インフルエンサーの宮崎麗果さんに、東京地裁は7月15日、懲役2年6カ月、執行猶予4年の判決を言い渡しました。社長を務める広告代理店の法人税など、およそ1億5700万円を脱税した罪に問われていました。
同じ日、元青汁王子で知られる実業家の三崎優太さんは自身のXで「ずっと謎なんだけど、脱税で捕まる人と、捕まらない人の差ってなんなの?」と、疑問を投げかけました。
ずっと謎なんだけど、脱税で捕まる人と、捕まらない人の差ってなんなの?
— 三崎優太(Yuta Misaki) 元青汁王子 MISAKI (@misakism13) July 15, 2026
三崎さん自身は2019年に脱税の疑いで逮捕されました。一方の宮崎さんは、一度も身柄を拘束されないまま判決を迎えたとみられます。
同じ脱税なのに、なぜ逮捕されたり、されなかったりするのでしょうか。解説します。
●逮捕は「罰」ではない
まず、「逮捕」は罪証隠滅や逃亡を防ぐために身柄を確保する手続きであって、刑罰ではありません。
報道によると、三崎さんの判決は懲役2年、執行猶予4年。黒木被告は懲役2年6カ月、執行猶予4年でした。逮捕された三崎さんの方が、むしろ刑は軽いことになります。
●「逃亡するおそれや、証拠を隠したり壊したりするおそれがあるか」の差
逮捕状を出すかどうかを決めるのは裁判官です。逃亡するおそれがなく、証拠を隠すおそれもないなど、明らかに逮捕の必要がないときは、請求を却下しなければなりません(刑事訴訟規則143条の3)。
脱税額や知名度は、それ自体が要件ではありませんが、全く無関係でもありません。脱税額が大きいほど重い刑が予想され、逃げる動機も強いとみられます。おそれを測る材料としては働くわけです。
●隠しやすい証拠だからこそ、先に押さえられる
また、脱税事件では、客観証拠として会社の帳簿や会計データが重要になります。
これらは社長の指示ひとつで書き換えも削除も容易にできるため、証拠隠滅のおそれは高いと考えられます。
だからこそ国税局の査察部(通称マルサ)は、気づかれないよう準備し、予告なしに一斉捜索して資料を一気に押収します。
そうなると、逆に、主要な資料を当局が押さえてしまえば、被疑者はもう物を隠せません。証拠隠滅のおそれは、その分だけ小さくなります。
つまり、ひとくちに脱税事件といっても、資料がどの程度捜査機関によって確保されているかが逮捕のリスクを判断する一つの要素となります。
ただ、資料だけでなく、脱税では「誰の指示だったのか」という関係者の証言も重要になります。資料を押収した後でも、経理担当者などと口裏を合わせるおそれがあれば、逮捕が必要と判断されます。
●「認めれば在宅、否認すれば逮捕」なのか
報道では、三崎さんは正当な経費である(=犯罪は成立しない、という「否認」)と主張して逮捕され、黒木被告は当初から容疑を認めて全額納めていたとされます。
否認していること自体を理由に証拠隠滅のおそれを認めることは、古くから裁判例が否定してきました。逮捕ではなく保釈の事案ではありますが、仙台高裁昭和29年(1954年)3月22日決定は、否認しただけで保釈を取り消すことはできないとしています。
それでも実務では、認めているかどうかが判断材料の一つとして働きます。認めていれば証拠隠滅のおそれがないと判断しやすい反面、否認した事件ではそう判断できない、といわれます。
これは抽象的なおそれだけで身柄拘束を認めているのではないか、という批判があります。否認で拘束が長引いたり、自白を迫られたりすることが無いとはいえず、「人質司法」と呼ばれてきました。
小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)