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娘への強制性交、罪に問われた夫に「処罰は望みません」 法廷で妻が語った驚きの理由
立川支部(MARODG / PIXTA)

娘への強制性交、罪に問われた夫に「処罰は望みません」 法廷で妻が語った驚きの理由

自分の子どもが性犯罪の被害に遭い、その加害者が、自分の夫だったと分かった時のショックは計り知れない。妻としては、子どもを連れて離婚するという選択肢が現実味を帯びてくる局面だ。

とはいえ、夫が一家の経済的な支えとなっている場合、なかなかそれも難しい。別れを選択しない妻も、これまで法廷で見てきた。そしてこの事件でも、妻は夫との別れを選択することなく、共に生きる道を選んだ。住宅ローンのためだった。(ライター・高橋ユキ)

●妻の出勤中に被害

被告人は今年4月、当時5歳だった実の娘に口淫をさせ、その様子を動画撮影したほか、昨年10月、11歳の女児に乳房や陰部を撮影させそれを送信させたという児童ポルノ禁止法違反、強制性交等、児童福祉法違反の罪に問われていた。

東京地裁立川支部で公判が開かれていたのは今年の秋。法廷前に貼られている開廷表に、被告人の氏名は掲載されていない。被告人の名が明らかになることで被害者のプライバシーが暴かれることを懸念してか、自分の子どもに対する性犯罪で起訴されている被告人の氏名は伏せられるようになった。もちろん、住所や年齢も明らかにならない。マスク姿で温厚そうに見える被告人は、見たところ30代か。

被告人が自分の娘に口淫をさせたのは、妻が出勤している最中の出来事だった。昼間から部屋でひとり、わいせつ動画を視聴していたところ、当時5歳の娘が部屋にやってきて、動画を見られてしまった。被告人によれば、この時、娘から「パパ、これやる」と言ってきたのだというが、それが事実かはわからない。いけないこととは思いながらも、おさまらない性欲に任せて、口淫をさせたのだという。二度の口淫の最中に動画も撮影した。

●犯行動画の証拠請求に、裁判官は「調べるのに躊躇するので留保にしたい」

被告人の悪事は実の娘に対するものだけではなかった。

11歳の女児に乳房や陰部を撮影させ、それを送信させたという事件は、この事件より前の昨年10月に起こした。「32歳から参加していたLINEのグループチャットで出会った11歳の女の子にわいせつ画像の送信をねだった」(冒頭陳述より)という。女児の母親がその2日後、送信に気づき、女児の両親が警察に相談したことから発覚した。11歳女児の両親は昨年11月に警察に相談していたが、当時は起訴されないままだったようだ。

現在の被告人の年齢が分からないため「32歳からグループチャットに参加していた」ということが、果たして何年前かも分からないまま、審理は続く。検察側立証として、娘へ口淫させた瞬間が収められた動画が証拠請求されたが、裁判官が「調べるのに躊躇するので留保にしたい」と伝えたことから、動画から作成された静止画が証拠として採用されていた。

被告人は5歳の娘の様子を撮影したスマホをそのままリビングに置きっぱなしにしていた。帰宅した妻がこれを見たことで事件が発覚したのかも判然としなかった。 見ず知らずの11歳女児だけでなく、実の娘へも性欲を向けた被告人に対して検察官が問いかける。

検察官「こういう行為(口淫)が娘さんに後にどのような影響を与えるかと想像しませんでしたか?」

被告人「その時には考えていませんでした」

犯行時に、何も考えられなくなる被告人であれば、また性欲に支配された時に実の娘が被害に遭うのではないかという気掛かりも生まれる。もちろんそれを考えたであろう妻は、しかし、上申書でこう訴えるのであった。

「夫がしたことは許せないが、家のローンが今年6月から始まり経済的にも大変なので、してしまったことは反省して、父親として夫として経済的に支えていってほしい。刑事処罰は望みません」

3人での住まいとして家を購入したとき、妻はこんな未来を予想していただろうか。被告人には、懲役5年6月の判決(求刑6年)が言い渡された。“刑事処罰を望まない”という妻の上申書について、判決は「それは被害者の心情とは言えない」と一刀両断していた。

【プロフィール】高橋ユキ(ライター):1974年生まれ。プログラマーを経て、ライターに。中でも裁判傍聴が専門。2005年から傍聴仲間と「霞っ子クラブ」を結成(現在は解散)。主な著書に「つけびの村 噂が5人を殺したのか?」(晶文社)、「逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白」(小学館新書)など。好きな食べ物は氷

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