緊急事態宣言なのに、マネージャー以上は出勤といわれたという人から、会社の指示に「従わなくてはいけないのでしょうか」弁護士ドットコムに相談が寄せられました。
相談者の勤め先は、新型コロナの感染拡大をきっかけにリモートワークとなりました。しかし、一度目の緊急事態宣言が明けた際に「マネージャー以上は出社」と突然告げられたといいます。
さらに再度緊急事態宣言が発令がされても撤回されることはありませんでした。
相談者は理由に関係なく出社を強制することはパワハラに当たるのではないかとも考えているようです。相談者の主張は認められるのでしょうか? 山田智明弁護士に聞きました。
●緊急事態宣言中でも「出勤」要請に違法性は?
ーー2020年の緊急事態宣言をきっかけに、テレワークを制度として認めた企業も少なくありません。ただ時間が経過するにつれ、出勤要請される企業も増えてきているようです。法的な問題はないのでしょうか
現在、テレワークの推進が奨励されておりますが、これは、新型コロナウイルス感染症対策のために行われている法令に基づく要請(新型インフルエンザ等対策特別措置法29条9項)となります。
しかし、この「要請」には強制力はなく、基本的には事業者の任意の判断に委ねられています。出勤要請があったとしても、労働者に対する指示内容が著しく不合理でない限りは違法ということにはならないと思われます。
ーー今回のように「マネージャー以上は出勤」という区分についてはどうでしょうか
マネージャー以上の業務には、テレワークのみでは出来ない業務が含まれることは一般的に想定されます。したがって、直ちに不合理とはいえないと思われます。
もっとも、明らかに不合理な取扱いをしている場合には、裁量権の濫用となり得ます。例えば、性別を基準にテレワークとするような不合理な差別的な取扱いをしているような場合には不合理な取扱いであり裁量権の濫用となるでしょう。
また、勤務先会社への出社を命じる業務命令に反したことに対する懲戒処分等がされた場合に、当該処分の相当性を判断する場合の考慮要素として、新型コロナウイルス感染症対策の観点からテレワークの実施が要請されている点は考慮されることはあり得ます。
そのため、不当に重い処分がされた場合には相当性を欠きその処分が無効となる場合もあり得ます。
さらに、使用者は労働者に対し、一般的に安全配慮義務を負うことから(労働契約法5条)、個別具体的な事情(職場環境としてテレワークやローテーション勤務等を実施しないと三密を回避することが困難な場合等)によっては、安全配慮義務として、テレワークやローテーション勤務によって三密を回避するための措置を実施することが求められる場合もあるでしょう。