「私名義の偽アカウントが作られているみたいです。ご注意ください」
不同意性交などの罪に問われている元お笑いトリオ「ジャングルポケット」の斉藤慎二被告人が8月11日、自身のX公式アカウントでこう注意を呼びかけた。
斉藤被告人をめぐっては、東京地裁で8月5日、懲役7年が求刑され、弁護側は無罪を主張して結審した。
注目度の高い裁判が進む中で現れた「なりすまし」。法的には、どのような問題があるのだろうか。
●あたかも本人であるかのような投稿
8月11日、X上に「ジャングルポケット斉藤」「斉藤慎二」を名乗るアカウントが出現した。
このアカウントは、斉藤被告人本人とみられる写真を使用し、「一から、また頑張ります」などと掲げていた。
さらに「この度、Xを始めることにしました。斉藤慎二です。突然表舞台から姿を消すことになり、多くの方にご心配、ご迷惑をおかけしました」と投稿。「現在、私自身に関する件について裁判が続いています」などと、本人であるかのような発信を続けた。
お笑い芸人のエハラマサヒロさんも同日、このアカウントについて「完全になりすましです」と投稿し、通報を呼びかけた。
その後、問題のアカウント側は「なりすましではないのか、という声が多く寄せられています」としたうえで、「明日、このアカウントを鍵アカウントにした上で、真相についてお話させていただきます」と投稿。現在は外部から投稿を確認できない状態になっている。
ネット問題にくわしい清水陽平弁護士に聞いた。
●「なりすまし罪」はないが、氏名権やパブリシティ権を侵害する可能性
──他人になりすましてアカウントを作ることは、罪に問われるのでしょうか。
なりすましは、それ自体がただちに罪になるわけではありません。刑法上、「なりすまし罪」のような罪が存在しないためです。
ただし、アカウントの内容や発信の仕方によっては、さまざまな法的問題が生じ得ます。
まず、他人の氏名を無断で使用する場合、氏名権侵害の問題が生じます。
氏名権の対象は、本名だけでなく、通称として用いられているものも含まれるとした裁判例もあります。そのため、芸名などを無断で使用した場合も、氏名権侵害といえる余地があります。
また、他人の肖像(写真)を勝手に使用すれば、肖像権侵害が問題になります。著名人の場合には、パブリシティ権侵害となる可能性もあります。使用した写真によっては、撮影者の著作権を侵害する可能性もあります。
さらに、本人になりすまして発信した内容によっては、プライバシー侵害が生じることもあります。本人の社会的評価を低下させるような内容であれば、名誉権侵害の問題も生じます。
これらは民事上の問題として扱われ、なりすましをした人が損害賠償責任を負う可能性があります。
また、本人の名誉を害する内容を発信した場合には、刑事上の名誉毀損罪が成立する可能性もあります。
●パロディ表示があっても法的責任を免れるわけではない
──問題のアカウントには、X側の「パロディアカウント」という注釈が表示されていました。
Xでは、パロディアカウントの作成自体が禁止されているわけではありません。
しかし、パロディアカウントであることが明示されていたとしても、それによって法律上の責任を免れるわけではありません。
あくまでXの利用規約に違反していないというだけで、氏名権や肖像権などを侵害しているかどうかという法律上の問題は別だからです。