経団連は12月初め、ホームページ上で、2017年春に入社する新卒大学生の「採用指針」を公表した。対象となる会員企業約1300社に対し、選考解禁日を「4年生の6月」に前倒しすることや、土日や夕方の面接を実施することなどを求めた。
新しい指針は、インターンシップについても明記している。それによれば、インターンシップは社会貢献活動の一環であり、採用選考活動とは「一切関係ない」ことを明確にして行う必要があると呼びかけている。
しかし、企業や学生にとって「採用選考活動と一切関係ないインターンシップ」は、相互にメリットが少ないのではないだろうか。インターンシップ制度にくわしい弁護士は、この新しい指針をどう評価するのか。竹花元弁護士に聞いた。
●インターンシップ制度の目的とは?
竹花弁護士は、インターンシップ制度の本来の目的を次のように指摘する。
「文科省などが大学生のインターンシップのあり方を定めた指針『インターンシップの推進にあたっての基本的考え方』(平成26年4月8日一部改正)を見ると、インターンシップの意義について、次のように述べています。
(1)大学及び学生にとっての意義
・キャリア教育・専門教育としての意義
・教育内容・方法の改善・充実
・高い職業意識の育成
・自主性・主体性のある人材の育成
(2)企業等における意義
・実践的な人材の育成
・大学等の教育への産業界等のニーズの反映
・企業等に対する理解の促進、魅力発信
そして、経団連の新指針では、インターンシップについて、『産学連携による人材育成の観点から、学生に就業の機会を提供するものであり、社会貢献活動の一環と位置付けられる』とうたっています」
●企業の多くは「優秀な学生を選考する手段」ととらえる
では、今回の新指針について、竹花弁護士はどのように評価するのだろうか?
「経団連の新指針では、インターシップの実施にあたり、採用選考活動とは一切関係ないことを明確にして行う必要があるとされています。しかし、インターンシップの受入先の多くは、形式的な目的をどのように標榜していても、優秀な学生を選考する手段の一つととらえていることは否定できません。
仮に選考を意識していないとしても、『インターンシップ受入部門と採用選考部門を完全に切り離す』あるいは『インターンシップで受け入れた学生は採用選考に参加できない』などとしない限り、インターンシップでの学生の振る舞いが採用選考に影響することは避けられないでしょう。
いずれの対応も非現実的ですし、経団連もそこまで徹底することは求めていません。結局、採用選考において、インターンシップを一切考慮しないことを『対外的に明確に表明すること』はできても、『実際に一切考慮しないこと』は難しいと言わざるをえません」
こうした点から、竹花弁護士は「実効性を持つかは疑問です」と指摘する。
「新指針ではさらに、インターンシップ受入先企業が学生に対して『採用選考とは無関係である』旨の周知徹底を図るとともに、参加する学生から活動の趣旨について書面等での了解を得ることも求めています。
しかし、インターンシップが採用選考に影響するということは学生の間でも一般的な認識である以上、書面で学生の了解を得ることが意味を持つかも疑問です」
竹花弁護士はこう話していた。