いよいよ来年夏の参議院選挙から、18歳も投票ができるようになる。しかし、親元を離れて一人暮らしをする大学生の中には、帰省しなければ投票できない大学生も出てきそうだ。住民票を現住所に移していないからだ。
兵庫県内に実家のある大学生の春子さん(20)は現在、大学に近い京都府内に住む。しかし「面倒くさいな、と思って」と、住民票はいまだ実家に置いたままだ。銀行口座やポイントカードを作るとき、現住所確認のため公共機関の請求書を求められ、「なぜ兵庫に住んでいるのに京都で作るのかと、あやしまれました」というが、困ったのはその時くらい。
「投票に行くために、実家に帰省するのも億劫なんですけど、住民票を移すのも面倒くさくて。住民票を移さないのって、何か問題があるんですか?」という春子さん。
東京都内の大学に通う大学4年生の雅樹さん(22)も、住民票を移さずにいた1人だった。しかし、大学3年生のときに「公務員試験を受ける際に、住民票が必要になり、慌てて住民票を移しました」と話す。「選挙に行ったことはありませんでしたけど、日常生活で困ったことは一度もなかったですよ」という。
実家から離れているのに、住民票を移さない大学生は珍しくないようだ。しかし、住民票を移さずに別住所で生活することに、何か問題はないのだろうか? 石井龍一弁護士に聞いた。
●「14日以内」の転入届提出を義務づけ
「『住民基本台帳法』という法律により、別の市町村に転出したときは、住民票を移すことが義務づけられています。
これに基づき、引越しの日から14日以内に転入届をしなければなりません。手続きをしなければ、5万円以下の過料という罰則が設けられています」
では、前述した大学生たちは本来、罰則を受けるのだろうか?
「例外もあります。
『新住所に住むのが1年未満と分かっている』『大学へ行くために実家を離れるが、卒業後は実家に帰ると決めている』。こうした事例では、生活の拠点が異動しないとみなされるため、住民票を移さなくても、罰則を受ける可能性はありません。
しかし、住民票を移さずに別住所で生活をすることで、次のような不便さがあるでしょう。
・新住所で選挙権、被選挙権が行使できない
・運転免許証の書き換えなどが旧住所でないとできない
・印鑑証明書などの証明書類も旧住所になる
・確定申告も旧住所を管轄する税務署になる
・図書館やスポーツ施設などの公共施設の利用ができなかったり、有料になってしまう
・新住所の市区町村の福祉サービスが受けられないことがある
住民票を移すのに、こうした不便さを上回るほどの手間はかからないはずです。4年間であっても、住民票は現住所に移すことが好ましいのではないでしょうか」