コンサートや舞台の悪質なチケット転売が社会問題となる中、人気アイドルグループ『Snow Man』が出演するコンサートなどのチケットを転売目的で出品する投稿者について、「STARTO ENTERTAINMENT」(東京都港区)は、2月17日、裁判手続を通じて、新たに17件のいわゆる「転売ヤー」の身元が判明したと明らかにした。1人で8件の出品を行っていた者もいた。
同社は、これらの転売を行っていた人物に対して通知書を送付するとともに、ファンクラブの退会措置を実施したという。同社らは2024年12月、転売サイト「チケットジャム」の運営会社に対し、17件の投稿を対象とする発信者情報開示命令を求める申立てをしていた。
さらに同社は、2025年2月14日付けで、転売サイト「チケットジャム」でSnow Manのコンサートチケットを転売出品している1589件について、東京地方裁判所に発信者情報開示命令を求める申立てを行ったことも明らかにした。
これほどの件数の請求を行うに至った背景は、どのようなものだったのか。
●転売サイトは、任意の開示請求は拒否し、裁判手続になると開示に同意
STARTO社は2024年8月から、コンサート主催の株式会社ヤング・コミュニケーション社(YC社)とともに、タレントのコンサートを高額転売目的で出品する投稿について複数の転売サイトに対して、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示の仮処分を申し立てていた。
2024年10月にも、「チケット流通センター」の運営会社に対し、発信者情報開示を求める仮処分の申立てを行った。「チケット流通センター」の運営会社は、裁判手続前の任意の開示請求は拒否し、STARTO社が裁判所に開示命令を下すよう申し立てると、一転して任意の開示に応じるという姿勢をとった。
今回、チケットジャムの運営会社も、チケット流通センターと同様に、裁判手続前の任意の開示請求については全件開示を拒否し、その後裁判手続になると一転して情報開示を行ったという。
また、STARTO社によると、本来開示請求を受けた場合、法的には発信者(チケット転売の場合は出品者ということになる)に対する意見照会が必要となる(プロバイダ責任制限法6条2項)が、任意開示の段階では、いずれの転売サイトもこれも実施していないという。
●新たに1589件の転売投稿につき、発信者情報開示命令求める申し立てを行った
さらにSTARTO社は、2025年2月14日付で、「チケットジャム」の運営会社に対して、Snow Manのコンサートチケットを転売出品している1589件について、東京地方裁判所に発信者情報開示命令を求める申し立てを行ったことを明かした。
過去に類を見ない件数の発信者情報開示命令の申立てを行った理由について、今回の開示請求に取り組んだ中島博之弁護士は「裁判所から明確に違法と認定してもらうことが望ましい」と述べた。
これまでの開示請求では、任意の段階では転売サイト側は応じないものの、裁判手続きに入ると任意開示に応じている。そのため「手続を続ける意味がなくなり、裁判は終わってしまい、裁判所に『違法である』と判断してもらうことができなかった」(同)と話す。
1589件もの請求をすれば、転売サイト側は任意に応じる可能性は低く、裁判所の命令を得られるとの見通しを示した。
●YC社のライブイベントのシステムを踏まえた転売も横行
今回、1589件の開示請求という異例の措置に踏み切った背景について、STARTO社は転売サイトを撲滅し、ファンに適正な価格でチケットを行き渡らせたいためと述べている。
YC社のライブイベントは、独自の座席指定システムがとられている。チケットは一律同価格で、入場時にはじめて座席が判明するのだ。
「すごく良い席に当たることもあるというワクワク感を体験してほしい」(同)との思いからこのようなシステムを維持していると。しかし転売ヤーはこのシステムを悪用し、入場後に座席の判明したチケットを集め、良席を高値で売るケースがあるとみられる。
チケジャム運営会社が、このような明らかに違法と思われる出品に対し、どこまで取り締まりを行っているのかははっきりとしない。
なお、運営会社には現在事情を確認中である。回答があり次第追記する予定。