企業は法令で求められる対策の一環として、また、安全配慮義務を果たすためにも、導入を積極的に検討すべきと考えます」