無免許運転を繰り返していた60代の女性が、死亡事故を起こした。
東海テレビなどによると、岐阜県美濃加茂市で10月13日、女性が運転する軽自動車が対向車線を超え、道路脇にいた男性をはね、そのまま民家に突っ込んだ。
はねられたのは、自動販売機の商品を補充していた会社員の男性。軽自動車と建物の間に挟まれ、約3時間半後に死亡したという。
女性は無免許運転の疑いで現行犯逮捕された。
女性は2023年9月にも免許停止中に車を運転して現行犯逮捕され、翌年にも無免許運転で検挙されていたと報じられている。
繰り返される無免許運転の末に起きた死亡事故。SNSでは「無免許運転の死亡事故は、街中で凶器振り回して殺したのと同じ」「無免許運転は殺人罪にしてほしい」など、厳罰を求める声が上がっている。
交通事故の刑事責任にくわしい古山隼也弁護士に聞いた。
●無免許運転で死亡事故、「殺人罪」にはならない?
──SNSでは「殺人罪にしてほしい」という声もあります。実際には、どのような罪に問われる可能性がありますか。
殺人罪が成立するためには、運転者に「人を死亡させよう」という意思、あるいは「人が死亡しても構わない」という認識(故意)が必要です。
無免許運転はもちろん許されませんが、無免許だったという事実だけで、こうした故意があったとは認められません。そのため、殺人罪に問うことは難しいでしょう。
──では、「危険運転致死罪」はどうでしょうか。
自動車運転死傷処罰法では、危険運転致死罪が成立するケースを限定しています。
たとえば、アルコールや薬物の影響で正常な運転が困難な状態で車を走らせ、人を死亡させた場合などです。
しかし、法律が定める危険運転の類型に、無免許運転そのものは含まれていません。
危険運転致死傷罪の対象には「進行を制御する技能を有しないで走行させる行為」もありますが、これはハンドルやブレーキなどの基本的な操作さえできない状態で運転することを指します。
つまり、無免許であっても、基本的な運転技能があれば対象外です。
したがって、無免許運転で死亡事故を起こしたからといって、それだけで危険運転致死罪が成立するわけではないのです。
ちなみに、今年7月21日に施行された法改正では、危険運転致死罪について、アルコール濃度や速度に関する数値基準が新たに設けられました。
──では、無免許運転で死亡事故を起こした場合、刑罰は重くならないのでしょうか。
いいえ、そうではありません。
自動車運転死傷処罰法では、過失運転致死傷罪などが成立する場合、無免許運転だったことを理由に刑罰を重くする規定があります。
たとえば、過失運転致死罪の法定刑は、7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金刑です。
これに対し、無免許運転で過失運転致死罪を犯した場合、法定刑は10年以下の拘禁刑となり、罰金刑の選択肢もなくなります。
今回の事故について、現時点で原因は明らかになっていません。
ただ、今後の捜査で過失運転致死罪などが成立すると判断されれば、無免許運転だったことによって、より重い刑罰が科される可能性があります。
●無免許運転を繰り返していたら、実刑の可能性も?
──今回の女性は、過去にも無免許運転で複数回検挙されていたと報じられています。こうした事情は、刑罰の重さに影響するのでしょうか。
自動車運転死傷処罰法には、無免許運転を繰り返したこと自体を理由に、さらに刑罰を重くする規定はありません。
しかし、無免許運転の常習性は、量刑を判断するうえで考慮されます。
今回の女性は、過去にも無免許運転を繰り返していたと報じられています。
そうした事実が認められれば、常習性が刑罰を重くする方向に働き、実刑となる可能性を高めるでしょう。